ホビアニ風世界の死神ギフトデッキ使い   作:Atlantis

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21話

「私の完敗ですわ。……私の動きを読み取った素晴らしいカードの使い方でしたわ」

 

 勝負に敗れた有栖川さんは、笑顔で拍手する。

 

「私の勝利はほとんど決まっていましたのに、その起点を的確に破壊してきたその腕に、私は賞賛せざるを得ませんわ」

 

 有栖川さんはそういいながら、手札のカードを見せてきた。

 

 

 大地の守護者

 コスト3 パワー1000 被ダメージー2000 地 死神

 

 ①召喚時、望むなら自分の場のモンスターを好きなだけ選び手札に戻す。この効果は1ターンに1回しか使えない

 ②①の効果で手札に加えたモンスターのパワーが3000を超える度このターン中使用可能なエネルギーを1生成する(最大5コスト分まで)

 ③①の効果で手札に加えたモンスターのパワーが合計10000以上の時、このターン中のみ自分モンスターが敵モンスターに与えるダメージを+2000し、貫通を得る。

 

 

 地の初級魔法使い

 コスト3 パワー500 被ダメージー2000 地 魔法使い

 

 ①召喚時、山札、もしくは墓地の地属性のスペルを相手に見せてから手札に加える。山札からスペルを加えた場合、手札を1枚選んで捨てる

 ②この試合中、①の効果で手札に加えたのと同名のカードを発動する時コストを2倍払わなければならなくなる

 ③このモンスターをフィールドから墓地に送ることで発動できる。このターン中に使用可能なエネルギーを2生成する

 

 

 『大地のパワーストーン』

 コスト3 パワー500 被ダメージー2000

 

 ①召喚時、フィールド上のモンスターを2体まで選び、1000ダメージを与えてから被ダメージ軽減1000を付与する

 ②この試合中ダメージ無効化が5回発生する度にこのモンスター召喚に必要なコストは少なくなる(1より小さくはならない)

 

 

「もし私の場に1つでも空きがあれば、モンスター回収効果を持つ『大地の守護者』でモンスターを回収して、スペル回収効果を持つ『地の初級魔法使い』で資源と無効化回数を稼ぎ、『大地のパワーストーン』でダメージ軽減付与してから『アングリーゴリラ』を召喚して2体目の『アースウィッチ』や『土の小妖精』、『ブリリアントゴーレム』などでパワーを上げてホムンクルスのパワー10000を貫いて私は勝利出来ましたわ」

 

 有栖川さんの話を聞いて、私は冷や汗をかいた。

 

「成長しましたわね、姉崎さん。以前のあなたなら、ホムンクルスの数とパワーを過信して相手の動きを気にせずプレイしていたでしょう。

 

「……しかし、あなたは私の動きを完璧に読み取り、ホムンクルス5体召喚を我慢して完璧な妨害をしてきましたわ。……本当に、素晴らしいですわ」

「あ、ありがとう」

 

 私は有栖川さんの言葉を聞き、少し照れた。

 

「……私が強くなれたのは、雨宮君のおかげだよ。一生懸命に強くなろうとする彼を見て、多くの学びを得たんだよ」

 

 一つのカードに複数の意味を持たせるデッキ構築や、相手によって自在に戦略を変える事の出来る柔軟な動きなど、彼から学べることは多い。

 

「雨宮君のおかげ、ですか。……確かに、彼からは色々と学べそうですわね」

 

 腕を組んでうなづく有栖川さん。

 

「……あなたが雨宮君のことを気にするのも納得できましたわ」

 

 有栖川さんは、少し間をおいてから話を続けた。

 

「あなたには雨宮君の事を伝えてもよさそうですわね。……私に付いてきなさい」

「……え、何処かに行くんですか?」

「実際に見た方が早いですわ」

 

 有栖川さんは私の手を取り、歩き始める。

 

「あ、有栖川さん!?」

 

 私は驚きながら彼女に付いていった。

 

 

 

 

 

「猫宮、病院までお願いしますわ」

「お任せですニャ」

 

 道場を出ると、そこには黒塗りの高級車が止まっていた。

 

「こちらは私の使用人の猫宮ですわ。癖は強いですけれど、とても優秀な方ですわ」

「それほどですニャ」

 

