呪術結社鷹の爪 作:わさびにんにく
呪術高専東京校で行われている姉妹校交流会。その会場に放たれているはずの呪霊の状況を確認するための札が一斉に赤く燃えた。札が赤く燃えたと言うことは東京校の生徒が祓ったことを意味している。しかしそんな全ての呪霊を祓うことが出来る広範囲な術式を持つ生徒はいない。
「妙だな。烏達が誰も何も見ていない」
冥冥の術式により烏の視界と共有されたモニターは現在真っ暗な状態となっている。
「
「未登録の呪力でも札は赤く燃える・・・」
「外部の人間。侵入者ってことですか?」
「天元様の結界が機能していないって事?」
「外部でも内部でも不測の事態に変わりあるまい」
この場にいる全員の緊張感が高まる。何者かが呪術高専内に侵入している。交流会と言う表面的にだが平和的なイベントの真っ最中に。最低限の会話だけで教師陣は優先すべき事柄を頭の中ではじき出す。
「俺は天元様のところに。悟は楽巌寺学長と学生の保護を。冥はここでエリア内の学生の位置を特定。悟達に逐一報告してくれ」
東京校の学長である夜蛾正道はそれぞれに指示を出す。そして多少の無駄足を踏みながらもこの場にいる全員が一斉にこの問題の解決のために各々動き出した。
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「総統。どうやら妨害班が交流会会場を襲撃。作戦がスタートしたみたいです」
「何?!もう始まったのかね」
「間違いありませんよ。ジュー・ピー・エスの情報だと帳を現在張っている最中ですし校舎の方から会場に呪術師が三人も向かっています」
「うう・・ついに始まってしまったかぁ・・・」
吉田はスマートフォンの画面を総統に見せながら現在の状況を報告する。それを聞いた総統は肩を落し口からは沈んだ声が漏れる。
「そうか~じゃあ俺たちも始めるか」
一方で真人は間延びした緊張感の無い声で二人に呼びかける。真人は先程まで床にあぐらをかき、肘を突いていたが作戦が始まったことを知ると立ち上がり身体を伸ばす。そして三人は高専の校舎内へと足を踏み入れた。
捜索班を務める総統と吉田と真人。吉田がジュー・ピー・エスを使い天元様の忌庫へと先導。そのすぐ後ろに総統、少し離れた所に真人が一列の状態で進む。背後から感じる特級呪霊のオーラに総統は寒気を感じていた。
「吉田くん。大丈夫なのかね?」
「大丈夫に決まってるじゃないですか。博士のジュー・ピー・エスもありますし、僕は島根一の地図ボーイですよ。迷子に何てなる訳ないじゃないですか」
「そう言うことを言ってるんじゃ無いんじゃ吉田くん。わしが言っているのは後ろにいる特級呪霊についてじゃよ」
総統は真人には聞こえない様になるべく小さい声で吉田に腹に抱えた不安をぶつける。総統の言葉で吉田は後ろへ振り向き此方を見る真人と目が合った。真人は腕を頭の後ろに回しプラプラとだらしない足取りだが大人しく総統と吉田に着いて来ている。
「後ろのパッチワーク呪霊がどうしたんですか?」
「分からんのかね?あやつは戦闘要員ではあるがほぼ間違いなくわし等の見張り役も担っている。この作戦が終わったら用済みとみなしわし等二人を平気で殺しにくるかもしれんぞ」
総統は吉田に自身が思う最悪の展開を吐露する。既に作戦実行前から鷹の爪団と彼らでは方向性の違いから決別することは決定している。そうなったら羂索達に鷹の爪団を生かしておく必要など無いのだ。
「確かに博士もフィリップも菩薩峠もいない今の僕らは二次創作小説きっての逆チートです」
「吉田くん。前に使ったノーアイデンティティとかそう言った武器になりそうな物は無いのかね?」
「武器何て持って来て無いですよ。今回は戦闘や脅迫と言った血生臭い世界とは無縁だと思っていたので」
「何で持ってきてないんじゃね?!一応君は戦闘主任じゃないか」
「何言ってるんですか!総統が今日の主導は須藤だから最低限の持ち物だけで良いって言ったんじゃないですか!」
アーダコーダと総統と吉田は責任の押し付け合いを繰り広げる。鷹の爪団では特別珍しくも無いよくある光景。そんな二人の背中を見ながら真人は羂索に言われた言葉を思い出す。
