誰も待ってないと思いますが。
「・・・・・・・・・これで全員揃ったのか?」
「いえ、財前さんと三枝さんがまだです。三枝さんはどこかへ走り去るのが目撃されていますが、財前さんに関しては何も情報がありません」
「・・・死んでいないことを祈るしかないな」
場所は国内どこかの山中。
バスが転落し、山中に放り出されたIS学園一行は、後続車の運転手が通報してくれたこともあり、転落から5時間後には前述した二人以外の無事が確認された。
「IS学園への連絡が通じないことから、IS学園は既に制圧されている可能性が高い。何とかして向かわなければ」
「そうですね、ですが、バスの転落でパニックを起こしている生徒もいますし、怪我をしている生徒もいます。ひとまずは病院へ向かうべきです」
「ああ、だからここで二手に別れようと思う」
「二手に・・・・ですか」
「既に車は用意して貰っている。山田先生には、専用機持ちを乗せてIS学園へ向かってもらいたい」
「・・・・ええっ⁉私ですか?織斑先生の方が適任だと思いますが」
「・・・・・・・私はペーパードライバーだからな」
「あっ・・・・」
織斑千冬は文字通りペーパードライバー、家事洗濯どころか運転も出来ない。
これで元世界最強の称号がなければ只のダメ女だ。
一夏が結婚でもして家から出ていったとしたら、まともに生活できるかすら不安だ。
「私は残りの全員を病院へ送った後IS学園へと向かう。頼まれてくれるか」
「・・・分かりました。送り届けます」
「ああ、頼んだ。 では、専用機持ちは山田先生のところへ集まれ、それ以外は私に着いてこい」
車内
「・・・・・・・・」
「・・・一夏?」
車に乗った時点で会話は少なかったが、ここまで一夏は一度も口を開いていない。
流石に不安を感じたシャルロットは、勇気を出して話しかけたのだ。
「・・・ん、どうしたんだシャル?」
「いや、特に用はないんだけど・・」
「・・・・そうか。実はバスが落ちた後に、おそらく犯人の一人に会ってるんだ」
「えっ?」
「あいつは俺を狙っていた。だから、俺一人で相手しようと思う」
「・・馬鹿なこと言わないで、命を狙われているなら尚更一人でなんか戦わせられないよ」
「・・・・・」
「死ぬかもしれないんだよ?それなのに、何で一人で戦うなんて言うの?」
「・・・・・何でだろうな。俺にもわからないけど、あいつは俺が倒さなきゃいけないって、そう思うんだ」
「・・・・・・」
「相手は必ず複数人いる筈だ。だからシャル達には、他の奴らの相手をしてもらいたい」
それでも・・・、そんな言葉が出そうになったが飲み込んだ。
何を言っても無駄だと、感覚的に分かったから。
「それにさ、やっぱり誰かが傷つくのは見たくないんだよ。皆、俺にとっては大切な人だから」
「・・・」
「だから俺は許さない。たとえ殺す気が無くても、バスが落ちたことで怪我をした人たちがいるんだ。その人たちの代わりに、俺はあいつを殴りに行くんだ」
「・・・・やっぱり一夏って馬鹿だよね」
「だろうな、馬鹿じゃなきゃこんな事言えないな」
「そんな一夏だから、私は惹かれたんだけどね」
「・・・・・・・・・・?」
一夏は気付いていないようだが、普通の感性を持つ人なら、その言葉の意味は理解できるだろう。
到着までまだ時間はかかる。
車内は再び静寂に包まれる。
車のスピーカーから流れている最近売れているアイドルの曲が、酷く頭の中に残っていた。
「簪よ、さっきのシャルロットの言葉の意味が良く分からないのだが」
「・・・全部終わった後に教えてあげるから」
山田先生が車に乗っていた記述がどこかにあったような気がする。