呪術結社鷹の爪 作:わさびにんにく
ズガガガガガガガッ
「フハハハハハ、死ねぇ、死ねぇ!」
「サブ外の様子はどうだ?」
「兄貴、見てくだせえ。外の術師共はもう手も足出ずに震えています。これならわざわざ百鬼夜行が本格的に始まらなくても逃げられそうですぜ」
銀行の中では呪詛師の一人が外に向かってマシンガンの様な呪具を使い外へと弾を乱射していた。強盗団のリーダーは落ち着いた様子でその男に現状を聞く。男たちの計画では百鬼夜行が本格的に始まり東京の状況が悪化したら銀行から逃げ出す作戦だ。
故に今は時間を稼げればそれでいい。順調に計画が進んでいることが分かり術式持ちのリーダーは笑みを零す。
「兄貴!」
「どうしたヤス?」
「銀行の入り口で可笑しな奴らを捕まえました」
「可笑しな奴ら?」
強盗団の一人がそう言って連れて来たのは変装をした総統と吉田であった。とは言えその変装は雑としか言えないもの。総統はただのネルシャツ、ジーンズとまともなのだが吉田はロングヘアの鬘を被りワンピースと女装をしている。
「吉田くん。本当にこんなのが上手くいくのかね?」
「大丈夫ですよ、総統。鷹の爪団の戦闘主任を信用してください。それに草冠も親玉だけなら一人で相手取れるって言ってたじゃないですか」
「日下部さんじゃよ」
日下部の実力であれば術式持ちのリーダーを抑えることだけは可能だ。それに上手く隙をつければ一撃で仕留めることも出来るだろう。しかし呪詛師全員を一人で制圧するのは流石に厳しい。そこで鷹の爪団は呪具を敵から奪取、もしくはリーダーと他の仲間を分断することになっている。
因みに総統と吉田が囮役に抜擢されたのは他と比べて呪力量が圧倒的に少ない二人であれば強盗団に一般人と間違えられ油断されると考えたからだ。マシンガンを構えた呪詛師が総統と吉田を問い詰める。
「おい何者だお前ら?」
「あら?何かしらこのたっぷり一週間はお風呂に入っていなそうなクサクサボーイは?」
「えっ?サブお前そうなのか?」
「んなわけねえだろ!てめえ失礼なこと言いやがって。誰だって聞いてんだよ!」
「私?私はゾフィー。こっちは主人のジャンクロード。お金を下ろしたいんだけど今日は何か立て込んでいるのかしら?」
「お前ふざけているのか?どう考えても銀行がまともに営業している状況じゃないだろ」
そう言って呪詛師が吉田の頭を掴み上げる。すると被っていた鬘は簡単に外れてしまい吉田の短髪が露になった。
「「あぁ!!」」
総統と吉田は変装がバレたことに叫び声を上げるが呪詛師のリーダーは一切驚きを示さない。それもそのはず吉田の変装は雑過ぎて誰もが一目見たら怪しいと判断するからだ。リーダーは低い声で吉田に問いかける。
「貴様ら何しに来た?殺されに来たのか?」
「吉田くん。早速バレてしまったぞ」
「しまった。総統、作戦失敗です」
「そんなこと言われなくても分かっておるわい!」
「こんなふざけた作戦で騙せるほど俺たちが馬鹿だと思ったのか?」
「フンッ馬鹿だと思っていたらどうするんだ?」
「吉田くん!刺激する様なことを言うんじゃない」
正体がバレてしまっても吉田は余裕な態度を崩さない。そのことに総統はビビりながら咎める。
「安心してください。実は裏口からフィリップと博士が侵入しているんです」
吉田が余裕を見せる理由を説明した直後、呪詛師の一人が何かを抱えてその場に現れた。
「兄貴裏口にも可笑しな奴らを見つけました」
そしてその抱えていた物を乱暴に地面に転がしたのだ。
「NO」
「イシクラ」
それは縄で縛り上げられたフィリップとレオナルド博士であった。
「お許しください。あのおじさんがどうしてもやれって言ったんです」
「よよよ吉田くん。まさか裏切るのか!?」
吉田はあっさりと掌を返し総統に全責任を押し付けた。
「お前ら馬鹿なのか?正面に見張りがいてどうして裏には誰もいないと思ったんだ?」
リーダーの男は呆れた口調でそう言い冷酷な目で四人を見つめる。
**********
外で待機している日下部は鷹の爪団からの連絡を待っている。日下部としては侵入した四人が全てを解決してくれるのが一番なのだが、話してみてあまり優秀な人材には見えなかったのでそんなことは期待していない。
そして鷹の爪団が銀行に侵入してから20分経ち、ついに状況が進展した。もちろん悪い方向で・・・
