ホビアニ風世界の死神ギフトデッキ使い   作:Atlantis

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16話

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、せーの。いらっしゃいませー」

 

「いらっしゃいませ!」

「いらっしゃいませっ!」

 

「うんうん、2人ともあいさつバッチリだね」

 

 オレと姉崎さんと爆炎の3人は、有栖川さんのバイト先の喫茶店で働いている。

 

「結構サマになってるぜ」

「……お前もな」

 

 ……爆炎の奴、以外と接客能力が高いのかな?

 

「2人とも凄いよねー。なんか初めてとは思えないくらい」

 

 姉崎さんが素直に褒めてくる。……ちょっとむず痒い気分になるな。

 

「オレはバイトを一通りやってきたからな。接客も当然やってきたぜ」

「俺はバイトはやったこと無いぜ。でも、声の大きさなら任せてくれ!」

 

 姉崎さんと、オレ達の会話を聞いていたバイト仲間達が拍手を送る。……恥ずかしいじゃねえかよ

 

 でも、案外悪い気分じゃないな。こんな雰囲気は今までのバイトでは経験したことがない。

 

「……接客は大丈夫そうだね。じゃあ、次は調理入ってみようか」

 

 姉崎さんに促されて、調理場へと入る。

 

 ……ちょっと緊張するな。

 

 爆炎は慣れた手つきで調理をする。オレも負けないように料理を作っていく。

 

 ……出来上がったのは普通の人が作ったとは思えない程の見映えの料理だった。

 

 「……驚いた。2人共料理出来たんだね。ギャップ萌えしちゃうよ!」

 

 姉崎さんが驚きの声を上げながら、オレが作った料理を食べ始める。

 

 ……反応はどうかな? オレはドキドキしながら、食事中の姉崎さんを見る。

 

「うん、美味しい。この速さでこの出来栄えなら調理を任せられそう」

 

 良かった。どうやらオレの料理で大丈夫なようだ。

 

「料理を作るバイトもやっていたのかな?」

「ああ。色々と作っていたぜ」

 

 姉崎さんの質問に答えながら、爆炎の方を見る。……あいつの料理はどうかな?

 

「爆炎君も料理上手いね。なにかやってたの?」

「特に何もやってないぜ。ただ、家でよく夕食を作っているんだ」

 

 爆炎はそう答えながら、胸を張っている。

 

「爆炎君は家庭的なんだね。……それじゃ、食べてみるよ」

 

 姉崎さんはそう言いながら、爆炎の作った料理を食べ始める。……その反応は? オレは再び緊張する。

 

「美味しい、美味しいんだけれど……」

 

 姉崎さんが頭を抑えている。……もしかして、口に合わなかったのか? 

 

 慌てた様子で水を飲む姉崎さん。そして、その水を飲み終えると爆炎に向き直る。

 

「辛い、辛すぎるよ!」

 

 そう言って、姉崎さんは爆炎が作った料理を評価した。……辛い?

 

 試しにオレも爆炎の料理を食べてみる。

 

 「……辛っ!」

 

 思わず大声をだしてしまった。……確かに美味しい。だが、辛すぎる。

 

「どうだ、スパイシーで美味しいだろ」

 

 爆炎がドヤ顔で言う。……確かに美味しいんだけれども。

 

「ちゃんとレシピ通りに作らなきゃ駄目だよ」

「レシピ通りじゃ、辛さが足りないぜ」

「足りなくていいの。そういうメニューなんだから」

 

 姉崎さんと爆炎のやり取りは続く。……どうやら、爆炎はレシピ通りに料理するのが苦手なようだ。

 

「爆炎君は接客をやらせた方がいいみたいだね。雨宮君は料理を……って、雨宮君大丈夫?」

「あ、ああ。大丈夫だ。心配させてすまん」

 

 少しふらついたオレを、姉崎さんが心配する

 

「もしかして、俺の料理が辛すぎたせいなのか?」

「いや、お前のせいじゃない」

 

 爆炎の料理が辛かったのは事実だが、フラついたのはオレの体調のせいだろう。

 

「今日はもう帰った方がいいかな」

 

 姉崎さんが心配そうに言う。……確かに、今は調子が悪いみたいだ。

 

「すまん、お言葉に甘えさせてもらうぜ」

 

 オレは素直に厚意を受け取ることにした。

 

「雨宮君がそこまで体調を崩すなんて珍しいね」

「まあな、ちょっと無理し過ぎたのかもな」

 

 オレはそう返しながら、家へと足を運んでいく。……今日は早く寝よう。

 

