血が飛び散る。
飛んだ血が、機体を、頬を、身体を穢していく。
戦いが始まってからずっと、拳だけで戦っている両者の腕は既に限界を迎えようとしていた。
いくらISが頑丈でも、絶対防御が有ろうとも、衝撃までは殺せない。
高速で金属と金属がぶつかり合うのだ。
終わりは確実にある。
もっとも、鼬のISは殆ど布みたいなものなので殆ど直に衝撃を受けているが・・・
「・・・・・はぁ・・はぁ・」
「・・貧弱だなぁオイ!」
言葉は虚勢。
鼬もアンリも、限界ギリギリなのだ。
「病み上がりにはキツイかぁ?そんなわけないよな!」
「・・・・ああ、勿論。温まり過ぎて融けそうだ」
「そうこなくっちゃなぁ!」
アンリは左の拳で殴りにかかる。
(流石にこれ以上ぶつけ合うのは得策じゃない)
体の前で腕をクロスさせ、アンリの攻撃を受け止める。
メキメキと骨が鳴る。
ひびが入ったのだろう。
溢れる悲鳴を抑え込む。
「ぐっ・・・」
「待ってたぜそれを!」
「何ッ!?」
痛みで反応が一瞬遅れる。
その隙を突かれた。
アンリの右腕が、鼬の首を捉えた。
「がっ・・・・・か、かはっ・・・」
「捕まえた。安心しろ、折らねえよ」
「あっ・・あがっ・・」
息が出来ない。
空気が足りない。
思考回路が鈍る。
目の前が歪む。
苦しい。
苦しい。
苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい
これ以上はダメだ。
脳が壊れる。
たとえ無事でも障害が残ってしまう。
「さっさと失神しろよ。あいつらの目の前で切り落としてやるからよ」
体中が酸素を求めている。
右手を何とか緩めようとするが、もう腕に力が入らない。
(負けるのか、あいつと約束したのに、無様に負けるのか)
世界が霞む。世界に溶けるような感覚だ。
(くそっ、ダメだ。もう意識が・・・・・)
ザシュ
「えっ?」
右手が緩む。
薄れた意識が徐々に回復する。
目の前には、刀があった。
「く・・・そがぁ!」
「私だって、少しぐらいは役に!」
打鉄とは違う。
鼬たちと一緒に作ったISを身に纏い、更識簪は刀をアンリの腹部に突き刺していた。
強引に体を捻り、その右腕で簪を掴みにかかる。
その伸び切った右腕を、鼬は全力で曲がらない方向へと殴る。
衝撃を逃がしきれなかった水晶体の腕に、小さなひびが入る。
そしてひびは広がっていき、ガラガラと崩れる。
「これで!」
「ふ・・ざけるなぁ!」
右腕を失い、身体のバランスは崩れた。
更に、簪を無理やり狙ったから態勢も悪い。
ハッキリ言って、がら空きだ。
「トドメッ!」
渾身のアッパーを、顎に打ち込む。
ボキッ、と嫌な音はしたが確実に決まった。
アンリは少し上方向に飛んだあと、ISが解除し、重力に従って下降し始める。
それを、鼬はボロボロの腕でキャッチする。
全てが終わったとき、雲の隙間から、満月がチラと見えた。
後二話ぐらいで終わりです。
あんまりおもしろくないかもしれませんが、最後までお付き合いください。