Re:ゼロから始める異世界生活6章オットー同行if   作:樫ハット

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【2】話し合い

 今さらではあるが、エミリア陣営の本拠地であるロズワール邸は、以前の焼け落ちた屋敷とは異なり、場所をメイザース領の本邸へと移している。そんなロズワール邸に帰還し、変わらぬペトラやラムの歓迎を受け、屋敷の主であるロズワールの待つ応接間に入ったわけだが――、

 

「やーぁや、お帰りなーぁさい。無事のお戻り、何よりだーぁね」

 

 応接間のソファに腰掛け、手を打って帰還を歓迎するロズワール。その喜色満面の歓迎ぶりに、スバルとエミリアは思わず度肝を抜かれた。

 

 そのやたらと友好的な笑みに、オットーはほぼ反射的に警戒心をあらわにする。

 

「辺境伯もお変わりなく、と言いたいところなんですが、何か心境に変化でもおありで?」

 

 スバルとエミリアはというと、お互いに顔を見合わせ、

 

「……エミリアたん、なんか手紙におかしなことでも書いた?」

 

「し、知らないってば。それよりスバルこそ、変な贈り物でもしたんじゃないの? ほら、スバルとロズワールってたまにこしょこしょ内緒話してるし……」

 

 などとあらぬ方向に疑心を膨らませていた。

 

 そんなやり取りを見ているロズワールが肩をすくめ、

 

「なーぁんとも心外な反応だね。君たちが私のことを何だと思っているのかは知らないが、私が君たちの安否を心配し、その無事を喜ぶことはぜーぇんぶ、当然のことでしょうに」

 

「よりによってあなたがそれを言いますか、と言い返したいところですが」

 

「この一年で、私にも色々と考え方の変化があったということだーぁよ。私が協力的になることは、君たちにとっても喜ばしいことのはずでは?」

 

「……まあ、ここはそれで引き下がっておきましょうか」

 

「うーん、まあロズワールが仲良くしてくれるなら、それは良いことよね」

 

 いけしゃあしゃあと言ってのけるロズワールに疑心を隠せないオットーと、対照的に彼女らしい寛容さで受け入れる姿勢を見せたエミリアだった。

 一方スバルはというと、エミリアに頷きかけ、掌をひらひらと振っている姿など見ていると、やはりイマイチ信用が置けないのだが――、

 

「あれの考えを理解しようとしても、それは常人と違いすぎて理解なんてできないのよ。スバルは……スバルもちょっとアレだけど、あれのアレさはそれ以上かしら」

 

「お前、ちょっと今の台詞は指示語多すぎるぞ」

 

 あれそれと老化が進んできたみたいな発言をするベアトリスの頭を撫で、スバルはエミリアに続いて応接間に足を踏み入れる。

 

 上機嫌のロズワール――訝しんだものの、その魂胆はなんとなくわかっている。

 実際のところ、ロズワールの思惑は今しがた、彼自身が口にした通りだ。

 

 ロズワールは本気で、スバルやエミリアが無事帰還したことを喜んでいる。

 『叡智の書』を無くした今、立ち塞がる障害を突破するスバルの行動、それだけがロズワールの、未だ語らない目的に到達するための最善手なのだから。

 

「さて、これ以上お待ちいただくのも申し訳ありません。そろそろお客さんをご紹介させていただいてよろしいでしょうか」

 

「もちろんだとも。それにしても、面白い顔ぶれじゃーぁないか」

 

「こちらへ」と言いつつオットーが中へと勧める。

 

 立ち上がり、上座にロズワールが深々と腰を下ろす。そうして、来客用のソファを客人二人に勧め、スバルたちはその対面にゆっくり腰を下ろした。

 

「遠方よりはるばるようこそ。こうしてまともに顔を合わせてお話するのは、論功式以来のことですねーぇ」

 

「ほんまやね。それにあのときも、言うほどちゃぁんとお話したわけやなかったし……実質、これが初めていう感じになるんやないかな」

 