『計画が成功しても二人を殺すのはあまりおすすめしないよ。殺すこと自体は簡単だろうけど伊達に20年以上活動し続けている呪詛師集団だ。下手したらこっちが殺られるよ』
その発言をしたときの羂索の顔はいつもの軽い表情ではなく真剣な目付きをしていた。呪力は非術師に毛が生えた程度の二人を殺したらどんな奇跡で逆にこっちがやられてしまうのか。どうにも真人は納得することは出来なかった。
(それに此奴らと一緒にいると凄い不快なんだよなぁ~)
真人は呪霊としてこの世に生まれ落ちてまだ日が浅い。故に精神的にはまだ子供で自らの興味を優先することで呪霊として成長してきた。目の前にいる今まで見てきた中で群を抜いてみすぼらしい癖に魂だけは驚くほどに清んでいる存在。そんな人間と一緒にいることに真人は異常にストレスを与えていた。
羂索の忠告と心の内の生理的欲求の間で真人は揺れていると前方を歩く吉田と総統の足が止まる。
「総統見て下さい。進行方向に」
「何見張りの呪術師かね?」
「恐らくそう思います。反応からしてあの男が立つ後ろの扉が忌庫の入り口みたいなんですが・・・」
吉田が指さす先には筋骨隆々の明らかに強そうな男が立っていた。
吉田と総統はジュー・ピー・エスを使い呪力があまりない道を選んで忌庫へと向かっていた。これにより多少の遠回りでも今まで呪術師や補助監督に接触しないことに成功していた。しかしそれでも忌庫に近づけば見張りは増える。誰にも会わずに済むことは流石に出来ない。
呪術師がいるという言葉に真人はようやく出番が来たことに喜ぶ。
「そんじゃおっさん達、後ろに下がってな」
真人は総統と吉田を押しのけるとスキップをしながら呪術師へと向かっていく。その高いテンションである真人の姿を見て二人はドン引きする。
「うわぁー。アイツ本当に救いようが無い位の変態ド外道ですね」
「まあ特級呪霊に良心があると思うこと自体見当違いじゃよ。じゃがあの様に有頂天なのはありがたい。わし等がやるべき事を絶対に彼奴に悟られてはならんのじゃからな・・・」
総統と吉田は作戦実行前に行われた団での最後の作戦会議を思い出す。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「うう・・何てことじゃあ。まさか呪詛師であるはずのわし等が騙されてしまう何て・・・」
「実に鮮やかな手口でしたね。でもこうなったのは仕方無いですよ。計画達成まで大人しく須藤に協力するしかないんじゃないですか?」
意外と物事を客観的に見る・・・・と言うより単純でテキトーな性格の吉田は落ち込む総統を宥める。
「そうは言ってもだよ吉田くん。わし等はこれから人殺しの片棒を担がされるかもしれないのじゃぞ。わしらは呪術師を倒そうとしても殺そうとしたことは一度も無い。あの傍若無人のデラックスファイターでもじゃぞ。だと言うのにわし等のせいで人が死ぬじゃなんて・・・・」
総統の顔はこれ以上無い程沈んでおり、その声はドンドン小さくなる。
「うーんそうですね。博士、どうにかする方法は無いんですか?」
「おう。改造人間はある種の呪いによるがん細胞と同じだからな。こいつを使えば一発で元に戻すことが出来るぞ」
レオナルド博士はそう言うと懐から子供の落書きのような滅茶苦茶な見た目の光線銃を取り出した。
「博士それって確か以前病気で倒れたデラックスファイターに使用した・・・」
「おうどんな呪いや病気もたちどころに治すどころか150歳くらいまで軽く生きられるマシンだ」
「おお!そうなれば死者を出さずに計画を遂行。わし等は縛りを破らずに暖かい秘密基地に帰ることが出来るではないか!」
「流石博士!天才過ぎぃ!!」
博士の言葉にようやく元気を取り戻した総統。誰も傷つくこと無くこの問題を解決することが出来る。人に地球に優しい世界征服を目指す鷹の爪団がその指標を破ることは絶対にあってはならないことだからだ。
特級呪具【どんな呪いや病気もたちどころに治すどころか150歳くらいまで軽く生きられるマシン】
元ネタは『秘密結社鷹の爪 カウントダウン』第5話にて初登場しました。