「……」
さて、どうしようか。
『彼女』の為にも、クリアは目指す。が…
「協力、協力ねぇ……よほどボクを
ここに放り込まれる前に無理やり付けられた条件。それを達成する為にもまずは人を見つけた方が早そうだ。
「善はなんとやら。さっさと街に向かうか……」
☆ネル(百花みつ)
「〜〜……っ!」
逃げた。
とにかく逃げて逃げて、走って逃げた。
魔法少女になってから戦いなんてしたことない。
そんな私は骨のモンスター、スケルトンから逃げるという選択肢を即決せざるを得なかった。
『チュートリアルモードです。戦い、敵を倒してください』
「そん…っ!な、こと!言われても!無理!」
なぜか懐に入っていたマジカルフォンから機械質の音声が鳴る度に、反射的に言い返してしまう。
「〜〜っ!また⁉︎」
後ろからスケルトンの気配が無くなったと思うと、私の逃げ道を無くすようにスケルトンが5体出てくる。まるでゲームのように。
さっきも振り切れたと思った瞬間に目の前に出てきて、また逃げて、出てきてを3回は繰り返していた。
もしかして倒すまで終わらない…?
でも戦い方なんてわからないよ!
「っ、ど、どうしよう…」
逃げて逃げて、逃げ続けた先でスケルトンに囲まれてしまった。後ろには廃ビルの壁があって、それに背をつけてる私を取り囲むようにスケルトンがジリジリと寄ってきていた。
「や、やるしか…ないの?」
今更ながらに気づいた、背負っていた(ほぼ飾りのような)巨大な十字架を手に持つ。
けれど震えてガタガタと切先が安定してくれなかった。
「(大丈夫、人じゃない。魔法少女なら力も強いから、思い切り振れば……)」
スケルトンを、じっと見る。けれど見れば見るほど恐怖が湧き出てくる。
「う、うぁあ!」
悲鳴のように声を上げながら、思い切り振り回した。
『お疲れ様です。戦闘チュートリアル終了しました』
「……え?」
マジカルフォンから音声が響き、目をゆっくり開く。
目の前にはさっきまでは無かった廃ビルが落ちていてスケルトンを押し潰していた。
妙に明るいなと思い真上を見上げると、私が背にしていた廃ビルが中ほどで真っ二つになっていた。
え、なにが?私そんなことできない…。
もしかして、他にも誰かいる?私だけじゃない?
「〜〜…!た、助けて、もらえるかも…」
もう頭の中はずっとパニック状態で、冷静に物事を考えれなかった。
とにかく誰かに助けて貰いたいと思って廃ビルを上に(なんとか頑張って)這い上がっていく。そうすれば誰か見つけられるかもしれないと藁にもすがる思いで。
魔法少女としての身体能力にこれほど感謝したのは、後にも先にもこれが最後かもしれない。
ピシッ
「え?」
ズガァン!
「きゃっ⁉︎」
突然目の前の壁が壊れた。
掴んでいた場所が崩れ、廃ビルがいとも簡単に瓦礫へ変わっていく。
「(って、そんなこと考えてる場合じゃない!着地、着地しないと…)」
そう思うも後の祭りで。空中に放り出された私の体、四肢はバタバタと空を切るばかりだった。
「(死、死ぬ!ど、どうすれば。い、いや、魔法少女の体ならきっと、死な、ない…)」
ぐんぐんと体が落ちていく。
ちょっとでも衝撃を耐えられるよう、体をなんとか縮こませ、できる限り丸くなった。
もう直ぐ、地面に激突する…いや、大丈夫、きっと、耐えられ--
ボスッ
「むぎゅぅ⁉︎」
「いっっっ…」
思っていたような衝撃は来なかった。
「はぁっ…はぁっ……だ、大丈夫、ですか?」
「え?」
聞こえてきたのは、別の誰かの声。しかも顔の横から聞こえてきた。
「……」
「あ、あれ?その…大丈夫、ですか?」
もう一度同じことを聞かれて、声の方向へ振り向くと顔があった。
少し童顔で、コックみたいな帽子を被ってる人だった。
「あ、あのー…」
「あっ⁉︎ごめんなさいごめんなさい!大丈夫!ありがとうございます!」
どうやらこの人に下で受け止めてもらってたらしく、お姫様抱っこみたいになっていた。
それに気づいて恥ずかしくなり、慌てて降りる。
「はぁはぁ…だ、大丈夫でしたか?怪我とか…」
「え、えーと、うん、大丈夫です!みつに…じゃなくて私に怪我はないです!助けてくれてありがとうございます!」
「いえ、無事でよかったです」
改めて助けてくれた人を見ると、ぱっと見は中学生くらいの子。だけど服装は洋風のコックでちょっとおしゃれに装飾されていた。
「あの、私は『ネル』と言います。本当に、助けてくれてありがとうございます!」
「い、いえ。私は『ペチカ』と言います。……あ!忘れてました!早くここから離れたほうが…」
「え?」
ドォン!
