『マナカーブを意識しよう』
・デッキが上手く回らない? それはもしかしたら、マナカーブが良くないのかも知れません。マナカーブが『へ』の形になるようにデッキを組むのがおすすめです。マナカーブとは……
『1・2交換出来るカードを中心にデッキを組んでみよう』
・フィールドの支配権をなかなか握れない? もしかしたら支配権を握れるカードがデッキに少ないのかも知れません。1枚で複数同時撃破を狙えるカードがおすすめです。特に、ダメージを複数回与えるスペルカードや複数の敵モンスターにダメージを与える事の出来るモンスターカードが理想的です。それらのカードを中心にデッキを組めば、君もフィールドの支配者に?
『手札補充は必須?』
・どんなにマナカーブを整えてもデッキが回らない? それは、手札補充が不足しているからかも。手札補充はデッキ構築の基本中の基本です。デッキ内に7枚程山札を引けるカードがあれば事故率が大きく下がります
「……これも、基本的な事しか書いてないな」
放課後。オレは強くなる為に学校の図書室でカードの指南書をあさっていた。
けれど、どの指南書にもオレが強くなる情報は載っていない。もしかしたら、本当の強者は情報を秘匿しているのかも知れない。
指南書でパワーアップ作戦は失敗に終わったようだ。
仕方ないので、カード図鑑でもみながら色々と考えてみることにする。
……平均的に、1コストのモンスターのパワーは1000で、2コストのモンスターは2000。3コストのモンスターは3000という風な感じでモンスターのパワーが設定されている。効果の強弱によっては上下することもあるが、基本的にはコスト×1000のパワーだと考えていいだろう。
……つまり、4コストのモンスターは大体パワー4000なのだ。
図鑑の4コストモンスター一覧を見て、オレは思ったのだ。こいつらを出されたら辛いと。
オレのデッキは除去カード0枚。そして、パワー4000を破壊出来るモンスターカードはほんの僅か。
オレのデッキではパワー4000のモンスターを倒すのに苦労する。もし厄介な効果を持っていたとしても、放置するしかなくなってしまう。
コスト4のモンスターは、最速で後攻2ターン目から出される可能性が有るのも厄介なところだ。
……除去カードを入れた方がいいのか? けれど、そうしたらノイズが増えてコンボを通しにくくなってしまう。
でも、除去カードがあればガードで守られた厄介なモンスターを倒せるしなぁ……
コンボを重視するか、盤面を重視するか……
「お、モンスター図鑑。そのページ、パワフルなモンスターがいっぱいだな」
考え事をしていると、突然横から声を掛けられた。
この声は……爆炎だ。
「へへっ、まさかこんな所にいるなんてな」
「雨宮君が図書室にいるなんて、珍しいね」
……爆炎だけじゃない、姉崎さんもいる。
「2人が一緒なのは意外だな」
「転校してきたばかりの爆炎君に、学校を案内してたんだよ」
笑顔でそう話す姉崎さん。
「へぇ、そうなのか」
別クラスなのに爆炎の世話を
するだなんて、姉崎さんは面倒見がいいようだ。
「ん、どうした雨宮? 顔色が良くないぜ」
「別に、何でも無い」
俺の顔色を指摘する爆炎。そんなにオレは暗い顔をしていただろうか。
「モンスター図鑑を見てるって事は、デッキの構成を考えてるんでしょ」
姉崎さんが図星を突いてくる。……鋭いな
「ああ、仮想敵を想定してデッキを考えていたんだ」
「へぇ、そりゃ面白そうだ。俺もやってみたいぜ。ちょっといいか?」
そう言いながら爆炎はオレのカード図鑑をパラパラとめくり、人気モンスター紹介のページを開いた。
「お、こいつは強そうだ。高パワー強効果に破壊耐性。まさに、パワフルなカード。……姉崎はこのモンスターが出てきたらどう処理をするんだ?」
爆炎は姉崎さんに、選んだ人気モンスターの対処法を聞く。
……爆炎が選んだカードは、強力な攻撃時効果を持つ。早く倒さないと被害が大きくなってしまうカードである。
「うーん、そのモンスターはそんなに怖くないかな。攻撃を封じるスペルを使って動きを止めて、その間に制圧するよ」
「なるほど、そういう対処法もあるのか……。それじゃ、雨宮ならどんな対処をするんだ?」
今度はオレに対して、モンスターの対処法を聞いてくる爆炎。
「……うーん、今のオレのデッキじゃそいつの対処はキツいな。幸い消費コストが重いから、出される前、もしくは出された次のターンで相手のライフを削りきれば何とかなるはずだ」
「……ある意味それも対処法、なのか?」
微妙な表情を浮かべる爆炎。
「爆炎だったらどうするんだ?」
今度は逆にこちらから質問してみる。
「……俺は当然激突だぜ。ぶつかって真っ正面から破壊する。それが一番男だからな」
