呪術結社鷹の爪   作:わさびにんにく

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第十四話 新しい秘密基地

 

 

 本日は土曜日、週に一度行われる鷹の爪団世界征服定例会議の日であった。

 

「−−と言うわけで先週はデラックスファイターに36回も吹き飛ばされてしまった。これは大変最悪のペースだと言って良い。このままでは来年の今頃には1秒間に14回吹き飛ばされる計算になる」

「最早音速の世界です」

 

 ホワイトボードの前で総統が団員達に現状を説明する。

 

「そこで皆の衆。わし等のいったい何が悪かったのかそれぞれの意見を出し合っていきたい。意見がある者は挙手!」

 

 

 総統が団員に意見を求めると早速レオナルド博士が早速手を挙げる。

 

 

「世界征服なんて目論むからだろ」

「博士それを言うとわしらはふて腐れて一日中デパ地下の試食コーナーに入り浸るから却下じゃ。他に!」

 

 するとまたしても博士が手を挙げる。

 

「お前等がボンクラだからじゃねーのか」

「博士それを言われるとわし等目的を見失い、幼児退行して一日中デパ地下のキッズスペースに入り浸るから却下じゃ」

 

 ここで吉田は何か思いついたのか自らの考えを述べる為手を挙げる。

 

「総統、思ったのですが僕らの秘密基地があまりに情報公開されすぎではないでしょうか?」

「何どう言うことじゃね?続け給え」

 

 吉田の考えに総統は興味を示す。

 

「漫画に出てくる悪の組織と言うのはどこにあるのか正義側に存在を全く掴めていなかったり、居場所がバレていたとしても強力な防御システムや後ろ盾で正義側を牽制したりしています」

 

「うむ確かにそうじゃ」

「ですから、もっと呪詛師らしい秘密基地を新しく構えるんですよ。それも呪術師達が中々手を出せない設備やシステム、もしくは後ろ盾がある」

 

 一通りの吉田の説明を聞いた総統は深くうなずき納得する。

 

「なるほど。吉田くん早速新たなわし等の居城を見つけ、悪の盤石の布陣を完成させるのじゃぁぁぁ!!!」

 

 

 総統は吉田に計画遂行のための指令を出し、吉田も自信を持ってそれを了承するのだった。

 

 

************

 

 

 

 

 

 

 総統が吉田に指令を下してから三日後。吉田は意気揚々と総統と他の団員達の前に現れた。

 

「総統、鷹の爪団の新しい秘密基地候補が見つかりました」

「おお!早かったじゃないかね」

「ええ。この三日間忙しすぎて一日三食とおやつしか食べていませんでした」

「うむ。早速見に行こうではないか」

 

 鷹の爪団は新しい秘密基地候補を見に行くため車へと乗り込んだ。

 

 車を運転すること一時間、吉田の案内で鷹の爪団は目的地に辿り着いた。

 

 

「吉田くん。これは?」

 

 

 そこにあるのは木製の柱に葦と土で出来た屋根が乗っている。所謂歴史の教科書に出てくるような縄文時代に使われていた昔の住居であった。

 

 

「はい【歴史的秘密基地】です」

「歴史的ぃ?」

「此方の井乃頭優作さんが提供してくれた本物の竪穴式住居です」

 

 吉田の紹介と共に至って普通の呪力も感じられない優しそうな雰囲気のおじさんが現れた。

 

「はい。どうぞよろしくお願いします鷹の爪団さん」

 

 井乃頭さんは礼儀正しく鷹の爪団に挨拶する。そして吉田はこの秘密基地の利点について説明を始めた。

 

 

「良いですか総統。呪術師は伝統と歴史を大事にする保守派が上層部を占めています。そこで我々のアジトが歴史ある文化財そのものであれば呪術師は気軽に手が出せないわけですよ。デラックスボンバーなど放出して柱に傷でも着いたらそれこそ非術師を巻き込んでの大問題になりかねません」

「確かにそうじゃ。如何にデラックスファイターが傍若無人とは言え権力者には従う。奴は指を咥えて見ていることしか出来んじゃろうな」

「それに呪術師の全盛期は平安時代。竪穴式住居は縄文時代から平安時代まで使われていた歴史があります。そこいらの保守派呪術師は裸足で逃げ出す歴史を持っています」

 

