ホビアニ風世界の死神ギフトデッキ使い   作:Atlantis

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利敵のドジっ娘死神

「ちょっと待ったぁ!」

 

 オレと有栖川さんは、声の方へ振り返る。そこには、姉崎さんがいた。

 

「あ、姉崎さん……昨日はごめん。

イヤな気持ちにさせてしまって……」

 

 オレは思わず頭を下げる。昨日あんな事をしてしまったのだ。謝らない方がおかしいだろう。……正直、気まずい

 

「い、いえ……そのことはいいんです」

 

 姉崎さんも気まずそうな様子だ。……だが、彼女は言葉を続ける。

 

「それよりも……有栖川さん! これから雨宮さんとデートに行くんですよね? そんなのダメですよ!」

「どうしてですの?」

 

 姉崎さんの必死な言葉に対し、有栖川さんは首を傾げる。正直オレも

、なぜ姉崎さんがこんな事を言うのかが理解できない。

 

「どうしてわざわざ……」

「雨宮君、有栖川さんはあなたを利用しようとしているんです!」

 

 オレの疑問を遮り、姉崎さんはそう叫んだ。

 

 ……はい? オレは思わず姉崎さん

の顔を凝視した。その瞳には確かな意思が感じられた。

 

「彼女は雨宮君に恋愛感情なんて持ってないんです! ただ自分の為に、雨宮君を利用しようとしているだけなんです!」

 

 姉崎さんは、有栖川さんを強く睨みつける。

 

 ……え? オレを利用?

 

「あら? それは一体どういう意味ですの?」

「言葉通りの意味です。彼女は……」

「……そこまでですわ」

 

 有栖川さんが、姉崎さんの口を塞ぐ。その目は真剣そのもので、有無を言わさない迫力があった。

 

「推測で物事を語るのはよろしくありません。……そうでしょう?」

「……」

 

 姉崎さんは、何も言い返せない。おそらく図星だからだろう。

 

「……姉崎さん」

 

 オレは彼女に問いかける。そして、次に続く言葉を紡ぐ。

 

「利用されてようが、利用されてなかろうがそんなことはどうでも良い。オレは有栖川さんと一緒に行こうと思う。……気になる話もあるしな」「雨宮君!?」

 

 オレの言葉を聞き、姉崎さんは驚いたような表情を浮かべる。

 

「……それじゃ雨宮君、あなたも有栖川さんを利用しようとしているって事?」

 

 そして、オレを睨みつけながらそう問いかけてきた。 

 

 ……そんなわけ無いだろうに。オレは思わず反論しようとする。

 

 だがそれよりも先に姉崎さんが口を開いた。

 

「そんなことは許さない。相互に愛のない恋愛なんて認められないっ!」

 

 姉崎さんが、突然大声を出す。オレは思わずたじろいでしまう。

 

 ……彼女は一体どうしたんだ? 今の彼女の態度は明らかにおかしい。何かに取り憑かれているかのような感じがした。

 

「……姉崎さんが、闇化しかけていますわ……」

 

 異常な姉崎さんの様子を見て、有栖川さんが何かを呟く。

 

「雨宮君、姉崎さんをバトルで落ち着かせて下さいませ。闇払い人である雨宮君とのカードバトルで、姉崎さんは正気に戻るはずですわ」

「闇化? 闇払い人? カードバトルで正気に戻る? ……有栖川さんは一体何を言っているんだ?」

 

 よく分からないことを言いながら、有栖川さんはオレにカードゲームをさせようとしてくる。

 

 オレは、ますます有栖川さんの考えが分からなくなる。だが、オレは彼女に従うことにした。なぜなら、それが最善だと直感的に分かったからだ。

 

「まあいい、姉崎さん! オレとバトルだ!」

「雨宮君……うん」

 

 オレが声をかけると、姉崎さんは素直に頷いた。そして、デッキをセットする。オレもそれに倣ってデッキをセットした。

 

「……準備は良いですわね?」

 

 有栖川さんが確認してくる。それに頷き返すと彼女は宣言した。

 

「では、バトルスタートですの。先行は姉崎さんでお願いですわ」

 

 先行を指示された姉崎さんは、2枚のカードを取る。

 

 

「ドロー! 1枚をエネルギーに、もう一枚で『マナチャージ』を発動。ターン終了です!」

 

 姉崎さんは、カードを1枚プレイしてターンを終えた。

 

 オレは姉崎さんが使ったカードを確認する。

 

 

 マナチャージ

 コスト1 光

 山札から1枚エネルギーに送る。この試合中スペル使用回数5回以上の時追加でもう一枚をエネルギーに送る。このカードの効果で増やしたエネルギーはこのターン使用不可能

 

 

 

