呪術結社鷹の爪 作:わさびにんにく
伏黒は二年生の禪院真希とパンダと共に行動していた。伏黒と真希は特級呪霊と交戦したことにより命に別状は無いが負傷。その二人をパンダが肩に担ぎ交流会会場の外へと向かっていた。
そんなときに五条が空から参上。五条がやって来たと言うことは最早事件は解決したことと同じである。ひとまずの安心が手に入り現在三人はその場に留まり一時的に身体を休めていた。
「やっぱあの人はぶっ飛んでる・・」
張られていた帳を破壊し特級呪霊を一撃で撃退した五条。その一連の流れを見た伏黒はため息交じりにそうつぶやくことしか出来なかった。
「おーい。正道から連絡があったぞ」
パンダが携帯電話を掲げて伏黒と真希に呼びかける。パンダは夜蛾学長のお気に入りのため優先的に現状報告を受け取ったのだろう。
「何だって言ってたんだ?」
「今回の件の首謀者と思われる組織のリーダーとサブリーダーを捕まえたってさ。そいつ等のお仲間はまだ会場に残っている可能性もあるから気をつけろだって」
「気をつけろ」とは言われたが既に特級呪霊も去りこの会場には最強である五条悟がいる。伏黒も真希も同意をしながら先程よりも明らかに危機意識は下がっていた。実際伝えたパンダですら間延びした口調である。
「んで捕らえた団体って言うのは一体何なんだ?」
「ああそれが本人達は鷹の爪団?って名乗ったらしいぞ」
「鷹の爪団?何か聞いた事ある気がするな。確か歌とお菓子が大好きなお喋り仲間だっけか?」
パンダは自分の顎をポリポリとかきながら空を見ながら答え、真希もピンと来ないのか首をかしげる。幼少期から呪術界で育って来た二人だったが鷹の爪団についてはよく分からないという反応を示したが伏黒だけは違った。
「なっ!鷹の爪団!?」
「何だ恵。知っているのか?」
「ええ・・まあ一応」
伏黒の眉間にはしわが寄り何とも言えない複雑な表情を浮かべる。思い出すのは虎杖が一度死んだあの少年院。あそこで出会った自称人に地球に優しい世界征服を目指している悪の呪術結社。みっともなくて、頭悪くて、どうしようもない雰囲気を全身にまとっていた二人。
「任務に行った先で偶然鉢合わせた事があります。後日五条先生からはその鷹の爪団って言うのは上層部に存在することを黙認された唯一の呪詛師集団だと聞きましたけど」
「はあ?呪詛師なのに黙認ってあり得ねえだろ」
伏黒の説明に思わず真希はツッコミを入れる。五条の話では鷹の爪団はショボすぎて上層部から呪詛師としてまともに取り合っていないことが通説だと聞き伏黒自身もそれに納得していた。しかしそのことを説明しても信じてもらえそうにないのでわざわざ言うことはしなかった。
「パンダ先輩今回の事件その鷹の爪団が起こしたのは間違い無いんですか?」
伏黒が出会ったあの二人は呪詛師だと名乗ったがこんな悪事を働く度胸も気概ある様には見えなかった。それに彼らは善意から釘崎を探すし出すことも協力してくれた。悪を名乗っているが本質的には善人に当てはまる気さえしたのだ。伏黒はそんな二人が高専に侵入してこの様な大事件を引き起こす姿がどうしても想像することが出来なかった。
「正道の話だと見張りをしていた呪術師にコテンパンにやられて泣きじゃくりながらそう自供したそうだ」
「間違い無く鷹の爪団です」
「おい、呪詛師集団のリーダーがコテンパンにやられて泣くのかよ」
呪術師に一歩的にボコボコにやられて良い大人が泣きじゃくる光景。今度の話は鮮明に想像することが出来た。呪詛師を名乗りながらこれほどみっともない姿をさらせる組織は二つといないだろう。
(間抜けでこれ以上無いくらいの駄目人間に見えたがまさかこんな騒動を起こす何て・・・)
鷹の爪団が呪詛師であればこの様な騒動を起こしても何も可笑しくない。身にまとう雰囲気、上層部放置している事実、そして助けて貰った恩から見なければいけない現実から目を背けてしまっていた。伏黒は自身の考えの甘かったと痛感する。
そんな時に真希が二人に呼びかける。
「おいお前等近くに誰かいる」
その言葉を受けパンダと伏黒も耳を澄ます。
「わにゃわにゃわにゃ、わにゃわにゃ」
真希の言う通り何処からか話し声がする。夜蛾学長の話から鷹の爪団の仲間が会場にまだいる可能性があると言っていた。三人の警戒心が高まる。
もう甘い考えを捨て相対したら遠慮無く拘束する。そう伏黒は心の中に決めた。
木々の合間をぬって声の方へとゆっくりと三人は向かう。声は徐々に大きくなっていき相手との距離が近づいている事が分かる。そしてついにその存在を眼前に捉えたとき三人は目を一瞬見開いた。
