「ふぅ。ちょっと危なかったけれど大丈夫みたい。……ここからが私の独断場だよ」
姉崎さんはカードを2枚ドローする。そして、そのカードを見てにやりと笑う。
「まずは0コストでマナチャージを発動」
マナチャージ
コスト1 光
山札から1枚エネルギーに送る。この試合中スペル使用回数5回以上の時追加でもう一枚をエネルギーに送る。このカードの効果で増やしたエネルギーはこのターン使用不可能
「山札から1枚引き、上から3枚をエネルギーへ」
姉崎さんは、笑顔で効果発動の処理をしていく。
……0コストで最大エネルギーを3も増やすなんて。しかも、その内の1枚はこのターン使用可能ときた。
これで姉崎さんの手札は3枚、使えるエネルギーは5(最大7)
「次に0コストでマジックドローを発動。山札から2枚引き、上から1枚をエネルギーへ」
マジックドロー
コスト1 光
山札から1枚引く
姉崎さんは、スペルによってカードをさらに引いた。……やっぱり姉崎さんのデッキにはスペルループに適したカードが多いな。ドンドンと手札と使用可能エネルギーが増えていく。
これで姉崎さんの手札は4枚、使えるエネルギーは6(最大8)
「念のため、場をスッキリさせるよ。部隊長で部隊長を2回攻撃。これで私の部隊長は自滅。更にエネルギー2つでスペル『マジックファイア』を発動。部隊長を破壊! これで場は空だよ」
マジックファイア
コスト3 火
敵モンスター1体に被ダメージ軽減を無視して3000ダメージを与える
この試合中スペル使用回数5回以上の時与えるダメージは5000になる
「スペルを使ったので山札から1枚引き、上から1枚をエネルギーへ」
姉崎さんは除去をしながらもリソースを獲得していく。……スペルの嵐は、まだまだ続きそうだ。
スペル、スペル、スペル。姉崎さんが山札からカードを引く度に、スペルが発動され、エネを増やし山札からカードを引く。まるで嵐のように。
戦場はスペルの炎に包まれ、ドローとエネ加速が繰り返される。そんな戦況を見ながら俺は考えていた。
……そろそろ切り札が出てくるのではないかと。
その予感は当たっていた。
「これでおしまいだよ。スペル『ホムンクルス錬成』を発動」
ホムンクルス錬成
コスト8 闇
このスペル発動に必要なコストは軽減できない
ホムンクルスを1体自分の場に生成する。
このターンに発動したスペル2枚につき、生成されるホムンクルスが1体追加される
ホムンクルス
コスト8 パワー10000 闇 ガード 貫通
「私はこのターン、8枚以上スペルを発動している。だから、上限である5体のホムンクルスを召喚するよ」
スペルの効果で、姉崎さんの場にホムンクルス5体が召喚される。
コスト8のモンスターが、1度に5体も……
それぞれがガードを持っているため、彼らを倒さなければ直接攻撃が出来ない。
……それにしても、すごい光景だ。パワー10000のモンスターが場の上限まで出されているなんて。異様としか言いようがない。
「更に、4エネを消費して『魔術師の守り』を発動。ホムンクルス達に破壊耐性を付与する」
魔術師の守り
コスト5 光
自分の場のモンスター全ては、効果で破壊されなくなる
「そして、3エネを消費して『魔法障壁』を発動」
魔法障壁
コスト4 光
次のターン、自分と自分の場のモンスター全ては、スペルやモンスター効果でダメージを受けない
姉崎さんは、スペル効果によってで場の守りを固めた。……1ターンの内に倒すことは不可能だと思われるほど強力な布陣である。
「最後に、スペル『ちょっと待ってて』を発動。特殊勝利も許さないからね」
ちょっと待ってて
コスト2 光
次のターン、相手は特殊勝利が出来ない
コミカルな名前のスキルによって、特殊勝利を封じられる。
破壊できないガード持ちのパワー10000が5体。さらに特殊勝利も出来ないときた。……これは、マジでえげつない。
「それじゃあ、ターン終了。次のターンに仕留めてあげるよ」
