そこに居たのは研究室と警察署で会った刑事さんだった。鋭い目つきと気配でこちらを見ていたが落ち着いた声でこちらに問いかけてきた。
「昨日、警察署で戦ったのは君だな?」
「……何故それを」
昨日は戦った時に自分だと思わせる素振りなど見せなかった、それだけでない見た人などいないはずだった、思わず目線を逸らし唾を飲み込む自然と扉を掴む手に力が入る。
「何故か、それは昨日の戦いの後に君の姿が監視カメラで写って居てね」
それを言う刑事さんは鋭い目つきを向けつつも何処か呆れたようにこちらを見ていた。それに対して僕は思わずうめき声ともつかない声がつい漏れる。
「ぁ…ぐぅ……とりあえず中へどうぞ」
「ああ、お邪魔させてもらう」
僕は中へ案内するとコーヒーを淹れつつこれからどうしようと頭を悩ませつつコーヒーが溢れるのを見過ごしてしまった……慌てて布巾で拭くとカップ皿に震える手で乗せカタカタとカップを鳴らしながら差し出した。
「それでなんの用でしょうか」
「そう急くな、私の名前は一条薫と言う、朝日雅空くんなに、取って食おうと言う訳では無いんだ安心して欲しい、ただ……忠告と警告をしに来た」
そう言われた…予想はついてた、彼が居ると言うことはそういう事なのだと、彼は警察としての職務を全うする尊敬すべき人物であり、そして協力をして貰わなければならない最重要人物である。僕はコーヒーを口に含むとその言葉も飲み込むように嚥下し、持ち落ち着いた様子でキーワードを反芻した。
「忠告と警告ですか……」
「あぁ、はっきり言おう君には戦う責務はないまた、このままだと君は我々警察にも狙われることになるだろうそれは私としても看過できることでは無い」
「……えぇ、分かっていますですが僕はもう戦わずに居る事はもう出来ない」
それを聞き一条さんは鋭い目つきをより鋭くさせた、そりゃそうか刑事として警察として職務を全うする彼にとって僕は護るべき一般人でしか無かった、その僕が怪物と戦いましてはまた戦う意志を見せている
「それは何故だ、何が君をそこまでさせる」
「僕はただ皆を守りたいそれだけでした、あの姿になるつもりは無かった勿論のこと戦うなんて以ての外です。だけど1度あの姿になれば戦わずには居られないんですよ」
そう僕は告げると溢れ出そうになる弱音をコーヒーと共に飲み込み決心を固めた。
「…お願いがあるんです……協力をして貰えないでしょうか?」
「協力だと?」
眉尻を上げ小首を傾げて訝しげにこちらを見る一条さんは続きを促す。
「えぇ、無理を承知で言ってるのは分かってます、ですがあなたの力を無くしてこの先ずっと戦い続けることはできません。」
「……ダメだ…君が命をかける必要など無いましてや君は民間人だ、あの場にいることすら看過できるものでは無い」
「そうですよね……ですが俺も引くつもりはありません僕がクウガになったのは護る為ですから」
「クウガ……?」
僕の言葉に反応した一条さんはコーヒーを飲んでいた手を止め思わずそう呟いた。そのつぶやきにいち早く言葉を返したのは沢渡さんだった、彼女はじっと僕らの話を聞いてたがここぞとばかりに話に介入した。
「クウガと言うのは彼のあの姿の名前なんです」
「そうなんですか…いやそんなことより引くつもりがないとは頑固ですね」
「……えぇ、まぁ」
そう返事をした時、スマホが鳴る音がしたどうやら一条さんのスマホからだったらしく軽く会釈した後通話に入った。
「なに?また不思議な事件なのか?」
「やはり…次はコウモリか」
そう僕が呟くと目線を鋭くさせこちらに向いた、それに対し僕はわざとらしく目線を避け斜め上の方向を向いて素知らぬフリをする。
「くっ……あ、いや何でもない、とにかく急いで向かう」
「行くんですね」
電話を切り終えた一条さんにそう尋ねると眉を寄せ鋭い目つきで顔しかめながらこちらに問いを投げかけてきた。
「あぁ、だが知っている素振りだったな?後で詳しく聞かせて貰うぞ」
かかった、そう思った僕は笑みを浮かべそうになるのを抑えてメモ書きに書いた自分のスマホの電話番号を手渡した。
「えぇ、どうぞコレ電話番号です」
渡されたメモ書きに一瞥をくれると手帳に挟み懐にしまい残っていたすっかり冷めてしまったコーヒーを飲み込み席を立つ。
「……そうか…受け取っておく」
