「…………。誰だ」
荒野の次のエリアで魔物を狩ってると、誰かに見張られだした。
身分を隠したりとか偽ったりした記憶もない。というか例の5人と侍以外には姿を見せた記憶もない。
まだ追われるようなことをした覚えも(たぶん)ない
あの5人の気配は覚えたし、そもそも--
「いや、どうでもいいか……」
少しして考えるのをやめ、襲いたいならどうぞくらいの精神でいるとしよう。
「なぜ奴が……いや、私が来ているから必然かもな」
???の視界外から望遠鏡でのぞいていた魔法少女は、そう呟いた。
☆ペチカ
私とネルさんは例の3人組--半分動物のクランテイルさん、カタコトな言葉を喋る巫女風の御世方那子さん、お人形さんみたいなリアネッタさん--とパーティを組むことになった。
暫く荒野を歩いているとようやく街が見え、那子さんが誰よりも速く走っていくのをネルさんと一緒に遠目で眺めていた。
「やっ…と、ですぅ…」
「みつ、もう休みたい…」
そもそも普通に暮らしてただけなはずなのにこんな場所に連れ去られて、あんなに元気いっぱいなのがよくわからない。
ネルさんも同じみたい。
精神的な疲労が拭えないまま門を潜ると、懐のマジカルフォンから軽快なファンファーレが鳴り響いた。
驚きながら画面を覗くと『サポートコマンドが解放されました』と書かれていた。
続いて画面の上に光の帯が広がり、収束し、像を結んだ。
右反面が黒、左反面が白の線対称の球体で、片面に蝶のような翼が生え、ふわふわと浮いているものが浮かんできた。立体映像だった。
「初めまして!『魔法少女育成計画』のマスコット、『ファル』と申します!これから貴女達をサポートさせて頂きます!」
出てきた手のひらサイズの生物(?)はファルと名乗り、いま私たちがいるのは『魔法少女育成計画』というゲームの中だと説明した。
私たちをここに連れ去ってきた張本人なのかと私とネルさん以外の3人が詰め寄り始めたが、予想通りだったのか終始ファルは落ち着きながら3人の質問に答えていた。
「まず皆様が一番不安に思っているであろうことからご説明させて頂きますぽん。
皆様は魔法少女達の中から選ばれた人達ですぽん」
「選ばれた、とは?」
「そのままの意味ですぽん。数多いる魔法少女の中から、皆様の才能は突出していると、そう判断されましたぽん」
「だからと言って急にこんな所に連れてくるなんてクレイジーでス!」
「ご尤もですぽん。ですが、ファルには残念ながらゲームの強制終了などの権限は付与されておらず、ゲームから抜けたいなどの要求には応えることができないぽん。非常に申し訳ないぽん」
語尾はふざけてるように聞こえるのに、声はとても誠実に聞こえるものだからクランテイルさんに那子さんも黙ってしまった。
「では、クリアまでこの中で過ごせと、そう仰いますの?」
「いいえ、そのようなことはありません。多少増減する可能性はありますが、3日間連続で参加して頂きます」
ファルはとんでもないことをサラッと言った。
こんな世界に3日間も?お母さん達が絶対心配する…。
「ご心配していることはわかります。ですが、安心してほしいぽん。この世界では時間が圧縮されています。その為、現実の生活に支障をきたすことも無し。現実では一瞬しか経ってないぽん。仮に死んだとしても、現実へのダメージフィードバックは
「それより、この報酬は本当に支払われますの?」
「勿論です。参加賞のみ、ゲームをリタイアしてしまった時に支払われますが、それ以外の魔法討伐報酬とエリア解放報酬は達成した瞬間に支払われます」
「…なるほど。どうせ死なないのならやる価値はありますわね」
「オーケー!俄然やる気出てきまシタ!」
「リアルに支障がないなら…まあ、構わないかな」
「「ええ…?」」
説明を聞いても尚、このゲームをやりたくないという感情が沢山だったけれど、3人は違うみたいだった。
ネルさんと同時に困惑の声を上げるので精一杯だった。
「他に何か質問はありますかぽん?」
ファルの問いかけに特に誰も返さず、それを受けて画面の中に消えていった。
「それじゃあ、次のエリアという草原に行ってみる、でいいかな?」
「構いませんわ」
「そういえば、パーティを2つに分けるって言ってのハ、ドーシマス?」
「それについてだが、ショップにて使うマジカルキャンディーを集める班と情報収集をする班に分けようと思う。しかし直ぐにではなく、まずは草原の街とやらに向かってから考えようと思う」
話を聞いていると、どうやら荒野の街のショップは草原の街までの道のりが記された地図のみが売られていて、店員曰く後半の街に行くにつれて売っているものもより良いものになるんだとか。
まずは草原の街に行くみたいで、那子さんとリオネッタさんはそれに同意していた。
「2人も、構わないかな?」
「「は、はい……」」
本当ならこの街から動きたくなかったけれど、パーティを組んでいる以上、従う以外の選択肢はなかった。
☆ネル(百花みつ)
さっき出てきたファルという白黒の妖精みたいなのを見てからずっと、頭の中で何かモヤモヤが取れなかった。
初めて見るものなはずなのに、どこかで見たことある気がしていた。
「(どこで見たんだろう。でもみつの周りやリスナーさんにこんな色と形のもの……)」
思い出そうとすると、頭が少し痛む。
まるで思い出すのを拒否するかのように。
(どうするぽん?今回も----)
(いえ、残--人で----)
(みっ--げ----。絶---なせ----)
「ネルさん?」
「っ、え、ど、どうしたのペチカさん」
「ネルさんどこか上の空な気がして…もしかして気分悪かったりしますか?」
「う、ううん。みつ…じゃなくて私は大丈夫だよ。ありがとう心配してくれて」
このオモイは、なんなのだろう
草原の街
「……」
ショップの前に1人の魔法少女が佇んでいた。
至極真面目な顔で何かを見つめ、自身のマジカルフォンを見て、再度目の前のものに顔を向けていた。
「……(ゴク)」
生唾を飲み、一度店の外に出て周囲をぐるりと見渡す。
ナニカが無いのを確認し、急いで店の中に戻る。
「3回、3回だけ……」
こうして魔法少女は店のカウンターに置かれている『R』と書かれていたものに手を出した----