呪術結社鷹の爪   作:わさびにんにく

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第十七話 母さん助けて

 

 

 

 鷹の爪団の秘密基地には朝からとある人物が訪れていた。

 

「すいません。すいません。本当にすいません」

「すいませんじゃないんだよこの甲斐性なし。いったいどれだけ家賃を滞納すれば気が済むんだよ。年末に貯まった家賃をまとめて払ってくれたときは少し見直したってのに。またこんなに滞納しやがって。うちはボランティアじゃないんだよ!!!」

 

 総統に対し怒号の説教を浴びせる独特のファッションにパーマヘアをした女性・・・と言うかババア。このババアは鷹の爪団の秘密基地の大家である。現在、大家は家賃の請求で総統を問い詰めている真っ只中。

 

「世の中の物価を昭和初期に戻してくれるんならあたしもこう口うるさく言わないよ。でも何で私がアンタらのせいで自分の生活水準を下げなければいけないんだい?ええ!!」

「すいません。すいません。本当にすいません」

 

 総統は半泣きの顔をした状態で何度も頭を下げる。

 

「すいませんを何回言われてもこっちは腹の足しにもならないんだよ。いいかい明日の朝一までに一か月分でいいから家賃を持ってくるんだよ。もし持ってこなかったら、その時はあんたらの部屋にあるもの全部差し押さえるからね!」

「そ、そんな~。そんなことになったらわし等はどうやって世界征服をすれば良いんじゃ?」

「知ったことかよ。家賃も払えない程生活が困窮してるんならさっさと世界征服何てやめちまいな」

「グスッ、うう・・・」

 

 総統は半泣きのせいで鼻からは鼻水が流れそうになる。それを抑えようとするせいで鼻からはズビズビと音が鳴っている。

 

「だいたい何が世界征服だよ。いい齢なんだからワンパク小僧みたいなこといつまでも言ってないで真っ当な職に就きな!」

「そんなお慈悲を、お慈悲を下さい~」

 

 総統の悲痛な叫びを聞いても大家は一切気にもとめずその場を去って行った。

 

 

 

************

 

 

 

 トボトボと重い足取りで総統は皆が集まっている秘密基地の居間に入る。

 

「見ろよ菩薩峠。あっちのがヒデアキって言って、向こうのがアイ、そっちのがリュウタって言うんだぜ」

「・・・・シー・・モンキー」

 

 そこでは吉田が菩薩峠に水槽の中で飼っている微生物の名前を一匹一匹紹介していた。そんな吉田だったが戻って来た総統の表情がいつもと違うことに気がつき話しかける。

 

「どうしたんですか総統?そんなくすんだ顔して」

「沈んだ顔じゃよ」

「ああそうだった。沈んだ顔して」

 

 総統は先程玄関前で起きたことについて説明する。

 

 

「大家のババアですか・・・」

「参ったなあ。いきなり明日までに家賃を用意しろと言われても、そんな充てわし等にないぞ・・・」

 

 総統が頭を抱えているのを見て吉田が一つの提案をする。

 

「こうなったら非合法な手段でお金を稼ぐしかないんじゃないですか?」

「非合法な手段?」

「考えたんですけど振り込め詐欺なんてどうですか?」

 

 吉田の唐突の発案に総統は目を見開く。人に地球に優しい世界征服を志す鷹の爪団にとっては誰かを不幸にすることは彼らの信念に反している。

 

「しかし吉田くん。お金が無いとはいえそれはあまりに人の道を外れてないかね・・・」

「何言ってるんですか総統。僕ら悪の呪術結社ですよ。目的達成の為ならどんな汚いことにも手を染める覚悟を持たないと。世界征服を達成した後にちょっとした菓子折りと色付けて返金すれば問題ありません」

 

「ううむ・・・・」

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 吉田の口車に乗せられた総統は振り込め詐欺をすることを了承した。

 

「大丈夫なのかね?バレたら刑務所行きじゃぞ」

「大丈夫です。絶対固いと言われている番号をとある伝手から入手したんです」

「その伝手というのが心配なんじゃが・・・」

「いきますよ」

 

 吉田は慣れた手つきで番号を押し電話をかける。

 

 

 

*********

 

プルルルル プルルルル

 

「・・・伊地知、電話鳴ってるよ」

「運転中は出れないので。後で確認します」

 

 つい先日補助監督としてのアイデンティティを消失してしまった伊地知であったが家入の治療によって早い段階で解呪に成功。補助監督を辞めること無く今も仕事を頑張っている。