「うわ。あいつ等失敗したのかよ!」
鷹の爪団の4人は強盗団に縄で縛り上げられた状態で外に出て来た。そして呪詛師のリーダーはメガホンを口に当てると日下部達、呪術師に向かって宣言を行う。
『呪術師共これは見せしめだ。今からこいつ等を俺の術式で処刑する。俺たちを舐めるとどうなるのかをその目に刻み込むといい』
鷹の爪団の4人は泣きながら日下部を含む呪術師たちに助けをこいている。そんな姿を見て日下部は頭を押さえうなだれる。どう見ても呪具は一つも無力化出来ていない上に彼らは人質が成り下がった。20分前より明らかに状況が悪化している。
『俺の術式は触ったものを裏返すことが出来る。つまり人を触れば内臓が露出し皮は遮蔽する。まず生きてはいられないだろうな』
「ううお慈悲を、お慈悲を下さい~」
強盗団のリーダーが術式の開示をし、捕らえられた四人は顔を青くして震えている。そこへようやくシャワー室の鍵が壊れた女子寮に向かったデラックスファイターが戻って来た。
「ちくしょう何が女子寮だ。女性専用老人ホームじゃねえか」
「デラックスファイターようやく戻ったか。今大変なことになってるぞ」
女子寮のシャワールームと言うのがどうやら期待していた物と違ったようで、戻って来たデラックスファイターはイライラした様子。そして鷹の爪団が強盗団と共に銀行の外に出ているのに気付く。
「何だ?呪詛師共、全員外に出ているじゃないか。それじゃあデラッ・・・」
「ちょっと待て。分かってるのかお前の部下が捕まっているんだよ?」
高威力且つ遠距離で相手を攻撃することに優れている術式のデラックスファイターにとっては目に見える場所に敵が固まっているのは格好の的である。高齢女性たちにもみくちゃにされて気が立っているデラックスファイターは碌に考えずに相手を攻撃しようとする。
「大丈夫だよ。あいつ等慣れっこだから」
「慣れっこだからって・・・」
「ああ言うのを必要な犠牲と言うんだよ。何かあったら全部夏油がやったことにしようぜ。まあ俺のボンバーじゃ親玉は倒せなさそうだから撃ったら後は頼むわ」
「お前本当に最低だな」
日下部はナチュラルに繰り替えされるクズすぎる発言にドン引きする。
「そんじゃデラッ・・・」
デラックスボンバーを発射しようとするデラックスファイターだったがその手は止まる。デラックスファイターは日下部と一緒に外で待機をしている菩薩峠と目が合ったのだ。
菩薩峠は憎悪を感じられる物凄い顔でデラックスファイターを睨みつけていた。体からは目に見えて膨大な呪力を湧き出している。このまま捕まっている4人を吹き飛ばしたら菩薩峠の逆鱗に触れることになるのは馬鹿のデラックスファイターでも理解出来る。
「うん。そうだな。何か別の方法を考えよう。うん」
「おいデラックスファイター。この子供は何なんだ・・・?」
途端にデラックスファイターを大人しくするほどの菩薩峠の呪力に日下部は困惑する。こんな三人がてんやわんやしている状況でも鷹の爪団の四人の処刑のタイムリミットは着実に近づいていた。
「よし、まずはその加齢臭漂う貧相な変態おやじから処刑するか」
「うう・・死の前だと言うのに酷い言われようじゃわい」
リーダーは静かに身に着けていた右手の黒い手袋を外す。そして流れる様に掌を総統へと向けた。親玉の掌からは禍々しい呪力が湧き出し、ゆっくりと総統の顔に向かっていく。
「うわあぁ!!キリングミーソフトリー!キリングミーソフトリー!」
「安心しろ。痛みも感じさせずに一瞬で終わらせてやる」
総統は迫りくる右手に対し自暴自棄の弱音を叫び続ける。リーダーはその反応が好ましい物だったのか不適な笑みを浮かべ静かに告げた。舎弟である呪詛師達は今からこる惨劇を創造して楽しそうに笑い合う。
その時、空から何かが降って来た。その何かは偶然にも呪詛師のリーダーが総統に触れる直前に彼の右腕に絡みついたのだ。
「ぐあ!」
「兄貴!どうしたんすか?」
「呪力が上手く扱えねえ!!」
「何?!」
落下してきたそれには目に見えて強大な呪力を帯びているのが分かる。呪詛師のリーダーは呪力を乱されてしまい術式が扱えなくなっていた。
それは良い子の為にサンタクロースが届けに来たプレゼント・・・・・・
等ではない。