 

 運転席に座る猫っぽい女性を紹介してくれる有栖川さん。……私も自己紹介をしなくちゃ。

 

「猫宮さん初めまして。有栖川さんの弟子の姉崎です。運転よろしくお願いします」

「よろしくですニャ」

「……それにしても、病院? 雨宮君と病院に何の関係があるの?」

「家族が、病気なんですの」

 

 有栖川さんは、小さな声でそう呟いた。

 

「……病気?」

「ええ。……雨宮君の妹さん。彼女が、ずっと入院しているんですの」

「え……」

 

 ……妹さん?  雨宮君に、妹がいたなんて。

 

「それじゃ、雨宮君がお金を稼ごうとしているのも……」

「そうですわ。彼は今、彼女のためにお金を稼ごうとしていますの」

「そんな事情があったなんて……」

 

 ……雨宮君の事を思う中、猫宮さんの運転で病院に到着した。

 

 白い壁にベッドがぽつんと一つ置いてある質素な病室に入った私と有栖川さん。そこには可愛らしい少女の姿があった。

 

「有栖川さん、その人は?」

 

 黒髪の少女は有栖川さんを見るなりそう聞いた。

 

「姉崎さんですわ。……心配して見に来てくれたんですのよ」

「……そうなんだ。ありがとうございます」

 

 少女は私の方を向いてぺこりと頭を下げた。私は慌てて会釈をした。

 

「姉崎さん、ですよね。有栖川さんから話は聞いています。お兄ちゃんと仲良くしてくれてありがとうございます」

 

 少女は儚い笑みを浮かべながら感謝の気持ちを伝えてくる。

 

「私の名前は雨宮美里花です。来てくれてありが……っ!」

 

 ミリカと名乗る少女は急にフラッと倒れかける。私は慌てて彼女を支えた。

 

「だ、大丈夫!?」

「う、うう……」

 

 ミリカちゃんは頭を抑える。……一体どうしたんだろう?

 

「発作……ですわね」

 

 有栖川さんがぼそりとつぶやく。

 

「発作……?」

 

 私は有栖川さんに聞き返す。

 

「ええ。彼女は……」

「あ、姉崎さん……、で、デッキを、デッキを見せてくれませんか? ……あっ、ううっ」

 

 有栖川さんの話を聞こうとしたところ、苦しそうなミリカちゃんの声に遮られてしまう。

 

「え、デッキ?」

「見せてあげなさい」

 

 困惑する私に対して、有栖川さんはミリカちゃんにデッキを見せるように促す。

 

 ……一体、どういうこと?

 

「はい、これが私のデッキ」

「あ、ありがとう……」

 

 とりあえず、私は彼女の要求に従いデッキを彼女に手渡す。彼女は受け取るとほっとしたような表情になり、私のカードを確認する。

 

「……スペル、ループ、制圧。早期ターンからの決定打。5ターン以内の制圧率90%以上……強い!」

 

 苦しそうな様子のミリカちゃんだったが、私のデッキを確認すると次第に元気を取り戻していった。

 

 ……1回見ただけでわたしのデッキを把握するなんて……

 

「ありがとうございます。元気になりました」

 

 ミリカちゃんの様子に困惑する私に、有栖川さんが説明を始めた。

 

「彼女は難病を抱えているんですの。それも、日常生活が困難になるほどの。数時間おきに発作が起き、その度に彼女は命の危険にさらされますわ」

「そ、そんな……」

 

 有栖川さんの話を聞いて、私は彼女の病状の重さを改めて実感した。……数時間おきに命の危機だなんて、そんなの、ひどすぎるよ。

 

「姉崎さん、人が生きていくために必要な3つのものは何か知っていますか?」

「うん、『食事』『睡眠』『カードゲーム』の3つだよね」

「そうですわ。その3つの内1つでも欠けると人は健康な状態ではいられませんわ」

 

 有栖川さんは当たり前のことを話す。……でも、何が言いたいんだろう?

