「・・・・・・・」
「・・・・・・?」
「・・・・・・・」
「・・・・鼬、どうかしたの?」
「・・・・・・・」
「・・・鼬?」
「・・・・ん?ああ、ごめん簪ちゃん、考え事してた」
「・・ならいいけど」
最近、鼬がぼーっとしている時が多いような気がする。
織斑先生に聞いてみたら、授業中もぼーっとしている時があるらしい。
「鼬、どこか調子が悪いの?最近変だよ」
「大丈夫・・・・大丈夫、だと思う」
「病院行ってみる?」
「・・・・無理だよ。理由は知らないけど、どれだけ調べても何もわからないらしいから」
「え?」
「レントゲン撮っても、映ってなくて、心音測ろうとしても、ノイズが混じってわからない。匙、投げられちゃった」
「そうなんだ・・・・」
それはおかしい。
おかしい点が多すぎて言えないが、簪は確信した。
鼬の中で何らかの変化が起きている。
それがなんだか分からないからこそ、簪は不安になった。
まるで、鼬がいなくなるような気がした。
「ねぇ、鼬。鼬は、三年後どうするの?」
素朴な疑問を問いかける。
勿論簪は馬鹿ではない。
更識家の情報網から、鼬の存在が世間一般に知らされていないのは知っている。
このままいけば、間違いなく鼬は文字通り実験動物だ。
「三年後か・・・・・・・・生きてるかな」
返ってきたのは全く予想しなかった答え。
そのセリフを言った後、鼬はその場を静かに去った。
その背中が、追うなと語っていた。
「・・・・・・アンタ、手ぇ抜いてるでしょ」
「何のことだ」
「とぼけるんじゃないわよ‼AICを使えば私たちを完封できるくせに、一向に使おうとしない‼本気出さないつもりなの‼」
「同意ですわ、本気を出さなくても勝てるとアピールするつもりですか?」
「・・・・戦闘力を測ると言っただろう?ここで壊してしまえば、後の楽しみが薄れるではないか」
ラウラは淡々と喋る。
本人に悪意は一切ないがプライドの高い二人を刺激するには十分だった。
「つまり、後でボコボコにするためにその加減をいま測ってるわけね」
「舐められたものですわね、私達も」
「・・・?二人とも、どうして青筋を立てているんだ」
もう一度言おう、ラウラに悪気はない。
あえて言うなら、煽りスキルが高い。
「セシリア、あいつ倒そう。ぶっ倒そう。土下座させて、首輪着けてやるんだ」
「鈴さん、私にそのような趣味はありませんわ」
鈴は双天牙月を振りかぶり、ラウラ目掛けて加速する。
ラウラもプラズマ刃を展開し、鈴の双天牙月を迎え撃つ為に構える。
二つの刃が交わろうとしたその時・・・
「何?喧嘩?私も混ぜて」
セシリアじゃない第三者の声が響く。
三人が声の方へと顔を向ける。
「・・・鼬さん?」
「四道・・・?」
「どうした鼬、いつもと口調と雰囲気が違うぞ」
そこにいたのはいつもと何かが違う鼬。
「アンタ、IS禁止令出されてるんじゃなかったの⁉」
「・・・喧嘩、混ぜてよ」
鼬の乗るラファールが加速を開始する。
両手には二本の刀が握られている。
「「・・・っ⁉」」
ガキィンッ、と三人の得物がぶつかり合う。
「・・・おされてる⁉あいつは片手で、私は両手なのに⁉」
「弱いね、君」
鼬は鈴を一段と強く押し、バランスの崩れた所を袈裟がけに斬る。
「なっ⁉」
「私を無視するな!」
「するつもりはないよ」
二本の刀がラウラに襲い掛かる。
ラウラはワイヤーブレードを展開し、鼬を撃退しようとするが・・
「遅すぎるよ」
「えっ・・・」
ワイヤー部分が切られている。
まだ展開して5秒も経っていないというのに。
刀は確実に首を狙っている。
絶対防御が発動する。
ISの、最後の砦が発動する。
しかし二本の刀が止まることは無い。
まるで紙を切るかのように、刀は絶対防御を破壊した。
ラウラは死を覚悟する。
刀が首筋に触れた、もう数秒後には死んでいるだろう。
「私を無視しないでいただけます?」
セシリアの声と共に鼬にレーザーが直撃する。
「・・・・ごめん、忘れてた」
手を止め、鼬は振り返る。
笑顔だった。
レーザーが直撃したというのにも関わらず、鼬は笑顔だった。
過剰フィードバックにより、全身が悲鳴をあげている筈なのに、笑顔だった。
次の瞬間、セシリアの首に刀が添えられていた。
「えっ」
「じゃあね」
立ち位置が変わった。
今度はセシリアが死の危機に瀕していた。
「待ちやがれっ‼」
手が止まった。
視線がセシリアからずれた瞬間に、セシリアはその場を離脱し鈴の元へと飛んだ。
「・・・・・・何がどうなってるんだ、これは」
一夏にはその現状が理解できていなかった。
地に伏したラウラと鈴。
殺されかけているセシリア。
いてもたってもいられず、一夏は叫んだ。
「待ちやがれっ‼」
様子のおかしい友へと、心の底から叫ぶ。
「・・・・一夏ぁぁぁぁあああ‼‼‼」
鼬が迫る、死の恐怖が迫る、明確な終わりが近づいてくる。
迫る鼬に、一夏は無慈悲に零落白夜を振り落す。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
鼬は避けていた。
全身をくねらせ、あらぬ方向から一夏の首を目掛けて刀を振るう。
全身に衝撃が走った。
「馬鹿者が」
鼬が最後に聞いたのは、そう呟く、懐かしい声だった。
ラウラは悪くないんだ、煽りスキルが高いだけなんだよ。
この作品のラウラはいい子なんですよ?
鼬が壊れるだけですから。