 一見すると今使う必要性が薄いカードではあるが、もしかしたらスペル使用回数を増やす為に使ったのかも知れない。

 

 姉崎さんのデッキは、時間が経つほどドンドン強くなっていくデッキの可能性がある。……ここは、自由にスペルを使われないように、圧力をかけるプレイを心がけないと。

 

「オレのターンドロー」

 

 2枚のカードを引く。……よし、良いのを引いた。

 

「一枚をエネに、もう一枚で『死神派遣隊長』を召喚!」

 

 

 死神派遣隊長 

 コスト1 パワー3000 闇 死神

 自身のターン終了後、自分のデッキから死神カードを一枚選び相手の場に召喚する。出来なかった場合、自分の手札、もしくはエネルギーゾーンのカードを1枚墓地へ送る

 

 

「これでターン終了。終了と共に死神派遣隊長の効果発動。『あわてんぼうのドジっ娘死神』を相手の場に召喚」

「ぐぬぬ、厄介なカードを……」

 

 

 あわてんぼうのドジっ娘死神 

 コスト0 パワー3000 闇 死神 

 即時攻撃(召喚したターンに攻撃出来る)

 攻撃時、相手は山札から1枚をエネルギーに送る

 自身のターン開始時、相手は山札から1枚引く

 

 

オレ

 手札0枚

 エネ1枚 (使い捨てエネあり)

 死神派遣隊長 3000

 

 姉崎さん

 手札0枚

 エネ2枚

 ドジっ娘死神 3000

 

 

 姉崎さんは自分の場に召喚されたカードを見て、顔をしかめる。……ドジっ娘死神は、0コスト即時攻撃パワー3000と言う破格のスペックを持つモンスターである。だが、その代償として相手の手助けをしてしまうという致命的な弱点がある。出来る限り自分の場に居て欲しくない

カードである。

 

「私のターン!」

「その瞬間、ドジっ娘死神の効果発動。オレは山札から1枚引く」

「くっ……」

 

 オレにアドバンテージを取られた姉崎さんは、つらそうな様子で2枚のカードを引く。

 

「ドロー! 1枚をエネルギーに、もう一枚で『スペルブースト』を発動」

 

 

 スペルブースト

 コスト2 光

 この試合中、スペル発動に必要なエネルギーを1少なくする。

 

 

「……よく考えたら、慌てる必要なんて無かったわ。防御的な雨宮君のデッキに対して私のデッキの方が有利なんだから」

 

 苦しそうな様子から一変、姉崎さんは強気な様子へと変わる。どうやら、先ほどの戦いを姉崎さんにこっそりと見られていた

ようだ。……まあ、キーカードは見られてないから問題ないか。

 

「ドジっ娘死神で死神派遣隊長を攻撃。これで、同士討ちよ!」

「その瞬間、ドジっ娘死神の効果発動。オレは山札から1枚エネに置く。さらに、2体は元々の持ち主であるオレの墓地へと置かれる」

「大丈夫、大丈夫」

 

 姉崎さんは、ドジっ娘死神のデメリットを気にも留めずにターンを終了する。

 

 

 オレ

 手札1枚

 エネ2枚 (使い捨てエネあり)

 死神派遣隊長 3000→破壊

 

 姉崎さん

 手札0枚

 エネ3枚

 ドジっ娘死神 3000→破壊

 

 

 ……姉崎さんの発言からして、彼女のデッキにはオレの防御を崩す手段がある可能性がある。

 

「オレのターンドロー」

 

 2枚のカードを引く。……ここは攻めたい場面だが、相手はスペル使いだ。普通のモンスターを召喚しても、スペルでダメージを食らい倒されてしまう可能性がある。ならばここは……

 

「一枚をエネに、もう一枚で『死神軍部隊長』を召喚!」

 

 死神軍部隊長 

 コスト3 パワー1000 闇 死神 2回攻撃

 1ターンに1度ダメージを無効化する

 攻撃時と被ダメージ時、山札の上から2枚確認する。その中の死神カードの数×1000パワー上昇する。

 

 

 俺が召喚した死神軍部隊長は、1ターンに1度だけダメージを無効化する効果を持つ。今の姉崎さんは場も手札も空。死神軍部隊長が次のターンに生き残る可能性は十分ある。

 

「ターン終了」

 

 オレは、姉崎さんへターンを回す。彼女は静かにカードをドローする。

 

「ドロー! ……この攻撃スペルでは死神軍部隊長を破壊できない。エネルギーに送るよ。でも大丈夫、慌てる必要なんか全然ない。2コストで『魔力共鳴』発動」

 

 

 魔力共鳴

 コスト3 光

 1枚ドローする

 この試合中、スペル発動後1枚ドローする

 

 

