吸血幼女の食事係   作:桃羽玉箱

4 / 10
やっとヨウジョ出た……さきっぽだけ……


4話

 

 今は昔……とんでもなく大きな災害が起きたらしい。

 

 それによって先進国とか後進国とか関係なく、ほぼ全ての国が滅んだのだとか。

 少なくとも、日本はほぼ壊滅したし、そこから見える範囲の国々も現代に至るまで人類の活動は見られない。外国からは500年近く接触がないそうだから、見えない範囲も生存は絶望的だし、生き残っていても互いに交流し合えるだけの文明レベルには当分の間は到達できないと考えられている。

 

 

 そんな世紀末を齎した災害の名前は『大暗夜』。

 大暗夜とは『暗夜の霧』という黒い霧が地上を覆ってしまう災害だ。

 この暗夜の霧は見た目はただの黒い霧なのだけど、『魔力』というエネルギーが含まれているらしくて、この魔力が我々地球生物にとっては致命的な性質を持っていたのだとか。

 

 機械や電波などに障害を発生させ破壊してしまうこと。

 『魔物』という理性無き怪物を生み出すこと。

 『魔力汚染』によって地球生物を魔物へと転じさせること。

 他にも色々とあるが、有名なのはこの辺りなのだとか。

 

 

 世界初の大暗夜のことを今では『宵の大暗夜』と呼ぶ。 

 その『宵の大暗夜』によって地球上のほぼ全てを暗夜の霧が覆い尽くし、ほぼ全ての機械が破壊され、怪物が闊歩する時代へと移り変わったのだとか。

 

 言わずともわかるだろうが、それはもう酷い有様だったらしい。

 日本の自衛隊や海外の軍隊などの武力組織は暗夜の霧による機械破壊によって殆どが無力化され、魔物によって蹂躙。残った無力な一般人たちは無数の魔物たちに食われ犯され毎日が地獄のような状況に。死屍累々末法の世が展開されたのだ。

 なんとか生き残ったとしても、とてもじゃないが食料の生産なんてできる状況じゃないし、暗夜の霧が色んなところで漂っているから毎日移動して逃げ続けないと魔力汚染で自分たちが魔物に変わってしまう。衣食住全ての資源が限られているのだから、残った資源の奪い合いで人間同士での争いも頻発する。

 暗夜の霧という未知の災害、多数の死者、文明の崩壊──このタイミングでの人間同士の争い。

 

 もう終わりだー、なんて時に現れたのが『魔法少女』。

 

 魔力を身に宿し、魔力を扱う能力を持った超人である。

 その力は凄まじくて、軽自動車なら投げ飛ばす力、小さな銃弾なら弾く頑丈さ、魔力汚染への耐性など驚異的な身体能力を持っていた。欠点も無い訳ではないが。

 彼女たちは素手でも弱い魔物なら倒せるほどに強くて、自然と人間集団の用心棒だったり纏め役に成っていったらしい。もちろん、争いが完全に無くなった訳ではないが、一部の強力な魔法少女の元に集団が吸収合併する形で争いの数は減り、魔法少女同士での決闘などで決着が着いたりと規模も縮小へと向かったらしい。無論、超人同士の殴り合い大怪獣バトルも少しはあったらしいが。主に九州。

 

 そんな暗夜時代初期の頃の魔法少女たちを『宵の魔法少女』などと呼ぶ。その中でも特に有名なのが主に二人。

 

 一人──。

 魔法少女が魔法を使う為に必要な道具である『魔法具』の発明及び製法の伝授、弟子の育成、『大結界』の展開を為した。

 『開闢の魔法少女』。

 

 二人──。

 まだ日本国再建前に仲間を集め東北から北海道までを奪還し、全国の有力な魔法少女たちを従わせ天下統一、日本国再建の要となり、最初に魔法少女の名家を築いた大英雄。護国の象徴。そして、僕がお世話になっているお家の始祖様であるらしい。

