サイバーエデン・オフライン〜サ終したゲームが現実に侵食してきたのでヒロイン達と共に平和のために戦います〜 × 聖王の冠 自己憐憫と清貧信仰の狭間で 作:光面線会
とある避難所、脚に大きな荷物をぶら下げ、両手の代わりに付いた大きな翼でバサバサと羽ばたきながら降りてくる少女。各地で発生するセオベイド災害の中、遠方から支援物資を届けてきた彼女もまたセオベイドだった。セオベイターの江洲 英須(えす えす)と共にボランティア活動を行っているハーピィ型の――彼のプレイしていたソシャゲ「魔物少女タワークエスト」のキャラクターを元とするセオベイドだ。
被災者たちは当初セオベイドであるという事で恐怖していたものの、現在は多少なりとも受け入れられているように見えた。無論、トラウマが残る者も少なくはないのだが――。兎も角として、彼女は他にも多くボランティアに参加していたセオベイドや、江洲 英須を含む有志セオベイターたち、更にそうでない一般の活動員と共に善意のボランティア活動として精力的に様々な仕事に参加していた。そして、仕事がひと段落付けば彼女らにも一息付くタイミングがやってくる。――そんな中、閃光が瞬いた。
次の瞬間、避難所も被災者もボランティア活動員も、全てが跡形もなく四千度の爆炎に消え去った。
――そして、その上で飛び回る3つの影。刀を振るう乙葉に対しディックとルティアが幾度もセオベイド由来の槍と剣を向け、互いに武具から発生するエネルギーの塊をぶつけ合い、その余波をまき散らしながら一進一退の攻防を繰り広げていた。
「結局お前はあのセオベイターの言いなりなのかよ!学校教育という洗脳プログラムに精神を支配された現代の可哀想なガキたちみてえだな!俺たちはそういう奴らを親と教師から解放してきたからよ……お前もそうなるべきだぜ!」
「聞いてください。あなたの"持ち主"である九郎太の事を調べましたが――あなたが自分の欲求を満たしてくれるからあなたを愛しているだけ。不都合な相手は簡単に排斥出来てしまう恐ろしい人です。あなたも持ち主も事を想っているなら……過ちを見つめ直してくれるよう、語り掛けてください!」
ルティアがその手に握るのは長い歴史を持つRPGシリーズ「ファイナルクエスト」シリーズの武器「ゆうしゃのけん」だ。聖剣が黄金の光を放ち、それに照らし出された地を消し飛ばす。
「……言いなり?私が?過ち?弟くんが……?」
乙葉が怒りを込めた瞳を2人に向け、唇を噛み締める。廃墟と化したビルの屋上に降り立つと同時に、全身をバネに大きく跳躍した。セオベイドの乙葉は原典のアニメ――「Over flower」のアレコレを無視して九郎太の「好き」の為に――徹底的に甘やかし、飽くなき欲求の捌け口となるべく生まれたその為の命だ。その存在意義を満たす事が全ての、彼にとって都合の良い命。現実からの逃避先。彼女はそれだけで良かった。
「あなた達も同じ……SEOを滅ぼしたニコライと。知ってる?『"二次元に逃げるな現実見ろ"という説教の本質は"お前が楽しそうにしてるのが気に食わねえ"である』――のよ!私や弟くんは長い間苦しめられた被害者!私はそんな彼を助けたいだけ……それをどうして否定出来るんですか!?たとえ弟くんが酷い人間だったとして、それを作ったのはこの世界!!だから弟くんや私たちには、それを裁く権利がある!」
乙葉の刀が、そこから発生した膨大なエネルギー波動の奔流が、ルティアとディックを街ごと切り裂かんとする。が、2人の持つ武器によって放たれる高出力エネルギー防壁によって波動は四散し、この国全体に降り注いでいった。
「競争社会に追い立てられて尚、そんな寝言を言いやがって!お前の『好き』を他の奴にも少しくらい分けてやって仲良くすりゃ良いじゃねえか!!コイツが悪いからだの何だの言って蹴落としてたら、キリがねえぜ!!」
「可哀そうに……自分の心で考える、という事を奪われてしまっているのね。やっぱり傀儡でしかない……ですが、これだけは分かって貰いたい。九郎太は――弱者から奪う側に立っている!あなた方の言う"オタク"が偏見やデマで人を傷つけているように、インフルエンサーや有名作家……声を上げる力がある者に踊らされ、私刑を行っているように!」
――これがディックとルティアの言である、が。一方で、自分たちに従わなかった人間に向ける愛という物は彼らエルメシオンの使徒には存在しなかったというのも事実であった。彼らの行く手を阻む者も、資本主義の社会でしか生きられない者も、学校教育に携わった者も断罪し、その口で世を憂いながらその屍の上を悠々と歩き続けてきたのだ。
何度も波動が交錯しては地に降り注ぐ。そして焼け焦げた建物や炭化した死体たちの上に、九郎太のメガフェンサーはその巨大な足跡を付けた。
