ホビアニ風世界の死神ギフトデッキ使い   作:Atlantis

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鉄壁の守護者

「なにか、良い変化があったようですわね」

 

 有栖川さんは、満足げに微笑んだ。

 

 放課後の道場。オレの様子を見た有栖川さんは、オレの心境の変化を察して声をかけてくれた。

 

「ああ、温泉に入って自分を見つめなおしてきたぜ」

「温泉? ……もしかして、あそこの混浴の?」

「ああ。有栖川さんも今度一緒に入るか? ……なんてな」

「良いですわね。今の内に計画をたてまし……」

「ってちょ! 冗談だから。そういうのはもうこりごりなんだ!」

「ふふ。冗談のお返しですわ」

 

 有栖川さんは、悪戯っぽく笑った。

 

「……冗談を言えるほど落ち着きを取り戻したようですし、話を本題に戻しましょう。……早速、以前の手合わせのフィードバックを……」

「その必要は無いぜ。自分なりに答えを出したからな」

「あら。それは楽しみですわね」

 

 有栖川さんは、期待に満ちた目でオレを見る。

 

 ……その期待に応えられるかは分からないが、オレの全力で答えよう。

 

 オレはデッキを構える。それに対して、有栖川さんもデッキを構える

……ようなことはなく、静かに目を閉じた。

 

 そして、数秒後。有栖川さんは目を見開いた。

 

 その目は、いつもの有栖川さんのものではなかった。

 

 なにか、大きな目標を見据えている者の目。

 

「今回私はあなたとは戦いませんわ。……今回あなたと戦っていただくのはこちらの方ですの」

 

 有栖川さんの言葉と共に、一人の男がこちらへやってくる。

 

 ……フラフラとした足取りでこちらへ向かってくる彼の様子を見て、オレは絶句した。

 

 目が、見開いている。口角が、思いっきり吊り上がっている。口からはよだれが垂れている。……どう見ても、まともじゃない。

 

 いや、見た目だけで人を判断するのは良くないな。もしかしたら、何らかの事情によってやばい顔になっているのかもしれない。実は、まともな人なのかも……

 

「ひひ。こいつを倒したらデートしてくれるんだよなぁ、有栖川さんよぉ。間違いじゃないんだよなぁ? ふひひっ」

 

 舌をぺろぺろしながら、有栖川さんにすり寄っていく。

 

 ……やっぱり、まともじゃなかった。

 

「ええ。間違いではありませんわ。私はこの対戦の勝者とデートいたしますの」

 

 狂気的な男に対し、有栖川さんは笑顔で対応する。

 

「ひひ。じゃあ、約束だぜ。早く始めようぜぇ」

 

 男は、舌なめずりをする。その目は、有栖川さんしか見ていない。

 

「では始めましょうか」

 

 有栖川さんがそう言うと同時に、男がデッキを構えた。

 

「お、おいちょっとまて。情報量が多すぎる。勝者とデートって、どういう事? 聞いてないんだけれど。と言うか、その男誰? 明らかにヤバイん……」

「質問は後で受け付けます。今は勝負に集中してくださいまし」

 

 有栖川さんは、ぴしゃりと言い放つ。

 

「さぁ、行きますわよ!」

「……え?」

 

 オレが困惑している内に、バトルフィールドが展開される。

 

「先攻は俺だ。引いた2枚の内1枚をエネに展開。1エネを使ってオレは『不良学生』を召喚。ターンエンドだ」

 

 

 

 不良学生 

 コスト1 パワー3000 被ダメージ+2000 火 人

 モンスターに攻撃できない。

 

 

 

 相手が出してきたカードは、1コストにしては高いパワーを持つモンスター。相手は早期決着をもくろむデッキタイプの可能性が高いな。それならまずは、序盤をしのぐ必要がある。……ならば!

 

「オレのターン。引いた2枚の内1枚をエネに展開。ターンエンドだ」

 

 オレは何も出さずにターンを終えた。エネに展開したカードは、本来使いたかったカード。しかし、序盤をしのぐための訳に立つカードではなかったため泣く泣く諦めた。

 

「ひひっ! その程度の力で俺に勝てると思ってんのかぁ? 俺のターン。引いた2枚の内1枚をエネに展開。エネを2使用して『ツインライダー』召喚。召喚時効果でもう一体『ツインライダー』を召喚。そして、『不良学生』で攻撃!」

 

 何も出さずにターンを終了した俺を咎めるかのように不良学生の攻撃がオレに向かってくる。

 

 

 オレ

 ライフ20000→17000

 

 

 ツインライダー 

 コスト2 パワー2000 被ダメージ+2000 火 人

 通常召喚時、デッキからツインライダーを特殊召喚。モンスターに攻撃できない。

 

 

 

 ……相手の場はかなり整っている。次のターンには7000のダメージが飛んでくることだろう。だが、まだあきらめるときではない。

 

「オレのターン。引いた2枚の内1枚をエネに展開。使い捨て含めて3エネで『王の守護者』を召喚。ターンエンド」

 