 『神風将軍・風枝大和』

 

 

 そんなこんながあった宵の大暗夜から日本国再建までの期間を今では『宵時代』と呼んだりするそうだけど、この辺は機械文明が復活してしなかったことや物資が不足していた影響で記録媒体が非常に少なく、情報が極端に少ない。 だから、真相不明だったり謎な物があれば大体がこの時代の物。特に、『開闢の魔法少女』の遺産はよくわからないのが多いらしい。

 

 

 それでも、なんやかんやあって、今現在は宵の大暗夜から500年行かないくらいの時が流れている。

 人類は絶滅していないどころか発展を続けており、スマホとかパソコンなどが復活、500年前の文明レベルとほぼ同領域へと到達。一部、技術のロストや魔法への代替などが起こっているから微妙に異なっては居るけれど。

 しかし、依然魔物や霧の脅威は消えない……そんな時代になっていた。

 

「むぅ……」

 

 僕は思わず唸ってしまう。

 先ほど暗夜が始まってからの歴史を軽く一通り教えてもらったのだけど、よくわからなくて、自分なりに纏めてみたのだが、やっぱりよくわかんない。

 

 魔力に魔法ってお前ラノベの読み過ぎだろ……とか。

 機械が無くなった上に怪物が大量にいる状況って詰みじゃね……とか。

 歴史の中に魔法少女とか巫山戯た名称が出てくる訳ないだろって。

 それに、500年も経って文明の復興が精一杯でした? ちょっと人類舐め過ぎじゃないですかね。江戸の幕末から三十年くらいで日露戦争が起きた、つまり丁髷結って刀担いで『ござるござる』してた奴らでも三十年あれば鋼鉄の軍艦を操り、鉄の翼で空を舞うレベルに入場してたんだよ? 500年も何してたのさ、こいつら。 

 ヒソラさんに見せてもらった魔法や魔人計画の話を聞いた上でも、改めて真面に現在の歴史の話を聞くと疑いたくなってしまう。色々と現実味が無さ過ぎる。

 

「けどなぁ……」

 

 家の外を見てみれば、そこにはなんと巨大な半透明の膜があるではないか。全体を見た訳では無いが、曰くあれは京都全域を完全に覆っている史上最高の結界魔法である『大結界』なのだとか。

それを信じざる得ないほどの大きさだと言うのはここからでも見てわかる。

 魔法に関してはヒソラに見せてもらった小さな結界魔法の他にも、この屋敷で働く侍女さんが手から水を出したり、怪我をすぐに治してみせたり、などと、これ以上ないくらい魔法の証明を見せられてしまった。ついでに、ミアカにも火の魔法を見せてもらった。

 

 テレビやスマホでは魔法少女や魔物、暗夜歴の記念碑の画像をスマホやパソコンで見せられてしまったこともあった。

 そう言えば、ヒソラさんも魔法少女らしい。魔法を使っていたし、それはまぁそうか、と言ったところだけど、クール系美人な女性が真面目な顔で『私は魔法少女です』なんて言っているのは正直ちょっと面白かった。

 

 これでは、教えてもらった歴史の流れを信じるしかないではないか。

 だがその場合、とても大きな問題が幾つかある。

 

 「僕の年齢、500歳超えになるんだけど……しかも女の子になってるし」

 

 呟きながら正面の窓を、鏡として見る。

 薄らと反射して見えた顔は、見覚えがあるような、ないような。元の僕の顔に似ているのか、記憶にない妹に似ているのか。割と可愛いよりな顔だと思う。

 髪に似て白い肌をしていて、目だけは新緑に似た草の色。頭のてっぺんにはアホ毛が一房生えていた。このアホ毛、濡らしたり倒したりしてもピン! と、勝手に立ち上がるのだから困った物だ。

 

