吸血幼女の食事係   作:桃羽玉箱

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10話

 

「おはよう。お嬢様」

「……っ」

 

 腕の中の彼女は小さく体を震わせ、不思議そうに僕を見上げる。それから目はきょろきょろと周囲を巡っており、戸惑っているのようだ。まだ寝ぼけているのだろう。目と顔に力が入っておらず、緩い顔。非常に無防備に見えた。その姿からは昨日の野生動物みたいな剣呑さは感じられず、年相応の幼児そのもの。

 こちらが微笑みを浮かべると、あちらは不思議そうに目を瞬かせた

 

「み、ミアカっ。ヤバいよ。お嬢様、可愛すぎる。僕あまりの可愛さに動けないよ。ずっとこのまま抱きしめてたい!」

「……あ、しゃ、写真! 写真撮りましょう!」

 

 お嬢様を覗き込み、僕と同じように見惚れて居たミアカがスマホを持って、僕の後ろへと回り込み、お嬢様の顔が映る場所へと移る。

 僕はそーっとお嬢様から体を離して、撮影しやすいように空間を開けようとする。が、しかし、寝ぼけ眼のお嬢様は離さないとばかりに、ぎゅっ、と近づいてくる。

 

「ミアカしっかり頼むぞ。この光景は後世に語り継がねばならん」

「……シロさん、少しだけ首を……そう……胸を反って……そう。そこを動かないで。その位置です。そこがいい」

「よしこいばっちこい」

 

 お嬢様を起こさないようになるべく小声で、しかし確実な連携を。そんな困難を成し遂げ、僕らはベストポジションを確保することに成功。僕からは見えないが、ミアカの目には天使のような──いや、天使が薔薇だとすれば、この屋敷の庭に植えられた枝垂れ柳のようにフワフワと落ち着いた寝顔が写っているはずだ。派手さは不要。可愛らしさと緩慢さが、日常の中でより胸を温めるのだ。

 

「3、2、1……はいちーず」

 

 カシャッ……ピコン!

 こいつ、ビデオ撮影も始めやがったな。いや、必要なことか。

 そう思っていながら撮影会を続けていると、部屋に誰かが入ってくる音がする。

 

「あ、ヒソラさん。おはようございます」

「っひ、ヒソラ様! お嬢様、こちらです!」

「……いや、誤魔化せませんよ。なに撮ってたんですか?」

 

 ヒソラさんがミアカのスマホを覗き込み────

 

「……後で私にも」「りょです!」

 

────聞こえてますよー。

 

 ミアカの耳元で小さくこしょこしょ話をしていたみたいだが、お嬢様の穏やかな吐息くらいしか聴こえない早朝の静かな時間であれば十分に聞こえる環境である。

 ヒソラさん、あなた案外面白い性格してるのか?

 

「……お嬢様は……それは……寝て、いるのですか?」

 

 さっきまでの冗談みたいな会話を捨て去って、ヒソラさんは呟く。正気に戻った彼女は現状に疑問を持ったらしい。

 

「うーん。なんとも。夢うつつって感じ」

「……珍しいですね。普段は眠りが浅くて近づいたり、物音を立てるとすぐに起きるのですが」

「寝る前にそれなりにお腹いっぱいだったからとか?」

「そう、かもしれませんね」

 

 小さく頬を緩めながら言ったヒソラさんは嬉しそうで、確かな優しさが感じられた。

 

「シロさんは、もう吸血を?」

 

 疑うような声音に首を振って返す。あまり信用されていないようだ。昨晩と現状を鑑みればむべなるかなと言ったところか。耳が痛い。

 

「いやさせてない。今さっき起きたばっかだし……うん。知らない痛みはないし、勝手に吸ってもないんじゃないかな」

 

 寝る前にお嬢様がガブガブしてくれやがった手は別として。

 うへー、血が滲んでやがる……。

 

「それは?」

「あ、これは寝る前に……飛び込んできたお嬢様への……盾? 餌? 猿轡? 的な感じの囮というか」

「出してください。治しますから」

「あはは……ありがとうございます」

 