「うむ素晴らしいぞ、吉田くん。しかし良いのですか井乃頭さん。こんな歴史的な物をわし等に貸して下さっても?」

 

 総統はこの場所を提供してくれた井乃頭さんに質問する。

 

「はい。公にすると国宝に指定されたりしていろいろ面倒くさいですし。最近は固定資産税を払うのにも一苦労なんです。有効に使ってくれるのであればこれほどありがたいことはありません」

 

「おお!それならお言葉に甘えて早速わし等の荷物を入れて秘密基地を完成させるぞ」

 

 

 

 吉田の一通りの説明と井乃頭さんの了承を聞いた総統は竪穴式住居を気に入り、早速車に積み込んでいた秘密兵器を中に運び込もうとする。

 

 しかしそんな彼らを井乃頭さんは突然慌てた口ぶりで鷹の爪団を静止する。

 

「ちょっとちょっと貴方たち何やってるんですか?」

 

 

「何ってわし等の秘密兵器を早速設置しようかと・・・」

「困りますよ。何ですかその場違いな格好と道具は?そんなんじゃ歴史的建造物の景観が損なわれてしまうでしょう」

 

 鷹の爪団の手元にあるのは博士の作ったメカメカしい呪具と言った縄文時代に似つかわしくない物ばかり。井乃頭さんの言い分も尤もだ。

 

「しかしどれもこれも秘密基地には必要不可欠なのじゃが・・・・。どうにか許してもらえませんか」

「いやあ・・・それはちょっと・・・・」

 

 

 総統は井乃頭さんの説明に尻すぼみになりながらも何とか説得しようとする。しかし井乃頭さんは腕組みをしながら困った顔を浮かべる。

 

 

 

 

「巫山戯るな3000年の歴史を蔑ろにして良いと思っているのか痴れ者!!!」

 

 そこへ突如として沢山の文句が鷹の爪団に対し飛んできた。

 

「そうだ!ネットにさらしてやろうか!」

「そもそもここは貴様等のような地下鉄職員が踏み込んで良い場所じゃ無いんだよ!!」

 

 総統が声の方向を振り向くとそこには30人近い人達が竪穴式住居を取り囲む形で立っていた。彼らは皆ノートやカメラを持っており怒りの表情を浮かべている。

 

 

「大変です総統。厄介な考古学オタクの集団です。彼らの遺跡に対する執着心は中学生がHな本に燃やす情熱以上です!」

「何じゃと!」

 

 

 吉田の発言に総統は青ざめるが既に手遅れだった。考古学オタクの集団の目は血走り完全に冷静さを失っていた。

 

 

 

「おら野郎共!かかれーーー!!!」

 

「「「「「「「おおおおおお!!!!」」」」」」」

 

 一人の考古学オタクの命令と共に一斉に鷹の爪団に襲いかかった。

 

「ぬわっぁあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

************

 

 

 

ブロロロロロッ

 

 

 

 

「秘密基地自体後ろ盾にしては駄目じゃ。住むわし等へのヘイトが溜まってしまう。そもそも歴史などあったら秘密になりようがない」

「うっかりしてました」

 

 

 鷹の爪団は大慌てで車に乗り込んだことで何とか考古学オタクの集団から逃げることに成功した。結局竪穴式住居を秘密基地にすることは不採用となり車で次なる新秘密基地候補へと向かう。

 

 

「もっと背景に溶け込み且つ中々攻め込まれにくいアジトは無いのかね?」

「大丈夫です。次のはバッチリです」

 

 

 そして辿り着いた次なるアジト候補の前で鷹の爪団は車を降りる。しかし総統はその秘密基地候補の場所を見るなりなんとも言えない微妙な顔をする。

 

「此方のお店の女性店主が住み込みで働くなら店内スペース以外は自由に使って良いと仰ってくれたんです」

「吉田くん。これどう見ても只の中華料理店なのじゃが・・・」

 

 目の前にあるのはごく一般的な飲食店そのもの。まだ営業時間じゃないからか妙な寂しさを感じさせている。

 

「ええ【店舗兼秘密基地】です」

「店舗兼?!」

 