 話題に挙がった論功式とは、正式に『白鯨』の討伐が認められた際の、エミリア陣営・クルシュ陣営・アナスタシア陣営が合同で評された式典のことだ。

 王都の王城で行われた小規模の式典ではあったが、当然、各陣営の代表者が集うことになったため、『聖域』の問題解決直後のメンバーは全員参加している。

 

 隣にいるオットーを見ると、スバルは緊張で青い顔をしていた当時のことを思い出す。あのときと比べると、今の堂々たる立ち振る舞いが成長を物語っている。さすがうちの自慢の武闘派内省官様だ。

 そんなことを本人に言ったら「こんなはずじゃなかったんですがねぇ!」と頭を抱え始めそうなので黙っておくが。

 

 ともあれ、それ以来の顔合わせである。

 

「ではさっそくですが、都市プリステラの件についてのご報告を僕の方からさせていただきます」

 

 互いの挨拶もそこそこに、話し合いは始まる。

 

「――それで手紙にあった通り、オットーくんとガーフィールの負傷、うちガーフィールは現在戦線離脱中と。なーぁるほど、了解しました。実に、頼もしい功績です」

 

 報告を聞き終えたロズワールが、感嘆の吐息とともにそう吐き出す。

 

「えぇ、大罪司教五人に追加で複数の強敵がいる中ですから、誇るべき成果ですよ。あの状況を考えれば、取り返しのつく負傷で済んだのは奇跡的とすら言えます」

 

 言葉とは裏腹に、オットーは食ってかからんばかりの目をロズワールに向ける。ロズワールの言い方はまるで、プリステラでの戦いが陣営に損失しかもたらさなかったとでも言いたげに聞こえたからだ。

 

「勘違いしないでくれたまーぁえよ。私は心の底から頼もしい功績だと思っているとも。二人の負傷は確かに痛ましいことだし、ガーフィールがしばらく離脱を余儀なくされるのも戦力的には痛手に違いない。だがその反面、陣営に致命的な被害を被ったものはいない。他陣営を含め、複数の大罪司教と遭遇していながらこの結果……君の言う通り、実に奇跡的な巡り合わせと言うほかないだろうね」

 

「無論、大罪司教の残した爪痕は早急に対処すべき事柄ではあるが、都市防衛に尽くした諸氏は最善の行動で被害を最少に留めた。そのことは少なからず、エミリア様もご自分で認められてよいことだと思いますよーぅ」

 

「……そう、ありがと」

 

 もう一人ロズワールに物申したげな顔をしていたエミリアに、ロズワールが先手を打つ。エミリアはまだ釈然としない顔だったが、それでひとまず納得することにしたようだった。

 事実として、彼の言葉には正論の色が強いはずなのだが、発言者の印象というものは大事なものである。スバルにも胡散臭く聞こえたので、全員そうだろう。

 

「まーぁ、皆さんに私がどう思われるかはこの際いいとして、話を進めるといたしましょうか。――ちなみに、そのような騒動が起きた都市プリステラに、エミリア様方を招いたのはアナスタシア様のはずですが……その点、どう思っておいでですか?」

 

「騒ぎの真ん中に引き入れてしもたことは、申し訳なかったって思うとるよ。謝れ言われたらちゃぁんと謝る、その心の準備はできてるから」

 

「そして、真摯に頭を下げればびた一文払わずに済む……と。ああ、私への謝罪はなくて結構。エミリア様も、すでに断ってしまわれたのでしょう?」

 

「だって、魔女教が悪さしたなら、悪いのは魔女教でしょう? ただ呼んだだけのアナスタシアに責任があるはずないじゃない。それに私たちの場合、プリステラに呼んでもらった目的は果たせたわけだし……」

 

 ロズワールに横目にされて、エミリアが自分の首元のペンダントに触れる。

 そこには新たな大魔石がはめ込まれており、今も昏々と眠り続ける大精霊が復活のときを静かに待ち続けている。パックの依り代となる高純度の結晶石の入手――それが目的だった以上、確かに陣営の目的は達成されているのだ。

 

