デルタ式透き通るような世界の過ごし方   作:灰ネズミ

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透き通る世界観(超銃火器社会)に似合いまくりな、筋肉もりもりマッチョマンの入場です。
皆様フラグを振り回してお迎え下さい。或いはチェーンソーの空吹かしで。
フラグの投下は他の方の迷惑になる可能性がありますので、ご配慮下さい。

各キャラクターのエミュレートが甘いと感じましたら申し訳ございません…筆者の限界です。妄想力が足りない!
数あるコラボ作品の一つ。こういうものでも良いのだと、広く容赦のある目で見て頂けましたら幸いです。



Act.0

まるで灰のようにゆっくりと舞いながら、降り落ちる雪で視界不良の街中。

コンクリートのグレーと窓グラスの濃紺、広告塗装による赤色が街路樹の向こうに見えるその先で、四角い筐体に逆関節染みた脚部を持つ大型のロボットが聳え立っていた。

その足の一本は路肩に止められた車両を踏み貫いており、引火した後なのか炎と黒い煙が今も上がり続ける。

両脇には砲門が2セット備えられており、路肩に止められた車の陰に隠れる制服姿の少女達を今にも撃ちたそうにしている。

 

FOX1(ユキノ)!周りは片付いたけどまた来るよ!」

 

セーラー服に白のタイツを履き、桃色のショートボブをした少女が懐にショットガンを抱えながら肩にかけた鞄から通信機を取り出し、片手でスイッチを入れると後方を確認する。

頭の上に生えた獣耳は忙しなく揺れて、周囲の音を拾ってあちこちに向けられている。

その少女の前方対岸では、同じ制服で白いソックスを履いた獣耳の長い金髪の少女が、大盾を背負って車両後ろに控えていた。

 

「雪と爆炎の逆光で視界不良…『災厄の狐』の奴、いい加減にしなさいよ!」

 

悪態を吐きながら車体の陰からサブマシンガンを構え、前方のロボットへ――その上に立つ黒い和服とセーラー服を合わせた様な制服を着た、狐面を被る黒い長髪少女へ発砲する。

隠れながら撃ったとはいえ、サブマシンガンの連射により数発は少女に着弾した筈である。

それにも関わらず、片方だけニーソックスを履いたその両足を大きく広げてロボットの上に立つ少女は微塵も揺らぐ事もなく、不遜にその肩へ銃剣(小刀)の付いたライフルを担いでいた。

 

「あー…FOX3(クルミ)のマシンガンじゃまだ距離が遠そうだねぇ。どうする?FOX1(隊長)

 

FOX3と呼ばれた金髪の少女の後方、別車両から様子を伺う狙撃手。

こちらも他の車両に隠れる少女達と同じ制服に黒のスパッツを履き、後ろに一本で編んだベージュの髪に獣耳を備えた少女…FOX4(オトギ)が尋ねる。

その横に立ちずさんでいたFOX1と呼ばれた少女。

同じ制服に黒のニーソックスを履いており、赤色の鞄を肩にかける獣耳の黒く長い髪の少女は同じく赤色のヘッドセットに手を添えて戦場を怜悧冷徹に見つめていた。

同時にヘッドセットから伝えられた通信を耳にして、その目を細める。

 

「…増援が来る。連邦生徒会の雑用係(・・・)を寄こすから好きに使えとの事だ」

 

その言葉に少女達は思わず顔を見合わせた。

耳に着けた小型端末から聞こえた内容に目を瞬かせた後、代表して桃色髪の少女(FOX2(ニコ))が確認する。

 

「その。好きに使えっていうのは…前みたいに先駆けして貰う(勝手に暴れさせろ)って事かしら?」

「…その通りだ」

 

彼女の質問に対し増々目を細め、眉根を寄せて顰め面になりながら返答する黒髪の少女(FOX1(ユキノ))。

解答に再度見合わせる少女達の向こうから、建物の影より増援の敵勢力――セーラー服だったり作業着(つなぎ)だったりする少女達が現れる。

それを見て瞬時に戦闘態勢に入った獣耳の少女達へ向けて走り込んできた、敵対勢力である彼女らが銃を構えた瞬間。

空中から何か小さなものが飛来してきた。

 