「最近の悪の組織は秘密基地を本部として使うのではなく表向きは別の仕事をしているところもあるんですよ。児童養護施設だったり、バーだったり。お店を経営して地域住民と深い関わりを持っていればこの地域一帯が後ろ盾になってくれます。それに接客業と言うのは世間の情勢を把握するには持って来いです」

「なるほど。副業が軌道に乗れば世界征服資金も安定して稼ぐことが出来る利点もあるわけじゃな」

「そしていざとなれば公務員でも無い呪術師何て営業妨害と言って警察に突き出せるんですよ」

 

「おお凄いぞ吉田くん!見事な考察じゃ」

「勿体ないお言葉」

 

 最初は渋っていた総統だったが吉田の説明を一通り聞いて絶賛する。そこへ店の扉が開き三角巾を被った女性が出てきた。

 

「貴方方が鷹の爪団さんですか?」

 

「どうも初めまして。鷹の爪団の総統の小泉です。しかしよろしいのですかわし等のような見ず知らずの人間にお店を貸して頂いても?」

 

 総統は女性店主に丁寧に挨拶をする。そして吉田がアジト候補を紹介する時点で抱いていた疑問を女性店主にぶつけた。女性店主はその言葉に少し伏し目になるとゆっくりと語り出す。

 

「このお店4代も続いていたんですが本当は私の父の代で閉める予定だったんですよ。でも私がこの味を残したくて我が儘言って継がせて貰ったんです」

「4代も・・・。それは中々歴史のあるお店じゃな」

「でも飲食店のワンオペ営業って思った以上に大変なんですよ・・・。皆さんが住み込みで働いて手伝ってくれるのであればとても心強いです」

 

 女性店主は鷹の爪団に向き直ると深く頭を下げた。 

 

「よろしくお願いします鷹の爪団さん。私と一緒にこの店の味を守っていって下さい」

 

 女性店主は真剣な眼差しは鷹の爪団の目をしっかりと捕らえていた。

 

「うむ・・・・・・・・・・」

 

 

************

 

 

ブロロロロロッ

 

「吉田くん・・・」

「はい、何ですか?」

 

「君はわしらが悪の組織だと言うことはあの女性店主に説明したのかね」

「いえ。お店に住ませて貰ってリフォームしても良いか聞いただけです」

 

「それじゃ駄目じゃろ!完全にわし等のこと一緒に働きたがってる従業員希望者と勘違いしておったぞ。あの店の過去を聞いてわし少し泣きそうになってしまったぞ!」

 

「ええ。とてもいい話でしたよね。でも実際働いても良かったんじゃないですか?味を引き継いで『中華料理萬福 鷹の爪店』を出店するなんてどうですか?」

「わし等の目標は世界征服なんじゃ。夢に大きい、小さいと言うつもりは無いが他人の夢に構っている暇など無いんじゃ」

 

 吉田は中華料理店で働くことに乗り気になっていたがそこへ総統はツッコミを入れる。

 

「吉田くんこれが最後の候補だと言っていたが大丈夫なのかね?」

 

 車をコインパーキングに駐車した後。鷹の爪団は吉田の先導の下、最後のアジト候補へと歩く。

 

「安心して下さい。最後にして大本命になります。やはり悪事を働く中で後ろ盾として最も大きいのは国に決まっています。そこで国が運営する団体や施設を根城にするんですよ」

「国を後ろ盾に?」

「それでいて中の内情あまり覗い知れず、世界征服のために多少の事件があっても気に止められない様な場所が一番だと考えたんです」

「うむ。確かに一理あるが・・・そんな都合の良い場所があるのかね?」

「ええ。今、僕らの目の前にあります」

 

 吉田がピタリと歩くのをやめると総統もつられて足を止める。そして吉田は目の前にある一つの施設を指さした。入り口には門があり一見すると会社や学校の様にも見える。

 

 総統は門に書かれている文字を見て目を見開いた。

 

「まさか・・・ここは・・」

「その通り【少年院秘密基地】です」

 

 

 

 




 数多くの呪術廻戦の二次創作はありますけどじゅじゅさんぽに出て来た中華料理屋が出て来るのはこの作品位だと思います(笑)。
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