「魔力共鳴の効果で1枚ドロー! ……よし、追加で『魔力覚醒』を発動!」

 

 

 魔力覚醒

 コスト6 光

 この試合中、スペル発動後山札から1枚エネルギーに送る。(そのターン使用可能)

 この試合中スペル使用回数3回以上の時このスペルに必要なコストを3減らす。

 

 

「魔力共鳴の効果で再び1枚ドロー! ……これで私の番は終了」

 

 

 姉崎さんは、カードを引いてターンを終了させる。……これは、やられた。次のターンから、姉崎さんのスペル無双が始まってしまう。なんたって、コスト2以下のスペルは打ち放題。山札も引き放題で、エネルギーも溜め放題。攻撃スペルも撃ち放題だから、場に出したモンスターもすぐに処理してくるだろう。

 

 ……だが、問題ない。姉崎さんは致命的な隙を晒してしまった。

 

 

 オレ

 手札1枚

 エネ3枚 (使い捨てエネあり)

 死神軍部隊長 1000

 

 姉崎さん

 手札1枚

 エネ4枚

 

 

 

「オレのターンドロー。1枚をエネルギーに置き、もう一枚でスペルを使用する。『禁じられた回復術』発動。スペルブーストの効果により、1コストで使用する」

 

 

 禁じられた回復術

 コスト2 闇

 後攻ならカードを1枚引く。そして、場のモンスターを1体選び回復(減少分のパワーをプラス)してから相手の場に複製する。このターン、選択されたモンスターは攻撃できない

 

 

「禁じられた回復術の効果により、相手の場に『死神軍部隊長』を複製。後攻なので、1枚ドロー。さらに、魔力共鳴の効果で再び1枚ドロー。魔力覚醒の効果で山札から1枚エネルギーに送る」

 

 

 姉崎さんの使ったスペル補助カードの恩恵は、全体を対象としたものだ。だから、オレも利用することが出来る。……でもまあ、専用デッキほどうまくは使いこなせないので、姉崎さんが有利な状況なのは変わらないけれど。

 

 ……とにかく、この状況でスペルを使ったおかげで手札は3枚に、このターン使えるエネルギーは4(最大5)になった。これは、いろいろできそうだ。

 

「スペル『警戒態勢』をコスト3で発動。カードを3枚引いて、山札から1枚エネルギーに送る」

 

 

 警戒態勢

 コスト4 火

 カードを2枚引く。相手の場に5体のモンスターがいる場合コスト0で使用可能

 

 

「さらにスペル『武器調達令』をコスト1で発動。山札から武器カードを1枚手札に加える。さらにカードを1枚引いて、山札から1枚エネルギーに送る」

 

 

 武器調達令

 コスト3 火

 山札から武器カードを1枚手札に加える。相手の場のモンスター1体につきこのスペルのコストを1軽減する

 

 

 オレ

 手札6枚

 エネ2(最大7) (使い捨てエネあり)

 死神軍部隊長 1000

 

「そして、残った2エネで武器『デスサイス』を部隊長に装着」

 

 

 デスサイス

 コスト4 闇

 このカードは死神カードとして扱う。

 モンスター1体のパワーを3000増加させ、貫通(モンスター撃破時余剰ダメージを相手プレイヤーに与える)を付与する

 墓地の死神カード1枚につきこのカード発動に必要なコストを1軽減する

 

 

 カードを使うと同時に禍々しい鎌が部隊長に装着される。

 

「これで部隊長のパワーは4000だ。いけ、直接攻撃」

 

 パワー4000の二回攻撃。これが決まれば、オレの勝ちがぐーんと近くなるが……

 

「それはできないよ。禁じられた回復術の効果で、部隊長はこのターン攻撃出来ない」

「あっ……」

「残念だけど、部隊長はこのまま置物だよ」

「やり直しとか出来たり……」

「しないよ。真剣勝負だもん」

「ぐぬぬ……」

「勝負あったね」

 

 姉崎さんの言うとおり、このターン部隊長は攻撃できない。オレは、せっかくの攻撃のチャンスを無駄にしてしまったのだ。

 

 現在、姉崎さんは手札1枚エネ4枚の状態だ。手札5枚最大エネ7のオレの方が状態は良い。

 

 だけど、相手はスペル特化のデッキだ。この状態下では、さっきのオレとは比べものにならないほど多くのスペルを扱うことが予想される。

 

 そうなれば手札もエネも増やし放題。……結局姉崎さんが有利だという事になる。

 

「オレのターン終了」

 オレは、素直にターンを終了する。

 

「ふぅ。ちょっと危なかったけれど大丈夫みたい。……ここからが私の独断場だよ」

 

 姉崎さんはそう言うと、カードを2枚ドローする。そして、そのカードを見てにやりと笑う。

 

 

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