黒龍は白に溶ける。   作:dai1228

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## 第十一話:教師の矜持、あるいは神子への審判

 花御が撤退し、静まり返った森に、ただ一人の足音が響く。

 湊は、赤と黒の呪力が混ざり合う異形の龍『黄泉』の傍らで、膝をつき激しく吐血していた。脳の過負荷は限界を超え、視界は赤く染まっている。

 

「……湊。それ以上はやめなよ。君の脳、もう半分くらい『別の何か』に作り変えられてるよ」

 

 背後からかけられた声は、いつになく冷たかった。

 振り返らなくてもわかる。最強の呪術師、五条悟だ。彼はいつもの軽薄な笑みを消し、目隠しを外したその「六眼」で、湊という存在そのものを厳格に鑑定していた。

 

「……あはは、先生。……見てよ、この龍を。火山と森、宿儺の毒。……これらが混ざり合って、一つの方程式になった。……美しいだろ?」

 

 湊が指し示した先では、黄泉が六つの瞳で五条を睨みつけていた。触れるだけで物質を分解し、過剰な再生によって自壊させる絶望の化身。五条は、その龍の核にある「母親と湊の魂」が、もはや人間としての形を保っていないことを察知した。

 

「美しくはあるけど、不自然だ。湊、君の**『万生配合術』**は、世界のパズルを解く力じゃない。無理やりピースを削って、自分に都合よく接着しているだけだ。……それは呪術じゃない。ただの『破壊』だよ」

 

 五条が一歩踏み出す。

 瞬間、黄泉が防衛本能で咆哮し、湊の意思とは無関係に五条へ飛びかかった。触れれば無に帰す「分解」の顎。

 しかし、五条は避けない。

 彼の周囲に展開された「無限」が、龍の分解の波動を完全に遮断する。

 

「……あぁ、やっぱり先生は最高だ。……僕の『分解』すら、あなたの無下限には届かない」

 

「湊。僕は君を『怪物』としてここに連れてきたわけじゃない。……でも、君が自分自身さえも素材にして、その先にある『一つ(全)』を目指すと言うなら……」

 

 五条の手が、静かに空を切る。

 

「教師として、一度その『配合皿』を叩き割ってあげなきゃいけないかな」

 

 五条から放たれる、かつてないほどの威圧感。

 湊は震える足で立ち上がり、法界定印を組み直した。口角からは血が溢れ、脳内ではニューロンが焼き切れる火花が散っている。

 

「……やってみてよ、先生。……僕を壊せるのは、僕を越える『純粋な力』だけだ。……あなたのその青い瞳、僕の龍に混ぜたら……きっと、世界は完成する」

 

 師と弟子。最強と最悪。

 交流会の喧騒から遠く離れた森の深部で、誰にも知られることのない「聖域の解体」が始まろうとしていた。

 

五条悟vs九条湊。

 

これまでは「面白い素材」として湊を見ていた五条が、一人の呪術師として、そして教師として湊の暴走を止めるために立ちふさがります。




次回、第12話。湊の秘策、自分自身の肉体と龍を配合する「人龍合体」の禁忌が幕を開けます。
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