 ちょっと前まで令和の世で男子大学生をやっていたはずの僕は、気がつけば未来の世界で女の子に変わっていました。

 いやいやいやいや……そうはならんでしょ。

 百歩譲って女の子になってました、っていうのは『魔人計画』のせいに出来るかもしれないけれど、500年のタイムスリップはどうなってるんだ。いやほんと。

 一応、男時代最後の記憶の場所である関東近辺と思われる僕の実家に帰ればヒントがあるかもしれないと思ったのだが、関東圏は宵の大暗夜による被害が特に大きかったらしく、当時の物は殆ど残っていないのだとか。

 ただでさえ、ヒントがあるかどうか怪しいのに、ヒントへ至る為のヒントも手に入りそうにないのだから、正直な話、記憶を取り戻すのは今の所絶望的と言わざるえない。

 

「……むぅ………」

 

 記憶を取り戻すとか以前に、僕は僕を信じて良いのだろうか。

 もしかしたら……実験によって頭がおかしくなった結果、自分を500年前の男だったと思い込んで自我を保っている哀れな実験動物なのではないのだろうか。

 ヒソラさんは言っていた。

 『もしかしたら、魔人計画の母体候補だったかもしれませんね』と。

 嫌な話だが、魔物なる怪物にレイプされてたとか、普通に男にヤられてたとか……そんなこんなで、精神を病んで居た可能性も捨てきれない。童貞を捨てる前にママになっていたとか、考えたくもない話だ。

 他にも、性転換したのではなく、転生だとか生まれ変わりという線もありうる。

 魔法があって、性別が変わってて、タイムスリップまでしているかもしれない現状の僕に、ありえないことはありえないのだから。

 

 まぁ、何を考えようが意味はないかもしれない。

 堂々巡りというか、平行線というか。何を言っても、僕の妄想であり机上の話に留まってしまう。物を語るには僕は世界を知らな過ぎる。

 

 それでも、僕はこの世界で生きなければならない。

 それだけは確実なことだ。

 何が真実で何が嘘なのかはわからない。だけど、今ここで僕が生きていることだけは間違いない真実だ。

 

 頑張ろう。色々知って、色々学んで。

 そうすればいつか全てがわかる日が来るかもしれない。

 僕がここに生きている意味がわかる日が来るかもしれない。

 

 記憶がなくて、心の底から信じて頼れる人も居ないけど、なんとかなるだろう。

 根拠のない自信だけど、僕が僕を信じなくて誰が信じるというのだ。

 

「なんとかなる……なんとかなる……色々と、なんとかなる……よし!」

 

 色々と、頑張ろう!

 

 

 + + + 

 

 

 あれから、僕は屋敷でかなり有難い扱いを受けていた。

 頼れる者のない僕をこの屋敷で面倒を見る上に、先ほどのように一般常識を教えて貰う。その代わりに、毎日の身体検査と血液の提供を僕はするという内容。

 

 衣食住だけではなく知識まで提供してくれるのだから僕としてはこれ以上ない好待遇。身体検査だって僕も自分の体はわからないことばかりなのでむしろ調べて欲しいくらいだし。

 血液に関しては、毎度毎度かなりの量を抜かれているのか毎日貧血気味になっているのは困ったことである。しかし、他を考えれば見返りの方が大きいと思うし、特に文句はない。

 

 そんな暮らしは僕にとって地獄に垂らされた蜘蛛の糸みたいなものだ。お先真っ暗どうしようかもわからない状況でのこれなのだから。もちろん、あちらにも意図があってのことであろうことはわかっているが、今のところその正体を掴めていないのが最大の不安と言ったところか。

 

「まあ……なんとかなるか」

 

 色々と不安はあるけど。

 僕はよくわからない大災害から500年もタイムスリップしてまで生き残っているんだ。きっとこれからもなんとかなるだろう。

 

 いつも通り勉強の為にと、出入りを許可されていた蔵書室から出て自分の部屋へ向かって歩き出す。昨日から僕は車椅子を無事卒業、松葉杖アリなら歩行も可能になっていた。やはり、身体には何の問題もなかったようで『精神的な何かだろう』『ていうかわかんないっす』なんて医務室の人からは言われた。