 現在は仕事で特級術師五条悟の送迎を行っていた。

 

「ふうん」

 

 車の後部座席に座る五条はつまらなそうに相槌を打つ。ダッシュボードに置いてある伊地知の携帯電話は未だに誰かに出てもらおうと一人で鳴っている。

 そして何を考えたのか暇を持て余した五条は身を乗り出し、伊地知の携帯電話を手に取る。

 

「あっ五条さん何を?!」

「代わりに出てあげるよ・・・・もしもし?伊地知でーす」

 

『もしもし、俺、俺、俺。俺だよ、俺』

 

 電話に出た瞬間相手は鳴き声の様に「俺」と連呼する。

 

「あぁ?俺って誰。名前言ってよ」

『何言ってんだよ。俺だよ俺。息子の声を忘れたのかよ』

 

「息子? ・・・・伊地知、息子いたの?」

「?いないですよ。何言ってるんですか?」

 

「あー息子はいないけど」

 

『バッカいるんだよ。24年前の冬、北海道の十勝で源泉徴収票の記入に苦しみながらお腹を痛めて俺を生んでくれただろう母さん?』

 

「母さん!? ・・・・・伊地知2歳の時北海道で男の子出産した?」

「はいっ?!何言ってるんですか五条さん?」

 

 五条は何だか面白くなってきてあえて電話の向こうの相手に話に合わせてみることにする。

 

『どうだ。思い出したか?』

「あらそうだったわね。元気にしてた?」

『ああ東テキサス油田は今がかきいれ時だよ』

「ブフォッwwww東テキサス油田wwwそう頑張ってるのねwww」

 

「五条さん何を笑ってるんですか?」

 

『実は石油の郵送中に事故を起こしてしちゃって。今すぐ示談金で10万円支払わないといけないんだ。だからさ、悪いんだけど今すぐ振り込んで欲しいんだよ』

 

「そうなの?でもお母さんも今お金が無くてね10万円何ていきなり用意出来ないわ~」

「そこを頼むよ。今出せる金額だけでもいいからさ』

 

 その後も真面目なのか不真面目なのか良く分からないラリーが続く。伊地知はオネエ口調でしゃべる五条に対し困惑と呆れが混じった顔になる。間違いなくいたずら電話をかけて来た相手と遊んでいると判断した。

 

「じゃあお仕事頑張ってね。お母さん応援してるから」

 

 そして電話が切られたのはかかってきてから20分も経過してからだった。五条は電話を切ると一呼吸置く。そして次の瞬間大笑いするのだった。

 

「ウッヒャッヒャ・・・ああ面白かった。じゃあ伊地知あとで腐葉土を今から言う口座に振り込んでおいてよ」

「何でそんなことになったんですか?!」

 

 

*********

 

 

 

 

  ガチャリッ

 

 

「うむ、現金は手に入れられなかったかね・・・」

「ええ思ったより難しいですね。でも腐葉土が手に入っただけありがたいと思うとしましょう。最初から上手くいくことなんてないですし諦めずに続けましょう」

 

 流石は何度も世界征服が失敗している悪の呪術結社。一度の失敗でへこたれる様な柔なメンタルはしていない。

 吉田は気持ちを切り替えて次の電話番号を押す。

 

 

 

  プルルルル プルルルル ガチャリ

 

 

 

『はい吉野です』

 

 受話器の向こうから女性の声がする。

 

「俺、俺、俺、俺だよ母さん」

『あら、もしかして順平?』

「そうだよ、順平だよ」

 

「おおっ信じたぞ」

 

 吉田の出任せに上手いこと相手が引っかかったことが分かり総統は喜びの声上げる。

 

「実は信用取引で鯉の餌に手を出したんだけど急に暴落しちゃって。今日中に追賞金10万円振り込まないと桐ダンスの把手を全部差し押さえられるんだ」

 

『まあ、それじゃあタンスを二度と開けられないじゃない』

「そう何だよ。悪いけど振り込んでよ」

 

『ごめんなさいねぇ、今どうしても手が離せないのよ。悪いけど家まで取りに来てくれないかしら?』

「分かったよ母さん」

 

 吉田は電話を切ると総統は団員達に呼びかける。

 

「うむ直ぐに吉野さんのお宅に向かうぞ」

 

 鷹の爪団の五人は意気揚々と秘密基地を飛び出した。電話機の向こうで話していた存在が人間では無いことに気づかずに________。

 

 

 

 

 

 

 




 大家さん初登場。

 いつか高専メンバーが全員リバースする展開を書きたい。アレは恐らく無下限でも防げない。
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