呪術結社鷹の爪   作:わさびにんにく

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第十二話 12月24日 −前編−

 

 

 

 鷹の爪団の秘密基地は現在今までに類を見ないほどに華やかなものになっていた。壁には紙輪飾りが張られ、部屋の中央にはモミの木が鎮座している。

 そして最も目を惹くのはテーブルに用意された食事達だった。クリスマスの定番のローストチキンやピザだけでなく、餃子やカレーライス、寿司に鰻なども並ぶ。統一感はないが見るだけで唾液腺を刺激する豪華な料理である。

 

「見て下さい総統。何て文化的な食事なんでしょう」

「ああ。こんなにも豪華なの食べたら罰が当たってしまいそうで逆に怖くなってくるよ」

「総統、ポタージュスープだけで良いのでちょっと食べちゃ駄目ですかね?」

 

 目の前のごちそうに我慢できず吉田は総統に聞く。

 

「駄目じゃよ吉田くん。パーティーは8時から開始なんじゃから」

 

 和やかな雰囲気を醸し出す鷹の爪団。平和という言葉が似合いすぎて彼らの顔の周りに花のイメージが具現化して見える。

 しかしそこに鷹の爪団の平和を引き裂く、彼らにとっては嬉しくない来訪者が現れた。

 

 

「おいっ鷹の爪団!!!」

「うわあっデラックスファイター!」

 

 鷹の爪団の天敵。別称「水色馬鹿」「金髪豚野郎」「変な格好をしたクレーマー」の登場である。

 

「お前何で俺等が豪勢な食事にありつけるときに限って来るんだよ!」

「飯?そんなことどうだって良いんだよ。こっちは今一大事なんだよ」

「俺達にとってはこの食事が一大事なんだよ!」

 

 デラックスファイターの焦ったような口調の中にイライラとした怒気が感じられる。そして回りを見回し鷹の爪団の秘密基地の様子をうかがう。

 

「何だ。お前等。こんな時に随分と楽しそうだな?」

「今日は団員同士の団結を図る年の一度のクリスマスパーティーなんじゃ。買い物も済ましたし、わし等は今日はもう家でずっと大人しくしとるぞ」

「クリスマスパーティーって・・・。悪の呪術結社にそんなことしてて良いのか?」

「うちはベンチャーじゃからな。息抜きも必要なんじゃ。いったい何じゃと言うんじゃ・・・?」

「つうかこんな時って何だよ?」

 

 一大事と言う発言。いきなりデラックスボンバーを発射する様子のないデラックスファイターに対し総統は困惑する。

 これらからデラックスファイターはいつもの嫌がらせや暇つぶしと違い今日は仕事で来ていることが見て取れる。デラックスファイターはため息をつくと総統の疑問の答えとなる今の呪術界で起きている問題について説明し始めた。

 

「何だお前等知らないのか?今日12月24日の日没と共に特級呪詛師の夏油傑率いる集団が百鬼夜行を行うんだよ」

「百鬼夜行?何じゃねそれは?」

「ほらあれですよ。冷たいお豆腐の日本料理」

「それは冷奴じゃよ」

 

「百鬼夜行ってのは夏油傑が呪霊操術を使って新宿と京都に二千体の呪霊を解き放つっつう計画だ。所謂呪術界への大規模なテロ行為だよ。一般の呪詛師はこの機に乗じて悪事を働く奴も多くてこっちは大忙し何だよ」

 

 媚びと陰湿なやり口と首鼠両端の姿勢でギャランティの為に一級の称号を手に入れたデラックスファイター。故に純粋な実力で一級になったわけではない。

 

 デラックスファイターにとってこんな面倒くさくて命の危険がある仕事はお断りなのだが呪術総監部から直接の指令は流石に無視することが出来ない。

 

「世の中の呪詛師ってのは皆お前達みたいにパーティーとかお祭りが大好きってわけじゃ無いんだよ」

「そんな呪詛師いるのかよ」

 

 吉田はデラックスファイターの発言に驚きを隠せない。

 

「それでわし等に用とはいったい何なんじゃ?」

「バッカ。だからお前等が俺の手伝いをしろって言ってんだよ」

「何でだよ!」

「何でって・・・俺が困ってるからだよ!」

「イヤイヤイヤ。何で困ってる呪術師を悪の呪術結社が手伝わなきゃいけないって言ってるんじゃよ」

 

 デラックスファイターの発言に鷹の爪団は至極真っ当な意見として頼みを断る。しかしとんでもない暴君のデラックスファイターにこの正論は納得してくれなかった。

 

「デラッ・・・」

 

「分かった分かった。協力してやるから吹き飛ばさんでくれ!」

 

 流れる様にデラックスボンバーを鷹の爪団に向けて発射しようとするデラックスファイター。それにいとも簡単に鷹の爪団は屈してしまう。

 