 ピカー、と手が光るのを見つめる。既に、何度か回復魔法はしてもらっているが、やはり何度見ても魔法は面白い。非日常感があってワクワクだ。それと、どうやら魔法を使うと体の一部が光るみたいなので、それもまた綺麗だし面白い。

 魔法を使って光るのは、現状わかっているだけでも三箇所。

 まず、魔法を放っている箇所。今回の場合は患部(僕の手)へと触れたヒソラさんの手。それと彼女の目に、右手の指輪。目はわからないけど、指輪に関してはおそらく『魔法具』ってやつなのだろう。魔法を使うために必要な道具らしいので、魔法を使う際には何かしらエネルギー……いや、『魔力』か。それが流れているのだろう。そうすると、魔力ってのは発光する性質があるのかもしれない。光って他の何かのエネルギーになる、とすると電気みたいな物だろうか。

 

 考え事をしながら体を起こすと、お嬢様も続いて起き上がった。普段以上にぼーっとした顔で僕に近づいた彼女は、そのまま抱きつくようにして牙を剥き出した。寝ぼけた状態で僕を見てしまったせいで、無意識に食べようとしているのだろう。

 

「ヒソラさん、いい?」

 

 昨晩にはあったはずの不調はもう存在しない。すっかり回復している僕なら、吸血させたとしても問題はないはずだ。

 

「……そうですね……お願いします」

「りょーかい」

 

 ちょっと悩んでいる様子の彼女から最低限の言葉で了承を得た僕は、服の襟を広げると首の辺りを露わにする。そうして、噛みついてくる可愛らしい子を受け入れた。

 

「かぷっ……」

「おほっ」

「へ、変な声出さないでくださいよ」

「痛いのよこれ。二人ならわかるでしょ……?」

 

 痛み。そして、吸い上げられる感覚。僅かな快楽。

 多分、前々から僕の血はお嬢様に渡されていたのだろうけど、実際に吸われるのはまだ二回目。独特の感覚には自分が食われているという本能を刺激する恐怖と、何故だか少し気持ち良さも混ざっていた。被虐調教をされているような気分だった。

 でも、痛みより悦びより、なによりも、彼女への愛おしさも湧いてくる。

 

「ふふっ、寝ぼけてるし、昨日より吸うのゆっくりかも」

 

 既に三回ほど嚥下の音が聞こえているが、それは小さくゆっくりで。寝起きの緩慢さは吸血にも影響を及ぼしているらしい。どうやら昨日のように数秒で気絶みたいなことは起きそうになかった。

 

「そうですか。では、何度か同じことを繰り返して吸血の加減を覚えて頂くのも手かもしれませんね。普段からその程度に抑えてもらえれば、シロさんの負担も小さくなるでしょう」

「だね。昨日みたいのを毎日ってなったら、いつか本当に死んじゃうかも」

 

 可愛い頭を撫で撫ですると、これまた少しゆっくりになる。これも覚えておこう。

 

「……ヒソラ様、今日はアレ出てこないですね」

「まだか、もしくは、興奮状態にならないと出ないのでしょう。寝起きですから」

「おやおや、何の話かな? それ、絶対僕とお嬢様関係だよねー? できれば、教えて欲しいなー?」

 

 僕が撫でるのに夢中になっているのを良いことに、ヒソラさんとミアカが二人にしかわからないような話を始めていた。だが、自然と入ってくる内容はどう考えても吸血関連。現在進行形でちゅうちゅうされている当事者の僕を他所にする会話ではないでしょう。

 

「昨日の話です。シロさんから直接吸血をしたお嬢様に、魔物の特徴が発現しました。今までになかった出来事でしたから、もしかすれば……と。ミアカさんは心配だったのでしょう」

「魔物の特徴……変身とか、暴走しちゃうとか?」

「むしろ、暴走した故の、でしょうか。狼型の耳、吸血鬼の翼、淫魔の尻尾が生えていました。おそらくですが、純粋な身体能力も強化されていたかと。暴れた場合、抑えるのは一筋縄ではいかないかでしょう」

「でも、シロさんを手放して……吸い殺さなかったところを見るに、完全に理性とか失くしちゃってることはなさそうでしたよねぇ」

 

