呪術結社鷹の爪 作:わさびにんにく
呪術高専京都校の教師である庵歌姫は生徒達を救出する為に交流会会場に来ていた。その結果、東京校一年の釘崎野薔薇と京都校二年の禪院真依と合流。呪詛師の男と相対したが帳が破壊されたと同時に男は逃げていった。
合流した釘崎と真依は今回の騒動で呪霊や呪詛師とは交戦していないため大きな怪我はしていない。その為二人は言い合いをしながら自らの足で校舎へと戻って行った。
二人を見送り、会場に残った歌姫はこの事件の現状を冥冥から電話越しに聞いていた。
「鷹の爪団?それって確か以前引き起こされた補助監督一斉自主退職事件の犯人だって言う・・・・」
『ああその組織で間違いないね』
呪術師としてそれなりに長い間活動していた歌姫は鷹の爪団についてはある程度知っていた。世界征服を目論む呪詛師だと名乗っているがあまりにも実力が低すぎるせいで上層部は歯牙にもかけていない。呪術師が定期的に監査に入って活動を抑制するだけですまされていると聞いていた。
そしてごく最近呪術界で発生した事件。怪我人はおらず被害者は全員補助監督の上全容がどこか間抜けな事もあって呪術界全体ではあまり大事にはならなかった。それでも高専の管轄内の事件ということで高専の教師陣に鷹の爪団の知名度を上昇させる事件ではあった。
『夜蛾学長の話だと天元様の忌庫で鷹の爪団の総統と戦闘主任を捕らえたのはとのことだ。そして会場にはまだ残りの団員達三名が残っているらしい』
「呪詛師なら一人帳が破られたと同時に直ぐに逃げ出しましたけど。流石にもう全員逃げたんじゃないですか?」
『いや恐らく逃げて行った呪詛師は鷹の爪団ではないね。鷹の爪団は別の呪詛師集団が手を組んで今回の騒ぎを起こしたと言っている。あの貧乏呪術結社の団員達は愚かにもまだ会場にいるみたいだよ』
冥冥は自らの黒鳥操術で会場全体の様子を把握する。そして三人の高専関係者ではない者の動向を烏の目により捕捉する。
『三人の呪詛師についてだが一人は五条くんが、一人は東京校の生徒達が捕獲したようだね。後の一人は・・・』
「? ど、どうしたんですか?」
鷹の爪団に所属する呪詛師達の現状について説明していると突如として冥冥は押し黙る。普段冷静であるはずの冥冥が電話越しで言葉を失ったことに歌姫は驚く。
『フフッ。いや、まだ捕まってない呪詛師の一人がとんでもない大物みたいでね。少し目を疑ってしまったよ』
「大物!?そんな呪詛師が・・」
『まあでも安心すると良いよ。他の団員を捕まっている以上特級呪霊の様に手荒なことはしてこないだろう』
一級呪術師と言う立場の冥冥が大物であると呼ばれる呪詛師がいる。そのことを知り歌姫は動揺したが冥冥の言葉で少し落ち着きを取り戻す。
「そうですか・・・。じゃあ案内をお願いします。そんな呪詛師を野放しには出来ませんし、直ぐに確保に向かいます」
『そうかい。じゃあ烏に先導させるが私も後から合流するよ』
「?分かりました」
普段お金を貰わないと頼まれた以上の仕事をしないはずの冥冥がわざわざ此方に来ることに多少の引っかかりを覚える。だが今はそのことを気にするべきでは無いと考え通話を終了した。
周りを見回すと一羽の烏が木の上に止まっており冥冥が案内のために寄越したことが分かる。烏は歌姫と目が合うと翼を広げ、一方向へと真っ直ぐ飛び立った。歌姫もすぐさま烏を追いかける。
森の中を走ること数分、歌姫は呪詛師を発見した。呪詛師は此方に気付いた様子はなく敵陣の中にいると言うのに身を隠すようなことはしていない。何かをするわけではなく周りを見回しながら森の中を歩いていた。まるで高専側に見つかろうとしているようにすら感じる。
スキンヘッドに赤いマスクを被り、手にはマイクを持つ。筋肉質な身体には入れ墨が彫られており、町の破落戸を絵に描いた様な怖い見た目の呪詛師である。
ここで歌姫は一つ頭に疑問が浮かぶ。歌姫は冥冥が言った大物という言葉にはどうにも納得することが出来なかったのだ。確かに男は見るからに実力は逃げていった呪詛師よりも高い。
しかし今まで呪術師を勤めて来たが呪術界で危険視されている呪詛師に男の顔は見覚えが無かったのだ。
「大物と言われたけどあんな呪詛師見たことないが・・・。そう考えているみたいだね」
「!」
突如として背後から声をかけられ後ろを振り向く。そこには先程まで電話で会話し烏を使って歌姫達を先導していた冥冥であった。冥冥は腕組みをしながら立っており右手には何故か雑誌が握られていた。
