ジタからアマーへ海賊勢力のフリゲートや巡洋艦を運び、アマーからジタへヘリウム同位体を運ぶ。
この往復交易は、着実に利益を積み上げていきました。
そして、ふと思ったのです。
――巡洋艦より大きな船は、どうだろうか。
バスタードなら、巡洋艦よりも大きい巡洋戦艦、あるいは戦艦まで運ぶことができます。
これは、調べてみる価値があるかもしれません。
そうして調べてみたところ、巡洋戦艦は単価が低いか需要が少ないので今一つ。
ですが、戦艦。
その中でもT2の襲撃型戦艦――通称、マローダーは有望そうに見えました。
マローダー。
個人が所有・運用できる艦としては、最大級にして最強クラスの船。
その中でも、美しさに定評があり、多くのカプセラの憧れを集める船。
パラディン。
……格好いいですよね。
ジタ買い注文、940 Million ISK。
アマー売り注文、1.11 Billion ISK。
その差170 Million。
粗利率、およそ18%。
1ユニットの商材としては、取扱額も、利益額も、今までで最大の取引になります。
これです。これにしましょう。
買い注文を入れた時、自分の選定眼に高揚感を感じました。
約定を待つ間も、自分が一廉の商人になったような気がして、少し誇らしかった。
約定した瞬間には、成功を先取りしたかのような快感さえありました。
輸送中も、気持ちはずっと浮ついたまま。
そして、アマーで売り注文を入れた時。
私は、この取引の成功を確信していました。
……ですが。
こんな、欲に目が曇った状態で行った判断が、正しいわけがなかったのです。
丸1日。
売れません。
売り注文は、そこにあるだけ。
気付けば、他の競争相手が、更に安い売り注文を被せてきています。
これはいけない。
私も値下げをします。
それでも売れません。
また被せられます。
また値下げします。
そして、また。
そうして数日。
気付けば――
パラディン。
売り注文、989 Million ISK。
……いつの間にか、ここまで下がっていました。
嫌です。
仕入れ値を割るのだけは、絶対に嫌です。
その一心で値段を更新し続ける頃には、もう利益のことなど考えていませんでした。
ただ、この取引を失敗にしたくなかった。
それだけです。
そして。
ようやく、売れない売り注文が、約定しました。
精算してみると。
仕入れは買い注文940Mと手数料10.3Mで、合計950.3M。
売却は、989M。
……ですが。
値下げ合戦で消えたブローカー手数料が48.5M。
さらに物品税が36.8M。
手元に残ったのは、903.7M。
結果。
46.6 Million ISKの赤字でした。
私は、ようやく理解しました。
高い商品が、儲かる商品とは限らない。
利益率と、売れる速さは、全く別の話なのです。
売れない商品は、商品ではありません。
人間の認知を歪める、ただの重荷です。
苦い、勉強代になりました。
読んでくださりありがとうございます。
カプセラの方も、そうでない方も、感想をいただけるととても嬉しいです。
特に、実際にEVE Onlineを遊んでいるカプセラの方からの感想は、「あるある」でも「そこ違うよ」でも大歓迎です。
先着5名のカプセラの方には、ささやかですが 200M ISK(ベテランなら金策2〜3時間分、初心者にはかなり大きい額です)をお送りします。
この小説をきっかけにEVE Onlineに興味を持った方がいれば、ぜひニューエデンへ。
感想の際に、ゲーム内のキャラクター名を作者へのメッセージで教えてください。