 僕の知らない話。僕が吸血され、気絶した後のことだ。そんなことになっていたのか、と独り頷く。耳、翼、尻尾。該当する箇所を確かめるように撫でてみるけれど、今のところは特に変化は感じられない。あるのは小さな背中と可愛い頭だけだった。

 

「初めてのこと……直接の吸血が原因かな?」

「いえ、私もヒソラ様もお嬢様が直で吸血する機会はありましたが、その時は何事もありませんでしたから。違うかと思います」

「……ふむー?」

 

 お嬢様って、確か軽くなら話できる……はずだよね。

 

「ねー、お嬢様、羽とか尻尾って出せる?」

「ちゅぅ……?」

「し、シロさん?」

「本人がここにいるんだよ? 直接聞いた方が早いよ」

 

 吸血を止めたお嬢様は僕の首元から顔を離すと口元に垂れた鮮血を拭いもせずに小さく頷く。横から手拭いを取り出したヒソラさんが素早くそれを綺麗に拭き取った。

 

「…………うん」

「できるんだね」

「できるんですか?!」

 

 お嬢様は目を閉じると、「んっ」と軽く気合いを入れるような声を出す。その直後、にょきっ、と彼女の体に獣耳と翼、尾が生え出てくる。それはとても小さくて、子供の仮装用の玩具みたいなサイズ。なのに、見た目の質感は本物。しかも、ちょっと動いているから本当に生えているのだと目を丸くした。

 

「触っても、いい?」

「……うん」

「ふふっ、ありがと」

 

 ふわっふわっ!

 獣耳に触れると、予想通り。犬の耳みたいな感触であった。確か、狼型の魔物とやらが元になったのだと聞いた。魔物と一般動物にどれほど違いがあるのかを僕は知らないが、態々『狼型』と付けられている以上は外見が狼なのだろう。そう考えれば、見た目質感共に犬っぽいのも納得がいく。非常に触っていて気持ちが良く、楽しいケモミミであった。

 

 つるつる。

 膜の張った黒く小さな翼の感触は、テントや帆のようなピンと張ったもの。元は『吸血鬼』だったか。となれば、翼は蝙蝠のそれに近いのだろうか。実際の蝙蝠は鳥類みたいに、人間で言う腕や手に当たる部位が翼になっているはずだが、お嬢様の場合は普通に腕は肩から生えているし、どういう仕組みなのだろうか。

 

 つるつる、ふにふに。

 臀部から伸びた黒い尻尾は翼のそれに近く、しかし柔らかい肉のような感触もあった。細く長いそれを優しく掴み、根本から先端に向かって撫でるように扱く。半ばまで来たところで、先端の方が手首に巻きついて来た。可愛くて、つい開いている手で彼女の頭を撫でると尻尾の先端がふらふらと揺らめく。犬の尻尾ではないが、感情が現れているのだろうか。

 

「遠慮なくいきますね……」

「んー? 良いって言ったんだから、良いじゃんね?」

 

 その時、唐突に立ち上がったお嬢様は僕の背後に回り込むと耳を真っ直ぐ立たせ、翼を広げ、尻尾の巻きつきが強くなった──警戒体制、そう思わしき姿勢になった。その虚ろな瞳に仄かな光が宿り、後ろにいたヒソラさんへと鋭く向けられる。

 

「お、お嬢様?!」

「シロさん!」

 

 ぐい、とミアカに体を引かれてお嬢様から物理的に体を離される。それでも、手首に巻きついた尻尾があるからそれほどではないが。しかし、確実に開いた隙間にミアカは腕を遮るように入れると何処からともなく短刀を取り出していた。幸いなのは、鞘に納まったままで本気ではないのが一目でわかったことか。

 あらあら、と。明らかに尋常では無い剣呑な雰囲気。原因を、と。ヒソラさんを見てみれば、そこには珍しく驚いた表情を晒した彼女が小さく手を伸ばし、しかし虚を掴んでいる姿が。記憶が正しければ、その手の位置はお嬢様の翼があった場所だ。

 

「……申し訳ありません。手を伸ばす前に、声を掛けるべきでした」

 

 ヒソラさんは申し訳なさそうに頭を下げる。

 それを見て、とりあえずはお嬢様も落ち着いたらしく、いつの間にか僕の体を覆えそうなほどに大きく変化していた黒翼は縮み、元の可愛らしいサイズへとなっていく。

 

「…………びっくりびっくり。どういうことかなー?」

 

 何がなんだかわからない。何故、お嬢様は唐突にあんなこと? 何故、ヒソラさんは謝罪を?