姉崎さんはターンの終了を宣告する。
長かった姉崎さんのターンが終わってようやくオレの番だ……と喜びたいところだが、そうは問屋がおろさない。
5体のホムンクルスを倒さなければダイレクトアタックが出来ず、このターンに勝利が出来ない。
つまり、次のターンにホムンクルス達に蹂躙されてしまう事になる。……厄介な状況だ。
オレ
手札5枚
エネ7
姉崎さん
手札いっぱい
エネいっぱい
ホムンクルス×5
コスト8 パワー10000 闇 ガード 貫通
「オレのターン。カードを二枚引き全てエネに。これでオレの最大エネは9だ」
オレ
手札5枚
エネ9
「このターンで勝たなきゃオレは負けちまう。まずはホムンクルス達を倒さないと」
「このターンで勝つ? 無理じゃないかな」
「やってみなくちゃ判らないぜ」
オレはニヤリと笑い、1枚のカードを出す。
「『あわてんぼうのドジっ娘死神』を召喚」
あわてんぼうのドジっ娘死神
コスト0 パワー3000
闇 死神
即時攻撃(召喚したターンに攻撃出来る)
攻撃時、相手は山札から1枚をエネルギーに送る
自身のターン開始時、相手は山札から1枚引く
「ドジっ娘死神は、即時攻撃を持つ。このターン攻撃可能だ」
「ホムンクルス達を倒すには攻撃力が足りないよ?」
「じゃあ攻撃力を増やせば良い」
姉崎さんの言う通り、ドジっ娘死神のパワーはホムンクルス達の半分もない。
……だけど、致命傷を与えることは出来るんだ。
「スペル『武器調達令』をコスト0で発動。山札からデスサイスを1枚手札に加えて0コストでドジっ娘死神に装備。さらにカードを1枚引いて、山札から1枚エネルギーに送る」
デスサイス
コスト4 闇
このカードは死神カードとして扱う。
モンスター1体のパワーを3000増加させ、貫通(モンスター撃破時余剰ダメージを相手プレイヤーに与える)を付与する
墓地の死神カード1枚につきこのカード発動に必要なコストを1軽減する
あわてんぼうのドジっ娘死神
パワー3000→6000 即時攻撃 +貫通
オレ
手札4枚
エネ10
「早速ドジっ娘死神で攻撃」
「ホムンクルスでガード!」
あわあわしながらデスサイスを片手に突撃するドジっ娘死神。
だが、石に躓いて転んでしまいお財布を相手の場に落としてしまう。
しかし、幸運なことに彼女の手から離れたデスサイスが1体のホムンクルスに当たり大ダメージ。
怒り狂ったホムンクルスがドジっ娘死神に仕返しをして彼女は破壊されてしまう
ホムンクルスA
10000→4000
「よし、これで追い詰めたぞ」
「まだだよ。まだ5体とも残ってるもん」
「それはそうかもな。……だけど」
余裕そうな表情を崩さない姉崎さん。そんな彼女にオレはニヤリと笑う。
「1コストで『死神派遣隊長』を召喚」
死神派遣隊長
コスト1 パワー3000 闇 死神
自身のターン終了後、自分のデッキから死神カードを一枚選び相手の場に召喚する。自分の手札、もしくはエネルギーゾーンのカードを1枚墓地へ送る
「……そのカードでどうやってこの状況を切り抜けるの?」
「こうするんだよ! スペル『裏切りの餞別』を発動」
裏切りの餞別
コスト1 闇
自分の場にモンスターがいるときのみ使用可能
自分の場のモンスターを1体選択してコントロールを相手に移す。その後山札から2枚引く
「死神派遣隊長はオレを裏切りそっちにつく。だが、既に場は埋まっている為破壊される」
寝返った死神派遣隊長が姉崎さんの元へ向かうが、窮屈さを感じたホムンクルス達に蹂躙されて破壊される。
「『裏切りの餞別』発動によりエネを加速して3枚ドロー。……よし、来た」
スペルのドロー効果によって、オレは引きたいカードを引くことが出来た。
「スペル『魂を刈る準備』を発動」
魂を刈る準備
コスト2 闇
このカードは死神カードとして扱う。
次の自分のターン終了時まで敵モンスター全てのパワーを1000マイナスする(この効果でパワーが0になっても破壊されない)
