爆発音が鳴る。
敵を仕留めんと、その手に持つ槍を振るう。
しかし、届かない。
既に彼女以外の戦闘員は地に伏している。
彼女が、最後の砦なのだ。
槍が砕けた。
音も無く、まるで砂になるかのように砕け散った。
目の前の敵は、あまりにも強すぎる。
心で理解していても、倒れるわけにはいかない。
負けを認めるわけには行かない。
ここは彼の帰ってくる場所。
大切な人達が、帰ってくる場所だから。
心に言い聞かせる。
視界が霞む。
敵をちゃんと見ないと。
足が震える。
止めないと踏み出せない。
手は空を切る。
武器が無くても、この手で。
あいつを倒さないと、みんなが安心できないから。
駆け出す。
ボロボロのISで、ボロボロの体で、折れそうな心を繋ぎ止めて、駆ける。
その握りしめた拳は、敵に届くことなく、地面へ吸い込まれていく。
ミステリアス・レイディ、更識楯無は敗北した。
それを眺める男が呟く。
「・・・・根性は凄いけど、残念だったね」
「・・・・・・・・・・つまんない」
IS学園のアリーナで、男は呟く。
「・・・弱すぎるよ、面白くない」
高速道路からバス四台を落としてからたった時間はおよそ二時間。
IS学園に着いたのはだいたい30分前だ。
たった30分で、IS学園は制圧されていた。
ISに乗る男一人に手によって。
「ロシアの国家代表・・・だっけ?世間一般では強い方なのかもしれないけどね。相手が悪かったね」
そう言って、目の前で横たわっている少女を蹴り飛ばす。
そして追い打ちをかけるように、人の山へと投げ飛ばした。
侵入者討伐にあたった職員、国家代表含む代表候補生も参加したが、結果は全滅。
たった一人に手も足も出ず、現在IS学園内の戦力の八割以上削られたことになる。
倒された人は山のように積み重ねられ、その近くにはISコアが飛び散っている。
倒された連中の、聞くに堪えない呻き声にやる気を削がれる。
「・・マドカもどっか行ったし、俺も徘徊してみるかな」
そう言った後、ISコアを回収しアリーナから出ていこうとしたが、急に足をを止めて振り返る。
そしてもう一度人の山に近づくと、投げ飛ばした更識楯無を無理やり起き上がらせる。
「場所を教えてよ、世間二番目の男性IS搭乗者がどこにいるのか」
笑顔で問いかけるが、返答はない。
「早く答えてよ」
・・・・・・・・・返事は返ってこない。
「まぁ、いいさ。手あたり次第探せばいいんだし」
アリーナから、今度こそ出ていった。
鼬のマスクを脱ぎ捨てて、本当の顔で。
アリーナから男が出ていった数分後、突如黒い影が出現する。
「これは酷い・・・・」
黒い影は徐々に姿を現していく。
「やはりイレギュラーな事が起きているのは間違いない。でなければ、楯無嬢が負けるはずないからね」
喰奈だ。
髪の色はまだ黒いが、徐々に赤くなっていく。
「手負いの者も少なくない、近くの病院にでも送り届けなくては」
「しかし、静かすぎる。既に生徒は逃げ出しているのか?」
黒い影が広がっていき、倒れている人達を飲み込んでいく。
「誰が何のためにこんな事をしているんだ?」
何もわからない。
だが、分かったところで何も変わらない。
この世界が今後どうなっていくのかは既に決まっていることだから。
それを、観測しているだけだから。
こうやって介入するのも、全て決まっていることだから。
「・・・・どうなんだろうね、これって」
全ては決定事項。
変わることのない一本道を、歩くだけ。
パラレルの時点で、一本道ではないのかもしれないけれど。
すまん