 

「実のところ、私はお嬢様に警戒されています」

 

 少し悲しそうに、ヒソラさんは呟いた。

 

「けいかい?」

「最初に出会った時、私の血を求めて襲いかかって来たお嬢様を返り討ちにしたからでしょう。お嬢様は野生味が強いですから。強さ、というわかりやすい上下関係を理解させねば大人しくさせられなかったのです。後で、結果的に、私以外では風枝家内にお嬢様を安全に従わせられる魔法少女が居ないことの証明にも繋がったので悪いことばかりではありませんでしたが」

「……ああ。さっきのは、背後から、自分より強い人に手を伸ばされてお嬢様はびっくりしたって……こと?」

「おそらくは」

「あらまあ」

 

 考えてみれば、普通に人を襲うようなお嬢様がどうしてこうも大人しかったのだろうか。答えは、ヒソラさんだ。獣が自分より強い存在に腹を見せ服従するように、お嬢様は従っていたのだ。なんともまあ、野生。どこまで獣な生態をしているのだろうか。

 

「ところで、お嬢様。耳など、出し入れや大きさの変化は自由なのでしょうか?」

「……うん」

 

 頷いたお嬢様は目を閉じる。すると、耳などは縮み、薄れ、霧散するように消えていった。

 

「……昨日も話した通り、お嬢様は仕事がありますので」

「一歳なのに?」

「名家ではそう珍しいことじゃありませんよ?」

「そういうことです。それに──」

 

 ヒソラさんは口を止め、ジロジロとこちらを見つめてくる。麗人から向けられる真っ直ぐな瞳に思わずたじろいで居ると、そのしなやかな指が僕の頬に触れた。

 

「な、なにかなー?」

「……赤くなっています。お嬢様の吸血には僅かながら催淫作用がありますから当てられているのでしょう」

 

 さいいん……催淫? え、エッチな気持ちになるの?! ああいや、お嬢様って淫魔も含まれてるんだっけ。どんな魔物かは知らないが、名前からしてドスケベモンスターなのは間違いない。それが変な影響を起こしているのだろう。

 

「そ、そうなんだね」 

 

 発情しているのか言うと……よくわからない。男ならわかりやすく勃起するもんだけど、女だとそうも……いや、勃ってるね、これ。何とは言わないが。

 ちょっと恥ずかしいね。あれ、でも──

 

「昨日にミアカが吸われてた時はなんともなかったよーな気がするな?」

「ひ、人の、その、えっちな気分とか思い出さないでくださいよ。腕だしちょっとなら平気なんです!」

「ごめんごめん」

 

 ぎゃおー、とミアカが叫んだことに僕の配慮が足りなかったことに気づいて頭を下げる。確かに確かに、乙女に向かって『君、ムラムラしてるでしょ?』は流石に無遠慮を超えてセクハラだ。

 

「吸血も終わりましたし、支度をせねばなりませんので、そろそろお嬢様を連れて行かせてもらいます」

 

 寝起きのお嬢様は寝巻きらしき薄手の和服が乱れまくりの捲れまくり、頭はボサボサと嵐に見舞われたような有様。どんな仕事かは知らないが、人前に出れば恥をかくこと間違いなしの傾奇スタイル。準備には、それはもう時間がかかるだろう。先ほど、食事を終えたのだから着替えるにはいい頃合いであった。

 

「お嬢様、こちらへ」

「んんっ……こほん。頑張っていってらっしゃい。また、待ってるからね」

 

 そうやって微笑むと、お嬢様も頷いた。

 

「……うん」

 

 心なしか穏やかな雰囲気の彼女はベッドから、ちょこん、と降り立ってヒソラさんに導かれるままに部屋を出ていった。

 その背を見送り、戸が閉まった。すぐにミアカが呆れた顔を浮かべる。

 

「また、って。また勝手に逢瀬しちゃ駄目ですよ。なるべく、ヒソラ様の目が届くところでしてください」

 

 腰に手を当てたミアカがぷんぷんと怒りを露わにする。そう言われてしまうとこちらとしても誤魔化さざるを得ない。

 

「あはは……」

「まぁ、悪いのはお嬢様でしょうけれど……次からはもっと警戒してくださいね。気をつけてくださいね」

「が、頑張るよ」

「約束してください。絶対って」

「は、はい。絶対」

 

 あ、圧が強いな?