「――スモーク投下!」

 

遅れて響いた男の野太く低い声と共に両陣営の間(…の車両寄り)に落ちた飛来物は、数回地面を刎ねた後に大量の煙を吹き出した。

元々舞い散る雪で視界が悪かった戦場が更に悪化し、敵陣からも何事かと慌てふためく声が響き渡る。

その合間に鈍い音が数回響き、先程とは別な男の悪態をつくガラガラとした声が上がる。

 

「…あ"ークソっ。おい、ドム!どこに投げてやがる!」

 

煙を吹き飛ばしながら、車両に隠れた少女達の方へ現れた男が声を荒げる。

色褪せてやや綻びたバンダナを頭に巻き、筋肉の鎧に覆われた屈強な肉体。

鈍色の金属めいた光沢を放つ重厚な鎧を着込み、人の顔程もある太さを持つその手腕にはチェーンソーとアサルトライフルを合体させたような、イカした(えげつない)形状を持つ黒光りする銃があった。

焚かれたスモークに咳き込みながら、彼に遅れて別な男が煙から出て来る。

こちらも同じような体格(ガチムチ)で着込んだ鎧と銃を手に、その頭は刈り込んだ黒髪とモミアゲ。

そして口ひげまで繋がっていて、顔すらいかつい重装甲染みている。

しかし、それに反して眉尻は困ったように下がっていた。

 

「あー、悪い。でも予定通り敵の混乱は誘えただろ?」

「ああ。ついでにユメの野郎も迷子になったぞクソッタレ」

 

バンダナの大男が煙の方角を顎で示すと、煙中から「ひぃ~ん」と情けない女性の声が上がる。

声の方角に髭面の大男は顔を向けたが、すぐに戻すと肩を竦めて見せるだけだった。

 

「ユメはスモークが無くても迷子になる。だろ?」

「確かにな。俺はアッチ(FOX小隊)と話を付けて来る。アイツが迷子センターに届けられる(敵側に捕まる)前に迎えに行け」

 

髭面の大男のあんまりな言葉に対し、あっさりと肯定して見せたバンダナの大男が指示を出す。

それを了解と受けて返し、髭面の大男は身体をひるがえして煙中に突っ込んでいく。

それを見送った後、彼は唖然としている少女達の元へ腰を低くしながら走り寄ってきた。

 

「こちらデルタ…あー。連邦生徒会、雑務対処室(・・・・・)所属のマーカス・フェニックスだ。ペストコントロールのガイド…テロリスト対応の応援(露払い)に来た」

 

少女達は普段聞きなれない男性の野太く低い声と、不良でももう少し聞こえが良い言葉選びをするやりとりに目を丸めていた。

そんな彼女達にやり難そうに彼は表情を歪めながらも、所属と合流理由を伝える。

見方によっては、彼女達の反応に苛ついているようにも見える表情の変化。

しかし以前の共同作戦での会話から、単に戸惑っているだけという事を知っている少女達の隊長――FOX1(ユキノ)が、気を取り直して軽く目礼を交わす。

 

「応援感謝する。敵は『災厄の狐』率いる不良集団と大型ロボット、それとつなぎ姿の傭兵達。ロボットの装甲は分厚く、まだ破壊できずにいる」

 

彼女がポケットから小型通信端末を取り出すと、各敵のリストアップと敵戦力の特徴を簡単にまとめた一覧を立体映像で表示させる。

それをザッと眺めた後、彼は「作戦はあるか?」と尋ねた。

 

「『災厄の狐』さえ押さえれば不良達は散り散りになる。…が、あの大型ロボットが邪魔で近付くに近付けない。対処(・・)できるか?」

 

立体映像を覗き込んでいた見上げる程の巨体を前に、怯まず尋ねる少女。

男は鼻息を一つ吐くとその巨体を反転させ、銃を肩に担いだ。

 

「任せろ。デカブツとのスパーリングは得意(無茶振りはいつもの事)だ」

 

 

 