「――人々が優しい心を片時も忘れず、誰もが常に互いを慈しみ続ける心を持っていれば、そこが楽園になる」
「――人々が欲を抑え、優しい心を持ち続けられるようあたしたちの手で働きかけていくこと」
その青年は共に戦っている恋人の言葉を反芻する。
「――そうだよな、ルティア!」
幾度もの攻撃を受けて尚膝を立て、そしてゆっくりと動き立ち上がる巨人メガフェンサーを相手に使徒たちのリーダー、ジョイナスは相対する。その隣には4人の仲間たち。九郎太は憎々しげにその顔を歪めた。だがその口が上手に動かない。――敵への「レスバ」「論破」全てを洗脳ヒロインに頼り、インターネットの受け売りに頼り、普段の会話すらネットミームや漫画アニメのパロディに頼っていた彼には、エルメシオンの使徒たちの薄っぺらく偏った欺瞞にすら何も返せないのだ。だから。
「ぐ……うわあああああああッ!!!!」
純度の高い憎悪――にも満たないプリミティブな動物的嫌悪感とともに巨人の剣を振り回し、その小さな心に似合わぬ巨人の手足をばたつかせるしか出来なかった。
更に間の悪い事に乙葉とミーニャは目の前で九郎太を罵倒した相手に激高し、セシリアは満身創痍。今、彼の代わりに彼の思いを言語化して世話を焼いてくれる女の子はいない。そして彼は――一人では戦えない。
「クソ!クソ!みんなそうだ!!やめろって言いたいんだろ!!僕の好きな事を!!ごめんなさいね!!悪かったな!!俺が!!筆も折るよ!!ああああ!!!」
そして激情を爆発させる。それはヒステリーを起こした子供の如く。いつものように「かわいそう」って言ってくれ、甘やかしてくれ、と涙を流す。彼が一人で戦えないのは――彼自身がそれを望んでいたからである。
「ヒロインたちに甘やかされ守られるだけの存在でありたい」――最も強い九郎太の感情。それをセオベイターとしての力は、SEOは、忠実に彼の望みを叶えていたからだ。元よりその望みを抱えて生きていた彼は「女の陰に隠れて守ってもらいながら好かれる主人公」という物への批判に過敏だった。
尤も、この手の主人公像の存在は男性キャラよりも戦うヒロインたちを前に押し出したい制作側の都合で生まれた物でしかない為、是非を問う事にどれほどの意味もあるのか分からないが――兎にも角にも九郎太は「そう在りたい」と心からそう願っていたのだ。果てなき羨望が、甘やかしてくれないこの世界への怒りが、幼児性を伴って九郎太に渦巻いている。
「くっ……なんて事だ……もう彼には、優しい心なんて物は残っていないのか……!」
そして――その一方でジョイナスは免罪符を得た。分かり合えない奴だから、見捨てても良い。「俺は何も欲さず、他人の為にその力を使える人間」だけど、こんな見下した奴は「人」と認めなくて良い。
ジョイナスは仲間たちと共に悲しむ姿勢を取り、そして仲間たちに指示を下す。全力であの機体を破壊し、きっとその後は錯乱した奴を邪触手が食らい尽くすだろう。自分たちは手を汚す必要もない。自分たちに同調してくれない他者を排除するいつものパターンだ。
「優しい心を取り戻して」と無意味に声を掛け続け、全て終わった後で「本当は助けたかった」「俺たちの話を聞いてくれていれば」と奴の墓前で涙を流せば良いのだ。さて彼の力だけは貰っておいてやろう――と無意識的に考える。ジョイナスらは揃って気づかぬまま、笑みを湛えていた。
ジョイナスたちはメガフェンサーを討たんとそれぞれの奪ったセオベイター及びセオベイドの力を向ける。今にもその力が爆ぜて巨人を焼き尽くさんとしたその時。
「僕が!俺が!!『男らしくない』カスだから!!『それでも男か!って俺を殴ってくれた親父が正しかった』って事だろ!!!そう言いたいんだろ!!!」
「――――!!」
瞬間、ジョイナスの顔が引き攣る。彼は無意識的に「やめろ」と言っていた。仲間たちからもざわめきが漏れる。
「――女にもやらせておけばいいようなひ弱で卑しい事を覚えよって!それでも男かぁ!!」
ジョイナスの中で、声が響いた。忌まわしい父親の声が。――ジョイナスは静かに震えていた。
男らしさに拘る父親……家父長制・ミソジニー・ホモフォビア・強欲・暴力的な支配。ジョイナスの根底にあった、それらへの嫌悪。幼少期のジョイナスを殴りつけ、男らしくあれと虐げてきたモノに対する感情、つまりは――「男性性への憎悪」。
そう、彼は「ヒーラー」――自身の男らしさからの解放を目指し、そこから最も離れた回復術士になったのも「優しく澄んだ心」を自身の志向の在り方としていたのも、元はと言えばそれが根底にあった。
そして――自分のそれと同じ嫌悪の心が、自身が命を奪おうとしていた相手から、人とも思っていなかった者から出てきた。
