放課後夜
鼬は食堂へと向かっていた。
はっきり言うとまだ頭痛は収まっていないが、パーティに呼ばれたからには参加しない訳にはいかない。
しかし、今は足が止まっている。
「………………で、そこを開けてもらえませんか?」
「………」
目の前には年上らしき女生徒。
知り合いに良く似た青い髪で、口元を扇子で隠している。
扇子には【行かせない♪】と、やたらと達筆で書かれている。
ムカつく。
「………退かないなら、退いて貰うだけですけどね」
「………………」
「………暴力で」
2人の姿が見えなくなる。
その場から消えたわけでは無い。
2人の動きが速すぎて見えないだけなのだ。
食堂(パーティ会場)
「鼬遅いな。もうすぐで料理無くなるぞ」
「確かに遅いですわね」
「連絡を入れたのはパーティが始まる前だったと思うのだが………」
来ない事を考えていなかったわけでは無いが、来なければ来ないで心配だ。
「何処かで倒れて無ければ良いのですが………」
「その心配はありません。鼬はちゃんと此方に向かっていますよ」
「「「えっ?」」」
後ろからいきなり発せられた言葉に驚き、振り返る。
「初めまして、私は三枝空狐。4組の生徒です」
「初めまして、私は「知ってます。セシリア嬢ですね」………まぁ、良いですわ」
「………三枝?………空…狐?」
「どうかしたのか?一夏」
「いや、ちょっとな」
名前に違和感を感じ、考えこむ一夏。
(………数字と動物の名前、いやまさかな)
「そのまさかです。私は鼬の家族みたいなものですから」
「「「え?」」」
「貴方とも兄弟子みたいなものですよ」
「「「は?」」」
いきなりのカミングアウトに三人は驚愕している。
「………理解の難しい点は存在しない筈ですが」
「つまり空狐さんと鼬さんは一緒に暮らしていて、同じ人を師事している、という事ですか?」
「はい。そして一夏君も同じ人を師事していました。
弟子勢ぞろいってやつですね」
そう言って空狐は微笑む。
「………という事はなんだ?空狐さんは鼬みたいに強いのか?」
「………ちょっと意味が分からないのですが?」
「いやだから、空狐さんは鼬ぐらい強いのか?」
箒の問いに、空狐はキョトンとしている。
「鼬が強い?何の冗談ですか、それ」
「え?」
空狐は笑いを抑えながら言う。
「私相手に、両脚と利き手無しじゃないと戦えない鼬が強い?冗談にも程がありますよ」
「「「え?」」」
空気が凍り付く。
盛り上がっていた会場が、一気に冷える。
「………………何か間違っていますか?私は真実を言っただけですが」
「………………」
言い返したい。
でも、言い返せる様な言葉を誰も持ってはいない。
それもその筈、一夏達が知る鼬と目の前の少女が知る鼬は全く別物なのだから。
ISを使わない、本当の実力を知っているのはこの場で一人だけ。
「………狗」
「………何だよ」
「確かに一般的にみたら鼬は強者の部類に入るでしょう。
ですが、私からすれば鼬は雑魚です」
「………っ⁉︎」
雑魚。
「文句があるのなら、言ってもらって構いませんよ」
言いたい。
発言を撤回しろと、声高々に言い返したい。
だが
「………いや、文句は無い。俺は何も知らないんだからな」
言い返せない。
「賢明な判断です。ええ、言い返されていれば、その首、落とす所でしたよ」
少女との実力差は圧倒的だ。
この言葉も、嘘では無いのだろう。
「ああ、そうだ。師匠から伝言がありますが、聞きますか?」
「師匠から⁉︎………聞かせてくれ」
「狗又は鼬の何方かが力に呑まれ、暴走し、誰かの生活を脅かそうなら、何方かが狐と協力し、海の藻屑とせよ」
「っ⁉︎」
つまり、一夏か鼬の片方がISで暴走したのなら、もう片方が殺せ。
そういう事だ。
「………………以上です。私は帰らせていただきます」
「「「………………」」」
「ああ、鼬ですがもうすぐで来ますよ」
少女が消える。
目で追えなかった。
「………………思った以上に強かったな」
目の前には、邪魔をした女生徒が倒れており、肩で息をしている。
「………でも、俺もボロボロだから引き分けかな」
鼬は倒れてはいないものの、身体中負傷している。
倒れていないのが不思議なくらいだ。
「………行くか」
女生徒に背を向け、歩き始め「強いのね。お姉さんビックリしちゃった」「っ⁉︎」
振り返る。
そこには先程まで戦っていた女生徒が立っていた。
「驚いた。まだ立てるんだ」
「鍛えてるもの」
「………………簪ちゃんに変な虫がついたと思ったけど、強いじゃない(ボソッ)」
「え?」
「なんでもないわ。実力が知りたかっただけだし」
「………」
「早く行かないと終わっちゃうわよ」
「止めたのはそっちですけどね」
駆け始める鼬を、更識楯無は見送る。
「………どっかで会った様な気がするけど、何処かしら?」
頭の中は疑問だらけ。
駄文