FOX小隊と別れたバンダナの大男。マーカスは先に突っ込んだ相方である髭面の大男、ドミニク・サンチャゴ――ドムの後を追い、煙幕に突入する。

混乱している戦場で散発的に流れ弾が飛び交う中を、腰を低くして走り抜けていく。

通信で短いやり取りを交わして交戦位置を確認し、そちらへ向かうと壊れた車両の横で大盾を構えて必死に耐える少女の元へと駆け寄った。

元は黒い金属製のトランクケースを展開、大盾に変形させて押す様に構えたその身体は豊満で、青緑色の長い髪の上に生えるアホ毛が飛び交う銃弾を防ぐ度に揺れている。

白のYシャツに灰色チェック柄のスカートという制服に水色のネクタイを締める彼女、梔子(くちなし)ユメがマーカスに気付くと、泣きそうになっていた顔がパッと明るく輝く。

 

「あっ、マーカスさん!よかった~これで助かります!」

「よく耐えたなユメ。だが追加オーダーだ。あのデカブツを片付けなきゃならねぇ」

 

車両を背にしてロボットの居る方向を指さすマーカスに、ユメの笑顔が引きつる。

彼女の脇でカバーをしていたドムは片眉を上げ、視線と表情で話の続きを促す。

 

「ドム。ユメと一緒に左へ回り込め。俺は右からコイツを試す」

「了解」

 

黒光りするチェーンソーの刃をチラつかせて方向を指さすマーカスに短く返事をし、ドムは体勢を低くして走り出す。

ユメも慌てて地面に突き立てていた大盾を持ち上げ、小さな悲鳴を上げながらその後を追った。

それらを見終わる前にマーカスも行動に移る。

舞い散る雪と煙幕で視界が悪い中、路肩に止められた車両やゴミ箱。自販機などに隠れながら素早く移動していく。

時にはパルクールめいた動きで遮蔽物を超えていく中で、煙中から作業着を着込んだ少女が数名飛び出してきた。

 

「あっ。えっ?」

「――フェアじゃねぇな」

 

突然眼前に現れた大男に驚いて間の抜けた声を上げる敵側の少女に、マーカスは遠慮なくアサルトライフルの弾丸を叩きこむ。

銃弾を受けた少女は衝撃でふらふらと揺れた後、気絶して地面に転がり伏せた。

…マーカス達男共が知る世界では蜂の巣になって血溜に沈まるのがいつもの光景であったが、ここでは違う。

キヴォトスの人々は頑丈――そんな言葉で片付くようなものではないが――であり、銃弾や爆発物程度では衝撃で吹き飛ぶか気を失う位でしかない。

その事に未だ時折不可解に思うものの、手加減の手間が省けると割り切って彼は次の標的へと襲い掛かる。

あっと言う間に無力化されたのも相まって、他の少女達も呆気なく銃弾に倒れていく。

 

「う、うわあああ!?」

 

あまりに一方的にやられる状況に、パニックになった一人が叫び声をあげてマーカスへと突撃してきた。

突き出された銃を見て彼はトリガーを引かず、代わりにチェーンソーを起動させて鈍いエンジン音を上げる。

そして無防備に晒された銃身へ向けて振りかざすと甲高い金属音が鳴り響き、数秒もせず少女の銃は裁断されてしまった。

 

「は?えっ?」

「どうかしたかよ?」

 

真っ二つになった銃の断面を見て呆気に取られる少女に対し、尋ねるように声を掛けながらマーカスは片手を銃から離して振りかざす。

彼女が最後に聞いたのは老若男女。種族平等と歌う(唸る)ゴツい握り拳が振るわれる風切り音であった。

地面に転がした少女を見下ろし、若干の罪悪感で眉を顰めた後。

マーカスは建物の影から曲がり角の先を覗くと、視線の先に大型ロボットの姿を捕えた。

上に仁王立ちする狐面の少女、災厄の狐は周囲へ絶え間なく指示を出している。

顔が横を向く隙をつき、壊れた建物の破片などの遮蔽物に身を隠しながら近付く。

丁度背後へ向けたタイミングで飛び出し、駆け寄りながら起動したチェーンソーを振りかざす。

 

ヴィィィ…ギィィィン!

