サイバーエデン・オフライン〜サ終したゲームが現実に侵食してきたのでヒロイン達と共に平和のために戦います〜 × 聖王の冠  自己憐憫と清貧信仰の狭間で   作:光面線会

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WAVE01「『好き』や『愛』は言い訳に使うにも振りかざすにも丁度いい」

 

「その技、後隙12Fあるから僕のキャラ対面では振らない方が良いよ。そのキャラ産廃気味だけど唯一このムーブだけは壊れだからぶん回すと大抵勝てる、まあ僕なら対処出来るんだけど」

 

 とある日の午後、九郎太は脳特対の寮で3人の"妹お姉ちゃんママ"──傀儡たちの豊満な胸をクッションに背中を預け、TVゲームをしていた。寮と言っても豪華ホテル並みの設備を整えてあり複数の部屋に跨って九郎太たち専用の施設となっている。

 

 日々セオベイド事件に日本中を駆け回っている脳特対であったが、九郎太の負荷(とは言ってもロボットを呼び出すだけだが……)を考慮しない上層部に対し文句を付けに行ったママたちが無理矢理彼に非番の日を作らせたのだ。

 

「弟くん、流石♡」

 

 かつて九郎太はSEOの日本チャンプであっただけあり、当然ゲームの腕も低い訳が無かった。何処がどう凄いのかは不明だが兎に角彼はゲームの腕が凄いのだ。

 

 そんな彼から並べられる用語の羅列を3人の洗脳ヒロインはにこやかに聞いては全肯定を返す。

 

 九郎太に言わせれば「長閑な日常」のひとときであった。が、そんな日常を破壊したのは来客を知らせる呼び鈴だった。

 

「クー兄ぃとの時間を台無しにするなんて……最悪!」

 

 洗脳ママの1人、ミーニャが吠えながら形だけの対応はしようとぶっきらぼうに部屋の扉を開ける。

 

するとそこに居たのは20歳くらいだろうか、一組の男女だった。常に柔らかな笑顔をたたえており、その真意は読めない。

 

「セオベイターの九郎太……くんだよな?俺はジョイナス。『聖王の冠』に選ばれし者――創造神エルメシオンの使いだ」

 

「はァ?」

 

 ミーニャが怪訝な顔をする。事もあろうに目の前の客人は自らを神の使いと言い出したのだ。傀儡たる彼女であっても無理ない反応だろう。

 

「同じく私はルティア。単刀直入に言います。九郎太さんのセオベイターの力と、セオベイド……人の穢らわしい欲望を叶える力は世界にとって危険すぎるのです。今すぐその力を捨ててください」

 

 次に口を開いたのはジョイナスなる男の横に立っていた女性だった。九郎太の取り巻き3人には目もくれず、九郎太自身に対して開口一番に言い放ったのだ。

 

 そしてその瞬間、九郎太の顔が怒りに歪む。こいつは"敵"だ──そう彼が認識した瞬間、3人の洗脳ヒロインの思考は「説教モード」に移行する。

 

「アンタたち……何言ってんの?宗教?で、神……?そんなお偉い奴がそうやってクー兄ぃから何もかも奪って、惨めな暮らしを送れって言うの?ふざけてる?」

 

 ミーニャの声に怒気が籠もっていく。

 

「そんな世界、こちとら願い下げよ!危険で結構!」

 

 ミーニャはヒステリックに怒鳴っていた、九郎太の代わりに。

 

「力が無ければ惨めって考えは、競争社会の毒なんだ。君たちはそれが分かってないだけだ、それに……」

 

 ジョイナスが慣れたように淡々と言葉を返す。自分の正しさが絶対でありそれを分かって貰いたいというある意味で純粋な言葉が紡がれる。

 

「九郎太くんは分かっているはずだ。競争社会という人を残忍に変えてしまう世界で落ちぶれてしまった人間の辛さを。ヤクチーと言ったっけ?それが競争社会、資本主義の醜さだよ。人は全員でそこから抜け出さなきゃいけない」

 

 部屋に上がり込みながら九郎太に向かって詰め寄る、あまりに平然とした態度の2人。九郎太はその勢いに圧倒され、何も言えなかった。

 だがそんな中、乙葉とセシリアはその無礼な客人と九郎太の間に割って入る。

 