「九郎太!!それは違う、男らしさなんて必要ない!!悪いのは――!」
ジョイナスは声を張り上げていた。――そして、九郎太もまた突如として聞こえてきた、思いもよらないその言葉を前に顔を上げ、呆然とした顔でモニター越しにジョイナスを見る。時間にしてほんの一瞬、されど2人にとっては十分すぎるほどの時間。2人は向き合い――。
「GLLLLLLLLLLR!!!」
突如、大地から響く爆音の咆哮。この世の物とは思えない地獄からのような叫びが大気を揺らし、人の心すら凍り付かせる。だがそれはほんの前触れに過ぎなかった。
地響きと共に黒い霧が湧き出し、紫電が轟く。そして炎とともに、ゆっくりとその巨大な影は廃墟と化したレベルゼロ跡地から立ち上がった。
「あれは……!」
九郎太とそのヒロインたち、ジョイナスとその仲間たちの視線が、一斉にそちらに向く。
「暗黒神ゼードイル……いや、それだけじゃない!」
その影は、あまりにも歪だった。メガフェンサーよりひと回りもふた回りも大きい漆黒の泥塊のような巨体から無数の人間たちのパーツが、そしてモンスター――例の「モンフレ」型セオベイドたちの体のパーツが大量に生えている。そしてその中央にはレベルゼロ社長、比野の巨大な顔面が付いていた。
「俺たちが戦っている間に――邪触手が大勢の欲深い人間たちを吸収し尽くしたんだ。そしてその核となったのが例の社長、だがあれは……」
巨体からは炎が、冷気が、雷光が迸る。絡み合った無数のモンスターと人体は巨腕を形成し、辺り一面を薙ぎ払うようにそれを振り回した。その姿からは、理性のような物は一切感じられない。ただ破壊衝動に突き動かされながら闇雲に暴れているのだ。
「クー兄ぃ!危ない!」
巨体の腕が、九郎太のメガフェンサーに迫る。その瞬間にミーニャの乗る、片腕を失ったオファニムが猛スピードでメガフェンサーに突っ込んだ。が、オファニムの両膝から下がその拳に殴り飛ばされ火花と共に幾多ものひしゃげた金属片へと変わる。半壊したオファニムはコックピットにアラートを響かせながら九郎太の乗るメガフェンサーを救い出し、やがてメガフェンサーと共に家屋に突っ込んでその動きを止めた。
「う、うぅ……ミー……ニャ?」
九郎太がモニター越しにその姿を捉えた。
「私たちもいますよ、弟くん」
「ママたち、結構無茶しちゃったけど……最後まで一緒よ」
乙葉とセシリアがメガフェンサーの前に立つ。2人の身体には幾つもの傷と焼け爛れがあったが、その戦意は衰えていなかった。しかし、それでも満足に動けるとは思えない状況の2人。巨大モンスターに、エルメシオンの使徒たち。絶体絶命と言っていい状況を前に、洗脳ヒロインたちもその覚悟を決める。だが――。
「…………ヒール!」
次の瞬間、清浄な光が九郎太たち全員を包み込んだ。乙葉とセシリアの傷が癒えていく。彼らに手を翳していたのは――ジョイナスだった。
「な……どうして!」
「俺は――お前の中に、可能性を見た。憎いんだろう……『男らしさ』を押し付ける、優しくないこの社会が」
「……うん。僕はそれがずっと……嫌だった」
傷付いた2人も、それと構成する要素を同じくする半壊したオファニムも、元の万全な状態へと戻っていく。
父親や人情太郎に襲われた時に自身を肯定してくれた「乙葉お姉ちゃん」を見た時と同じ目で、九郎太はジョイナスを見た。ジョイナスの声色も、何時になく柔らかくなっていた。
「お前は……君は、僕の事を……分かってくれるんですか?」
「ああ……俺の親父も、そうだったから。苦しんだんだろ?お前も……」
ジョイナスはこれまで、敵対者と共感し合えた事も、分かり合えた事も無かった。無論それはジョイナスの考える相互理解=相手を自分に強制的に同調させる事であったからなのだが――彼自身の心のどこかで、それは心の引っ掛かりになっていたのだろう。だが彼の中には自分と共感できる部分があった。だから――。
一方で九郎太は、現実という物から逃げ続けていた。現状の打破や周囲の環境を変える努力ではせず助けだけを求め続けていた――自分を甘やかさない世界がおかしいと他者に甘え続けていた訳だが――。そんな中で現れた全肯定botのセオベイドだったが、今度は生身の生きた人間から"肯定"を貰えたのだ。だから――。
(俺はちゃんと分かり合える。だから俺は――)
(僕の味方はちゃんといた。だから僕は――)
分かり合えそうな相手もいたのだから俺は悪くない。「改心」出来るような奴もいるのだから、出来なかった奴が一方的に悪い。これでジョイナスの免罪符はより強固になる。
助けを求めるだけで何も努力しなくて良い。男らしさは要らないと神の使いとやらが保証してくれた。これで自分を冷遇した社会を断罪し返す根拠を九郎太は得た。
(――やっぱり、正しかった!)