相手モンスター1体を選んでもよい。そうした場合そのモンスターの効果を無効化する(ガードを除く)
自分ターン中に手札の死神カードを1枚相手に提示しても良い。そうした場合、コスト0でこのカードを発動することができる
「カードを1枚提示。そして、ホムンクルス達のパワーを一時的に1000減らす。ダメージではなく一時的なパワー軽減のためこの効果は魔法障壁の影響を受けない。さらにスペルを使用したため手札とエネを1枚づつ補充」
ホムンクルスA
4000→3000
ホムンクルスB
10000→9000
ホムンクルスC
10000→9000
ホムンクルスD
10000→9000
ホムンクルスE
10000→9000
スペル『魂を刈る準備』によって、敵にダメージを与えつつ資源の補充を行う。……そして、準備が完了する。魂を刈る準備を使用したことにより、使用可能エネルギーは11に、墓地の死神は9枚になった。……いよいよだ。
「残りのエネルギー全てと、使い捨てエネ。合計12エネを使用して、『死神姫ミザリー・ス―』を召喚。……これで、決めてやるぜ!」
フィールド上に現れたのは、黒のドレスを身に纏った死神だった。深紅の鎌を肩にかけ、優雅に佇んでいる。
死神姫ミザリー・ス―
コスト30 パワー3000 闇 死神
このカードはお互いの墓地の死神カード全ての効果を持つ。(一部の効果は重複する)
自分フィールド上に特殊召喚することが出来ない
「……コスト、30のカード!? 12エネだけじゃ召喚できないはずじゃ……」
姉崎さんが驚くのも無理はない。コスト30のモンスターを12エネだけで召喚することは普通は出来ない。エネルギーを18も踏み倒すなんて、普通ならありえない事なのだから。……ただし、このカードに関しては例外だ。
「死神姫ミザリー・ス―は墓地の全ての死神カードの効果を持つ。……つまり、デスサイスの効果も所有している」
「デスサイスの効果ってことはつまり……」
「そう。墓地の死神カードの数に応じて必要コストが軽減される。……デスサイスは墓地に2枚。つまり、墓地の死神1枚につき2コスト軽減される。墓地の死神は9枚。よって18コスト軽減での召喚だ」
デスサイス
コスト4 闇
このカードは死神カードとして扱う。
モンスター1体のパワーを3000増加させ、貫通(モンスター撃破時余剰ダメージを相手プレイヤーに与える)を付与する
墓地の死神カード1枚につきこのカード発動に必要なコストを1軽減する
「さらに、デスサイス2枚の効果により死神姫のパワーは6000上昇し、貫通が付与される」
死神姫ミザリー・ス―
パワー3000→9000 +貫通
「パワー9000!? ……でも、まだ大丈夫。私にはホムンクルスたちがいるから」
「……確かに壁は厚いな。なら、弱らせるしかない。死神姫で『魂を刈る準備』の効果を発動。手札を1枚開示し、ホムンクルス達全てのパワーを再び1000マイナスする」
ホムンクルスA
3000→2000
ホムンクルスB
9000→8000
ホムンクルスC
9000→8000
ホムンクルスD
9000→8000
ホムンクルスE
9000→8000
「スペルの効果まで使えるなんて……でも、まだホムンクルス達のパワーは十分にある。それに、召喚されたばかりの死神姫はこのターン攻撃が出来ない。次のターンに破壊すれば……」
「死神姫は墓地のドジっ娘死神の効果も持つ。つまり、即時攻撃を所有する。デメリットも引き継いでしまっているが、この状況下では焼け石に水」
あわてんぼうのドジっ娘死神
コスト0 パワー3000 闇 死神
即時攻撃(召喚したターンに攻撃出来る)
攻撃時、相手は山札から1枚をエネルギーに送る
自身のターン開始時、相手は山札から1枚引く
死神姫ミザリー・ス―
パワー9000 +貫通 +即時攻撃
