黒龍は白に溶ける。   作:dai1228

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## 第三話:魂の調律、あるいは無為転変の終焉

 地下五階、副都心線ホーム。そこは、真人が「人間」という素材を弄び、数多の改造人間が溢れかえる地獄絵図と化していた。

 

「あはは! 見てよ、この形! 魂ってのはさ、こんなに自由で、こんなに脆いんだ!」

 

 真人が愉悦に浸りながら、一人の一般人を異形の肉塊へと変えようとしたその時――。

 放たれた真人の呪力が、肉体に触れる直前で**「パズルのピース」**が崩れるように霧散した。

 

「……誰だい? 創作の邪魔をするのは」

 

 暗がりの向こうから、漆黒の外套を羽織った湊が、静かに歩み寄る。その背後には、以前よりもさらに洗練されたフォルムを持つ黒龍『黄泉』が、三対の眼を冷酷に光らせていた。

 

「君の『作品』は不純だね。……それは自由じゃない。ただの『強制的な歪み』だ」

 

「おや、九条湊! 君なら僕のこの『美学』、わかってくれると思ってたのに。……なんだか、ずいぶんと『綺麗好き』になったじゃないか」

 

 真人は顔を歪ませて笑い、自身の腕を巨大な鎌へと変形させて突き出す。だが、湊は視線すら動かさない。黄泉がその顎を開き、真人の攻撃を**「接触面から分解」**し、無力化した。

 

「……今の僕は、混ぜることに興味はない。……ただ、不自然に繋ぎ合わされたものを、元に戻したいだけだ」

 

 湊が右手を、真人が作り出した改造人間たちの群れに向ける。

 

「**術式精錬――『純化解体』**」

 

 瞬間、周囲にいた数十体の改造人間たちの動きが止まった。彼らの肉体は、真人の『無為転変』によって強引に書き換えられた情報の塊だ。湊の術式は、その「書き換えられた履歴」を分解し、情報の連続性を断ち切る。

 

 改造人間たちの肉体が光の粒子となって崩れ、そこから解放された「魂の残滓」が、安らかな静寂と共に霧散していく。それは救済ではなく、**「情報の強制的な初期化」**だった。

 

「……っ!? 僕の術式を、上書きではなく『初期化』しただと……!?」

 真人の顔から余裕が消える。

 

 かつての湊ならば、真人の術式を「面白い素材」として欲しがっていただろう。しかし今の湊は、真人の術式そのものを「世界のバグ」として排除しようとしている。

 

「君の魂は、あまりに多くの他者を混ぜすぎて、もう修復不能なほどに濁っている。……僕が、バラバラにしてあげるよ。一欠片の純粋な呪力に戻るまで」

 

 湊の合図と共に、黒龍・黄泉が咆哮を上げる。

 龍が纏うのは、触れるものすべてを存在以前の形へと解体する**「完全分解のオーラ」**。

 

 魂を弄ぶ呪いと、魂を解体する調律師。

 歪んだ理想郷の主導権を巡り、真の「魂の選別」が始まった。




湊vs真人。
かつての湊なら、真人と意気投合していたかもしれませんが、幽閉を経て「あるべき形」を尊ぶようになった湊にとって、真人の術式は最も唾棄すべき「不純物」となりました。
次回。真人の「遍殺即霊体」に相対する。
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