「それで、あなたたちの要求を呑んだとして弟くんはどうなるの?セオベイド……私たちよね?弟くんから引き離すって言うなら、私たちは容赦しない」

 

「それに、欲望や競争が悪と言いたげですがそれは間違ってるわ。欲望がこの社会を発展させてきたんだから……競争社会の悪い所は私のクゥちゃんを蔑んだ事だけ。分かったら帰ってくれる?」

 

 3人が三者三様に客人を睨みつける。そんな姿を見た九郎太の瞳から涙が零れ落ちた。

 

「み……みんなぁ〜〜♡♡」

 

 泣きじゃくりながら手を広げて3人に縋り付く九郎太を洗脳ヒロインたちは温かくその豊満な胸で迎え入れた。

 

「そうだよね♡ぼく間違ってないよね♡みんなはぼくの味方だよね♡」

 

 客人たちに目もくれず女の子たちに抱き付く子供の皮を被った中年男性。

 

 一転、ジョイナスとルティアの方が目の前の光景に圧倒され、やれやれといった顔でその場から引き下がる。

 

「私たちの言葉が届かないほど強欲なんて……これじゃ邪心を食う暗黒神ゼードイルの餌だって言ってるようなものじゃない」

「……こいつら、いや九郎太の事が少し分かったよ。他人の醜い欲望に苦しめられて、それを否定しながら自分の欲望だけは肯定するダブルスタンダードだ。……これじゃ救えない」

 

 ジョイナスとルティアの眼が上から冷たく九郎太たちを映す。汚物を見る目だ。

 

「何時まで見てるんですか。これ以上あなたの言葉を聞く気はありません。お帰りください」

 

 乙葉が客人を睨みつける。命より大事な弟くんの心を傷付けた敵に殺気を向けているのだ。

 

「……そうか。じゃあ忠告だけしておくよ、この世界に暗黒神ゼードイルが降臨する。お前たちのような欲望の塊を吸収して完全体となり、この世界を滅ぼすためだ」

 

 それだけ言い残すと、ジョイナスはルティアと共にその場から一瞬で姿をくらます。

 

 瞬間、部屋に静寂が戻った。中断されたゲームの電子音だけがその場に流れている。

 

「消えた……」

 

 彼らがエルメシオン神とやらの使いという話はどうやら完全な嘘ではない、と九郎太たちは確信した。第一ここは脳特対の用意した戦力セオベイターの寮だ。おいそれと一般人が立ち入れる場所ではない。

 

 4人が顔を見合わせる中、事件の発生を報せるアラートが鳴り響く。

 

「モッツァレラ小隊!事件よ、現場に急行して!」

 

 女性の声、脳特対の上司――紅凪だ。

 

「待って。今クゥちゃんは非番よ?こんな時に出動を強要する気?それに今さっき怪しい人が……」

 

 セシリアが抗議しようとする。事件の被害や世界どうこうより九郎太の方が案じられるべきなのは当然の事だ、しかし。

 

「いえ……僕、行きます。あの2人組の言ってた事……今に大変な事が起こるかもしれない。事件はその前兆かも……」

 

 九郎太は立ち上がっていた。気掛かりをそのままにすればするほど居心地の悪さに苛まれ続ける。理由としてはそれだけだった。

 

「さっすがクー兄ぃ!」

「分かった、弟くんが言うなら……弟くんは私たちが守るから」

 

 かくして九郎太たちはその渦中に飛び込む運びとなった。それが何を起こすのか、それは"神"のみぞ知る所であった。

 

 

 ところ変わって日本某所。普段は喧噪溢れる都会だったが、この時に限ってはその様相は様変わりしていた。辺り一面から火の手が上がり、建物は無惨に薙ぎ倒されていく。そしてその上を闊歩する多数のモンスターたち。

 

 これはゲーム・アニメメディアミックス作品「モンスターフレンズ」に登場したモンスターたちの姿を取っている――セオベイドたちの大群だった。

 

 「モンスターフレンズ」――これは2つのゲーム会社「満天堂」と「レベルゼロ」が共同開発した世界的有名ゲームであり、そして幾度も社会現象を巻き起こした、まさに”モンスター作品”である。