実はこの時銀行の上空では二人の術師により激しい戦いが繰り広げられていた。
一人は現代最強の呪術師五条悟もう一人は夏油一派に与する異国の術師ミゲル。ミゲルが所持する特級呪具『黒縄』。それが激しい戦いの中で欠損し一部が奇跡的に呪詛師のリーダーの上に落ちてきたのだ。
「チャンスじゃ!逃げるぞ吉田くん!」
「了解しました」
強盗団が混乱しているのに乗じ鷹の爪団は逃げ出す。人質である鷹の爪団が呪詛師達から離れたことを確認しデラックスファイターは叫ぶ。
「今だ!日下部、親玉を抑えろ!」
「チッ。分かったよ」
日下部は身体をかがめると刀を構え一気に踏み込む。そして一瞬の隙を突いてリーダーの右手を切り落とした。
「!」
「ぐわっ!」
「兄貴!!」
「よし!デラックスーボンバーーーー!!!」
デラックスファイターはまだ状況を完全に飲み込めていない強盗団にデラックスボンバーを放つ。
ドーーーーーーーン
************
強盗団を捕まえてから数分後、百鬼夜行が制圧完了したと言う報告が呪術師全員に通達された。これにより鷹の爪団はようやく秘密基地に戻って来ることが出来た。
「いやあ、今日は想像以上に大変じゃったわい」
「フンッ呪術師ってのは毎日こんな感じだ。どれだけ取り締まっても悪い奴はウジャウジャ湧いてくる」
「こんなサンタクロースも慌てるクリスマスはもうゴメンですね」
「そうだ、鷹の爪団こいつを渡しておく」
「ん?なんじゃ?」
デラックスファイターは総統に茶封筒を差し出した。総統はよく分からなかったがそれを受け取ると中身を確認する。
「お前。これは現金じゃないか」
「騒動鎮圧のお礼だ。流石に今回ばかりは俺も助けられたからな。ケーキでも買ってくれ」
そう言うとデラックスファイターは秘密基地を去ろうとする。その背中は普段のデラックスファイターからは想像出来ない、ヒーロー然とした姿をしていた。
「何かアイツってどうしようも無い奴だと思ってましたけど、以外に義理とかが無いわけじゃ無いんですね?」
「そうじゃな。上層部に言いなりの腐りかけ呪術師とは言え奴なりの呪術師としての軸があったようじゃな」
大変な騒動に付き合わせて来たデラックスファイターだったが、最後に見せた男気に鷹の爪団は少しデラックスファイターに対する評価を改める。
そして去りゆくデラックスファイターに総統は声をかけた。
「まあデラックスファイターどうじゃね。お前も食べていくか?」
「おい良いのか?」
「折角のクリスマスじゃ。第一次世界大戦だってドイツとアメリカはクリスマスの日は停戦したんじゃぞ。今日は敵も味方もない」
「鷹の爪団・・・」
鷹の爪団とデラックスファイターの6人は席に着き豪華な食事を頂く。テレビで放送されているクリスマス特番の音楽番組を見ながら盛大にパーティーは盛り上がるのだった。
――――――――――――
パーティー開始から二時間半。盛り上がったパーティーも落ち着きを取り戻し、秘密基地内ではそろそろお開きと言う雰囲気が漂い始めていた。デラックスファイターに至っては既に横になって眠ってしまっている。
総統はマイクを持ち終わりの挨拶へと入ることにする。
「えー。皆々様今日は大変な一日ではあったが無事にクリスマスパーティーを開催出来るに至った。しかしわし等にはまだ世界征服という目標が残っておる。しかも今回のような未曾有のテロ百鬼夜行でも呪術界は対処できることが分かってしまった。わし等の悲願達成のためにも今後も精進していかなくてはいかん。それでは皆様お手を前に・・・」
「「「「た~か~の~つ~め~」」」」
総統のかけ声と共に鷹の爪団は一致団結の意味も含まれるいつもの鷹の爪のポーズを実施するのだった。
するとそこへ眠っていたはずのデラックスファイターがムクリと起き上がる。
「いやあ。お馴染みに終わるならこの作品にもっと相応しいのがあると思ってな」
デラックスファイターはニヤニヤと笑いながら話す。
「おいお前何を考え取るんじゃ?」
総統は嫌な予感がして冷や汗が顔から流れる。
「と言うわけで、デラックスゥーーーボンバーーーー!!!!」
「やっぱりアンタ最低だよぉ!!」
ドーーーーーーン
オチに困ってしまったのでデラックスファイターにお願いしました。クズですけどこういう時に便利ですね。
次回時系列が一気に進みます。