ジョイナスと九郎太の口元がニヤリと歪む。
奇妙な事に、思想も目的も真っ向から対立するお互いがお互いとのやり取りを通じて、共に自らの正当性を悟りながら「自身が分かり合えない相手」に向ける次なる仕打ちに、心躍らせたのだ。
「弟くん、本当に大丈夫?あいつら弟くんにずいぶん酷いことを……」
「ジョイナス……彼らは優しい心を取り戻せると思いますか?」
それぞれの仲間たちから疑問の声が上がるが、九郎太とジョイナスはしっかりと肯定で返す。
「あの人は、きっと優しい心を持ってる」
それは「自分の味方だから優しい」という、動物的単純思考。だが元より彼らにはそれが全てで、それで良かった。立ち上がり目の前の巨大な影に向けて戦闘態勢を取る九郎太のメガフェンサーに、その肩の上に乗るジョイナス。
「あれは……比野なのか?光に取り込まれてクロムスリになった人情太郎のように、セオベイドに……」
「いや、あれが俺の言っていた暗黒神――ゼードイル!かつて俺たちの世界ミズガルズで見た時は、人型をして理性を保っていた……恐らく人の欲やセオベイドたちの力を取り込み過ぎて、暴走しているんだ。あれは……セオドイル、とでも呼ぶべきか」
咆哮と共に、セオドイルがどろりとした黒い泥をこね回すように、その身体を組み換え形成していく。手足を生やして人型を取り、その胸に付いた比野の顔が大きく歪んだ苦悶の表情を浮かべながら、口を大きく開く。そして――その口から、光の奔流を撃ち出した。
「来るよ、クゥ兄ぃ!」
「ああ!」
薙ぎ払う光を躱し、メガフェンサーが飛翔する。と同時に全員が扇状に散開し、セオドイルへの十字砲火を狙う。
「GAAAAAAAA!!」
洗脳ヒロインたちが、エルメシオンの使徒たちが、それぞれセオベイドの力を巨体に向けて放つ。爆発した着弾地点からはその巨体を構成するモンスターや取り込まれた人間たちの死体がこぼれ落ちていくが、巨体そのものを崩すには至らない。
「凄い邪心――きっと奴は、とんでもない欲で大勢を不幸にしたんだろうな」
「うん、あいつは――僕らの『好き』を踏みにじった。ジョイナスも、好きな作家が『売れないから』ってその作品を打ち切られたら、嫌でしょ?あいつはそれを『やる側』の人間なんだ。後からようやく人気になった作品を突然打ち切ったり、過去の作品に泥を塗ったり、好き放題してきた。だから――僕たちオタクが『好き』を守るために裁くべき相手だ。他にもこういう例は幾らでもある、最近だと売り上げという身勝手な尺度で僕らの『スーパー小隊シリーズ』が……」
ジョイナスが九郎太に対し、頷く。
「……ああ、分からない話じゃない。世の中には本当に素晴らしい物を書ける、尊敬すべき作り手たちがいるんだ。そんな人たちが作った素晴らしい物を潰す――そんな欲深き資本主義の化身に俺たちは『否(ノン)』を突きつける!」
――実のところ、この会話の中だけでも九郎太とジョイナスは互いに引っ掛かる物を持ってはいた。好きな物の為と言って人に危害を加える事を肯定した九郎太、どさくさに紛れて資本主義批判に走ったジョイナス。だがその引っ掛かりも「自分たちのエゴの肯定」より優先すべき物ではないとお互い流す事にした。
「あのデカいの、鈍いけど――ボクらが幾ら攻撃してもこたえないし、すぐに回復されるよ。どうすれば……」
「闇雲に攻撃したって意味無ぇって事らしいな。さてどうしたもんか」
セオドイルの頑丈さに打開策を求めるルーシーとディック。確かにその通り、攻撃が通じているようには見えない。
「こういう時、クゥちゃんの見てたアニメなら……ああいうのにはコアがあるはず。そこを撃ち抜けないかしら?」
「コア……そうね。セオドイルの中に渦巻くエネルギーの流れさえ掴めれば、その根源であるコアの位置を探せるはず!」
セシリアがアニメ知識から出した案に、ラーンが学術士として推論を展開する。不思議な共闘が今ここに成立していた。
「で、あたし達は何すれば良いわけ!?」
「ああ……そうね。兎に角攻撃に攻撃を重ねて短時間だけでも内部を露出させて!」
「応!」
全員が寄せて返す波の如く、セオドイルに殺到する。エネルギーを撃ち込み、斬撃を放って次々とその外皮を破壊しては泥塊を掻き出す。傷ごとに修復される速度も順番も向きも僅かに違う。コアに近い部位の方がコアから受けるエネルギー供給が激しく、末端よりも優先的に修復されているのだ。
彼らを押し潰さんと迫る腕を躱し、モンスターの頭が吐き出す炎を受け止めては返しの一撃を加える。そこから、少しずつではあるがコアの位置を割り出していく地道な作業であった。しかし、その作業にこそ光明は確かにハッキリと見出せた。
「見えた――!」
そしてコアの大体の位置が特定されると、アメシストが光をマーカーとしてその位置を指し示す。狙うべき場所、ゼードイルに取り込まれた比野社長の体がある地点――巨大な比野の顔の額の丁度奥、脳があるべき場所だ。
「あの部分を消し飛ばせば!」
だがセオドイルは、それに反応して幾多もの端末――モンフレのモンスターたちを無数の尖兵として放ってきた。その上で両腕をクロスさせ防御態勢を取るセオドイル。己の危機を悟ったのだろうか、モンスター達は最も高い火力を持つ九郎太のメガフェンサーを集中的に狙ってくる。これでは手出しが出来ない――!