「良いんですか総統?僕たちこのパーティーの為に今日は朝から準備をしてたんですよ」

「今このまま部屋と料理を吹き飛ばされてブルーなクリスマスを迎えるよりはマシじゃ。何としてもパーティー開始までにこの騒動を終わらせるぞ」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

「これは何と屈辱的な格好じゃ」

 

 現在、鷹の爪団の五人はデラックスファイターと同じデザインのコスチュームとヘルメットを身につけていた。本来、呪詛師である鷹の爪団が呪術師の手伝いをしてることがばれたらとても面倒くさい事になるのは明らかだ。そのためデラックスファイターから部下として偽る様にとこの格好をさせられている。だが実際は鷹の爪団が何かしらの功績を挙げた時に自分のものにするのがデラックスファイターの目的だ。

 

 

 デラックスファイターと鷹の爪団はデラックスファイターの所有する車に乗りパトロールの形で都内を走っていた。

 

「それでデラックスファイター。わし等はその夏油傑とか言う奴を捕まえればいいのか?」

 

 車を運転させられている総統は後部座席でふんぞり返っているデラックスファイターに質問をする。デラックスファイターは鼻で笑うと顎を突き出しバックミラーに映る総統の顔を見た。

 

「はあ?何でそんな一番危険な仕事を俺がしなきゃいけないんだ。俺等は主犯に便乗して暴れてる迷惑呪詛師の対応してればいいんだよ。夏油が捕まるまでの治安を守れたら俺等の勝ちだ」

 

 デラックスファイターのやる気の無い発言に総統はなんとも言えない顔を浮かべていると車に備え付けられた無線に連絡が入る。

 

 

 

ジジッ______

 

 

『現在中央銀行で呪詛師による強盗事件が発生。犯人の5人のうち主犯の男は殺傷能力の高い術式持ちであることを確認。また全員が一級から特級呪具も所持。既に3人の呪術師が負傷。至急急行せよ』

 

「はいこちらデラックスファイター。直ちに急行致します」

 

「おいお前ふざけてんのか?勝手に行くって言ったんだよ!!」

 

 総統が向かうことを無線で告げるとデラックスファイターは半ばキレながら総統に文句を言う。

 

「いやだって迷惑呪詛師を捕まえるのがお前の仕事だと言ったじゃないか」

「分かってんのか?もう三人もやられてる危険な現場だぞ。そんなの後回しにしろよ」

「お前。わし等に頼るくらい大変だと言ってたのに仕事を選ぶのか?!」

「じゃあお前、ダンプカー一杯分のうんこ片付けろって言われて「はいはい」喜んで出来んのか?」

「そんなの無理に決まってるじゃろ!」

「いいか術式持ちの呪詛師ってのはそれ以上に危険何だよ。ちょっとは考えろよ。バーカ、バーーカ、バーーーカ」

「くそう、本当に腹が立つ。手伝わせといて何て言いぐさじゃ」

「地獄に落ちますね」

 

 

 総統はデラックスファイターの心ない悪態に怒りがわき上がりハンドルを握る手に力がこもる。

 

 

 

 

************

 

 

 

 

 現在強盗事件の起きた銀行を前に日下部はどうしたらいいかと思考を巡らせている。現在、強盗を起こした呪詛師達は銀行内に立てこもっている。

 

(ああクソ。まさかこんなことになるとは予想外だ・・・)

 

 危険な仕事を何よりも嫌う日下部は新宿で夏油一派や放たれた呪霊と戦うことを避けるため都心での警備を自ら志願した。その方が命の危険が低いと判断したからだ。しかし蓋を開けてみたら一級相当の呪詛師集団と映画さながらの激戦が行われている。

 日下部は非術師を避難させると言う名目でのらりくらりと戦うことを先ほどまで避けていた。その間に全てが終わっていることを期待していたが願いは叶わず。

 いよいよ自ら戦場に立たなければいけないかといやいやながら覚悟を決めようとしたとき一台の車が到着した。どうやら応援が来た様で自分がわざわざ戦わなくてすむことを期待し日下部は心の中で安堵した。

 

 

「うわあ何じゃねこれは?!もはや戦場じゃないかね」

「まるで島根みたいです」

「ほら見ろ。碌な現場じゃねえ」

 

 しかし日下部は車から降りて来た人間を見て一瞬で顔が曇り、期待は泡のようにはじけ飛んだ。そして心の中で叫んだ。

 

 

(デラックスファイターかよ!!!!)