 

「ミリカさんは人よりも多くの『カードゲーム』を必要とする体質なのですわ」

「……そういうこと、か」

 

 有栖川さんの一言で、私は彼女の状態を理解した。

 

 普通の人間のようにカードゲームをして生きる。それじゃミリカちゃんの生命維持には足りないということ。

 

「……そっか、だから私のデッキを見てカードゲームを感じて元気になったんだ」

「はい!」

 

 ミリカちゃんは大きくうなずく。

 

「制圧ターンの速さが素晴らしいです。これは殆ど負け無しで勝ち続けられるデッキですね」

 

 笑顔で話すミリカちゃん。先ほどまで発作を起こしていたとは思えないほど、元気になっている。

 

「もしかしたら、そのデッキなら最強の有栖川さんにも勝てちゃうんじゃないかな?」

「……姉崎さんは、見事私に勝利しましたわ」

 

 冗談めかして言うミリカちゃんに、有栖川さんは無表情でそう言った。

 

「……姉崎さん、本当に有栖川さんに勝ったんですか?」

「うん。勝っちゃったよ」

 

 私の実力は高く、ミリカちゃんもデッキを見てそれを理解している……だけど、有栖川さんの強さを知っているミリカちゃんにとっては驚くような話だった。

 

「やっぱり強いですね、姉崎さんは。……お兄ちゃんじゃ、たとえ100回戦ったとしても1回も勝てないくらい強い……」

「……え?」

 

 彼女の言葉に、私は耳を疑った。……1回も勝てない?

 

 兄への実力への信頼が低すぎるよ……

 

「……実は私、雨宮君に負けてるんだ」

「……え!?」

 

 私が彼に負けた事実を伝えると、彼女はありえないと言わんばかりの表情になった。

 

「お兄ちゃんが、姉崎さんに勝った!?」

「うん。万全の状態で4ターン目にホムンクルスを5体出す所までは上手くいったんだけど、雨宮君はその上から勝利をもぎ取ったんだ。

 

 私の言葉を聞き、ミリカちゃんは興奮し始めた。

 

「4ターンホムンクルスを上回る出力のデッキ! ……しかもそれを作ったのがお兄ちゃんだなんて!  すごい、 お兄ちゃんは、もう既に姉崎さんや有栖川さんを倒せる域に到達しているんだ!」

 

 嬉しそうにはしゃぐミリカちゃん。……お兄ちゃんが有栖川さんや私より強いかも知れない事が嬉しいのかな?

 

「お兄ちゃん、知らない間に強くなっていたんだ……」

 

 彼女は目を輝かせる。……よっぽど、兄の成長が嬉しいんだね。

 

 笑顔を見せるミリカちゃん。……だけどその笑顔は次第に泣き顔へと変わっていく。

 

「でも、お兄ちゃんは……もう……」

 

 彼女はそう呟くと、泣き始めた。

 

「……え?」

 

 私は彼女の急変に戸惑う。

 

「うう、ううっ」

「だ、大丈夫!?」

 

 私が彼女に近づこうとすると、有栖川さんが私を止めた。そして彼女はミリカちゃんを慰める様に背中をさする。

 

「大丈夫ですわ。……お兄様は、きっと来てくれるようになりますわ」

 

 有栖川さんはそう言って彼女を慰める。……お兄ちゃんは、来てくれるようになる? どういう意味だろう? 疑問に思う私を尻目に、ミリカちゃんは泣き続ける。

 

「……姉崎さん、今日の所はお帰りになりなさい。ミリカさんの面倒は私が見ますから」

 

 有栖川さんは小声で私にそう言った。

 

 ……雨宮君、もしかしてミリカちゃんのお見舞いに来てない? 私はそれが気になって仕方がなかった。

 

「明日、ですわ。明日の放課後雨宮君をここにつれて来てくださいまし。彼に、全てを話してもらいますますわ」

 

 有栖川さんの言葉を聞き、私は決意した。

 

 ……やはり、雨宮君を説得する必要がある。彼は間違った方向へと進もうとしている。

 

 本当にミリカちゃんのことを思うのなら、彼女に会うべきなんだ。いっぱいおしゃべりをするべきなんだ。強くなったデッキを見せて、一緒に笑い合うべきなんだ。……そして、二人で仲よくカードゲーム

をするべきなんだ。

 

 ……カードゲームから離れる必要なんかない。大好きなカードゲームを、思う存分やれば良いんだ。……私は、雨宮君を止める。

 

 

 

 

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