「「「!」」」
「ああ、どうやら総統と吉田だけじゃなく菩薩峠も捕まったみたいだ。まあ菩薩峠だから大丈夫だとは思うがな」
そこには携帯電話で会話をしている呪詛師が一人。・・・いやそう判断したがその存在はとても呪詛師には見えなかった。と言うよりも人間には見えなかった。
白衣以外に着用したものはなく全体的に丸っこいフォルム。茶色い体毛につぶらな瞳。そうその呪詛師の見た目はまさに・・・
「熊」
パンダが一言思わず声を漏らした。
「オレは熊じゃねえぇぇぇ!!!」
「うわっ!何だこいつ」
その瞬間鷹の爪団の外部契約レオナルド・デカ・ヴィンチはパンダに襲いかかってきた。
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脊髄反射的に襲いかかったレオナルド博士ではあったが相手は絶賛成長中の10代の高専生。冷静さを失ったレオナルド博士では太刀打ち出来ず簡単に捕獲された。今はロープで木にくくりつけられ身動きが出来ないでいる。
「あの呪詛師いったい何者なんですか?パンダ先輩と同じ呪骸ですか」
「いや。さっき身体を掴んだ感覚からして体温も脈拍もあった。ありゃ只の呪力を持った動物じゃないのか?」
「いやそれは『只の』で片付けられないと思いますけど」
何故か先程からパンダはレオナルド博士にあまり興味を持っていない様に感じる。どうやら希少性からなのか、世間の人気からなのか本人の中のパンダは熊よりもカーストが上に位置しているようだ。
「それにしても真希。さっきから何でずっと黙っているんだ?」
実はレオナルド博士を捕獲してから真希は一言も発さずにいた。眉間にしわを寄せて捕まったレオナルド博士を険しい目で見ている。
パンダの呼びかけを受けようやく真希は口を開く。
「なあ、あの熊なんだが実は見覚えがあんだよ。私が高専に入学する前、禪院家の屋敷で当主のジジイと1対1で話しているのを見たことがある」
「!! 禪院家とですか!?」
伏黒が驚くのも無理は無い。そのことが事実であれば禪院家は呪詛師との繋がりがあることを意味している。
「人違いじゃないのか?」
「あんな見た目の奴を見間違うこと何てある訳ねえ」
パンダの意見を真希は一蹴すると縛られたレオナルド博士の前に立つ。
「おらっ。高専に連れて行くなら早く連れてきな。こっちは既に総統や仲間が捕まっているんだ。反抗する意思はねえぞ」
レオナルド博士は捕まっている立場でありながらふてぶてしい態度を崩さず余裕を見せている。真希は目線を合わせるようなことをせず威圧感を与えるために頭上からレオナルド博士に問う。
「そんなことより一つ聞かせろ。お前禪院家とはどう言った関係なんだ?」
「禪院家?」
「以前アンタをそこの当主と会話をしているのを見たことがあんだよ」
真希とレオナルド博士の視線が重なり、にらみ合う。
「おうそこなら定期的に呪具の外注を請け負ってるぞ」
「「「なっ!?」」」
「俺は呪具の開発をしていてな。禪院家はお得意様の一つだ」
レオナルド博士がさも普通の事のように発したがそんなことを聞いて冷静でいられる者はいない。三人は絶句し言葉を失う。
又、レオナルド博士の言葉に真希は自分が禪院家で躯倶留隊に所属していたときのことを思い出す。確かにレオナルド博士を屋敷で見た次の日に新しい呪具が隊士全員に支給されていた。しかも支給された刀にはこの熊と同じ顔のマークが持ち手部分に刻印されていたのだ。
「はあ!?アンタ呪詛師だろ。何やってんだよ!?」
「うるせぇなあ、金が欲しいんだよ。言っておくが禪院家以外にも外注があれば俺は仕事を請け負ってるぞ。呪術界上層部からだって高い報酬で仕事がたまに入るからな」
レオナルド博士の逆ギレに近い返答で更なる驚きの事実を暴露してくる。そんな技術があるのに何故呪詛師なんかをやっているのか三人は全く理解が出来ない。
ただ一つだけ鷹の爪団について理解したことがあった。
「鷹の爪団が壊滅されず未だに活動を許されているのはこのためですか」
真希もパンダも何も言わなかったが伏黒のこの発言に深く同意する。
この熊、レオナルド博士は呪詛師でありながらその技術力を買われて呪術界上層部や呪術御三家と繋がっている。
言うなれば鷹の爪団は強力な後ろ盾を有しているのだ。
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一方その頃、捕らえられた吉田はと言うと・・・・
「もうHな本は読みません!もうHな本は読みません!」
次回は「能ある鷹」のラスト。鷹の爪団の隠れチートの話になります。