「その点に関しては、残りの三陣営の方々も納得済みです。エミリア様のおっしゃる通り、魔女教の行動に対して責任をとれるのは魔女教しかいない、といったところです」

 

「ただし、責任はなくとも対抗手段があるなら俺は取りに行きたい。残る『暴食』と『色欲』は結局まだ仕留められちゃいない。そのための今回のお話ってわけだ」

 

「……『賢者』シャウラとの接触、ねーぇ」

 

「難しいだろうってのはわかるけどな。手段が他に見つからない以上、試せることは試してみるしかない。せっかく全知全能……じゃなくて、全知扱いか。そんな賢者がいるってんなら、話聞きにいくだけ損はないだろ?」

 

「損得の話なら、命を支払う大損をする羽目になった人間が、この数百年で何人もいるわけだーぁけどね」

 

 常識としてそれを語られると、確かに押し返される意見ではある。だが、こちらにはちゃんと勝算もあるのだ。

 スバルが目配せすると、アナスタシアが鷹揚に顎を引いて、

 

「そこで、うちの出番なんよ。幸い、うちはその『賢者』の監視塔に無事に到着する手段を持ってる。せやから、道に迷う心配はないよ。安心したってな?」

 

「言葉だけで信じろ、と言われましてもねーぇ。そもそもその手段があるのなら、大金を支払ってでも欲しがる輩が大勢いる。何故、あなただけがそれを?」

 

「うちは商人で、もちろんお金は大事や。――やけど、金銭にも代えられんもんかてあるんよ。これは、そんな中の一個やって話やね」

 

 薄い胸に手を当てて、アナスタシア――襟ドナは堂々とそう嘯いた。

 アナスタシアを装っているにも関わらず、その一言には不思議と力がある。彼女が今、本来の彼女でないことを知るスバルでさえ、気圧されるような力が。

 

 そんなアナスタシアに直視され、ロズワールは片目をつむる。その黄色の視線は彼女から、オットーに移る。

 

「ふむ、オットーくんもそれに納得していると?」

 

 ロズワールは片目をつむり、その黄色の視線をオットーの方に向ける。

 

「アナスタシア様を信じた上で、僕は反対しています。アウグリア砂丘の踏破は、本来であれば隊を編成して取り組むべき一大事業です。ただ、これまで幾度となく失敗してきた挑戦にまた兵を出してもらえるかというと、まず無理でしょう。だとしても僕らがそれをする必要はありません。これが僕が反対する理由です」

 

 ですが、と言うとオットーは軽くため息をついた。

 

「その辺りの話はここに来るまで済ませたことです。此度の被害は大きく、国にも余力はない。その状況で様々な理由からアウグリア砂丘踏破に協力的なメンバーが集まっている。これはある意味でチャンスでもあります」

 

「それに、実質的に僕らに取れる有効な手はこれしかないとも言えます。大罪司教を探し出して直接対決し、プリステラの被害者を救済する方法を探るよりは、よほど現実的と言わざるを得ません。反対なのは覆りませんが、本人らの意思がある限り、僕はそれを全力で後押しするだけです」

 

 ロズワールは、依然としてこちらを直視しているアナスタシアへと視線を戻す。しばし彼女を睥睨すると、やがて根負けしたように両目をつむる。

 

「やーぁれやれ、だ。これだから修羅場も鉄火場も噛み分けた人は扱いが難しい。それにこれもどーぉせ、エミリア様はご納得済みなんでしょうしねーぇ」

 

「勝手に決めて、ごめんなさいとは思ってるからね?」

 

「でも、勝手に決めることをやめようとまでは思わない。それでよろしい。あなたは茨の道をあえて選んで行かれる方だ。そこにこそ、彼もついていく」

 

 気乗りしない態度のロズワールだが、彼の興味は結局、そこに行き着くのだ。

 エミリアが困難な道を選べば選ぶほど、スバルが乗り越えるべきハードルは高くなる。ロズワールにとって、それが今や『叡智の書』に代わる希望であるから。

 

「そういうわけですので、ロズワール伯には何かと旅の準備に協力していただければと思います」

 

