イベントの詳細を言い切る前に車椅子が爆速で駆け出したのを見て、突っかかっていてた2人も慌てて走り出したことでようやく静かになった。
こんなのを魔王討伐できるまで続けるのか。
面倒くさ……
『彼女』の事さえなければ適当に過ごすというのに。
ホント、マジで…………
ゲームマスターは絶対殺す
☆ネル(百花みつ)
みんなが走り去ってしまったあと、ここには黒いナース服の人とペチカさんとレプリカさんだけがその場に残っていた。
ナース服の人はレプリカさんをすごい警戒してて、そんな中ペチカさんが私に「ごめんなさい」と小さく伝え、どうしたんだろうと思ってるとレプリカさんの元へ歩いて行った。
って、え⁉︎大丈夫なの⁉︎
「ペ、ペチカさん!なにを…」
「どうしても、聞きたいことが…あるんです。ごめんなさい、絶対にネルさんには迷惑はかけません」
「そうじゃなくて…」
「きっと、大丈夫だと…思いますから」
ペチカさんは必死に震える手を抑えていた。なのに『魔法少女殺し』と呼ばれているレプリカさんの元へ近づいていく。
大丈夫と言われてもどうしても心配で、すぐにペチカさんを守れるように私も少しずつ歩み寄る。
そしてとうとう、ペチカさんはレプリカさんの真横に立った。
「………」
「あ、あの……」
「……」
レプリカさんはペチカさんに話しかけられて、目線だけを動かし、小さく『何?』とだけ口にした。だけどそれは物凄く威圧感があって、ビクッとしてしまう。
「れ、レプリカさんは……ま、魔法少女殺し、と呼ばれているって、き、聞いたんですが…。ほ、本当なんですか?」
「……だから何?私がなんと呼ばれていようが、君には何の関係もない」
レプリカさんの目は極寒のように冷たく、その目で見つめられたペチカさんは後ずさりをしていた。
「わ、私は……」
それでも、ペチカさんは屈することなく--
「私は、信じれないんです。レプリカさんが、悪い魔法少女だなんて。そんなの。だってレプリカさんは最初、あの侍の人に襲われてた私を助けてくれて…」
「ん?何の事?」
「え?」
そんなペチカさんに、レプリカさんは本気で訳が分からないような声で聞き返していた。聞き返されるとは思わなかったのかペチカさんは素っ頓狂な声をあげていた。
「このゲームに来た初日に、私が侍の人に襲われて、それを……」
「……?……ああ、あれか。音楽家音楽家ってうるさかった」
「そうです、それです!え、ていうか、忘れてたんですか⁉︎あんなに血が出るくらい怪我してたのに⁉︎」
「
「っ、でも…」
「一つ、忠告しておくよ。上辺だけで他人を判断してるとロクな目に合わないよ」
と言ってレプリカさんは手を--ペチカさんの首辺りに向かって--伸ばそうとした。
そ
「ッ!だめっ!」
その瞬間に物凄く嫌な感じが頭を支配し、思わずペチカさんの腕を引っ張ってしまう。自分の背中で隠すように前に出て、十字架の切先をレプリカさんに向ける。
「ふーっ、ふーっ…」
「ネルさん?だ、大丈夫で--」
「レプリカさん!なにを、しようと…」
「レプリカ、お前…」
と、息が荒いままに叫んでしまっていたせいか、目の前にナース服の人が割り込んでいたのにようやく気づいた。
ナース服の人は、私たち以上に険しい目でレプリカさんを見つめていて、見つめられてる本人はとことん興味無さそうに手を引っ込めていた。
「別に、何も。ただ腕を伸ばしただけだ。ま…コックはともかくそっちの…シスター服のお前はまだ
「マトモ?なにを、言って……」
「そう…だな。1つだけ忠告しておくよ。えーと、…………、ヘチマ、だっけ?」
その瞬間にレプリカさん以外がずっこけたのは言うまでもない。
「ヘチマじゃないです!ペチカですっ!」
「ああ…そう。ペチカ、もし死にたくないなら、私に関わらない方がいい。というか、関わるな」
「それは…どういう」
「そのままの意味だ。
と、黒ナースさんを見ながら言ったと思うと、目を閉じて寝始めた。
「……誰が信用できるか」
シャドウゲールと呼ばれた黒ナースさんは未だレプリカさんを警戒しながら、ゆっくり私たちを連れてこの場から離れていく。
「はぁー……たっくもう、何をやってるんですか。お嬢…プフレから言われていたでしょう。レプリカには極力近づかない方がいいって」
「「ご、ごめんなさい……」」
黒ナース--シャドウゲールさんの圧がちょっと凄くて、2人して思わず謝ってしまう。
…って!じゃなくて!
「あの…シャドウゲールさんは、レプリカさんについて何か知ってるんですか?」
「まあ知ってるというか被害者というか……。ともかく言えるのは、現存する魔法少女の中で奴はトップクラスに危険、って事くらいです。『魔法少女殺し』の異名の通り、数多の魔法少女を殺してきています」
それからレプリカさんについて改めて教えてもらうことになった。
適正を見る試験では他の試験者を積極的に殺して回った事。
その事実を試験官によって隠蔽され魔法少女になった事。
魔法少女になった後、とある人物に手を出そうとした部署を丸ごと壊滅させた事。
その後指名手配され、数多くの武闘派魔法少女を返り討ちにされた事。
少なく見積もっても数十人規模の魔法少女が殺されていると言われてペチカさんと抱き合って震えてしまった。
最後に『ま、こちらから手を出さない限り無害に近いのは確かですが』と小さく付け加えられたが恐ろしい事この上なかった。
「もうすぐ日没ですね。それではお二方、また3日後に会いましょう」
「あ、はい…」
「お疲れ様です…」
そういえば、これで現実世界に帰れるんだよね……。
もう本当に、色々と疲れたな……。
「ネルさん、本当に色々とありがとうございます…」
「いやいや、みつ…じゃなくて私こそ…。あ、そうだ。ペチカさん、私ね、配信者をしててね。もしよかったら見に来てくれないかな?」
「え?」
「ほら、もしかしたら現実世界でも色々相談できるかもだし。ペチカさんさえよかったらだけど……」
と、私の配信者の名前と配信場所を伝えると、最初は遠慮していたけど「絶対行きますね」と言ってくれた。
ペチカさんとリアルでお話しして見たいというのも勿論あった。
けれど何よりも、ペチカさんでも誰でも良いからリアルで同じ境遇の人と繋がってないと私の心が持ちそうになかったからこその提案だったのもまた事実だった。
『まもなくログアウトです』
直後、マジカルフォンから音声が響いたと思うと目の前が真っ暗になった。
百花みつの配信コメント
・みつさん何か静かじゃね?
・寝落ちした?
・まさか○○じゃあるまいし
・そうだよ私じゃあるまいし……っておいこら
・あれ?アバター動いた?
・離席してただけっぽいな
《白の雪(ホワイトスノー)さん【初見】さんが入室しました》
・初見さんいらっしゃい
・初見だ囲え囲え!
・おいバカやめろ ここはそっと逃げ道を封じるんだよ
・お巡りさんこいつです
・初めまして 友達におすすめされてきたんですが…
・その友達とやらに金一封差し上げるか
・初見さん この人めっちゃ癒してくれる声してるから、楽しみにしててくれよな!
・なんか今は離席中ぽい?ですけど 動いてたんですぐに帰ってくるんじゃないかな
・でしたら、是非ともお話ししてみたいですね