呪術結社鷹の爪   作:わさびにんにく

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第十八話 尊い命

 

「鷹の爪団?その二人はそう言ったんだね?」

 

 五条は虎杖が死亡、補助監督達を無力化したあの日、何があったのかを伏黒から話を聞いていた。

 

「ええ自らそう名乗っていましたよ。世界征服を目論んでるだとか、善良な悪の呪術結社だとか何とか言ってましたけど・・・」

「ふうん。因みにどんな奴等だった?」

 

 五条に質問された瞬間、伏黒はなんとも言えない微妙な顔をする。正直言ってあんな異質なバグみたいな呪詛師は風邪の時に見る夢にも出て来ない。

 

「ええ、まあ言葉を選ばずに言いますと駄目さ加減が顔から滲み出ている情けない馬鹿丸出しの二人でした」

「うわあ。本当にいたんだそいつら・・・」

「本当にいたって・・・五条先生はその呪詛師集団のことは知ってるんですか?」

 

 実は五条も鷹の爪団については噂だけだが知ってはいる。とは言えあまりに荒唐無稽な話だったのでほとんどデマや都市伝説的なものであると考えていた。

 

 

「まあ知っているとは言っても噂程度かな。本気を出せば一日で国家転覆が出来る人材が揃っているにも関わらず、指導者が底抜けの大馬鹿のせいで耐久力が紙コップ以下、殺傷力がペットボトルキャップ程度に収まってるポンコツ呪詛師集団と聞いたよ」

 

「確かにポンコツなのは一目瞭然でした。でもそんな呪術界で公に認知されてるなら直ぐに壊滅させれば良いじゃないですか?何で野放しにてるんですか?」

 

 鷹の爪団がポンコツだと言うことは伏黒自身実際会ってみて間違っていないことを肌で感じた。しかしいかに脅威になり得ない存在でも呪詛師の様な危険思想はどう伝染していくか分からない。早急に対処すべきだと考えるのは普通のことだ。その疑問に対し五条は身体を伸ばしながら答える。

 

「よくは知らないんだけど確か上層部は鷹の爪団を処刑や捕まえることを避けてるって話。確かとある一級呪術師に活動を邪魔させるだけに留まってるんだっけかな?」

「何故そんなことを?」

 

「保守派の人間が危険なはずの呪詛師を捕まえない。つまり捕まえた方が呪術界に不利益が生じると考えてるって可能性もあるけど。実際はしょぼ過ぎて相手にしてないって言うのが通説。まあいろんな説が蔓延っているせいでどれが本当かよく分からない集団だね」

 

「・・・」

 

 五条はあっけらかんとした口調で話を締めくくった。その様子を見て伏黒は本当に鷹の爪団に優秀な人材がい揃っていたとしても最強の名を欲しいままにしている五条にとっては取るに足らない存在なのだろうと思った。

 

 しかし実際は五条の胸中では異質な呪詛師鷹の爪団に関心が向いていた。

 

(恵と伊地知の証言を考慮するともしかして本当に噂通り豚に真珠の団体なのかもしれないなあ・・・)

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「うわあぁぁ!!優しく殺してー!優しく殺してー!」

【あ゛あ゛あ゛あ゛・・・あ゛あ゛あ゛あ゛】

 

 現在鷹の爪団は吉野宅にて怨念の籠ったの醜い化け物に追い掛け回されていた。口は顔の八割を占め体からは必要以上に老婆の様な腕が生えている。

 

「まさか凶悪な呪霊が声色を変えて電話に出ていたなんて夢にも思いもしませんでした!」

「吉田くんそんな説明的なこと言ってる場合じゃないぞ!!」

 

 総統は絶叫しながら必死に走るが御年55歳の人間が長時間走り続ける事なんて出来るわけがない。疲れが出始めた総統の足はもつれついに床に倒れこむ。

 

「ああっ総統!」

 

 呪霊は総統を見下ろす形で立ち、自分の腕の一つを振りかぶるために持ち上げられた。呪霊の口の端は不自然なほどに吊り上がる。

 

「うわあああああ!!!!」

「総統ううううう!!!!」

 

 総統の涙を流しながら悲鳴を上げる。そして呪霊の腕は総統の顔面に向かって勢いよく振り下ろされる・・・・

 

 

 

 

 ことは無かった。

 

「え?」

 

 呪霊の腕は突如その場でガッチリと固定されピクリとも動かなくなった。いや腕だけでは無い。全身がまるで録画した番組を一時停止した時の様に静止している。何が起こったのかを総統は周りを見回す。そしてなぜ攻撃を止めたのかを即座に理解した。

 

「おおっ菩薩峠くん」

 