「……九郎太、俺に考えがある」
ジョイナスが再びメガフェンサーの肩に降り立つ。真剣な目で、メガフェンサーの顔越しに九郎太を見つめていた。
「弟くんには……指一本触れさせない!」
「あなたに、優しささえあれば!」
乙葉とルティアがセオドイルの腕に着地すると、自身の得物をその上に突き立てながら走り抜ける。が、次の瞬間には弾き飛ばされてしまう。洗脳ヒロインたちも、エルメシオンの使徒たちも、セオドイルの出力を前に圧倒され始めた。
「GRRRRRRRRRR!!!」
そして、そのセオドイルの前には遂に纏わりついてくるモンスター達を前に膝をついてしまうメガフェンサー。ジョイナスが回復に努めるも、モンスターを跳ね除ける事はかなわないように見えた。そして――。
突如としてセオドイルはその両腕を解放し、大きく開いた比野の口を露わにした。その中には、先ほどの攻撃とは比にならないほどのエネルギーが渦巻いている。セオドイルはこの時を狙っていたのだ。
「――――!!!」
そして放たれる暴力的なエネルギー波。地を焼き天を焦がすその力は、モンスターたちを焼き払いながらメガフェンサーに到達する――はずであった。
「俺が手に入れたセオベイドの力――『大嘘潰し(フィクションデストロイヤー)』」
ジョイナスが左手で掲げた掌を返すポーズを取り、そのまま掌を前に出す。と、目の前に迫る光の濁流は元から存在しなかったように消失していく。これはライトノベル「ある学園の目安箱(ガイドボックス)」――その裏主人公が持つ「無効化」の異能だ。これまでジョイナスが見せていなかった、切り札であった。
「今だ!光の先を撃て、九郎太!!欲望と資本主義に終止符を――!!」
「これが僕たちの、オタクの復讐だ――!!」
目の前には、がら空きになった弱点。そう、このタイミングを狙っていたのはセオドイルだけではなかった、九郎太とジョイナスが一枚上手を取っていたのだ。隙を晒したセオドイルのコアに向かって、メガフェンサーが背部のドリルを手に構えて突撃する。――リーマーインフェルノ、そう九郎太がヒーロー面をしながら叫ぶと、巨大なドリルは肉を破り泥を掻き分け、辛うじて人の形を保っている比野に到達する。
「私は……っ、ただ、良いモノを、作りたく……て……」
「煩い!」
比野の断末魔を掻き消すように声を重ねる九郎太とジョイナス。比野の身体はミンチとなり、黒い泥に溶けて行った。すると――セオドイルの身体を構成する人体とモンスター達の身体が次々と破裂し、セオベイド由来の光の粒子とゼードイル由来の黒い霧に分かれて消えていく。
そして数度のスパークの後、セオドイルの身体は繰り返される破裂によって発生した内部圧力に耐えかね、大爆発を起こした。
耳を劈く爆音、衝撃波、光と熱――。
「弟くん!」
「ジョイナス!」
――そして、その爆発を背に悠々と歩いてくる影。メガフェンサーであった。
そう「正義は勝利した」のだ。
強制排熱による冷却で陽炎を揺らめかせながら、メガフェンサーは帰還した。コックピットには九郎太、肩にはジョイナスを乗せて。それは、彼らにとっての悪の徹底排除――その成功体験を確かに強固な物とした。
「――終わったんだな。これで最悪の事態を迎える事だけは避けられた事になる。俺も信じてみよう……人間を」
「うん。でも僕たちの戦いは続く――、皆の『好き』を身勝手な正義で潰そうとする奴がいる限り、ね」
ジョイナスはエルメシオンの使徒たちとハイタッチし、九郎太は洗脳ヒロインたちに抱き着かれる。そうこうしている間にも瓦礫の中で命が消えて行くのだが、それはそうと戦いは終わり場は祝賀ムードに変わっていった。
ジョイナスは「相手が自分の思い通り改心し、欲望の権化を断罪してくれた」九郎太は「自分の他力本願な生き方を肯定し、オタクの敵を共に討ってくれた」事――双方とも都合の良い解釈ではあるのだが――に酔いしれ、全能感に浸りながら喧噪の中で暫しの時を過ごした。
そんな中での事であった。
「――こちら、脳特対の紅凪です。モッツアレラ小隊及びそこのセオベイド・セオベイターは全員……手を挙げ、速やかに投降願います」
次々と自衛隊員たちが現れ、彼らを翼包囲陣形で行動を封じる。その奥では救助部隊が瓦礫の撤去と人命救助を行っており……包囲部隊の方は九郎太とジョイナスたちに銃口を向けていた。
「……は?」
九郎太は茫然自失する。世界を、街を守った自分に向けられた銃口。過去に同じような事は確かにあった。最初にメガフェンサーで戦った時の事だった、だが今回は違う――九郎太は彼ら自衛隊の、紅凪の要請で出動したのだ。それなのに、ただオタクたちの復讐と私刑を肯定しただけでこの仕打ち――裏切られた、九郎太は眉間を震わせる。
ジョイナスは歯噛みする。かつて優しい心をと働きかけ、そうでない者に鉄槌を下した時。権力者たちはそれを許さずジョイナスらを追い詰めた。強欲な王子を独断で私刑した際も、義務教育を子供に強要した教育省を断罪した際も、競争主義に毒された社会はそれを許さなかった――同じ構図だ、ジョイナスは拳を握り締める。
