星が見たかった。
この暗い地の底で、長年見ていない星を見たかった。
来る日も来る日も投与実験。
右腕は、かなり前に切り落とされた。
解剖すると言っていた。
代わりに、良く分からないガラスみたいなもので出来た義腕が付けられた。
原理は良く分からないが、思い道理に動いた。
勿論、感覚はなかったが。
そして今日も、向かいの部屋にいる彼女に、外にいた時の話をした。
もう、何年も前のことで、あまり覚えてはいなかった。
名前も曖昧になっている。
だが、幼き日の思い出だけは忘れずに覚えていた。
彼の話は、この研究所にいる時間の中で唯一の楽しみだった。
外を知らない私にとって、とても興味深い事だらけだった。
花火、花、木、川、海、美味しい食べ物。
なかでも彼は、星という物に対して強く語っていた。
住んでいた場所がイナカ?だったから、星が綺麗だったと。
その話をしていた時の彼の表情が、とても幸せそうで、いつの間にか私も星が見たくなっていた。
だから私たちは叛逆した。
時間は夜になっていた。
一夏達が病院についた時点で既に夕暮れ時だった。
そして、夜のとばりが降りて、敵が眠たくなったころに奇襲をかけることにしたのだ。
その作戦自体、穴だらけの欠陥品だったが。
可能性がある作戦は、それぐらいしか浮かばなかった。
相手がISを使うのは分かっていた。
そして、誘っているかのように位置情報がオープンチャンネルで公開されていた。
場所は第二アリーナ。
時間を出来るだけ短縮するため、一夏達は自分たちの居場所をステルス状態にして、第一アリーナの上を通り過ぎようとしていた。
そして真上を通った瞬間、最悪の予想外が起きた。
「星が綺麗だな」
織斑マドカは星を眺めていた。
ISを展開し、レーザーライフルのスコープを覗き込んで、星を見ていた。
通り過ぎた七つの機体。
その一番後ろにいた白い機体目掛けてレーザーを放つ。
出来るだけ出力は最低限に、でもISを撃ち落せる威力は維持して。
レーザーが弧を描く。
フレキシブルという技術だ。
無音で迫るレーザーに白い機体が気付いた時にはもう遅い。
小さな爆音が響き、落ちてくる。
「今だ」
手元に準備していたスイッチを押す。
これにより数秒だけアリーナのバリアは解除され、そして絶妙なタイミングでもう一度バリアが張られる。
他者の侵入を許さぬよう、セキュリティレベルMAX。遮断シールドのレベルも4に設定した。
歩み寄る。
「私の存在をすっかり忘れていたみたいだな」
さらに歩み寄る。
「そっちの会話は、お前に仕掛けた盗聴器で全部聞いていた。だから、ここで待っていた。もっともあの作戦になることも予想済みだったがな」
力強い足取りで。
「コピーか、血縁者か。どちらが強いか」
迷い無き表情で。
「さあ、殺し合おう。ここから生きて帰ったどちらかが、姉さんの後継者に相応しい」
強い殺気を放ちながら。
「なぁ、兄妹」
姉に良く似たその顔で、身内の首を取りに行く。
一方、第一アリーナ上空では、作戦が早くも失敗したことで狼狽えていた。
想定していなかった訳ではないが、まさかこんなに早く失敗するとは。
そんな六人の後ろに。
「お前らの相手は俺だ。誰にも邪魔させない」
堂々と現れる敵。
「力も使わない。今までのはこの状況を作り出すためのブラフだからな」
身に纏うは鮮やかな白銀。
「第二アリーナへ行こう。あいつも待ってる」
年齢は二十歳ぐらいだろうか、少なくとも年上の、透明な右腕を持つ男。
「全員纏めて、潰してやるよ」
鋭利な殺気が、6人を襲っていた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
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感想及びに誤字脱字報告待ってます。