「説明不足だったと思うがあの男は大物とは言ったがそれは呪術界での話じゃないんだ」
冥冥は持っていた雑誌を歌姫の前に出す。それは月刊のビジネス雑誌でマイナーだが経済学者などは皆読んでいると言われるほどコアな人気があり冥冥も愛読書としている。
「あの、これは・・・?」
「その雑誌の66ページを開いて見てくれ」
言われた通りに歌姫は指定されたページを開く。そのページには大企業のトップ達による今月の経済状況に対するコメントが掲載されていた。会社名、事業内容、社長名、社長の写真が並べられている。
そして書かれた文言と一つの写真を見て歌姫は思わず絶叫した。
「フィリップ・DEATH・ホールディングス会長フィリップぅぅぅう?!!!!」
そこに書かれている内容は目の前の呪詛師が大企業の会長であると言う事実だった。
歌姫の叫び声を聞いたフィリップは二人の方へと振り向き此方の存在に気がつく。歌姫は自らの叫び声で相手に気付かせてしまったことに焦るがそれは杞憂に終わった。
「・・・・投降します」
フィリップは両手を上げて二人に反抗する意思がないことを示した。
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―日本全国にある古本屋チェーン『BOOKお麩』。彼の栄光はそこからスタートした
―アルバイトである立場から店舗の改革を打診。それが評価され部長への異例の昇進。社長まで駆け上がると辣腕を振るいドラックストアやコンビニ、焼肉屋チェーンに宇宙開発会社と次々に買収を成功。
―グループの総売上は今や一兆円
『今週は斬新なアイディアで流通業界に新風を巻き起こす若きニューヒーロー。フィリップ・DEATH・ホールディングスのフィリップ社長に密着します』
インタビュアーがマイクをフィリップに向ける。
『フィリップさんどうしてそんなに斬新なアイディアをお持ちなんですか』
『そうですね。僕は前の会社で引っ込み思案とか駄目な奴とか言われ続けましたが実はいろんなアイディアを胸の内にため込んでいました』
『なるほど。きっと前の会社の人達は相当悔しい思いをしているんじゃないですか?』
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スマートフォンで再生されている動画は数年前に放送された密着番組の映像。歌姫はそこに映る人物と目の前の人物を何度も見比べる。フィリップは「投降する」と言ったが、呪詛師の言葉をそのまま信用されることはなく両手首を後ろで縛られた状態でその場に座っている。
似てる等と言う言葉では片付けられない、間違い無く同一人物である。唯一の違いと言えば動画が撮影された当時は社長だったと言うだけだ。
「赤ちゃん用品から宇宙事業まで手がける従業員5万人の多国籍企業って・・・」
並べられる事実は突拍子もなさ過ぎて頭が痛くなっていた。何で財閥の会長が呪詛師集団の一員何かやっているの1mmも理解が出来ない。
そんな歌姫の隣で冥冥はそれらの事実から鷹の爪団に対し一つの結論に辿り着く。
「まあいずれにせよ上層部が鷹の爪団を野放しにしている本当の理由はこの為だったたわけだ・・・」
冥冥の言葉に歌姫もその理由に気付く。
「それってもしかして鷹の爪団は大量の非術師の生活を握っているからと言うことですか?!」
大企業の会長と言うことは自社グループや下請け業者の社員の生活を支えていることになる。もし彼が捕まりでもすればその五万人以上の非術師を路頭に迷わせるかもしれないのだ。
しかし冥冥は更にとんでもない可能性を述べる。
「それだけじゃない。フィリップ・DEATH・ホールディングスは今や日本だけじゃなく世界に影響を与える大企業。もし彼を捕まえでもしたら株価は暴落。日本の国益は大きく損なわれ世界経済はリーマンショック以上の混乱に陥る。日本が先進国であり続ける為、世界全体の安定した経済基盤のためには彼は欠かせない存在だ」
歌姫は絶句し言葉を完全に失った。
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一方その頃捕らえられた総統と吉田はと言うと・・・・
「「ゔわ゙あ゙あぁぁ・・ゔっう・・・あ゙わ゙あ゙あ゙ぁぁぁ!!!!」」
号泣していた。
フィリップの年齢は公式で27歳。七海と同じなんですよね。会社員を自ら辞めて呪術師に戻った七海と秘密結社をクビになって会長まで上り詰めたフィリップ。
何かの対比ですかね?