 老若男女問わずから愛され、夕方アニメの定番でもあったこれは、大人たちの「ゲームなどに現を抜かしおってけしからん!」「動物を捕まえて戦わせるなんて虐待だ!」といった声をものともせず、海外にも大ヒット。日本の誇る最高峰のコンテンツとして、そしてオタク界の大きな柱として存在感を放ち続けていた。

 モンスターはポップな姿形をして子供に愛されるものからセクシーな姿形でケモナーたちを引き付けるものまで多岐に渡り、今も需要も満たし続けている。

 

 だが、そんな栄華を打ち崩す事件があった。

 

 モンスターフレンズのアニメ監督「たつみ」氏に嫉妬したレベルゼロ社長「比野博晃(ひのひろあき)」がたつみ監督を追放したのだ。

 

 名作と謳われたモンフレアニメの監督を蔑ろにしたこの報はオタク界隈に大炎上を巻き起こし、そして社長自身がワンマンでアニメ監督脚本を担当した「モンフレ2」はその出来のひどさからアニメ界最大の黒歴史と呼ばれ忌み嫌われる事になる。

 

 元より比野作品は賛否両論が激しく「ブリキ戦記」「ライメイナイン」「ウィンダムRAGE」「2ツ国」...等、子供には一定の評価を受ける一方で子供騙し度合いが酷いとのもっぱらの評判であった。

 

 或いは「ゲーム内グラフィックへの画像生成AIの積極的使用宣言」や「キャラ"矢助"を巡る人種の多様性の重視と言いながらの歴史軽視」「『例えるならこんなシチュエーションを見られる』(通称:たこシみ)等実際のゲーム性とはかけ離れた社長の発言」等々で比野社長とレベルゼロへが不信に晒されていたタイミングと合致した事も要因の一つだったのかもしれない。

 

 またまた或いは近年の作品のバグの数の多さで溜まった不満に乗る形で、有名動画投稿者が「引き起こしたバグを使って機器を破壊する」という動画を出したところで「これは最早ゲームではなく機器を破壊するウイルスだ」と大炎上した事や、直近にインディーズゲーム「パクワールド」に対し「あまりに理不尽」と評判の配信停止要求を突き付けた事も要因であるかもしれないし、または公開されたモンフレ映画最新作「劇場版モンスターフレンズ~復活のしん次元レアメダルと早々地球の危機であります~」がこれまた「社会の被害者である弱者男性を気合いで更生させられる甘えた敵キャラとして出したのが許せない」「長年人気だったキャラを退場させた」「比野氏の作品の内輪ネタだらけで寒い」と大炎上し、大勢のインフルエンサーがこぞって酷評動画を配信サイトに上げた事も原因一つかもしれない。

 

 当然、オタクの怒りは頂点に達する。たつみ監督を追放し、コンテンツを大爆死させた比野社長を撃ち滅ぼす為、オタクたちは集団で実力行使に出たというわけだ。

 

「社長を引きずり出せ!」

「そうだ!殺してしまえ!」

 

 モンフレのマスコットキャラ「ピカニャン」――電気を放つサーバルキャットが10万ボルトの電撃を放ち、近くの建造物を中の人間もろとも瓦礫に変える。悲鳴が上がり、巻き込まれ逃げ惑う人々を怪獣型モンスターが踏み潰し血だまりを作る。

 オタクたちが社員らしき人間を囲んで鉄パイプで殴打し続けると、幾度も血しぶきが飛び散りアスファルトを赤く染め上げる。

 

 それはオタクたちの怒りが形になったような光景であった。

 

「これは――」

 

そして、現地に到着する九郎太たち。何が起こっているか、彼らは即座に理解する。

 

「どうする?クー兄ぃ」

「これは……簡単には止まらないわよ」

 

 問いかけるミーニャとセシリアに対し、九郎太は落ち着いた顔をしていた。

 

「いや……僕はこれを止めない。これはオタクたちの”好き”を懸けた怒りだから――!」

 

 だが九郎太たちは、邪悪な気が迫りくる事に気付かなかった。




版権図鑑 番外編①
【モンスターフレンズ】
 世界的ゲーム会社「満天堂」と「レベルゼロ」が共同開発した世界的有名メディアミックス作品。「サイテー地方」を始めとした様々な各国を舞台として街や自然の中のあちこちに棲むモンスターたちと出会い、捕まえて絆を紡ぐ育成バトルRPGシリーズ。