 

 王の守護者 

 コスト3 パワー5000 闇 死神 ガード

 与ダメージ-5000 受けるダメージ-2000

 フィールド・墓地にいる限り2枚分のカードとして扱われる

 

 

「ひひっ。そんな雑魚で俺の攻撃を防げるとでも思ってんのか?」

 

 男は、カードを引く。そして、オレの方へ向ける。オレのライフは17000。ガードを持つパワー5000の王の守護者がいるものの、モンスターの数では大きく負けている。……男がカードを引き抜いた。そして、そのカードに目を移す。そして、男はにやりと笑った。

 

「引いた2枚の内1枚をエネに展開。『アフロ学ラン』を召喚。効果で味方全員のパワーを1000プラスする。全員で攻撃だ!」

「王の守護者でブロック」

 

 

 アフロ学ラン 

 コスト3 パワー1000 火 人

 通常召喚時、味方全員のパワーを1000プラスする

 

 

 不良学生

 パワー3000→4000

 ツインライダー

 パワー2000→3000

 ツインライダー

 パワー2000→3000

 アフロ学ラン

 パワー1000→2000

 王の守護者

 パワー5000→1000

 

 

 オレ

 手札1枚

 エナ2枚 (使い捨てエナ消費済み)

 王の守護者 パワー1000 ガード

 

 少年

 手札0枚

 エナ3枚

 不良学生    パワー4000

 ツインライダー パワー3000

 ツインライダー パワー3000

 アフロ学ラン  パワー2000

 

 

 

「ふへへへへ。王の守護者は虫の息。どうだ、俺の強さを思い知ったか? このまま何もできずにお前は負けるんだ」

 

 男は、余裕の笑みを浮かべている。

 

「ああ、そうだな。お前は強いよ」

 

 オレは素直に男の実力を認める。まさか、全員のパワーを上昇させられるとは。確かに目の前の男は強い。

 

「だが、オレの方が強い。オレのターンだ」

 

 引いた2枚の内1枚をエネに展開。そして、1枚のカードを出す。

 

 

 禁じられた回復術

 コスト2 闇

 後攻ならカードを1枚引く。そして、場のモンスターを1体選び回復(減少分のパワーをプラス)してから相手の場に複製する。このターン、選択されたモンスターは攻撃できない

 

 

「禁じられた回復術の効果で1枚ドロー。そして王の守護者をパワー5000まで回復。だが、デメリットとして相手の場に王の守護者を複製」

 

 オレの場の王の守護者の体が光り輝き、その力を取り戻す。そして、その代償として相手の場に王の守護者が出現する。

 

「へへへっ! そんな回復なんて痛くもかゆくもないぜぇ! 次の俺のターンでそいつを破壊してやる。盾をくれてセンキュー。自ら逆転の目を潰すとはなぁ」

 

 男は、高笑いする。

 

 ……だが、それは早計というものだ。

 

「これで、相手の場にモンスターが5体そろった。スペル『警戒態勢』を発動。コスト0で山札からカードを二枚ドロー。……よし、もう一枚だ。再びコスト0で『警戒態勢』を発動。これで、オレの手札は3枚だ」

「な、なんだと?」

 

 

 警戒態勢

 コスト4 火

 カードを2枚引く。相手の場に5体のモンスターがいる場合コスト0で使用可能

 

 

 男が困惑の声を上げる。 ……だが、すぐに男の表情は笑顔に染まった。

 

「はっはっは。いくら手札を増やそうが、盤面の差は覆せないんだよぉ!」

 

 男は高らかに笑う。確かに、この盤面の差をひっくり返すのは容易ではない。男の言うとおりだ。だが……

 

「オレは残ったエネでスペル『希望の光』を発動。手札のスペル1枚のコストを-3し、山札から1枚エネに送り、1枚ドローする」

 

 

 希望の光

 コスト6 光

 相手の場のモンスターの数だけこのスペルの消費エネルギーをーする

 手札のスペル1枚のコストを-3し、山札から1枚エネに送り、1枚ドローする

 

 

 

 引いたカードは……よっしゃぁ!

 

 最高のカードを引いた。これで、次のターンに必殺のコンボを決めることが出来る。……その為にも、この場面をしっかりと抑えないと

 

「手札からスペル『協定』をコスト0で発動。場のすべてのモンスターに与ダメージー3000を付与する」

 

 

 協定

 コスト6 光

 場のモンスターの数だけこのスペルの消費エネルギーをーする

 場のすべてのモンスターに与ダメージー3000を付与する

 

 

 

「な、何だって? そんな馬鹿なっ。俺のモンスター達が……」

 

 男が言葉を失う。……ここからが、俺が強いタイミングだ。

 

 

 

 オレ

 手札2枚

 エナ4枚 (使い捨てエナ消費済み)

 王の守護者 パワー5000(与0) ガード

 

 少年

 手札0枚

 エナ3枚

 不良学生    パワー4000(与1000)