爆炎は、そう答えた。……男らしい、か。爆炎らしい。
「何だか爆炎君らしいね」
姉崎さんも同じ様に思ったのか、微笑みながらそう言った。
「ははっ、そうだろ。でも、敵の動きを止めて対処するって方法もなんか姉崎らしいよな」
「そ、そうかな?」
姉崎さんは爆炎に言われて少し照れているようだ。……今日会ったばかりなのに、2人はもうお互いを分かりあっている。
「……雨宮君、もしかして機嫌悪い? 笑顔が少ないよ」
突然、姉崎さんが心配そうな顔をして、オレの顔を覗き込んできた。
「いや、そんな事はないさ。ただ……」
「……ただ?」
「もっと強くならないとなって感じている」
「雨宮君……」
そう。オレは強くなりたい。強くならなきゃいけないんだ。
爆炎や漆黒残虐を倒せるほど強くなる。そして、自信を取り戻す。
その為にも、デッキをもっと強くしないといけないんだ。
オレは再びモンスター図鑑をめくる。最高のモンスターを探して。
「いいカード、ないかな?」
「雨宮君はどんなカードを探しているの」
オレの隣に座り、図鑑を一緒に見る姉崎さん。
……近いな。それに、いい匂いがするし。
オレは少しドキドキしながら、理想を語る
「そうだな、まずは除去能力の高さが必要不可欠。厄介なカードを処理してくれるカードが今のオレのデッキに足りていない」
「ふむふむ」
姉崎さんが頷く。
「でも、除去するだけじゃ邪魔になってしまう。コンボに組み込める、除去+αの効果を持つカードが欲しいな」
「ほーう。例えばどんなのだ?」
今度は爆炎が聞いてきた。
オレは自分のデッキに欲しいカードを思い浮かべる。
「無難なのは手札補充系だな。1枚でも手札を増やせれば除去カードでも邪魔になりにくい。欲を言えば2枚以上引ければ最高なんだがなかなかそうはいかないよな。2枚までとは行かなくも、特定のカードをサーチする効果があれば、かなりデッキが安定する。あとは、スペルのコストを軽減させる効果が欲しい。早いターンからコンボを決めたいからな」
オレは自分の理想のカードを語る。
「ふーん。欲張りなんだな」
「……そう言われるとそうだな」
爆炎に言われて、除去カードに対する理想が多すぎる事に気く。
……でも、オレは妥協したくない。
ノイズにならない除去カードを含むデッキを構築したいんだ……
そう考えていると、姉崎さんが図鑑をパラパラとめくりだした。そして、あるページで手を止める。
そのページは、コスト3のモンスターが載っている最終ページだった。
「うーん、載ってないな」
姉崎さんが、ちょっと残念そうに言う。
「どうしたんだ?」
オレと爆炎が、姉崎さんに聞いてみる。
すると、姉崎さんは図鑑のページをオレ達に見せてきた。
「実は、さっき雨宮君が話してた条件に当てはまるカードを、前にお店で見たんだけど図鑑に載って無くてね」
がっかりした様子の姉崎さん。
「見間違えじゃないのか?」
「そうかな? 確かに見た気がしたんだけれど……」
爆炎に言われるも、納得のいかなそうな姉崎さん。
「そのカード、どんな効果だったんだ?」
オレがそう聞くと、姉崎さんは思い出す仕草をしながら説明を始めた。
「ええっと、確か……そう、コスト3のモンスターでね、効果が盛りだくさんだったよ。しかも、キラキラしてたし」
彼女の説明に、オレは驚いた。たったの3コストであるのにも関わらず、除去+αを持つ効果盛りだくさんのカード。更に図鑑にも乗ってないときた。
「そのカード、どこで見つけたんだ?」
オレは姉崎さんに聞いてみる。すると……彼女は少し困った顔をしてこう答えた。
「ええっと、なんて名前だっけ。名前が思い出せないよ」
ため息をつく。まぁ、お店の名前なんていちいち覚えてないよな。とくに、小さな店ならなおさらだ。
「……店の場所は覚えてるか?」
「ああ、それは覚えているよ。ちょうどこの近くだよ」
そう言って姉崎さんはマップアプリを起動し、オレに見せてきた。
その地図には確かにお店がある場所が記載されている。
……行って見る価値はあるだろう。
どんなカードが置いてあるのか確かめたい。それに、もしかしたら姉崎さんが見たという例のカードがまだ残っているかも知れない。
「情報ありがとう。早速今から行ってくる」
「……店の外観分かるのか?」
爆炎の鋭い指摘が入る。
「……分からない。頑張って探してみる」
「雨宮君……」
姉崎さんがジト目でこちらを見つめてくる。
「ねえ、今から3人で例の店に行こうよ。爆炎君も強いカードが気になるでしょ?」
「勿論だぜ!」
姉崎さんに提案され、喜ぶ爆炎。
……謎の店。図鑑にも載っていないオレの求めるカードがあるらしい。そこにはどんな秘密があるのか。果たしてめぼしいカードはあるのだろうか。
……行ってみたい。オレは2人の誘いに乗った。