 SEOが出る前までゲームソフト売上No.1を誇るヒット作品シリーズとして君臨し、そのゲーム性と交換/通信対戦機能から社会現象を巻き起こす。一方ゲームを気に入らない大人たちによって「動物虐待だ!」などとケチを付けられるが、そんな意見など歯牙にもかけない人気を誇り続ける。

 モンスターデザインには「ケロケロ小隊」で知られる漫画家の山崎魅音氏がメインで関わっており、ポップなデザインを基調として子供受けする可愛いキャラが中心であるが、たまにケモナー需要を満たすような艶美なキャラが登場する事も。

 氏のデザインした代表モンスターとしてアニメ版の相棒キャラであるサーバルキャットのモンスター「ピカニャン」が挙げられ、マスコットキャラに関する世界的な賞を幾つも受賞、何処にいてもその姿を目にする世界一有名キャラとして知られ続けている。

 しかし、そのモンフレもレベルゼロ側による「モンスターメダル商法」「完全版商法」「繰り返される発売延期」「グラフィックへのイラスト生成AIの積極的使用宣言」「肝心のモンスター数を削る中でカレーライスのグラフィック等の末端要素作り込み重視」「多様性に配慮しての表現と言いながら歴史的事実とは異なる描写をあたかも現実の歴史上の出来事であるかのように描写」「『例えるならこんなシチュエーションを見られる』等実際にプレイしたか怪しい自作への発言→ユーザーから『たこシみ』として発言を切り抜かれミーム化」が幾度となく小規模な炎上を作り出し、その人気に陰りが出始める。

 そんな中での世界的ゲーム「SEO」リリースでモンフレは急激に落ち目に。低空飛行を続けていたモンフレであったが更に悪い事は続くもので、レベルゼロ社長の独断(嫉妬とされる説が最有力)によるアニメ版スタッフ「たつみ監督」の追放事件が発生する。

 名監督としてオタクたちに支持されていた「たつみ監督」はこれに関してSNSで告発、「経済を回している偉大なオタクたち」の不満は遂に爆発、その怒りを買った事で「レベルゼロ」社長の比野博晃及び、この追放に関わったとされる漫画家の山崎魅音氏はオタクの敵となったのだ。

 レベルゼロの比野社長によって監督脚本が担当されたモンフレアニメ(モンフレ2)は酷いの一言で、過去キャラの雑な使い捨てと粗末なストーリー、更に比野社長自身のSNSでの発言が炎上に炎上を呼び続け、ついにはオタクたちによる殺害予告と放火予告が相次ぐ事となる。

 加えて言うのであれば、元々比野社長は商業的な実績こそあるものの、ワンマンでストーリーメイキングをしたがる悪癖がある上にそのクオリティはお世辞にも高いとは言い難くレベルゼロの「ブリキ戦記」「ライメイナイン」「2ツ国」はシリーズを経るごとに不評が増えていく。更にその悪評を決定づけたのがパンライズとタッグで出した【ウィンダムシリーズ】の「ウィンダムRAGE」であった。これでウィンダムファンの全てを敵に回し大炎上、皮肉にも「最悪のウィンダム作品」として「ウィンオタ」達の意見を一致させ団結させたのは皮肉な事だろう。

 ――結果、相次ぐオタクたちによる殺害/放火予告やモンフレ2へのヘイト創作がオタク間で大流行した事はオタクに無理解な外部からオタクに対する風当たりが強くなった原因のひとつである。

 だが一方では普段は優しいオタクたちの「”好き”を守る為なら全てを投げ打つ」怒りの恐ろしさと格好良さが見て取れる事件として歴史に刻まれる事になったと共に「たつみ監督追放事件」からのたつみ作品「ヒカリゴケ」好評の中で比野社長の「モンフレ2」が凋落していく様は「リアル追放系ざまぁ」としてオタクたちの語り草となっている。この辺りからオタク達の中で追放系ざまぁ作品が台頭したのも含めて興味深い事象である。

 ちなみに九郎太のモンフレパーティは全員♀

【次回予告】

 皆、正義を示す事に全力だ。

 学校で、会社で、あるいは銀行で。

 だがどうやら自分の正義の為に誰かの正義を踏みにじるのもまた正義らしい。

 次回「平和とか対話とか平等とか言ってる偽善者が一番信用ならねえんだよ」
 

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