「あはは、あはははは! 見てよ先生、世界がこんなに『バラバラ』だ!」
湊の笑い声は、もはや人の喉から発せられるそれではない。龍人と化した彼の肉体からは、制御を捨てた「分解の波動」が漆黒の稲妻となって全方位に撒き散らされていた。踏み締めたアスファルトは砂へと還り、周囲の空気さえもが結合を解かれ、異様な真空状態を作り出していく。
五条悟の放つ術式順転「蒼」。空間そのものを無理やり一点に凝縮し、対象を捻じ切る絶対的な引力が湊を襲う。だが、今の湊に「恐怖」という概念は存在しない。彼は回避を選択せず、むしろ自らその死の渦中へと飛び込んだ。
「結合しろ、崩壊しろ、混ざり合え! 先生の無限、僕が全部食い破ってあげる!」
湊の黒い爪が、目に見えぬはずの「蒼」の指向性を無理やり掴み取る。本来なら触れることすら叶わないはずの数式上の引力を、彼は「素材」として認識し、自らの分解波動と強引に「配合」させた。
分解と吸引。相反する事象が湊の腕の中で激突し、空間がガラスのようにひび割れる。その反動で湊の腕の鱗が弾け飛び、鮮血が舞う。だが、彼はその痛みすらも「極上のスパイス」であるかのように、悦びに満ちた瞳で笑い続けた。
狂気に染まった二つの瞳が、五条悟の喉元だけを見据えて加速する。
音速の壁、そして「不可侵」の壁。その両方を、湊は呪力を限界まで練り上げた右拳で殴りつけた。湊の背中にある翼が、推力を得るためではなく、ただ世界を壊すための暴力的な輝きを放つ。
「――っ、届けぇぇ!!」
パリン、と。
五条悟の絶対防御、無下限の防壁が、湊の身を削るほどの狂気によって真っ向から粉砕される。指先が、五条の目隠しに触れた。その下の「六眼」が、湊の壊れた魂を映し出す。
だが、最強は笑わなかった。
ただ、憐れむように、あるいは教え子への祝辞を贈るように、静かに指を交差させる。
「……合格だよ、湊。でも、君のノイズは少し大きすぎた」
刹那、湊の視界から色彩が消えた。
「**領域展開――『無量空処(むりょうくうしょ)』**」
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白い闇が、湊の狂気ごと世界を飲み込んだ。
脳に直接流れ込む、無限の「生」と「死」、そして終わりなき情報の濁流。配合師として万物を「知る」ことを求めてきた少年にとって、それはあまりに過酷な、しかし皮肉にも満たされた死の福音だった。
思考は白く塗りつぶされ、最強の「答え」を前に、湊の「問い」は永遠に続く空白へと飲み込まれていった。
ご覧頂きありがとうございました!
戦闘は激化し湊は五条悟の領域展開に呑み込まれました。
まだまだ物語は続くので乞うご期待ください。
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