「死神姫でホムンクルスを攻撃。その瞬間墓地の2体分の死神軍部隊長の効果を発動。山札の上から2枚確認。……引いた死神カードは1枚。パワー1000×2で2000上昇」
死神軍部隊長
コスト3 パワー1000 闇 死神 2回攻撃
1ターンに1度ダメージを無効化する
攻撃時と被ダメージ時、山札の上から2枚確認する。その中の死神カードの数×1000パワー上昇する。
死神姫ミザリー・ス―
パワー9000→11000 +貫通 +即時攻撃
「ホムンクルスを1体破壊。部隊長の効果で反撃ダメージは無効。貫通ダメージでライフ3000を削る。」
死神姫ミザリー・ス―
パワー11000→11000
ホムンクルスB
パワー8000→0(余剰ダメージ3000)
姉崎さん ライフ20000→17000
「さらに、死神姫は部隊長の効果で2回攻撃を得ている。ホムンクルスに攻撃、破壊だ」
攻撃時に再びパワー2000上昇。貫通ダメージは5000になる。2体目の部隊長の効果で反撃ダメージは無効。
死神姫ミザリー・ス―
パワー11000→13000
ホムンクルスC
パワー8000→0(余剰ダメージ5000)
姉崎さん ライフ17000→12000
「うっ、ライフが1度に8000も削られるなんて……」
「まだ終わりじゃないぜ。部隊長は墓地に2体いる。よって死神姫の2回攻撃は1度だけじゃない。もう一度2回攻撃を行うことが出来る」
「そんな……」
「死神姫ミザリー・ス―でホムンクルスに攻撃。攻撃時に再びパワー2000上昇で、貫通ダメージは7000だ」
死神姫ミザリー・ス―
パワー13000→15000→7000
ホムンクルスD
パワー8000→0(余剰ダメージ7000)
姉崎さん ライフ12000→5000
「死神姫はもう反撃を無効化できない。だから、パワー8000ダウンで7000に。……でも、そんなの関係ない。姉崎さんの場には既に手負いのホムンクルスがいる。ガード持ちはガード持ちをガード出来ない」
「ということは、つまり……」
「死神姫で手負いのホムンクルスを攻撃! 」
死神姫ミザリー・ス―
パワー7000→9000→7000
ホムンクルスA
パワー2000→0(余剰ダメージ7000)
姉崎さん ライフ5000→0
「そんな、まさか万全の状態で逆転負けなんて……」
姉崎さんの顔は驚愕に満ちている。……それも、当然だろう。僅か4ターンで最強の盤面を作り上げ、勝利を確信していたのに、次の瞬間には逆転負けしていたのだから。
「…………すごい、すごいよ雨宮君!まさか、あそこから負けるなんて思いもしなかったよ」
「いや、オレもギリギリだった。……姉崎さんのデッキは強いよ」
「……でしょ! 私ももっと強くなって今度は雨宮君に勝つよ!」
「ああ。楽しみにしてるぜ」
笑顔でオレと握手する姉崎さん。……だけど、その笑顔の裏には、自分の弱さへの苛立ちと、勝利の渇望が見え隠れしていた。
「見事な勝利でしたわ」
手をゆっくりと叩きながら有栖川さんがこちらに声をかけてくる。
「今の貴方はもう相当な実力者。きっと、すぐに私に追いつくのでしょうね」
「ああ、そうなるよう努力するさ」
「ええ、楽しみにしてますわ」
有栖川さんはにっこりと微笑む。
そして、彼女は本題を切り出した。
「姉崎さん、先程何か違和感を感じるようなことは有りませんでしたか?」
「え? 違和感……ですか?」
「……ええ、些細なことでもよろしいので、何かありませんでしたか?」
有栖川さんの言葉を受け、姉崎さんは考え込み始める。
そして、少しして彼女はハッと顔を上げた。
「あ、そうだよ! 何故だか判らないけど私、すごく心が乱れてた。……いつもならあんな風に癇癪を起こすようなことは無いはずなんだけれど」
姉崎さんは、首をかしげて不思議そうな顔をしている。……だが、有栖川さんはそんな姉崎さんを見て満足そうな表情を浮かべていた。
「やはり、そうですわね」