ペチカさんの言葉を遮るように、私の後ろで何かが墜落したような音が。
「き、きた…」
ペチカさんが恐怖に怯えた顔で私の後ろを見ていた。
心臓がバクバクと、逃げろと警鐘を鳴らしてくるけれど、後ろから感じる殺気のせいで恐怖が体を支配して、碌に動けなかった。
恐る恐る、ゆっくりと、振り返る。
「ガァッ!」
「あっぶな…いや、指数本やられたな…」
「音楽、家ァ……」
そこにいたのは2人。
1人は銀色の髪で、銀を基調としたセーラー服を纏っている人。首には機械質のゴーグルを下げていた。
もう1人は侍のような格好をして、纏められた髪から一輪の花が咲いていた。手には刀を持っていて、執拗に銀色の人に襲いかかっていた。
「あ、あれは…」
「わ、私もわかりません。刀を持った人があの銀色の人を見つけたと思うと急に襲いかかって…」
侍風の人が刀を振り抜いたと思うと離れた場所がスパッと斬られ、銀色の人は(文字通り)地面に潜ったり、上に逃げたり、時には殴ったりしていた。
私たちの周りも出鱈目に斬られ、どんどん瓦礫と化していく。
侍風の人は執拗に--まるで何かの恨みがあるかのように--銀色の人へ襲いかかっていた。
私とペチカさんはそれを震えながら見ることしかできず、早く終わってほしいと、私たちに気づかないでくれと、どこかに行ってほしいと、心の底から願った。
永遠にも思える時間が経って、それは唐突に終わった。
銀色の人が侍風の人の足を踏み、両手首を掴み、強引に動きを止めてみせた。遠目で見ても手首が明らか変な方向に曲がっている気がしたが、争いは止まっていた。
「はぁ…はぁ…なぁ、終わったんじゃ無いのか『音楽家』ァ。また、やらせるのか」
「だから、音楽家じゃ無いって……言ってるだろうが……しつこい…」
「………………。いや、違う……。音楽家によく似ているが……音楽家の気配は……もっと、こう……」
よく聞こえなかったけど侍風の人が何かを呟いたと思うと、刀を納めて何処かへ去っていった。
とりあえず…ホッとしていいのかな。
「はぁ…よか、た…」
「本当です……」
ペチカさんと同じタイミングでへたり込んでしまい、思わず--銀色の人にバレたくないので静かに--笑い合った。
キャラクター紹介
・ペチカ
魔法少女育成計画restartに登場しているキャラ
コックと魔法少女の華やかな衣装を組み合わせたような格好をしている
魔法は「とても美味しい料理を作ることができるよ」
・アカネ
魔法少女育成計画restartに登場しているキャラ
侍のような格好をしている。
魔法は「見えているものは何でも斬れるよ」
・???
オリジナルキャラ
銀色の髪に銀色を基調としたセーラー服を着用している。
何やらこのゲームについて何か知っていそうで…?
魔法は「何でも《----》することができるよ」