逃げる白と、追う黒。
「くそっ!」
「どうした?逃げてばかりでは私に殺されるだけだぞ」
幾ら白式が二次移行したとはいえ、自分より相手が強いことには変わりない。
しかも二次移行したことによって、白式自体のあらゆる出力は増加している。
はっきり言って一夏はこの機体にまだ慣れていない。
(相手の武器は銃剣。近寄れば切られるし、離れればレーザーが飛んでくる)
距離が離れた、マドカは迷いなく引き金を引く。
一夏はレーザーを避ける。しかし、レーザーは弧を描き背中にヒットした。
(しかも曲がりやがる!やっぱり近距離で一気に攻めるしかないのか!?)
一応二次移行で追加された武器である雪羅を使えば、前方から来るレーザーは吸収する事が出来る。
勿論そんな事を一夏は知らない。
万能なシールド程度の認識だからだ。
(荷電粒子砲を使うか?いや、ただでさえ燃費が悪いのし、この相手に使っても目つぶし程度の意味しかない。それにこっちが追い込まれるだけだ!)
一夏自体、ISに乗るまでは遠距離攻撃をしてくる相手となんか戦ったことは無い。
剣道と、修行と称した喧嘩以外したことは無い。
数えきれないほどの不良グループを潰したが、一度も遠距離攻撃を仕掛けてくる相手はいなかった。
(だとしたらやっぱり近距離か!?いや、だけど・・)
隙を突かれて、近距離でレーザーを打たれたらひとたまりもない。
(くそッ!どうすればいい、どうするのが一番良い判断なんだ!)
しかし、最適解なんて出てこない。
それならば、と実力に自身のある近距離攻撃で攻める。
瞬時加速を使い、一気に距離を詰め、袈裟がけに振り下ろす。
だが、それも・・
「何ッ!?」
「その程度か?兄妹!」
銃剣に受け止められていた。
簡単に解説すると、剣道において先制攻撃は相手に隙があるか、相手が視認できないほど速いのどちらか以外では不利だ。
剣道には返し技が存在し、胴打ち以外は相手の方が強いと確実に返される。
しかし、引き分けに持ち込むのでは話は別だ。
剣道はある意味、後出しの武道。
返すのではなく、ひたすら受け止めるのであれば、初心者でも上級者に喰らいつくことが出来ないわけでもない。
更に上級者になれば、剣を受け止め、相手の態勢を崩すことも出来る。
どれだけ振りが速くても、止められれば意味はない。
ましてや往なされてしまえば、待つのは敗北のみ。
銃剣を少しずらす。
それだけで体重を剣に乗せていた一夏は、態勢が崩れる。
エネルギーが収束する音が、耳元で響く。
「終わりだ。あっけない最後だったな」
「いや、まだだ!」
直ぐに雪羅をシールドモードに変え、展開する。
ギリギリだったが、何とか間に合った。
「・・・・そんな物まで持っていたのか」
「ああ、まだ全然理解できてないけどな」
再び距離をとる。
これで分かった。
余程相手の態勢が崩れていない限りは、あいつに近距離攻撃は使えない。
なら、崩れるのを何とかして待たなければならない。
「一つ、聞きたいことがある」
「何だ」
顔を見た時から感じていた疑問を、口から零す。
「何でそこまで、千冬姉に似ているんだ。何故、俺の命を狙うんだ」
「何だ、そんな事か」
一夏の問いを、そんな事と一瞥した。
「クローンだから。簡単な話じゃないか」
「クローン・・・」
「ああ、だが織斑千冬のクローンではない。織斑一夏、お前のクローンだ」
「えっ?」
「理由は知らないがな。お前の方がDNAの入手が楽だったのかもしれないな」
「・・・・・えっ」
「研究所で生まれて、まだ7年といったところか。私の予想では、50までも生きられないだろう」
「・・・・・・・はぁ?」
「アンリだってそうだ。ISと一体化した体は、時が経つにつれ壊れていく。しかも人の体だからメンテナンスも出来ない。アンリも後20年ほどの命だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」
「四道鼬も三枝空狐も同じぐらいだろうな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前、何言ってるんだ!?」
「分からないか、分からないだろうな。人であって人じゃない私達の事なんて、理解できないだろうな」
「分かるわけないだろ・・・」
「私からしてみればな、羨ましいんだよ。同じ存在なのに、幸せそうなお前が羨ましくてたまらないんだ」
「だから殺す。殺して、お前の居場所を奪い、お前になり替わる」
銃剣を構える。
収束音が、アリーナ全体に木霊する。
「死んでくれ。私のちっぽけな夢の為に、死んでくれ」
砲身が震える。
充填できるエネルギー量は既に突破した。
引き金を引く。
今までの、何倍もの太さのレーザーが、一夏を襲う。
「・・・・・ッ!雪羅ッ!」
シールドを展開。
エネルギーを限界ぎりぎりまで流し込む。
空気が震える。
拮抗した二つのエネルギーが、相手を壊さんとする。
ぴしぴしとひびが入る。
まだ足りない、エネルギーを注ぎ込む。
ひびは、止まらない。
地に足をつけて踏ん張っても、後ろへ、後ろへと後退させられる。
パリンッ、とガラスが割れるような音と共に、シールドは崩壊する。
全てがゆっくりに感じた。
目の前に迫るレーザーに手の方から飲み込まれていく。
視界が、真っ白に染まった。
爆音と轟音が同時に響き、光が収束した後には、ほぼ全壊状態のISが、搭乗者のいないISが、悲しげに佇んでいた。
感想及びに誤字脱字報告待ってます。