 

 

 

 

 

「一週間ご苦労様」

 

 姉崎さんが労いの言葉をオレ達に掛けてくる。

 

 「……ごめん。オレはほとんど役に立てなかった」

 

 今までの一週間を振り返る。初日は早退して、その次の日も早退。その次の日は何とか一日出勤できたが、次の日は疲労で休む事になった。

 

「すまんな。俺も正直あまり役に立ってないと思うぜ」

 

 爆炎も少し自信がなさそうにしている。

 

「謝ることは無いよ。二人とも一生懸命なのが伝わってきたから」

 

 姉崎さんはそうフォローしてくれる。

 

「そう言ってくれると助かる」

 

 オレは素直に感謝する。……落ち込んでいても仕方がない。この失敗を次に活かして行こうと思う

 

「次こそは頑張るぜ」

 

 爆炎もやる気十分な様子だ。……だが、姉崎さんの次の言葉でそれは打ち消された。

 

「……あ、ごめん。次はないよ。雨宮君はちょっと不安定だし、爆炎君は声が大きすぎたみたい。店長が怒ってた。あの2人は辞めさせるって」

 

 姉崎さんは、申し訳なさそうな表情をしながらそう話す。

 

「そうか、残念だな」

 

 爆炎が、少し寂しそうに呟く。

 

「2人共ごめんね。……でも、2人のお陰で助かったよ」

 

 姉崎さんはそう言ってオレ達に笑顔を向ける。

 

 

 ……くそ、やはりダメだったか。時間が解決してくれるなんて考えは

甘すぎたんだ。

 

 やはり、あの時からオレは働くことが出来ない……

 

 

 

 

 

 

 

「破壊、破壊、破壊」

 

 漆黒残虐と戦っていた時のことを思い出す。

 

 出したモンスターはすぐに破壊され、オレの場はがら空きになる。

 

 一方で奴の場には強力なモンスターが並んでいく。

 

 ……圧倒的な実力差だった。

 

「……フッ」

 

 お前とじゃまともな戦いにならないとでも言いそうな、そんな冷ややかな笑いが心に残る。

 

 ……奴にリベンジしなくては。そう思うのは必然だった。

 

 だが、今のデッキでは漆黒残虐には届かない。爆炎との戦いで強く実感させられた。

 

 序盤なら、敵の動きにも付いていける。ただ、中型以上のモンスターを処理出来るカードがデッキにほとんど入っていないため、中盤以降は盤面での争いにまず勝てない。

 

 それに対して漆黒残虐は、デスオールから中型モンスターを並べて強力な盤面を作る事を得意としている。

 

 ……つまり、そのままでは勝ち目がなかった。 

 

 だから、前の買い物でその対策となるカードを購入してデッキを改良した。

 

 けれど、それだけではまだ足りない。『あのカード』が入ってこそ、このデッキは完成する。

 

 勝つためには、それが必須。だが、高額で手に入れられないのが現状だ。

 

 バイトでお金を稼ぐのはダメだった。姉崎さんに紹介されたバイト先で働いてみたが、途中で体調を崩してしまいまともに働けなかった。きっと他のバイトでもそうなってしまうだろう。

 

 ……それならば、有栖川さんに頼んでみるのはどうだろうか。彼女ならお願いすれば買ってくれるかも知れない。

 

 彼女の買ってくれたカードを使って、宿敵漆黒残虐を倒す。…………なんか違うな。

 

 それでオレは満足できるのか? オレは自分に自信を持つことが出来るのか?

 

 働けずお金を稼げませんでした。だから下さいで手に入れたカードで勝利したところで、自信を取り戻す事などできないだろう。

 

 やはり、自分の力でカードを手に入れなければ。

 

 

 ……自分の力で金を手に入れなければならない。それも、バイトが出来ない状態で。

 

「……難しすぎるだろ」

 

 思わず、頭を抱えてしまう。……一体どうすれば良いんだ? せめて、オレに秘めたる才能的な何かがあれば良かったのに。バイト無しで金を稼げるような何かが。

 

 ても、そんな都合のいい事なんてある訳がないか。オレにそんな力なんか……

 

「……いや、ある」

 

 オレには一つだけ心当たりがある。最近判明した、オレの秘められた才能。

 

「でも、それは……」

 

 その力を使えば、オレの中の大切な何かが失われてしまう。それでも、その力を使うべきなのか?

 

「……使う、べきだな」

 

 このままではオレは何も為せない人間になってしまう。何かを失ってでも、オレは前に進んでいかなければならないだろう。

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