「今すぐに破壊行為をやめ、投降してください――九郎太くんまで加担するとはね。あなたを脳特対に入れた責任は私にある、だから」
「――ッこの、上級国民!クー兄ぃは……クー兄ぃは街を、世界を守ったんだ!それなのにアンタたちは!やっぱり皆殺しにしてやる……!」
「……その銃を降ろしてください。それは人を傷付けるもの、人と人の会話に……いえ、そもそも武器は人の世に必要ないものです」
ミーニャが吠え、ルティアが強い語気で威圧する。
「待って下さい!銃を降ろして、その人たちは悪くありません!」
その時、自衛隊員たちの前に空から降りてきた一人の女性が立ち塞がった。
「あっ、あんたは……!結婚という枠組み自体の性差別性を見抜いて、そいつを改める法案を一貫して出し続けてるヤブウチ議員!ろくでもねえ政治家が多い中でしっかりしてて思いやりある発言するあなただけは応援してたぜ!大丈夫か?というかなんで此処に……」
ディックが感嘆の声を上げた。彼女は元々ジョイナスたちの世界――ミズガルズのジャッパー国議員だった筈だが、今は日本の議員バッジを付けている。
「ええ、日本もジャッパーと同じ問題を抱えた国だと感じたので、この国を変えるべく先にこの世界に潜入していました。そして日本国民になりすまして国会議員に――残念ながらこの国の政府に洗脳された国民からの支持は得られなかったので、エルメシオンの加護で投票結果に細工をし、国会議員の座を得たわけです。この国を、世界を言葉と優しさで変える為に」
「は、はあ?」
唐突なヤブウチ議員の登場と目の前で繰り広げられる会話に、紅凪はあっけらかんとしていた。
「な、何……何なんです、あなたは……」
凪が凄い形相でヤブウチ議員を見る。今の会話の内容――咀嚼するには時間が掛かるがとんでもない事を口走っていた事実だけは理解した。が、それと同時に九郎太がヤブウチ議員とそれを称賛したディックを睨み付ける。その心の奥には冷え切った感情が生まれていた。
「ああ……彼女は俺たちの世界の人間で、俺たちと志を同じくする者だ。そもそも結婚というのは――、いや競争社会そのもの、資本主義も含んでだが……『男性という性が生まれつき持つ暴力』を肯定している。それと戦うのが彼女なんだ」
ジョイナスが誇らしげに九郎太に話し始める。ジョイナスから見れば九郎太は既に自分とある程度の相互理解――「同調」してくれた人間だ。当然、自分の言う事を肯定するに決まっている。そう確信していた。
「ジョイナス……?」
「そもそも、女性には人を育み未来に繋げていく力がある。だが男性には――それが無い。戦争を起こし、全てを壊してしまう。俺の父親もそういったタイプの人間だ。家父長制と暴力の化身。お前の父もそうだったんだろう?九郎太……!」
九郎太の目が眩む。彼の味わってきた否定の言葉――それは「男らしくないから情けない」という物には留まらなかった。その一方で「男だから汚らしい」「男だから汚い欲求を持っている」という偏見と差別、それに押し潰されていた。否、もはや――そう押し潰された被害者である為、その罵倒を自ら幻覚・幻聴として聞き続けてきた。
だからこそ、ジョイナスのように「男性性を批判する」方向に思想が傾く事はなかったが、その反面「男性性を批判する人間」にも敏感になっていたのだ。だからこそ「聖母の会」の案件で女性活動家たちが踏み潰された時だって心の奥底でほくそ笑んでいた。
「そもそも人というのは、生きているだけで大地を傷つけ、大いなる自然を壊して奪っている。罰を受けるべき存在なんだ。その中でも特に男……戦争を起こすのは決まって男だ、そして」
「……クソフェミ野郎が……女がそんなに偉いってのかよ……」
「は?」
九郎太の瞳に暗い炎が灯る。ジョイナスは戸惑い、九郎太の肩に手を振れようとする。が、その瞬間。
「弟くん!」
沸々と煮えたぎる九郎太の憎悪に反応し、その傀儡である乙葉はジョイナスに斬りかかった。
「九郎太、お前!」
ジョイナスはすんでの所で後ろに飛んで躱し、代わりにルティアが斬撃を受け止めた。
「やめなさい!何を……!」
凪が制止に入ろうとするが、次の瞬間セシリアが艦装具から砲弾を、ミーニャが自動操縦のオファニムから電磁ライフルの弾丸を放つ。爆炎が立ち上り、包囲していた自衛隊員も、人命救助をしていた自衛隊員も、凪もヤブウチ議員も血の霧と化して粉々に吹き飛んでしまった。だが、エルメシオンの使徒たちだけは素早く反応し戦闘態勢に入る。
「やっぱり、あなた方に――優しい心は無い!」
ルティアが怒りの声を上げる。一帯は再び、戦場と化したのだった――。
(守る価値の無い人たちばかりだった。僕からSEOを奪い、男らしくないと貶め、なろう小説をバカにし、男性は汚らわしいと蔑み……、期待しては裏切られ続けた。僕の事を分かってくれると思った自衛隊の人たちも、ジョイナスたちも、そんな夢さえ見せてくれなかった。僕を騙したんだ。僕はどうしてこんな国を、こんな世の中を守ろうとしていたんだろう。何が「ヒロイン達と共に平和のために戦います」だ。違う、僕は――!)