「!?硬た過ぎじゃねぇかコイツ!」

 

火花を散らして食い込みはしたものの、裁断とまではいかない脚部の硬さに舌打ちが彼から零れる。

甲高い派手な金属の擦れる音と振動で気付いた災厄の狐が、上から銃弾をばら撒く。

すぐに銃を引き戻し、マーカスは致命傷を負う前にさっさと引き下がって遮蔽物の裏へと飛び込んだ。

廃車確定になった遮蔽物を背にカバーしながら、先程刃を当てた個所の様子をフォーカス(注視)する。

それなりに当て続けた甲斐もあって多少切れたものの、多脚の一本を取った所で大きく戦況は変わらなそうであった。

何よりもう一度仕掛けようにも、相手はばっちり彼にヘイトを向けている。

反対側からドム達が援護しているものの、チャンスはすぐには来る気配はなかった。

 

「どうしたもんか…ッチ!」

 

打開策を考えていたマーカスだったが、災厄の狐がロボットに指示して彼の方へ突進してきたのが見えて舌打ちを鳴らす。

急いでその場を離れて建物を回り込むと、相手はそれすら突き抜けて突進してきた。

背中越しにその様子を見て歯を噛み締めながら、マーカスは障害物の影に隠れつつ蛇行して退避する。

街灯や車、自販機などの障害物に引っ掛からせて、少しでも突進の勢いを削った後にギリギリで横に飛込み、前転してすぐさま立ち上がると、その勢いのまま別な建物に飛び込む。

何かのテナントらしい場所を走り抜けて反対側の道路まで出ると、流石にそこまでは追って来なかった。

周囲を確認した後に、マーカスは肩を揺らして一息吐く。

安全確保したと思われる所で別ルートから、ドムとユメの二人が走って来るのが見えて彼も合流する。

 

「こっちの通りは向こう(FOX小隊)のフォローもあって、一通りガヤ(取り巻き)は片付けた。だがどうするマーカス?あの様子じゃもう近付かせて貰えなさそうだぜ」

 

ドムの報告中に建物を挟んだ向かいで派手な音を立てる破壊音が聞こえ、マーカスは渋い顔を見せる。

少しの間の後、彼らは一先ず士気を落とさない為に軽口を叩き合う。

 

「…じゃあプランBで行こう。プランBは何だ?」

「あ?ねぇよ、んなもん」

 

それは、故郷である惑星セラでの戦争時に交わしたやりとり。最早遠い昔のように思えるその台詞に、二人は口角を上げて視線を交わす。

ドムが肩を揺すって笑うと、マーカスも鼻息を吐きながら眉間のシワを浅くした。

そんな二人を交互に見ていたユメが、冷えた風と共に吹き付けて来た建物の粉塵によって軽くクシャミをする。

 

「ヘクチッ!ひぃん。壊れた建物の噴煙(粉塵)でハナがムズムズするし、ノドもイガイガするよ~」

 

涙を目の端に浮かべ鼻下に手を添えるユメを見て、マーカスの片眉が上がる。

そして辺りをぐるりと見渡すと、考えを巡らせ始めた。

ヒンヒンと鼻を鳴らすユメ。ドムのスモーク。曲がり角の倒壊しかけた建物。

記憶に過る数種類の光景によって、彼の脳裏に閃きが走る。

 

「…あるじゃねぇか。良い物(おあつらえ向きのロケーション)がよ」

 

――或いは、デルタ式とも言うべき破天荒な発想によって。

 

 

 

ボロボロの惨状になった大通りで立ち止まり、ロボットの上に仁王立ちする災厄の狐が視線を下げる。

視線の先には多脚の内の一本についた切断面が、放電してパチパチと音を奏でていた。

キヴォトスでは珍しい、(ゴリラと一瞬見間違う程)体格が良くてヘイローを持たない大男。

彼によって(もたら)された傷跡はロボットの動きを大きく損なうものではないが、それでも彼女が破壊活動を続けるには、気がかりを感じていた。

それに彼らが出張る前に足止めされていた集団(FOX小隊)も今だ健在で、扇動した不良達も大分数を減らしている。

余り良くない風向きを感じ始めた彼女が溜息を吐いていると、知覚範囲内にまたあの男の気配が入り込んできた。

建物の破片や横倒しになった自販機などを遮蔽物にし、その間を中腰で足早に駆け寄って来ている事を災厄の狐は視界内に納める。

 

「あら。また来ましたの?貴方の武装ではそう簡単に壊せないと分からないのですか――!?」

 