 

 

 自身と同じ一級術師のデラックスファイター。仕事に対するモチベーションは似ていると考えていたことも日下部はあった。だがこの男と何回か仕事をして絶対に一緒にされたくないという感想を持つ様になった。

 日下部は危険な仕事に対してなるべく避けるスタンスで臨むが呪術師としてどれだけ強い相手でも人を守らなければならない時は逃げたりはしない。一方デラックスファイターは逃げることなんて可愛い方で、ピンチの時は寝返ることだって平気でする。正直、いない方が良い時も状況によってはある。

 しかし来てしまったものは仕方がない。どの様にして前線に立たせるかを考えながら日下部はデラックスファイターに接触した。

 

 

「デラックスファイター。お前が来るなんて珍しいな」

「何だ、日下部お前も来てたのか。一級のお前がいるならさっさと解決してくれよ」

「そんな簡単にいく相手じゃないんだよ。ん?後ろにいるのは何だ?」

 

 日下部はデラックスファイターの背後にいた鷹の爪団の存在に気付く。

 

「あ~。こいつ等は俺の部下みたいなもんだ。今日は手伝いの為に連れて来た」

「あっどうもはじめまして」

 

 総統は日下部に対し軽く頭を軽く下げるが日下部はデラックスファイターの発言に衝撃を受ける。呪術師は皆イカレてると言うが、人間らしい醜い方向でイカレてるのはデラックスファイターの右に出るものはいない。そんな人間の下で呪術師をやるなどこの五人の精神がとても心配になる。そこへ現場の担当をする補助監督がこちらへ駆け寄って来た。

 

「デラックスファイターさん来てくれたんですね」

 

 補助監督の男性は肩で息をし、焦った顔のまま現状の説明を始めた。

 

「奴等はただの呪詛師じゃありません。100年以上の歴史があったと言われる北海道の呪術名家綾野家をたった三日間で皆殺しにし、それでも飽き足らず先祖の墓まで荒らし、それでも飽き足らず鍵穴に接着剤を流し込み、それでも飽き足らず庭石を全部掘り起こした冷酷無比の殺人集団です」

「うぅーそんな危険なのか」

 

「総統。大変です!!」

「何じゃねこれ以上大変なことがあるのかね?」

 

 総統が現状の恐ろしさにガクガクと震えていると吉田が焦った様子で報告をする。

 

「近くの女子寮でシャワールームの鍵が壊れ数十人が全裸で閉じ込められてるみたいです」

「何じゃと!?」

「あ~~~。それは大変だ。ここは手分けをして俺がそっちに行く」

 

 デラックスファイターは嬉しそうな顔を浮かべながら棒読みで宣言した。

 

「お前ふざけるなよ!!わし等はお前に付き合わされてここに来たんじゃぞ」

「うるせえな。世界征服を目指してんだから、銀行強盗する呪詛師なんてどうってことないだろ」

「お前こういう時だけは筋の通ったことを言うよな」

 

 総統は無理やり連れてこられたにも関わらず自分たちに全てを押し付けようとするデラックスファイターに怒り出す。しかしデラックスファイターのカウンターパンチに気が弱い総統はぐうの音も出なくなってしまう。

 

「じゃあな~~。イヤッホーーー!」

 

 デラックスファイターはスキップをしながら意気揚々と足早に去って行った。

 

「・・・・おいお前らの大将行っちまったぞ」

 

 抗議をしながらもデラックスファイターに置いてかれた鷹の爪団に日下部は一言そうつぶやくことしか出来なかった。残されたのは駄目さ加減が顔からにじみ出てるおっさんや未就学児に近い年齢の子供達。とても頼りになるとは思えないと言うのが日下部の感想であった。

 

(ああクソ、やっぱり俺が戦うしかないのか・・・?)

 

 日下部は深く息を吸い込むと自ら腰に添えられた刀を握る。もうこれから先応援が来ることも期待出来ない。自分があの危険な強盗団を相手取るしかないと覚悟を決めるがそこへ総統が声をかける

 

「日下部さんとやら、どうやらわし等がこの事件を対応するしかないようじゃ」

「!・・あんた等出来るのか?」

 

「出来るか出来ないかではなく、わし等はあいつ等を止めなければならない。こんな暴力で人を屈服させようとする人間に平和なクリスマスを台無しにされるなどあってはいけない。奴らに自分たちのやっていることの愚かさを思い知らさなくてならん」

 

 イカれた人間ばかりの呪術界でその正義に燃えた発言に日下部はあっけにとられてしまう。だが協力してくれるのは正直言ってありがたい。

 

「分かった。んでお前ら何か策はあるのか?」

「任せてください。僕に考えがあります」

 

 

 日下部の質問に対し吉田が意気揚々と手を挙げた。

 

 





 鷹の爪団は今後も羂索、呪霊サークルとかと絡ませたいと考えてるのでスムーズに話を進める為に夏油の見た目を知らないまま百鬼夜行は終わります。
 高専との絡みはまだ先になりますので期待していた方々、申し訳ありません。
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