「もちろん、私にそれを断る理由はなーぁいとも」

 

「では、後ほど僕の方から詳細をまとめてお伝えさせていただきましょう。ただでさえ長旅な上に目的地は前人未到ときています。僕なりの準備はさせていただきますよ」

 

 と、オットーは責任感のこもった目をロズワールに向ける。スバルとしても、商人としての経験からその辺りの準備に詳しいオットーに一任できるのは心強かった。

 

「つーわけでとにかく、アナスタシアの案内で、そのなんちゃら砂漠を越えてくる。ちょっとばかし、また日数がかかりそうだけどさ」

 

「なんちゃら砂漠ではなく、アウグリア砂丘だ。何度も訂正されているのだから、いい加減に覚えたらどうだろうか」

 

 うろ覚えのスバルに、嘆息するユリウスが言葉を差し込んだ。

 アナスタシアの隣のソファに座り、これまで話し合いを黙って見守っていた彼は、その理知的な眼差しをロズワールへ向けると、

 

「ロズワール様にとり、非常に心苦しい申し出とは思います。ですが、都市プリステラでは今も、魔女教の暴威に晒され、心身ともに傷付いた人々が大勢いるのです。我々の行動が彼らの心を救う一助になるのであれば、どうかここはお許し願いたく」

 

「ずーぅいぶんと優美な言い回しだ。見たところ、非凡な能力の持ち主だが……私の記憶にないのが解せない。つまり、そういうことだーぁね?」

 

「――――」

 

 記憶にないユリウスの存在に、それだけでロズワールは事情を理解する。『暴食』の権能の被害者だろうね、と。かすかにユリウスが目を伏せると、ロズワールは肘掛けに腕を置いて頬杖をつき、どこか楽し気に唇を緩めた。

 

 その後ロズワールがユリウスへ嫌がらせをする一幕もあったが、『眠り姫』となったレムを連れ出すことや座敷牢から彼女を連れ出すことも確認した。

 ロズワールの意地の悪さに、元々深かったロズワールと陣営の他メンバーとの溝がさらに深くなるところだったが、アナスタシアの仲裁とユリウスの優雅な強さでどうにかその危機は防がれたのだった。

 

 

※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「食料と水について、必要量とそれにかかる費用を概算したものがこちらです。ミルーラ近辺での補給はあまり期待できないでしょうから、道中で手に入るもので想定してあります」

 

 全体での話し合いを終え、オットーはロズワールと遠征の準備について話し込んでいた。食料などは金さえあれば解決できる。だが問題は、これから向かう先が前人未到であり、他に何が必要かいくら想定してもし足りないということだった。

 

「これくらいなら特に問題なさそうだーぁね」

 

 つい一年ほど前に別邸が焼け落ちたとはいえ、メイザース家の資産は依然として潤沢だ。数か月、十人程度の遠征であれば支出は全く問題にならない。

 

「こちらは比較的手に入りにくいものですが、可能であれば用意していただきたいものです」

 

「……ふむ、この魔石の類は君の伏せ札ということかーぁな」

 

「えぇ、隠しても仕方のないことなので正直に言いますが、お察しの通りです。プリステラで『暴食』と戦闘した際に粗方使い切ってしまったもので。それで、こちらは用意できますか?」

 

「最善は尽くそう。ただ、プリステラの復興事業のために今魔石はあまり出回らなくなっているからねーぇ」

 

 オットーが要求したものには魔石が含まれていた。『聖域』でのガーフィールとの戦い以降、身の安全を守るためにある程度の常備は欠かしていない。戦闘能力に欠けるオットーのような人物にとっての切り札だが、財布には痛い手段だ。それをこの機会に抜け目なく十分量を確保しようという算段だった。

 

「それはともかく、この『対話鏡』はまず手に入らないだろうね。そもそも市場に出回ることが稀だから、そうタイミング良く手に入るとは思えない」

 

「……まあ、『対話鏡』に関してはダメで元々でしたから問題ありません」

 