武装も特に変わっていない様子を見て、彼女は仮面の下で嘲笑った。

しかしマーカスが近付いてくる方向とは別な場所から、投てき物が投げ込まれるのを視界の端に捉えた彼女の声色が変わる。

災厄の狐は瞬時に狙撃銃を構え、彼女に向ってきていたソレを打ち抜く。

金属の破裂音と共に襲ってくる爆風に備え、構える彼女だったがその視界は一瞬にして灰色の煙に包まれた。

どうやら発煙手榴弾(スモークグレネード)だったらしく、煙幕の向こうから近付いていたマーカスから散発的な銃撃が彼女へ向けて放たれる。

 

「小賢しい。この程度、何の障害にもなりませんわ!」

 

ロボットを足蹴にし、弾幕の発生源へと突進させる。

引き潰されないようにか後方へと下がり始めた銃撃の元に、災厄の狐は無駄な足掻きとばかりに押し潰すべくロボットを更に突き進める。

尚も引き下がり続ける様子に、怖気付いたかと考えた彼女は一息に潰してしまおうと前傾姿勢を取った。

――その眼前、煙をかき分けた先に突如壁が生える。

壁を知覚した瞬間、彼女は飛び上がって其処に片手と両足を付けて勢いを殺し、重力に従って地面へと降り立つ。

ロボットは勢いの付いたまま建物に突っ込み、豪快に転びながら反対側へ突き抜けた。

災厄の狐が何事かと風穴の開いた建物内に入って周囲を見渡せば、轢き飛ばされてくの字に凹んだドラム缶が横倒しに倒れていた。

その上部にはくくり付けられた鹵獲品らしきアサルトライフルが、あらぬ方向へと未だ弾を吐き出し続けている。

 

「これは…罠ですか。先程のスモークと炸裂音も、私の感覚を惑わす為のモノとすれば――そこですかっ」

 

立ち込める建物の粉塵とスモークの煙、そして吹き込む雪で増々視界が見通せなくなっていく。

そんな中、先程投げ込まれたスモークの破砕音で僅かに惑わされた彼女の聴覚が、何かが差し込まれた音を聞きつけた。

建物の隅から響いた音の元へ、狙撃銃を向けて牽制代わりの一発を打ち込む。

その途端、災厄の狐に今度こそ爆発が襲い掛かった。

爆風に煽られる中、(かざ)した腕の隙間から爆発源(フラググレネード)へと視線を集中すれば、柱と思われる場所が先程の爆発により大きくえぐり取られていたのが見えた。

同時に建物から異音が鳴り響き、天井からパラパラと破片が落ちて来る――倒壊までの数秒の間に彼女は外へと駆け出して脱出した。

高層ビルがガラガラと音を立てて潰れていき、すさまじい粉塵と衝撃波を周囲に撒き散らす。

その崩壊にロボットは巻き込まれ、派手な音と共に爆発四散するのが災厄の狐にも見えた。

折角の道具が壊され、仮面の下で悔しそうに歯を噛む。

 

「よくも…よくもやって下さいましたね。こんな目眩まし如きで!」

 

苛立ち交じりに狙撃銃を構えると、その銃口に深紅のエネルギー(神秘)が光を灯す。

続けざまに銃弾を連射すればそれは激しい衝撃波を伴う弾丸と化し、立ち込めていた粉塵らを吹き飛ばした。

開けた彼女の視界には建物の残骸と、新たに降り落ちて来る雪だけが残っていた。

 

「これで逃げも隠れもできませんわよ。さぁ出ていらっしゃい――」

「よくやったわデルタ(雑務対処室小隊)。後は私達に任せなさい」

 

瓦礫と化した建物の影から二人、災厄の狐の前に飛び出してくる。

金髪を靡かせたFOX3(クルミ)が盾を構え、サイドにフォローするよう桃髪のFOX2(ニコ)がショットガンの銃口を災厄の狐に向ける。

彼女からは見えない高所にはベージュ髪のFOX4(オトギ)が、対物ライフルのスコープ越しにその姿を照準内に捉えていた。

最後に立ち塞がる二人の後方から隊長である、黒髪のFOX1(ユキノ)が歩み出て来る。

 

「ようやく降りて来たな。逃がしはしない」

 

FOX1(ユキノ)は宣言と共にハンドサインを送り、それを見たFOX4(オトギ)は対物ライフルのトリガーに指を掛ける。

更に間合いを詰め始めたFOX3(クルミ)FOX2(ニコ)の二人を見て、災厄の狐は仮面の下で含み笑いを漏らした。

 

「うふふ、たった四人で私を制圧するおつもりですか…いいでしょう。そこでお亡くなりになりなさい!

