呪術結社鷹の爪   作:わさびにんにく

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第十一話 蚤の市

 

 

 

 フリーマーケット会場の鷹の爪団ブースにいる吉田は見に来ているお客様を逃がすまいと売り込みをしていた。

 

「これはどんな道具なの?」

「はい。ウエットティッシュに含まれる水分を0%になるまで脱水してティッシュに変えてくれる機械です」

「何の意味があるのそれに?」

 

 

「これは何て怪人?」

 

 一人の客が学生服を着た賢そうな見た目をしていて手に通帳を持った受肉体を指さす。

 

「はい『怪人金第一少年』です」

「ユキチの・・・名にかけて!!」

「誰だよ。ユキチって?」

 

 

「これは?」

 

 40代くらいのくたびれたサラリーマンの見た目をしており、首には何故か青いホースを巻いている。

 

「『怪人101回目のフローホース』です」

「吸水や負圧には・・・・向きましぇん!!」

 

 

 

「・・・。行こうか」

「行こう、行こう」

「お客さーん。『怪人ハイブリッド男』何ていかがですかー!」

 

 良く分からない珍妙な品をばかりを見せられたお客さん達は皆、愛想をつかして去って行く。吉田の呼びかけに振り向く者は誰もいない。

 

「吉田くん、これ駄目じゃよ。わし等の作った物なんて誰も欲しがらないよ。それにどんどん避けられている気もするし」

「おかしいですねえ。事前のIR情報とPTSでは完璧にトリクルダウン理論の流れだったんですけど」

 

 鷹の爪団はクリスマスパーティー代と世界征服資金を稼ぐために商店街の広場で行われるフリーマーケットに参加することにした。参加代としてなけなしの2000円を支払っており、このフリーマーケットで何も売れなければ最早鷹の爪団は春まで蓑虫の様に冬眠するしかないと総統は考えている。

 

 

 

 

「もしもし、ちょっと見せて貰って良いかい?」

「あっどうぞ」

 

 総統が深くため息をついているとそこへ夏油が客として声をかける。総統は夏油の袈裟と言う怪しい格好に少し面食らったが他に見ている人も居ないので了承する。

 

 夏油はハイブリッド男の顔をのぞき込み自らの観察眼を光らせる。そしてこのとき夏油の中にあった僅かな希望は確証へと変わった。

 今まで呪術と触れてきた経験が目の前に居るものが人工的に作られた皮を被った呪霊であると言っている。呪霊だけじゃなく人工的な肉体まで作り出すとは予想以上に鷹の爪団の技術力高いのだと夏油は感心した。

 

「うむ実に興味深い・・・・」

 

 目の前にいる受肉体達はハッキリ言って術式は持っていても戦いに役に立ちそうに無いものが多い。だが役に立たない呪霊は自らの呪霊操術の『極ノ番うずまき』に転用出来る為、今の夏油にとっては充分ありがたい。

 それに数は少ないが単純な戦力となりそうな者もいる。特に中世ローマ風の衣装に身を包んだ二足歩行の虎の様な見た目の受肉体は一級以上の呪霊が取り憑いているのが呪力量から分かる。その受肉体には『ヘルシータイガー』と書かれたネームプレートが胸にかけられている。

 

「お坊さん。冷やかしなら帰って貰えませんか?」

 

 今迄、誰も何も買ってくれなかったことから吉田は見に来ている客のことをあまり信用しなくなっていた。

 

「いや冷やかしじゃないよ」

「じゃあ買うのかい?」

「ああ。ここにある呪霊達を全部買わせて貰うよ」

 

 夏油の予想外の発言に総統と吉田は思いっきり目を見開く。

 

「ぜぜぜ全部って!?」

「よよ吉田くん。どどどうしよう。まさか全部売れるなんて思っていなかったからレジ袋足りないよ!」

「ちょっハンズ、ハンズに行きましょう」

「いやここからならコーナンの方が近いぞ吉田くん」

 

 

「いや気にしなくて良いよ。袋なんか無くても。全部でいくらだね?」

「まあ、そう仰るのであれば。えーと100万くらいかな?」

「そんな高いんですか?せめて1000万でしょ」

「上がっとるじゃないか」

「じゃあもう一万円で良いです」

「安すぎるじゃろ!」

 

「分かった。では間を取って50万でどうですか?」

 

 目の前で漫才の様なやり取りを繰り広げる総統と吉田にしびれを切らし夏油は自ら金額を提示する。

 

「ごごごごゴジュウマンって!!!」

「50万ってもしかして五十万イランリアルですか?!!」

「ご冗談を。ちゃんと50万円だ」

 

 夏油は懐から信者から徴収したお布施を取り出す。どのみち非呪術師を皆殺しにしたら日本における円の価値などあって無い様な物になることは目に見えて分かる。夏油にとってこの出費など些末な問題であった。

 

「うわあああ日本銀行券だあああ!!!」

 

 目の前に出された壱万円札の束に吉田は叫び声を出し、総統は顎が外れそうな位に大口を開ける。そして大喜びで現在出品中の受肉体達を差し出した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「では鷹の爪団の皆さん。ごきげんよう。次に会うとしたら新しい世界で・・・」

 

 夏油はそう言って購入した受肉体を引き連れフリーマーケット会場を去って行く。最後に意味深な言葉をかけられたが目の前のお金のことで頭の中がいっぱいな総統と吉田は全く気にした様子はない。

 

「いやあ。太っ腹な人もいたもんじゃな」

「やりましたね総統。やっぱり仏教徒ってのは懐が広いんですかね?」

「これだけあればクリスマスパーティーどころか鷹の爪団年越しパーティーだって今年は開催出来るぞ」

「年越しパーティーですか。僕前々から年越し蕎麦に海老天トッピングしたかったんですよ」

「良いね。良いね。海老天どころかかき揚げ、コロッケ、温玉のスペシャル盛りだって出来るぞ」

「マジスか!マジスか!年越し蕎麦スペシャル盛りですか!!!」

 

 暢気に今後の予定を話し合う二人は間抜け面をぶら下げて妄想にふけっている。そこへレオナルド博士が一つの疑問をこぼす。

 

「にしてもさっきの袈裟男。少し怪しくなかったか?」

「ん?博士どう言うことじゃね?」

「あの男。俺等は怪人という名目で売っていたに関わらず呪霊と呼んでいたぞ」

 

「確かに・・・・。もしかしてあの男、呪術師なんですかね?」

「もしくは俺たちと同じ呪詛師かもな・・・」

 

 レオナルド博士の言葉で鷹の爪団に張り詰めた緊張感が漂う。しかし能天気で物事を深く考えない二人は直ぐにいつもの調子に戻る。

 

「まあ九十九特級術師もわし等は呪術界で意外と有名人と言っていたし、知ってる人は知ってるんじゃろう」

「僕らが作った呪霊で悪事が出来るんなら、僕らの世界征服がこんなに停滞するわけ無いですし」

 

「「アッハッハッハ」」

 

 緊張感が抜け落ち間抜け面で爆笑する二人の声がフリーマーケット会場に響くのだった。

 

 

 




一級呪霊ヘルシータイガー

 皆さんご存知鷹の爪団最強の呪霊。その強さはデラックスファイターを鷹の爪団が見ていられ無いほど徹底的にボコボコにしてしまう程。故に鷹の爪団のメンタルが耐えられ無い為、基本禁止カード。
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