 菩薩峠は呪霊に対し掌を向け呪力を放出し動けなくさせていたのだ。そして菩薩峠は呪霊に浴びせる呪力を徐々に増やす。すると呪霊は叫び声も上げることも出来ずねじれながら圧縮されていく。最終的にビー玉ぐらいの大きさになると粉のように崩れていった。

 

「うっかりしてましたね。菩薩峠がいれば本来、僕ら怖い者なしでした」

「そうなんだよね。菩薩峠くんがいれば本来わしら怖い者なしなんだよね」

 

 総統はフラフラとよろつきながらゆっくりと立ち上がった。

 

「しかしどうして危険な呪霊がこんな一般宅にいたんじゃ?」

「全くもって不思議です」

 

 総統は現状の疑問をこぼす。呪霊が集まるのは普通負の感情が集まりやすい墓地や廃墟。有名な事故物件じゃない限り呪霊なんて住宅に発生することはあまり無いだろう。そこへフィリップが吉田を呼ぶ。

 

「吉田さーん・・・」

「ん?どうしたフィリップ」

「こんな物が・・・」

 

 フィリップがダイニングルームにあるテーブルの上に置いてある物を指さした。そこには黒ずんだゴツゴツとした何かが置いてあった。

 

「何だこれ?ハロウィン仕様の花林糖か?」

 

 吉田は手に取ってそれが何なのかを良く観察する。そこへレオナルド博士が口を挟む。

 

「おいそれ両面宿儺の指じゃないのか?」

「なんじゃと!それであんな凶暴な呪霊が吸い寄せられたと言うのか!!」

「総統、両面宿儺の指ってもしかして・・・」

「ああ、そのもしかしてじゃ」

 

 総統はゴクリと生唾を飲み込みいつも以上に真剣な顔になる。

 

「あの離婚調停の時、子供の親権を得るのに有利に進められるアレですか?」

「いったい吉田くんは何と勘違いしてるんじゃね?平安時代の呪詛師から生まれた特級呪物じゃよ」

 

 吉田の斜め上過ぎる発言に先程までのシリアスな空気が消え去り、総統もいつもの間の抜けた顔に戻る。

 

「しかし何でこんな物騒なものがこんな呪いとは無縁の非術師の家庭に・・・」

「確かに家族団欒のダイニングルームのインテリアにも不釣り合いですね。そう言えば本物の吉野さんはどこに行ったんですかね?」

 

 吉田くんのこぼした言葉に一瞬で緊張が5人に走る。呪力を扱えない非呪術師などなすすべなく呪霊にやられてしまうだろう。

 

「鷹の爪団、総員家の中の捜索を開始せよ!」

 

 総統の指示の元、鷹の爪団5人は急いで怪我人がいないか家の中を探し回る。

 

 

「総統見て下さい。女性が倒れています」

「なんじゃと!?」

 

 テレビが置いてある居間に入った吉田が仰向けの状態で倒れている女性を発見した。

 

「恐らく本物の吉野さんだと思われます」

 

 女性は青白い顔をしており胸からは大量の血が流れていた。鷹の爪団は急いで女性の側に駆け寄り呼吸を確認する。

 

「大変です総統!この女性虫の息です!!」

「何てことだ、博士どうにかする方法は無いのかね!?」

「おう任せろ」

 

 レオナルド博士は懐から葉っぱの呪具を取り出す。そしてその葉を女性の傷口の部分に乗せる。葉からは強大な呪力があふれ出し女性の身体を包み込んだ。

 

「使い捨てだが呪いによる怪我ならどんな物でもたちどころに反転術式で直してしまう。それどころか血糖値も血圧値もコレステロール値までも基準値に戻してしまう回復用呪具だ」

「おおっ!そんな便利すぎるアイテムがあるのかね」

「さすが博士天才過ぎ!」

 

 吉田の感嘆の叫び声と共に倒れていた女性はゆっくりと目を開けた。傷口は完全ふさがり顔色は血色が良い赤みが差している。

 

「うぅ・・・」

「目を覚ましましたよ総統」

「おお良かった」

 

 鷹の爪団は一人の尊い命が助かったことに安堵する。そして五人は暖かい笑顔でこの家の家主である女性吉野凪の顔を見下ろすのだった。

 

 

 

 

 

************

 

 

 

 

ウーッウーッウーッ

 

 

 

「さあ話は署で聞かせてもらうぞ、この変態共」

 

「「うわあ捕まったーーーー!!」」

 

 鷹の爪団は不法侵入した怪しい集団として警察に連行されるのであった。

 

 

 




 遂に原作キャラ生存達成。果たしてこれから先鷹の爪団は何人の人間を救えるのでしょうか。

 原作では身体を半分失って亡くなってしまいましたが鷹の爪団による発見が早かったことでその状態になる前に見つかったということで。
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