「やっぱり何か知ってるの? 教えてよ有栖川さん!」
「……ええ、良いですわよ。……ですがその前に、雨宮君。貴方には1つ確認しなければならないことがありますわ」
そう言うと有栖川さんはオレの目を見る。その目は真剣で一切の嘘を許さないといった雰囲気だ。……オレは思わず息を飲む。
「雨宮君、貴方は『闇払人』ですね?」
「闇払人?」
有栖川さんの言葉にオレは思わず聞き返す。姉崎さんも同じように首を傾げる。……どうやら、有栖川さんの言葉の意味を理解出来ていないようだ。
「さっきから気になってたんだが、闇払人って何なんだ?」
「闇化した人間をカードバトルによって、正常化させる存在ですわ」
「闇化?」
有栖川さんの口から、また知らない言葉が出てきた。次から次へと知らない言葉が出てきて、正直頭がパンクしそうだ。
「……最近、様子のおかしい人を何度か見かけていらっしゃいませんか?」
「ああ、いるな。……でもそれがどうかしたのか? まさか、そいつらが闇化と関係してるって言いたいのか?」
有栖川さんの言葉に、オレは疑問をぶつける。
……彼女の言うとおり、最近様子のおかしい人をよく見かける。
例えば、いつも暗い表情でなにか独り言を呟いている人達。
何度も万引きしていたことがバレて停学処分になった人達。
……そして、ヤバい表情をしていたさっきの男や、突然情緒不安定になった姉崎さん。
「彼らの奇行は闇化と何か関係があるのか?」
「ええ。その通りですわ。突然人がおかしくなる現象を『闇化』といい、それを正す存在が『闇払人』なのです」
有栖川さんはオレの問いにゆっくりと頷く。
「闇払人。それは、カードバトルによって闇化した人間を正常化する存在ですわ」
「……それがオレだと?」
「ええ。あなたと戦う事により、闇化した人が正常化するのですわ」
笑顔で説明を行う有栖川さん。
……有栖川さんの話を信じるなら、オレはカードバトルをすることで人を正常にすることが出来るらしい。
……にわかには信じられない話ではあるけれど。
でも、オレが持つべき力ではないような気がする。『人の歪み』を直したいと思うような事は無いし、こんなオレがそんな能力を持つ人間とも思えない。
「本当にそんな能力がオレにはあるのか?」
「……よく思い返してみてください 。貴方がカードバトルを行った後、対戦相手はどうなっていましたか?」
有栖川さんの言葉で、オレは気付く。彼女の言葉には信ぴょう性があることを。
さっきの様子のおかしい男は、オレとのバトルの後で豹変していた。
彼の変わりぶりは、カードバトルによって闇が払われたからだと思えば、納得出来る……かもしれない。
それに、漆黒残虐の奴もオレと戦った後態度が柔らかくなっていた。
「……もしかして、オレは知らないうちに闇化した人間の闇を取り除いていたのか?」
「ええ、そうですわ」
有栖川さんはにっこりと微笑む。そして、オレの目を見つめてきた。
「貴方には、英雄になる資格が……」
「雨宮君が人の闇を取り除けるって本当!?」
何かを言おうとしていた有栖川さんだったが、突然大声を出した姉川さんによってその言葉はかき消された。
「うわ、急にどうしたんだ? 姉川さん」
「人の闇を取り除けるって本当!?」
「わっ、ちょ、近いって。オレもよく分からないよ」
オレの目の前まで迫ってきた姉川さん。
両肩が彼女の手に揺さぶられ、思わず情けない声を上げてしまう。
「有栖川さん!本当なの!?」
姉崎さんは興奮した様子で有栖川さんに問いかける。それに対し、彼女は静かに答える。
「……ええ、雨宮君がカードバトルを行う事で、闇化した人間の正常化を行えますわ」
有栖川さんの言葉に、姉崎さんは目をキラキラさせる。
彼女はそのまま勢いよくこちらを向くと、オレの手を握った。
「お願い、雨宮君! 戦って欲しい人がいるの」
姉崎さんは必死な様子でオレの手を握りしめ、懇願してきた。
今回の話はよかったですか?
-
はい
-
いいえ