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夜、僕は覆面パトカーの後ろを追った、勿論その先に怪物が居るのを知っているからだバイクを走らせ落ち着かない心臓を深呼吸して紛らわせようとする。
現場に着くと警察官達が既に傷を負って死屍累々のごとく倒れておりその前では一条さんが拳銃を撃っていた、だが殴り飛ばされドラム缶へとぶつけられる、それを見た僕はすかさず走りながら白のクウガへと変身を遂げる。
「くっ……ハァァァア゙!!」
走りつつも顔をまっすぐにし目線は敵を捉え右手を盾のように構え、左手を後ろに引き腰をしっかり回転させて、腕を力強く振り抜くと殴った感触が拳から伝わる。
「グァ!?」
「フゥ……ハァァァァ!」
続けざまに右足を前方に蹴り出し敵の上半身を狙う、思わず仰け反った怪物はよろめいた、その隙を逃さずに詠春拳を真似し拳を交互に小回して拳を連続に叩きつけ最後に構えをする。しかし一気に場は膠着状態に陥ってしまった。相手も僕も次の行動を伺いじりじりと近づいていくのみだった。その時1発の弾丸が怪物に当たり気を逸らした、その隙を逃さず僕は体を横に捻りながら、右る足を横に振り出し、相手の脇腹を狙い足を鞭のようにしならせ蹴り抜いた。
「グゥア!?」
疲労が限界に近い…そう感じた、身体が重くてたまらない全力での一撃をずっとし続けるのは無理があったようだった思わず膝を屈してしまう。そんな大きな隙を怪物は見逃す訳もなく素早く近づいたかと思えば地面スレスレの軌跡で鋭く尖った爪を振り上げる刹那、手を交差し防御の構えを取る僕をそのまま斬り飛ばした。
「グア゙ア゙ア゙!?」
思わず苦悶の声を上げ吹き飛ばされると立ち上がる事もなくそのまま力尽きてしまった。
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翌朝になり警察病院の診察室前に待っていると看護師に呼び止められつつも飛び出す一条さんが出てきた。
「まだ退院はできません!戻ってください!」
思わず感情的になった一条さんはそう言い看護師の手を振り払った、その時に気付いたのだろう申し訳ない顔しつつ軽く頭を下げた。
「大丈夫です!……色々と調べたい事があるんで」
そう言うと彼は足早にエレベーターの方へと足を向け早々に去って行こうとした、その後を僕は追い声をかける。
「一条さん!」
「まだ居たのか?」
その言葉にはトゲがあった、こちらを一瞥することなく出しゃばるなと告げ、エレベーターのボタンを押すとこちらをようやく見たかと思えば
「あくまでも君は民間人だ、君が戦う力を得たと思うのは勝手だがやはり君に戦う義務は無い!」
「……」
「これは我々警察の仕事だ、中途半端に関わるな!」
そう言った彼はエレベーターへと乗り込んでいってしまった。やはりまだ僕は中途半端だったのだろう……それが彼にも伝わっていた。
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家へ帰ると葬式に行ってた沢渡さんが玄関前で待っていた。中へ案内し、暖かいお茶出すと一息ついた彼女が様子のおかしい僕が心配になり声をかけてきた。
「何かあったの?」
その問いに僕は小さく頷いて力なく椅子に座り項垂れて言った。
「赤い戦士になれない……」
「赤い戦士?」
「赤い戦士が本来の姿なんだ、なれないのは…僕が中途半端だったからだと思う」
そう告げる僕の手は未だに殴った感触が残っていた、思わずその感触の残る右手を左手で包み込み恐れ震える手を隠す。
「でも覚悟しなくちゃいけないんだ、このままだと僕は戦えないまま終わる、そんなのは嫌だ、だからこそ僕は護る為にこの命の炎を燃やして、燃やし尽くしてその先を迎えなければいけないんだ……。」
「その先って?」
「みんなが幸せに笑顔で生きている。理不尽に襲われる事なくそして大切な誰かを失わずにすむそんな世界」
「だったら叶えよう、私も支えるから」
「うん、理想を抱いて溺れる気なんてないからね」
そう言うと僕は戦う覚悟と護る覚悟がついた、彼女には感謝してもしきれないと思った。そうして僕はバイクを教会へと走らせた。
【続く】
お気に入りの件数が増えたことにより筆が乗り、もっと日にち開けて書こうかと思ったけどノリに乗って書き上げました。僕は空我になりたくなかったを引き続き宜しくお願いします