5 Billion ISK、増やしておいて   作:燈火白羽

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数字を数える場所

 クレーンを撃沈されてから、私は少し慎重になりました。

 ……少しだけです。

 ローセクに二度と行かない、とはなりませんでした。

 なぜなら。

 ちゃんと儲かるからです。

 悔しいですが、それが現実でした。

 

 ジタ4-4で機械部品と電化製品を買い込み、ローセクの惑星へ運ぶ。

 ロボティックスを作る。

 回収する。

 売る。

 危険はある。

 けれど、利益もある。

 実際、撃沈されたクレーン代を差し引いても、最終的には十分に黒字でした。

 数字だけ見れば、この事業は成功です。

 

 ですが。

 私は、だんだん気付き始めていました。

 これ、あまり楽しくありません。

 毎日三往復。

 補給。

 補給。

 また補給。

 回収に向かうたび、ローカルチャンネルを確認して、Dスキャンを見て、知らない名前の海賊がいるだけで胃が痛くなる。

 ああ、今日はあのアステロパイロットとトルネードパイロットがローカルにいます。

 じゃあ引き返しましょう。

 工場は止まる。

 予定も止まる。

 利益も止まる。

 でも、行けば沈められるかもしれない。

 

 なんでしょう、この仕事。

 向いていない気がします。

 いえ。

 かなり向いていません。

 

 私は前線で命を張るエンフォーサーではなく、本当はもっと安全な場所で数字を数えたい人間です。

 そう。

 たとえば。

 ジタ4-4のような場所で。

 

 PIの材料を買い、出来上がったロボティックスを売るために、私は毎日マーケット画面を開いていました。

 そのたびに思うのです。

 一つの商品には、売値と買値、二つの値段がある。

 売る場所と買う場所が違えば、当然、値段も違う。

 リージョンを跨げば、その差はさらに大きくなる。

 そして時々、A地点の売り注文よりも、B地点の買い注文の方が高い。

 そんな、少しおかしいくらいの値差が生まれている。

 ……これ。

 ロボティックスを作るより、材料そのものを運んだ方が早いのでは?

 もっと言えば。

 運ぶより先に、相場そのものを読んだ方が強いのでは?

 その考えが、頭から離れなくなっていました。

 

 アマー。

 第二の商業ハブ。

 ジタより高く売れる場所。

 そして、その途中にあるローセク、アーベイゾン。

 有名すぎる危険地帯。

 通りたくはありません。

 ですが。

 危険だからこそ、そこには値差が生まれるのです。

 毎日三往復するくらいなら、一回で大きく稼ぎたい。

 

 私はクレーンを見つめました。

 この船は、“工場を回すため”ではなく、“利益を運ぶため”に使うべきなのかもしれません。

 その方が、きっと賢い。

 少なくとも。

 私には、そちらの方が向いている気がしました。

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