呪術結社鷹の爪 作:わさびにんにく
「うう・・・。流石は高専の天元様の忌庫じゃ。物騒で危険な物であふれておる」
総統と吉田、そして真人は天元様の忌庫へと辿り着いていた。総統は壁に並べられた呪具や呪物を見て身震いする。陳列された呪物達はどれもこれも禍々しく、そこから発生される呪いに煽られ立っていることすら辛くなる。
「総統!総統!見て下さい」
「何じゃね吉田くん。そんなにはしゃいで」
総統が精神的にやられていることを知ってか知らずか吉田は興奮気味に駆け寄ってきた。吉田が手に持っているの水晶の見た目をした呪具。そしてその呪具に総統は見覚えがあった。
「吉田くんそれは自分の見たいものを何でも一度だけ見ることが出来る超光学千里呪具じゃないかね」
そう思い出されるのは自分が世界征服を志した切っ掛けとなった日の出来事。
「やはりそうでしたか。総統の話からもしかしてこの呪具がそうなんじゃ無いかと思ったんですよ」
「うむ。思えばこの呪具がなければわしの23年間は無かったと言っても良い。感慨深いものじゃな」
総統は敵の本拠地にいると言うのにしみじみと鷹の爪団での今までの活動を振り返る。
「確かに僕も先程使って見ましたけどその時の光景は忘れることが出来ない記憶に刻み込む物でした。使った人の人生に多大な影響を与えても何も可笑しくない呪具ですね」
「む?吉田くん超光学千里呪具を使ったと言うのかね?」
総統が吉田から自然に発せれられた言葉に食いつく。
「はい僕はこれで近所の診療所データベースにアクセスしました」
吉田はその質問に対し自らが持つ1枚の紙を広げて総統に見せる。
「こちらそこで入手した外資系OLの基礎体温表になります」
「よよよ吉田くん!ちょっとそれ犯罪じゃないかね!」
「大丈夫ですよ。観賞用ですから」
吉田は総統からの注意も聞かず基礎体温表を筒状に丸めるとポケットにしまう。物凄い価値がある物でも自分の突然の思いつきを優先してしまうのが吉田である。
そんな小競り合いをしていると忌庫の奥から真人が二人に声をかける。
「おーい。おっさん達何やってるの?こっちはもう終わったよ」
真人は笑顔を浮かべて総統と吉田に手を振っている。その瞬間一気に吉田と総統に緊張感が走る。
呪物を回収し終えたと言うことは現時点で協力し合う縛りは解約。鷹の爪団もう羂索達に従う必要は無くなった。そして羂索達も鷹の爪団を生かす必要が無くなった。
「よし。じゃあ吉田くん博士に計画を達成したことの連絡、向こうの状況も確認するんじゃ」
「了解しました」
吉田は無線を取り出すと交流会会場にいるレオナルド博士に連絡をする。
「もしもし博士。聞こえますか?此方呪具の回収は終わりました。そちらはどうですか?」
『おう吉田か。丁度良かった。こっちは帳が破壊されたから逃げるなら時間は無いぞ。上空にはあの五条悟も来ている。言っとくがこっちから忌庫には行けないから迎えには行けねえ、なるべく早くこっちに来い』
レオナルド博士の口調から向こうはそれなりに大変だと言うことが伝わってくる。しかし流石は博士。必要最低限の情報を伝え、何をするべきかを総統と吉田に指示を出す。
「何?あの現代最強の呪術師もいるのか?!高専の教師だと言うのは知っておったがそんなイベント事に律儀に参加出来るほど暇な人材じゃ無いじゃろ!」
「てっきり五条家が庶民アピールをする為だけの名前だけ所属だと思っていました!」
総統と吉田は現代最強の存在が高専にいることを知ってより焦った顔になる。
「うわぁ~。ヤバそうだね~。時間も無いんだし早く出ようぜ」
無線の声を聞こえていたのか真人は二人にそう告げるとそそくさと忌庫を先に出ていく。その後ろに着いていく形で吉田と総統も忌庫を慌てて出る。
来たときとは逆に真人の後ろを着いていく形で総統と吉田は後方を歩く。決して特級呪霊である真人に背中を見せる様なことはしない。総統は小さな声で吉田に耳打ちをする。
「吉田くん。時間が無いとはいえ気を抜くんじゃないぞ。奴等とわし等もう敵対関係。直ぐにわし等を消そうとする様子は無いが油断は出来ん。それにわし等にはまだやるべき事が残っておるのだからな」
「当然です総統。あんな変態共から解放されたからって浮かれる程僕は甘ちゃんじゃありません」
忌庫から出るとその出口付近にいるのは先程真人によって改造された呪術師。この呪術師を元に戻すと言う責務が総統と吉田には残されていた。
体長は50cm位まで縮められ、足は自重で折れてしまいそうな位に細く変えられている。口からはうめき声に近い弱そうな声が漏れ出ている。先程までそこにいた強そうな呪術師はもういない。
「うっ・・・うっ・・・・」
その無力な姿を見て総統は心を痛める。この様な姿にさせてしまったことに総統は責任を感じながら改造人間へと近づく。総統が腰をかがめ改造人間と同じ目線になる。
そして・・・
ドカッ! ドカッ!