 部屋というのも、自分の部屋というか、医務室の一つなのだが個室な上にそこでの寝泊まりも契約の内に入っているので実質自分の部屋と化していたのだ。

 

「──あれ」

 

 いつの間にか、目の前に知らない子供がいた。

 和装の、緑色の髪と痩せ細った身体が特徴的なとても小さく幼い子供。頬や指先には骨が浮き出て、僕を睨むような目にはドス黒い闇が浮いている。

 

 化け物……いや、人間……なのか?

 

 一瞬、それが本当に人間なのかわからなくなった。だって、人間というには余りにも悍ましい気配を感じたから。もしも餓鬼というのが存在するのなら、きっとこれがそうなのだろう。

 

 目が、ヤバい。明らかに普通じゃない。

 慌てて周りを見るけど人が見つからない。助けを呼べない。

 

「……あ、あはは」

 

 早速だけど、なんとかならないかもしれない。

 




ちょっと色々悩んだのでオクレチッタ
結末と世界観だけは決まってるんだけど、起承転を考えずに始めちゃったからねショウガナイネ.


 説明が下手くそな自覚はあるので補足

20xx年(令和くらい?)
 宵の大暗夜発生
ーー地球生物が魔物に殺されたり、魔物に変貌したり、文明がほぼリセットされたことで人類もほぼ壊滅。暗夜の霧が薄かった地域に居た運の良い人たちの中でも更に運の良い人たちだけが生き残る。

 魔法少女出現
ーー暗夜の霧の魔力に触発されて才能があった女性たちが魔法少女として覚醒。ただし、魔法具は無いので魔法は使えない。なので、超人的な身体能力と魔力汚染への耐性があるくらい。

 魔法少女集団の形成が開始
ーー極一部の有力な魔法少女の元に他の魔法少女や非魔法少女のヒト集団が集まり、一つの勢力となる。豪族みたいな感じ? 各地の集団同士が争ったり合併したりを繰り返す。ヒト同士の争いは減ったが魔法少女同士の争いは割と残る。

 魔法具の発明
ーー『開闢の魔法少女』によって魔法具が発明。弟子と極一部にのみ製法を伝授し、完成品を売買する形で散布した。なので、基本的に現代でも正式な魔法具の製法は弟子と孫弟子に連なる『杖職人』の一族のみが有している。

 『大結界』の展開
ーー『大結界』とは、とにかくすっごい大魔法。日本に11個のみ展開された『暗夜版:ノアの方舟』。暗夜の楽園。開闢の魔法少女、その最大の遺産。詳しい説明は何処かで。
 これのお陰で京都を代表に、日本各地11箇所のみ暗夜に対する絶対の安全地帯が完成した。

 英雄の誕生
ーー東北の『風枝大和』や関東近辺を拠点とした『開闢の魔法少女』、北海道や九州に四国など、各地で突出した存在が頭角を現し始める。
基本的に、『大結界』を占領した魔法少女が集団の代表という形になっていた。東北から北海道まで計3つの大結界を占領した風枝大和は実質日本の1/4を支配していたも同義。その後、風枝大和は日本各地を巡って各大結界にカチコミ。各地の代表にも日本国再建に協力させる。
 なんとか生き残っていた皇族を象徴として国を纏め、君主制から始め、民主主義っぽい体制へと向かって政治を始めた。


 以降、なんやかんやあって本編に繋がる。


 なお、作者(桃羽)は馬鹿なので歴史や政治関連の知識はほぼ無い物とする。
 現実味があるとかないとか、間違ってるとか、創作だからこの世界では正しいものとする。文句を言う奴は、ほならね自分でやってみろって話でしょ、とする。


 最後に、念の為。
 シロの自認は『宵の大暗夜』発生前の時代の人間である。

 その秘密を知っている人は………………。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。