 要求したものの中には、『対話鏡』というミーティアも含まれていた。これは対になっている手鏡同士で映像通話ができるという優れものだが、量産できるものでもないため常に品薄どころか、基本的に市場に出回らない品物だ。

 これがあれば砂丘の砂風等で分断されたときの対抗策となると思っていたが、手に入らないのであれば別の方法を考えるしかない。

 

「さて、確認事項はこのくらいだと思うが、一つこちらからも質問させてくれないかーぁな?」

 

「……何でしょうか」

 

「オットーくん、君から見てこの遠征にはどれだけ勝算がある?」

 

 それを聞かれたオットーは少し険しい表情に切り替わる。

 

「事前情報をもとにすれば、勝算は高いと思っていますよ。――だからこそ危険だと思っているというのが結論ですが」

 

「ほう」

 

 アウグリア砂丘攻略に際しての問題は三つ、『砂漠の迷路』『魔獣の巣窟』『賢者の目』だ。

 

「我々には『砂漠の迷路』と『魔獣の巣窟』を攻略する手立てがある。これまでの攻略と比べて、これだけで大きなアドバンテージがあります。そして『賢者の目』に関しても、賢者が理性的な存在だと仮定すれば突破可能だと踏んでいるわけです」

 

 過去のラインハルトによる遠征で失敗したのは『砂漠の迷路』を突破できなかったから。この問題はアナスタシアの情報が正しければ解決できる。

 

 次の問題点となる『魔獣の巣窟』については、『魔操の加護』を持つメィリィが同行してさえくれればおおよそ解決できる問題と言える。

 メィリィの協力を取り付けられるかどうかは今スバルがしているであろう交渉次第だ。もしこれが決裂するようなことがあれば、オットーはなりふり構わずこの遠征を中止に持ち込む腹積もりでいる。

 

「だが君は、『賢者の目』が障壁となる、と踏んでいると」

 

 そう、最後の『賢者の目』については何も対策がない。話に聞く限りでは塔に近づいた人物は区別なく皆殺しらしい。これが監視塔の最終防衛ラインであり、従って最も強力なシステムであることが想像される。仮に賢者が理性的だとしても、初撃で殺されてしまえば対話などできない。

 

 つまり問題は、こうして並べると障壁の三分の二が攻略できるように見え、楽観的になってしまうことだ。三つ全てに対抗策を持ち込んでようやくスタートラインとすべきところを、最後の一つはその場の試行錯誤で攻略しようとしている。オットーはそこに危うさを感じていた。

 

「最低限、そこが問題になるということです。危険度の下限は見積もれても、上限は見えていませんからね」

 

「……なるほど」

 

 ロズワールはそれを聞くと、少し考え込むように片目を閉じた。

 

「ですがあなたがその程度のことに思い当たっていないはずがない。――なぜ遠征を許可したんですか?」

 

 オットーの追及に、ロズワールは表情を変えず、沈黙する。

 

「僕からも一つ質問させてください。ロズワール辺境伯、あなたはこの遠征にどれだけ勝算があると思っているんですか?」

 

「私はスバルくんとエミリア様を信じている。彼らなら必ずやまた素晴らしい成果を持ち帰ってくれると、そう信じているよ」

 

「……時々、あんたが本当に契約に縛られているのか疑わしくなりますよ」

 

 『聖域』にてスバルとロズワールが結んだ契約――福音書を捨てて、エミリアを王にするために協力する――は、魂で結ばれた契約だ。これを反故にすることなどいくら世界最高の魔法使いたるロズワール・L・メイザースとて不可能だということはよくわかっている。だが彼がスバルたちを自滅の道へ誘導しているのではないかという疑いが浮かび上がってくる瞬間があることは否定できなかった。

 

「契約を裏切ることなどできないよ。少なくとも、魂に誓って私は契約を履行している」

 

 そう言い切ったロズワールの黄色い目の裏側を、オットーが見透かすことはできなかった。




【第2話での相違点】オットーが旅の準備に関わってくれた

今回の話はなろう版原作第六章2に相当しています。同じような展開はコピーを避けるため省いていますので、その部分は原作をご確認ください。
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