 

「……もう。今日は色々教えないといけませんから、早速ですが休んでおいてください。今からお食事をお持ちしますから、それらが終わり次第説明を始めますよ!」

「りょーかい。お気遣い、ありがとね」

 

 

 * * * 

 

 

 休んで着替えて。体は貧血で怠いけど、気持ちはかなりすっきりして元通り。いつもの元気なシロちゃんの復活だ。

 

 そうして最初に案内してもらったのは明日から僕が住むことになるらしい侍女用の部屋。嬉しいことに個室らしく、他にも十人以上の人たちが居るらしいけど、空室も幾つかあるのでその一つを借りる形になった。隣はミアカらしくて、とりあえずはご近所問題について安心できた。煩かったら壁を殴ってやる。

 

「まー、広くはないよね!」

「文句言わないでくださいね、お姫様じゃないんですから」

「例えでも王子様の方が嬉しいかなー」

 

 布団、机、椅子。小さな箪笥、押し入れ。あとは二人か三人くらいが寝転べるくらいの余裕がある床の広さ。風呂トイレは共用で、一人暮らし用の寮部屋となればこんな物だろう。ネット回線通ってるのだろうか。

 

「鍵はこれです。失くしちゃったらヒソラ様か私に言ってください。お叱りと予備を渡しますので」

「気を付けます」

「では次に、制服がありますので机の上のそれに着替えてみてください。大きさがあってなければ合わせますから」

「はーい……」

 

 ちらり、とミアカを見る。部屋の中で僕を見ている。

 

「まーいいや」

 

 僕が元男とか、相手からすれば関係ないわけで。というか、別に僕は女の子に着替えを見られても問題ないんだけど、考えてみれば僕の体は今はもう女の子なのだから、特に遠慮する必要もなかったのだ。フルチン晒すこともないし。すぱぱん、と脱ぎ捨ててミアカのそれと酷似、いや同じか。和服に袖を通す。

 

「ぴったりだ」

 

 おかしいな。僕、試着とかサイズ合わせしてないのだが。

 

「それはよかったです」

「ぴったりなんだね。採寸とかしてないのに」

「……し、身体検査、ありましたから」

 

 勝手に流用したのかよ。流石に医務室の人とか、ヒソラさんが裁縫したってことは考え難い。ミアカか、それ以外か。服飾の係の人にも僕のスリーサイズが開示されていたのだ。僕の知らない内に。

 

「別にいいけどさー。人のおっぱいやお尻のサイズを勝手に共有するのって、ぷらいば……個人情報の扱い的にどなの?」

「しょうがないじゃないですかっ。ちょっと前まで、シロさんも魔人じゃないかって警戒されてたんです。お嬢様の前例があるから、どんな存在かは屋敷内で情報が開示されてたんですよ!」

「まさかのだけど、屋敷の人たちみんな僕のこと丸裸くらいに知ってる?」

「数値上は、ですけど……」

「えっち!」

「変な意味じゃないですからね?!」

 

 いやまあ、別にそこまでは気にして居ないんだけどね。心まで乙女じゃあるまいし。

 それにしても、打てば響く良い性格だ。ミアカの綺麗な赤い髪とまではいかないが、顔も少し赤くなっている。それがまた感情をありのままといった様子で、非常に可愛らしい。

 いや待てよ。最近まともに関わった人物というのが、頭から爪先まで感情が虚無なお嬢様、クールで硬い雰囲気のヒソラさんくらいしかいないから、相対的にミアカが柔らかく見えるだけだろうか。

 

「こほん、さっさと次にいきますよ」

「はーい」

「じゃあ着いて来てくださいね。次は────」

 

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