 

 

 

瓦礫の向こうで賑やかになり始めた戦闘音を後方に受け、マーカスは辛うじて原型を残す塀に背を預ける。

横道から障害物を乗り越えながらドムが現れると、拳を握って掲げたので同様に掲げた後に握り拳同士を突き合わせる。

 

「やったなマーカス。で、この後はお嬢さん達(FOX小隊)と一緒に大捕物か?」

「いや。俺達はここまでだ。後は奴らだけに任せる」

 

仕上げに行こうとするドムの様子に、マーカスは首を横に振って否定する。

意外そうな表情を浮かべて「どうしてだよ?」と聞く彼に、肩を竦めて見せた。

 

「そういう命令だ。小鳥共の――他の行政委員会がやってる乾布摩擦(主に防衛室とかが俺達に向けてる当て擦り)が気になるらしい。親鳥(連邦生徒会長)は相変わらず過保護なようだぜ」

「あー…なるほどな」

 

マーカスの言葉に思い当たる節を覚えて、少し間を開けた後にドムは納得の声を上げる。

様々な想いを乗せて鼻息を吐くと、マーカスは塀に預けていた背を離した。

 

「とっとと報告済ませて戻ろう。次の戦場(書類仕事)でカーマインが待ってる」

「あいつに大物がいるこの現場はまだ早かったもんな。…待てマーカス。大変だ」

 

アサルトライフルを抱え直して歩き出したマーカスにドムが待ったをかける。

調子の変わった相棒に「どうした」と声を掛けながら振り向くと、彼は周辺を見渡した後に両腕を広げた。

 

「ユメの奴がいない。多分また迷子だ」

「…新兵の方がまだしっかりしてんじゃねぇか?」

 

奇しくも丁度、同じ呼び方をしている同僚の話を上げたからかマーカスの記憶に懐かしい姿が思い浮かぶ。

故郷(惑星セラ)の戦争の折にチームに加入した基礎訓練直後の彼(ベンジャミン)は、かなり無茶な状況でも二人についてきていた事を再評価し。

比較してユメに対する評価を一度改めるべきかと、マーカスは眉間の皴を深くした。

――彼女の名誉の為に付け加えておくと、件の彼はエリート扱いだったマーカスらの部隊に配属される程の実力、或いは素質持ちであった。彼の兄同様に活躍が期待されていたのだ。

最も、ただの人手不足だった可能性も低くはなかったが。

 




最後まで御閲覧頂き、有難う御座います。
本作が見て下さった方のひとときの楽しみになりましたら、幸いです。

本作は筆者が現在、主に執筆している別作品が諸事情により見直している最中に気分転換にぽつぽつと書き留まっていたものでした。
それとは別な事情でまた筆を止める必要ができたので、良い機会だと一気に書き上げたのですが同様の事情(FOX小隊実装)で投稿を保留する事になるとは、このリハ○の目を持ってしても(略)

筆者は銃に明るくなく、FPS/TPSも殆ど見る専ですがギアーズはそんな中数少ない経験のある作品の一つでした。
故に美少女版GT○と言われるブルアカに絡める銃作品ならば…と、選んだ次第です。
ギアーズの作品少ないな…じゃ、書くか。と軽率な考えとも言う

ギアーズを愛する方々からすれば、余り良い動機や作品内容ではないかもしれませんが…小説投稿サイトの隅っこにある一作として見逃して頂ければと思います。石を投げないで下さいお願いします何でも(略)

後書き冒頭に書かせて頂きました通り、筆者のような物書きの末席が綴ったものだとしても、ひとときの楽しみになれたのなら。の心で書かせて頂きました。
もしそうなれましたのなら、投稿者冥利に尽きる次第です。
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