「・・・・嘘だろ、誰だか知らねぇが乗り込んできやがった」
まだ誰も来ないと思い、結構ゆっくり鼬を探していた男は驚愕していた。
「幾らなんでも早過ぎるだろ!あの場所から車でも3時間は掛かるんだぞ!ISでも数十分は掛かる!」
「それを何で、バスを落としてから二時間足らずで来るんだよ!?化け物かよ!」
頭を掻き毟る。
思考を開始する。
どの方法が最適なのか、どうやるのが一番手っ取り早いのか。
だが、何者かがやって来た事しか分からないため、思考回路は鈍る。
「何をしているアンリ」
後ろから凛とした声が聞こえてきて、アンリと呼ばれた男は振り返る。
「・・・・・マドカ」
「・・マスクはどうした、高かった筈だが」
「もういらないと思ってね、捨ててきた。それより、マドカは準備が済んだのか?」
「ああ、これで織斑一夏とタイマンで勝負ができる」
「で、それ以外を俺が相手するんでしょ」
「ああ、だが殺すなよ。いくらでも利用価値が有るのだからな」
「・・・・・・・・売るのか」
「そんな事をしたらアンリに殺される。あくまで交渉材料だ、その先は知らないがな」
マドカと呼ばれた少女は、織斑千冬と酷似していた。
彼女の頭の中には、既に勝った先のことが見えているらしい。
「それより侵入者だが、これはアンリ一人でも十分だ」
「実力も何もかもが未知数な相手と戦うのか・・・・めんどくさいなぁ」
「お前なら勝てるさ、お前のその力ならな」
「そうだけどさ・・・・」
「あと、四道鼬の居場所を見つけておいた。場所は病院ではなく保健室だ」
「げ、反対方向じゃん」
「急ぐんだな、侵入者の目的も四道鼬のはずだからな」
「りょーかい」
アンリが何故鼬に会おうとするのか、その真相を知るマドカは表情を曇らせる。
「これも神の気まぐれか・・・・」
いるか分からない神への、精いっぱいの皮肉を口にする。
表に出しはしないが、狐は鼬を溺愛している。
家族として、姉弟として、鼬を愛している。
ライクではなくラブで。
更識鞘は優秀なアサシンだった。
狐という家族を手にした後も、ほぼ一年中家にはいなかった。
たまに帰ってきても、書斎にこもって何かを書き、その合間に狐に武術を教えていた。
大きな屋敷にほぼ一人、麓に友達はいたが誰も屋敷には来ようとしなかった。
耐え難い孤独。
屋敷を包む静寂が、孤独という恐怖を掻き立てていた。
寂しさを紛らわせるために、鞘に言われたことを何度も何度も繰り返し。
疲れ果ててこと切れる様に眠る。
そうやって孤独を誤魔化し続けてきた。
狐に人としての自我は無いといったが、残っていることもある。
記憶だ。
今にも夢で見る。
名も顔も知らない相手に叩かれ、刺され、切り付けられる。
その度に飛び起きる。
本能に刻み付けられた誰かへの恐怖心。
未だに刃物を持つのだけは震えが止まらない。
外側は平静を保ちながらも、内側が壊れそうになっていた時だった。
鞘が鼬を連れてきた。
単純に嬉しかった。
心が安らいだ。
孤独から、解放された。
狐は、鼬に救われた。
「この前は守れなかった、でも今度は・・・」
体に埋め込まれたプロトISコアをフル稼働させる。
プロトISコアは、操縦者を治癒する機能を持ったが、そのかわりにISを動かすほどの出力を出せなかった欠陥品。
だが、人の体でなら十分過ぎるほどの力を出せる。
保健室へと辿り着く。
鼬がこの場所にいるのは知っていた。
家族だから、知らされていた。
ドアを開ける。
何も知らない鼬は、穏やかな表情で眠っていた。
「帰りますよ、鼬。皆のところへ」
歩み寄る。
大切な人の元へ、狐は向かう。
そんな時、肩をポンッと叩かれる。
「そういうわけにはいかないんだよ」
「貴様ッ!」
狐が振り返ると同時に、体に衝撃が走る。
「・・・・ッ!?」
言葉が出ない。
力が入らない。
立っていられない。
何も出来ずに崩れ落ちる。
倒れた拍子にメガネが落ちた。
「・・・・・油断してたな、あんた。こいつはもらってくぜ、もしもの時の為の保険にな」
連れていかれる。
何も出来ない。
手を伸ばす。
届くことなく空を切り、やがて地に伏した。
「生きてやがるのか、すげえな。この技を喰らったら、まず生きていない筈なんだけどな」
部屋から出ていった。
保健室に残る一人の女は、黒い泥の中へと消えていった。
死んでないからね。
さて結構終盤に入ってきました。
ヒロインも主人公も、何もやってねぇ。
ほぼ空気。
どうしてこうなった。
さて一応載せておきますが、次回作のことです。
もうすぐで終わりますしね、10話あるかないかってとこでしょう。
ポケモンの方は、プロットが無くなったので何とも言えません。
次回作は一次創作も考えていますが、なんだかんだでISになりそうです。
だって書きやすいんだもん。
それでは誤字脱字報告及びに感想待ってます。