「――僕(オタク)の為の世界じゃなければ、何もかも要らない!」
九郎太の駆るメガフェンサーが、ビルの残骸を投げ付ける。その蹴りと衝撃波で瓦礫を巻き上げ、飛散した瓦礫は遠く離れた人々に降り注いだ。その姿は――まさに「ロボット怪獣メガフェンサー」九郎太が呼び出した、その原典――「ネビュラマンに描かれた、人間が科学の過信で作った負の遺産であり、基本的に否定される存在」そっくりであった。たった1人のエゴイズムが、偶然にも巨大過ぎる力を得てしまった――その成れの果てを前に、力なき弱者は声を上げる事すら叶わない。
「……大丈夫だよ、弟くん。私たちはずっと一緒にいてあげる。地獄の底まで付いていくから……安心して」
「結局クー兄ぃの気持ち、一番尊重してあげられるのは私たちだけだったね。クー兄ぃに助けられたくせに自分勝手、クー兄ぃの事なんか何も考えてない」
「そう、ママたちだけがクゥちゃんの居場所なんですよ。嫌いなものは……ぜーんぶないないしちゃいましょうね」
3人の洗脳ヒロインたちが、メガフェンサーの操縦席に乗り込む。九郎太はただ「ありがとう」と涙を流した。
しかし――その直後、空が"割れた"。
響く雷鳴と共に、空間が裂ける。在るべき法則を捻じ曲げて、その存在は降臨したのだ。
「やはり……人の欲を止める事は出来ませんでしたか。幾ら試しても、結局人は自らを滅ぼしてしまう。科学の過信が人を傷つけ、資本主義が人の優しさを殺す――」
上位存在、創造神エルメシオン。まさに人のイメージする「神」の姿を取って現れたそれは、自らの視点で善悪を騙り、己の言説を垂れ流す。そして。
「ジョイナス、優しい心を持ち続けているあなたに――この世界の命運を任せます。ミズガルズであなたが人間の可能性を信じて行った"選別"は――決して『競争』しない少数の優しい人だけを救い、世界中の富をその正しい人たちのみに分け与えました。それがこの世界でも通用するか分かりませんが……私はあなたという人間の出す答えを信じます」
「……分かった。俺たちは――優しい、争う心の無い人間を救うため、世界から邪悪な物を、進歩も科学も資本主義も――全てを断罪する!」
エルメシオンがジョイナスたちに向かって光を放つと、ジョイナスたちが自分たちに従わないセオベイターやセオベイドたちを否応なしに脅し、時に殺して奪ってきた力が増幅される。
邪魔な相手は全て墓の下に押し込め、競争社会で培われた全ての豊かさと力を、ジョイナスの選んだ人間たちだけで分け合う――そんな理想の世界を作る為に心を合わせたジョイナスを中心に巨大な光の柱が形成され、そして――それは、メガフェンサーと同サイズの巨人の姿。セオベイター・ネビュラマンへと変貌したのだ。
「お前が!僕を裏切るから!!」
「欲望の根源を滅ぼす!」
メガフェンサーとネビュラマンは、その拳をぶつけ合う。巨大なエネルギーが爆ぜ、爆心地には2体の巨人以外何も残らない。2体は高速飛翔し、その軌道で大空というキャンバスに曲がりくねった邪悪な蛇の怪物の如き歪な痕跡を刻み付けながら、空中で幾度も幾度もぶつかり続ける。巨体がぶつかり合う度に発生した衝撃波は、いとも簡単に街を消し飛ばしていく。
「SEOは終了しました」
「俺が到着してるのに掃除終わってないとか本当お前はよなあ!!」
「ブルーカラー職は街から出ていけ!」
「お前らは異常者の集まりだ」
「おい、ヤクチー」
「何もない上に汚い、情けない。お前みたいなヤツはこの程度って事だ!」
「産んでくれた親だろう?恩返ししない理由がどこにあるんだ?」
――九郎太の脳裏に焼き付いた罵声の数々。老若男女問わず自分を責め立てる、自分の不幸の象徴。
九郎太は、怒り、妬み、苦しみ、憎悪し――本当は心のどこかで喜んでいた。自分が被害者であるという立場を得られた事に、その原因が自分ではない事に、喜びがあったのだ。だから無駄な努力なんかしなくても良い、自分を変えなくても良い。
――末期には、自ら進んで「自分の好きなものや同じ属性を持つ者への罵倒」を見聞きしに行っていた。そうする度に感じられる――自分は優しい被害者だ!自分を肯定しない者は被害者いじめをする悪党だ!!自分こそが!正義だ!!だから只――自分に同調しない相手を悪として否定し続ければいい!!!