「うわあああ!!ごめんなさいぃ!ごめんなさいぃ!」
「大変だ!総統から赤い汁が出てる!」
「吉田くん!汁じゃ無くて血じゃよぉ!!」
・・・・改造人間は総統に飛びかかると馬乗りにしてタコ殴りにする。
「あっおい。総統から離れろよ!」
改造人間を総統から引きはがそうと吉田は改造人間の肩を背後から掴む。
「うわあぁぁぁ~~~~!!!」
しかし吉田の顔面に改造人間の裏拳が飛び、後方へ吹っ飛ばされる。
「アッハッハッハちょっとおっさん達。アンタ等どんだけ弱いんだよw」
自分の半分の身長も無い小柄な改造人間にボコボコにされる総統。柳の枝の様な細腕に吹き飛ばされる吉田。その姿を見て真人は腹を抱えながら爆笑していた。
「大変だこのままじゃ総統が死んでしまう。真人!笑ってないで総統を助けろよ」
相手が外道、変態と言う認識を持っていても危機に陥ったら普通に助けを求める。それが鷹の爪クオリティである。
「何言ってんだよ。計画も終了したし俺たちはもう仲間でも何でも無いだろ?」
勿論出会ったときから鷹の爪団を生理的に受け付けていなかった真人が総統を助けるわけが無い。むしろ自分が直接手を下さないのであれば羂索の忠告を守っていることになるだろうしこの状況は彼にとって好都合だった。
「そんじゃ。時間も無いから。じゃあね~」
「おい待てよ」
吉田が引き留め様とするも真人は二人にピースサインをしてスキップをしながら走り去ってしまった。その場に取り残されてしまった総統と吉田。そしてこうしている今も総統は改造人間に顔を殴り続けている。
「吉田くん!早く、早く例のマシンを撃ってくれ!」
「ああそうでした」
吉田はレオナルド博士から借りた『どんな呪いや病気もたちどころに治すどころか150歳くらいまで軽く生きられるマシン』を取り出し銃口を改造人間に向ける。
ビビビビビビビッ
黄色い光がマシンから照射され、光が改造人間を包み込む。光を受けた改造人間の手足は肉付きが良い健康的な太さになり、緑色をしていた気味が悪い肌は人間らしい色へと変わる。
そこにいるのは異常も不健康さも見られない真人に改造される前の姿に戻った呪術師。むしろ改造前より顔色や目は綺麗にすら感じる。
「おお!元に戻ったぞ!」
「流石博士の発明品です」
総統は顔や身体から血を流しながら元に戻った呪術師を見て安心する。元の姿に戻った呪術師は下を向き馬乗りにされた総統と目が合う。
そして・・・
「おらぁ!この地下鉄職員!何処から入り込みやがった!」
「うわぁあ。さっきより痛いい!!」
「総統うううう!!」
呪術師の男は目の前の総統を再びボコボコに殴り始めた。
外資系OLの基礎体温表、赤い汁。鷹の爪で使われる言葉って妙に具体的だったり独特だったりで面白いですよね(笑)。