星の海より、開演のチケットを   作:空ボトル

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舞台の開幕 同じ時間・別視点にて

 

「そっちはどうだ?」

 

「誰もいなかった」

 

「こっちもいなさそう!」

 

「よし、なら奥へ急ごう」

 

走り出す人影が3つ。黒髪の青年にピンクの髪の少女、そして銀髪の青年。

かつて清潔感のあった通路は面影があれど、破壊の爪痕が残されている。所々には少なくない血も流されていた。

 

「もぉ”ヘルタ”ってば広すぎ。抜け道ぐらい用意しておいてほしいよ。あ、そう言えば前にあんた壁を壊したって言ってたよね?緊急事態だし一直線に行った方が速いんじゃない?」

 

「やらないよ!?請求された修理費がそれはもう高いのなんの。アスターいなかったら今ごろ列車から…」

 

「無駄話はそこまでにしろ、反応が確かならこの先に…!」

 

「丹恒!」

 

死角から現れたのは壊滅の手先にして異形の怪物、反物質レギオンのヴォイドレンジャー。しかし、銀髪の青年が手に持つアタッシュケースによって、その魔の手が届くことはなかった。

 

「丹恒、なのかは先に!」

 

「でも、大丈夫なの?」

 

「安心しなって、このぐらいならなんとかなる。戦闘は2人に頼りっきりだったしな。ようやくコイツも馴染んできたところだしすぐに追いかける」

 

「…無理はするなよ、セイル」

 

「余裕で勝つさ」

 

通路を走り出す丹恒となのか。目の前の獲物を逃す気は無いようで、3つ4つの様子を見ていたヴォイドレンジャー達も追跡の構えをとっている。

 

「思えば…最初にお前らに会ったときは逃げ回ってばっかりだったな。ま、それは過去の話なんだけどねッ!」

 

ドカリ、と両者を隔てるように置かれたアタッシュケースは見た目どおりにも重い。しかし、見るべきところはその大きさ、その大きさは体格が大柄な人であってもすっぽりと入ってしまいそうなほどだ。

 

「出番だ、ピオニエ」

 

ばちんと音をたてて箱の中から現れたのは1人の偉丈夫。使い古されているようだがよく手入れされ、実用性を意識された皮の鎧。腰には剣を携え不敵な笑みを浮かべている。だが、その顔に生気はない。

それもそのはず、彼はセイルと共に闘う人形(マリオネット)なのだから!

 

先頭のヴォイドレンジャーが飛びかかる、がセイルがきゅるりと指を動かすと壁に弾き飛ばされた。

彼の十指からは細い糸が繋がっており、その先は人形へと伸びている。瞬く間に人形は蹴りの動作を終えていた。

 

「…関節、重心に問題なし」

 

その動きに警戒を引き上げた様子の2体が同時に左右から迫る。

 

「『アレクサンドロスの剣』!」

 

剣を引き抜いたピオニエは一撃を受け止め、もう片方を()()で受け止めた。

その衝撃は糸をつたり、セイルの指を軋ませる。

 

(やっぱり…重い…っ)

 

人を命を容易く刈り取る一撃が2つ、それが軽いはずもない。そして人形(ピオニエ)の動きを止めたのをいいことに、最後の4体目が直接セイルを刈り取りに駆け出した。

両手が塞がり、ヴォイドレンジャーも目前、凶刃は簡単にセイルの命を奪うことだろう。

だが

 

「この程度、苦難のうちにも入らないよなぁ!」

 

力強く、しかし正確にかつ迅速に糸を操るセイル。それに応えるように、ピオニエは受け流し、切りつけ蹴り飛ばす。

目前に迫った命の危機は何度もやってきた。乗り越えてきた危機を思えばこの程度はわけないものだ。

その光景を見ても最後のヴォイドレンジャーは止まらない。身体を闘争本能に任せたまま突撃してくる。

 

Le Rideau se Lève(ル・リドー・ス・レーヴ)!──開幕の時だ!」

 

掛け声に合わせて踏み込むピオニエ。身体に染み込んだその動きは無駄のない一閃となり、ヴォイドレンジャーを貫く。

 

「『ファースト・ステップ』!」

 

残されたのは壊滅の先兵だった残骸のみ。人形は防がれることなく刈り取った。

 

 

「ふぅ、初陣にしては上出来だったかな?」

 

少し遅れて通路の先から声が飛ぶ。

 

「セイルー!だいじょうぶー!?」

 

「ああ!無事だー!」

 

指先の糸を弾き、人形をケースに戻す。

 

 

 

今ここに、1人の開拓者が舞台へ登ったのだった。

 

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