九郎太のメガフェンサーが光り輝くと、急速に全身にエネルギーがチャージされていく。
「人様から借りたカネ勝手に使ってんだ!礼も足して返すのが礼儀ってもんだろうが!」
「労働は点が各人に与えた使命。怠けずこなすのだ」
「やはり学校に行っていないせいで全然社会性が育っていないな。こうなれば精神科医の鑑定にかけてくれる!」
「きょ、競争をやめるだと!それこそ亡国発言!競争で悪いものを淘汰してこそよい社会が生まれるのだ!」
「許さねえ……オトコの特権を横取りしやがって……生意気な女はブッ殺して、ヤりたい放題ヤってやるぜえ!」
「き、貴様ぁ!本当にヒーラーなんかになったのかぁ!女にでもやらせとけばいいようなひ弱で卑しい事を覚えおって!本当に男かぁ!」
ジョイナスは己の道筋を思い返す。男らしさを押し付ける父に反抗し、そうでない世界――楽園を目指し世界を見続けた。
そこで出会ったのはメディウス。貧しく、いじめを受け、妬まれて何度も殺されそうになる小さな子供。
そこにあったのは、人が人に暴力を振るい、性欲の捌け口にし、笑い物にし、不幸な人間を「自己責任」とうち捨てる世界。
ジョイナスは世界に絶望――する前に見下す事を覚えた。「人に優しくできない人」というレッテルを他人に貼り、全てを下等な存在として。
――だから、間違った者からは容赦なく奪った。肯定してくれる人たちも増えて、凄く正しい事をしている気分になった。
俺たちに相対する者が全員、他人を不幸にする事に躊躇が無く、そして宿敵たるゼードイルのお陰で死んでいくのはとても気分が良かった。目の前の無惨な死体が、犯され心を壊された少女が、自分たちの正義を強固にしてくれて内心とても嬉しかった。
そうだ。そんな事をする奴も、そんな連中の世界に甘んじて生きる奴らも切り捨てて何が悪い?そんな奴から全てを巻き上げ、俺が正しいと思った人たちに分け合う。そんな正義を振るう自分たちは、とても誇らしく満たされて――。
ネビュラマンが腕をクロスし、空間が震えるほどのエネルギーを蓄える。
「優しい人間を否定するお前は――優しくなんかない!!」
九郎太とジョイナスが叫び、海上でメガフェンサーとネビュラマンが、互いに向けて同時に光線を放つ。
ぶつかり合う光は数秒間拮抗し、そしてそのエネルギーの衝突によって起こった津波は、やがて大都市をも呑み込んでいく。力を持たないセオベイドも、人間も、ただただ己の無力を嚙み締めながら最期の時を迎えた。
版権図鑑 番外編③
【魔物少女タワークエスト】
絶海の孤島に漂着した少年を主人公に、塔を攻略しながら少女型モンスターキャラを集めるソーシャルゲーム。動画サイトで流れる「スキップスワイプちょっとストップ!」のフレーズから始まるラップ調広告が良くも悪くも一時有名だった。シナリオライターである松井十日氏の書くナンセンスギャグと下ネタだらけのストーリーは人を選ぶが、ゲーム性自体はライト層にも取っ付きやすい。R18版も存在する。
美少女物コンテンツが無くなっただのアレコレ嘆いている割にこの手のハーレムソシャゲは九郎太はプレイしていないらしい。
【ファイナルクエスト】
日本の剣と魔法のRPG、その祖とも言われる作品シリーズ。海外ファンタジーを元に取っ付きやすい形にした剣と魔法の世界で、ベースは勇者が魔王を討伐する英雄譚であるがストーリーには様々なバリエーションが存在する。
九郎太の愛してやまないネット小説群はこれをベースにしたもので、本来なら苦難を乗り越え成長する王道の「勇者」を悪辣な特権階級の偽善者的に描き、それをパーティ追放や巻き込まれ召喚された主人公が偶発的に手に入れた"チート"や"自分だけのレベリング場"及び"自分だけに優しい異性"などの優位性を振り回しながら断罪し「ざまぁ」と嘲笑し貶めるような物が目立つ。
【ある学園の目安箱(ガイドボックス)】
中高生向け学園バトル系ライトノベル。異能を持った学生たちが青春を過ごしながら学園中に潜む陰謀と戦うストーリーで、何度もアニメ化されたシリーズ作品。異能を無効化する異能――「大嘘潰し(フィクションデストロイヤー)」持ちの裏主人公キャラは人気が凄まじく、その仕草を真似する中高生が後を絶たない。
また、メインターゲットたる中高生ではなくそれより上の九郎太世代によって書かれたこれの二次創作においては、未熟ながら熱い原作主人公をヘイト役として貶め、外部から現れたオリジナル主人公が作中の少女たちを侍らせるような内容が主となる傾向がある。
【次回予告】
なんでこうなっちまったんだろうね。
銀行で正義振りかざしてたのが悪かったのかねえ。
主人公様の正しさを示す為に踏み台用の愚かな敵を出して無様な有様にする手法……主人公を肯定しない奴はこれと同じだぞってやつ。
あれをやってる作品同士、最後まで気が合う未来もあったんじゃないかと思うんだけどね……。
次回 最終回「敢えて言うけど、現実見ろよ」
このイベント、どう攻略する?