お茶会
絶対高い紅茶ですよねコレ。なんというか、なんか、こう、高い値段の波動を感じます。それはそれはもうひしひしと。
このカップといい、椅子といい、高いものでないと気が済まないんですか?庶民派の私からすればきっと手も届かないような値段なんでしょうね。このクッキーも絶対──うわ、ふわっとしてる。予想を裏切られた気分。絶対さっくり系のクッキーだと思ってました。へぇ。新体験
「……君は変わらないね」
へ?私ですか?そりゃそうでしょう。私、というか人間なんてそう簡単に変われるもんじゃないんですよ、というか急に変わられても困るでしょう。どうしますか?私が急にうぇーいセイアちゃんいぇーい。とか言って肩組んできたら。怖いし、困るでしょう?そういうもんなんですよ。
でも、変わってると言っては何ですが最近チェスを覚え始めてですね。覚えてます?初めてチェスをしたとき。もうほんと、私文字通り手も足も出なかったでしょう?だからですね、練習というかなんというかをね?始めてみたんですね。今では手ぐらいには出せるように仕上がってますよ。やってみます?チェス。
「本題に入ってもいいかね?」
本題。ええ、構いませんよ。私は今あなたの茶会に招待されているわけですから、それに口を出す権利など初めからないです。どうぞ、続けてください。
「君だけには真実を語ってもよいと思ってね」
真実ですか、大きく出ましたね。いいでしょう私に残された選択肢は聞くしかありませんからね。
「私は、これからアリウス分校の襲撃を受る。よくて昏睡、悪くて死ぬだろう」
死ぬ?死ぬって言いました?なんと、それはまた、けったいですね。私からはあなたが死後安らかに眠れるように祈ることしかできませんが。まぁ、どんまいってやつですね。墓には何を備えたらいいですか?
「その後、先生がやってきて、あとはハッピーエンドまでのシナリオをなぞるだけ。」
おお、それは良いことを聞きましたね。ハッピーエンド。なんて甘美な響きなのでしょう。
私も精々自身が享受できる限りの幸せをつかみたいところではありますが。
「そこで私は演技をする。夢で見たようなの最悪で醜悪な終わりを見てしまった哀れな子狐のね」
「君にはそれを見守ってほしいんだ。」
私にですか?それは、重役過ぎませんか。私は自分でいうのもなんですが、ぞんざいな奴ですよ。
でも、まあ、いいでしょう。あなたには返しきれないほどの恩がありますから。それがあなたの願いというのであれば。わたしは手伝いましょう。出来る範囲ではありますが、ね。
「……そうか」
「最後になるが、一つ聞いておきたいことがある」
はい。なんでしょう?できるだけ答えられるように善処するつもりではいますが、
「楽園に辿り着きし者の真実を、証明することができるのか」
「君はどう思う?」
ふむ、なるほど。つまりは、どういうことですか?いや、すみません。頭は良いほうなんですが、あ、やめてくださいね、私のメンタルは柔いので否定するのであれば、こう、やんわりとお願いします。簡単に泣きますから。ええ、頭はいかんせん切れるほうではなくてですね。はい、待ってくださいねなんとか考えますから。えーっと楽園が、どうたらと。つまりは楽園はあるかっていう話でしょうが。うんうん。まったくですね、わかりません。信じるところによるんじゃないんでしょうか。なんか、ほら。あったじゃないですか。皆が歩む道がいずれ道になるとかいう話が。あれと似たようなものじゃないんでしょうか。いや、違うな、そういうことをね、聞かれているんじゃないんだろうな。もっと、こう私らしい答えを求められているんでしょうね。うむ、そうですねそうだな、ええと、あくまで私の意見なんですけどもね、例えばこういうのはどうでしょうか。
「────────────ー」
「ふふ、そうだろうとは思ったよ」
あら、期待通りの回答でしたか、これはこれは、なんだか、負けた気分がしますね。
いや、はなから勝てるとは一ミリたりとも思っておりませんが。ええ、負け惜しみではございませんよ。
「言乃ツムグ、いや、
はい、かしこまってどうかしましたか?
「君は変わらないね」
はい。そりゃあ、もちろん。
人間、そんな簡単に変われませんから。
お茶会は続く