 ツインライダー パワー3000(与0)

 ツインライダー パワー3000(与0)

 アフロ学ラン  パワー2000(与0)

 王の守護者   パワー5000(与0) ガード

 

 

 

「く、くそっ。だが、まだ場のモンスターの数では勝ってるんだぁ。ここから挽回してやるぅぅ」

 

 苦しそうだった男は、再び余裕の笑みを浮かべる。

 

「オレのターン。引いた2枚の内1枚をエネに展開。『アフロマスター』を召喚。自分の場に4体以上のモンスターがいるから2エネ軽減の4エネで召喚だ。召喚時、味方全員のパワーを3000プラスする……これで、俺のモンスターたちはぁ……」

 

 男はカードを召喚しようとしたが、予想外の人物に止められた。

 

「自分の場に出せるモンスターは5体までですわよ」

 

 バトルを見ていた有栖川さんが、そう告げる。

 

「あ、そういえば……」

 

 オレは思わず、声を漏らす。そっか、すでに5体いるから相手はもうモンスターを召喚出来ないんだ。

 

「……おいぃ、それじゃこのターンオレは何もできないじゃないかぁ!」

「いわゆる盤面ロックという奴ですわね。……この状況を打開することの出来るカードはデッキにありますの?」

「アフロモンスターさえ、場に出すことが出来ればぁぁ……」

「……続けますか?」

「……いいや、あきらめるぅぅぅ」

 

 男は、悔しそうに自分の負けを認めた。

 

「バトル終了! 勝者雨宮君ですわ~」

 

 有栖川さんが、嬉しそうに手を振る。そして勝者であるオレの手を取り、高く掲げた。

 

 ……え、もう終わり?

 

 ここからが、このデッキの強いタイミングなのに。

 

 次のターンに必殺のコンボを決めれるはずだったのに

 

 有栖川さんに強くなった事を証明するチャンスだったのに。

 

 オレはポカーンと、天を仰いだ。

 

「流石ですわ、雨宮君。守りを固めて流行のアグロを刈る。そして、相手を完封する。まさに理想の戦い方ですわ」

「手も足も出ませんでした。鉄壁の守りの前では、特攻など無意味だということを思い知りました」

 

 有栖川さんは嬉しそうに笑った後、感想を述べる。男も戦いの感想を話す。

 

 一方オレは、しょんぼりと肩を落とした。

 

「……あら? どうかしましたの?」

 

 そんなオレに有栖川さんは不思議そうな顔をした。

 

「いいや、何でも無い」

「そう、ならいいのですが」

 

 有栖川さんは少し心配そうな顔をしたが、すぐに笑顔になった。

 

「では、約束通りデートをしましょう!」

「……え?」

 

 オレは思わず聞き返す。

 

「あら? もしかして、私とのデートはお嫌なのですか?」

 

 そんなオレの反応に、有栖川さんは不安そうな顔になる。

 

「いや、そういうわけじゃないけど……」

「じゃあ、決まりですわね! 私の家でお家デートを致しましょう。あ、そうそう。この事は他の人には内緒ですわ」

 

 そう言うと有栖川さんは、いたずらっぽく笑った。

 

「あ、あぁ……」

 

 オレは少しだけ引きつった笑顔を浮かべることしか出来なかった。

 

「ああ、羨ましいです。雨宮さん、僕の分まで有栖川さんとのデート楽しんできてくださいね」

 

 男が、オレに向かって手を振る。

 

「あ、ああ……」

 

 オレは引きつった笑顔のまま、手を振り返したのだった。

 

「……なんか、さっきからお前キャラ違く無いか?」

 

 男の変わりように思わず突っ込みを入れる。

 

 最初あったときは狂気的な悍ましい表情をしていたのが、今ではにこやかな好青年へと変わり果てている。

 

「完膚なきまでに叩きのめされて、目が覚めたんです。これからは心を入れ替えて、女性とお付き合いしたいと思います」

「そ、そっか……頑張れよ……」

 

 あまりの豹変っぷりにオレは、少し引いてしまった。

 

「……困惑しているようですわね」

 

 有栖川さんは、オレをジト目で見ながらそう言った。

 

「まぁ、なんというか……少しな」

 

 オレは素直に白状する。だって怖いもん。ちょっと前までサイコパス感出していた人間がいきなり好青年になるのは流石に恐怖しか感じねーよ。

 

「……その事について、お話しがありますの」

 

 突然真面目な表情になり、有栖川さんがオレを見つめる。

 

「え?」

 

 オレは思わず息をのんだ。そして、次の言葉を待つ。

 

「詳細は、私の家に着いてから話しますわ。さて、今から向かいましょう」

 

 そう言うと有栖川さんは、オレの手を取り歩き始める。

 

「え、あの……」

「行きますわよ」

 

 戸惑うオレに構わず、有栖川さんはずんずんと進んで行くのであった。

 

 ……だが、それに待ったをかける者がいた。

 

「ちょっと待ったぁ!」

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