All or Nothing   作:真の柿の種(偽)

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Before going over the watershed together
生きる理由を持つ者は、どんな苦難にも耐えうる


 首を掴んでいた左手を離した。

 腹に捻じ込まれていた右手を離した。

 座っていた綾小路の身体から身を離した。

 まだ()()に息があることを確認してから、少年は、熱の籠った荒い息を整える。

 微睡みの狭間で繰り広げられる、真っ白な世界の、色の濃い光景。

 

 白い部屋に、子供の笑い声が響き渡る。

 

 少年は、綾小路の腰へもう一度座り込んで、首を左手で掴んで、腹への殴打を再開させた。

 首を抑え込んで、酸素供給を減らすことで抵抗力を削いだ。

 どうやら少年は、白い衣服と肉の向こう側にある床の感触を拳で感じてみたくなった、過程である筈の行為の先に何があるのか、それに自分の手で触れたくて、目的を途中で乗り換えた。

 だから少年は、最初に狙っていた首ではなく、お腹を執拗に殴り続けていた。

 

 白い部屋に、子供の笑い声が響き渡る。

 

 人の拳で肉に穴は開くのだろうかが、ちょっとだけ気になったようだ。ちょうどいい機会というのもあるのだろう。通行人や同級生にやるのは将来に響く、そんな時にいくら殴っても許される、恐らくは死んじゃっても大丈夫な都合の良い、それも子供だ、きっと脆い、壊しやすい、だからついつい、うっかりのお試しをしてみた少年だった。

 勝負は着いている? のだ、多分。

 だって、少年は無傷で命を追い立て続け、()()は碌な抵抗も出来ずに腹を殴られ続ける。

 

 白い部屋に、子供の笑い声が響き渡る。

 

 生きる意志を、殴られ続ける綾小路からは感じることはもうできない。

 機械的であろうと、無機質であろうと、生体反射と呼ばれる人体の危険信号が働いていなかった。

 もう綾小路は、生きる結末を諦めていた。

 諦観の色を感じた少年は、好都合であると、抵抗を妨げるために費やしていた労力を、そして己の身体の動きの全てを殴打へ注ぎ込んだ。

 

 白い部屋に、子供の笑い声が響き渡る。

 

 何百回目かの拳を振り下ろした時、ふと、少年は一息ついた。

 じきに少年を止めるために、大人がこの場に現れるだろう。今は単に状況を飲み込めていない暇を利用して暴れているだけだった、少年が望む色を見るにはもう少しだが、しかしタイミングを見て呼吸を整えなければ、効率の良い殴打には繋がらない。習った覚えも教わった覚えも読んだ覚えも無い知識が、何となく動いた結果に伴い、確実な事実として少年の中に蓄積されていく。

 

 白い部屋に、子供の笑い声が響き渡る。

 

 小休止の間を使って、少年は、自らの状況を視界に収めて整理していた。

 彼の視界には、まず初めに、己のものではない吐瀉物に塗れた、己の両手が見えているはずだ。

 据えた臭いが不快だったのか、眉をひそめていた。冷たい少年からすれば、腕の肌に張り付く胃の内容物が不快で、気持ち悪かったのだろう。

 ふと、少年が自分の足元を見る。

 痙攣する手で腹を抑え、細かく嘔吐を続ける綾小路がいた。

 胃液はもう出ないのか、胃酸で荒れたのだろう、喉から痛々しく出血していた。

 苦しそうだなとは思った、でも、みすぼらしいというか、汚らしいというか、見ているだけで不快だったというか、気持ち悪いというか、弱かった自分の責任なのにどうして苦しそうにする権利があるのだろうかとか、死んでないだけ乃亜に感謝するべきだろうとか、そんなことを、ボケっと、本気で考えていた。

 少年は、再び動き出す。

 左手は肋骨を掴もうとして、力を入れやすく、力を逃がすことなく、100%の割合へ近づけるように無駄のない殴打を、その方法を、誰からも教わることなく会得していた。

 そして、声が聞こえる。

 白い部屋に、子供の笑い声が響き渡る、その時。

 

『もう、やめろ』

「──────とうさん?」

 

 絶命へと向けて振るった拳が突き刺さる前に、少年からは、先程まで己を覆い尽くしていた激情の全てが剥がれていく。

 少年は、白い部屋の中心で、汚れを吐き出す綾小路を見た。

 自分の手を、見た。

 自分の手を、もう一度見た。

 自分の足元の綾小路を、もう一度見た。

 自分の手を、もう一度見た。

 指が、動かなかった。

 震えていた。

 少年は──────己の行いが信じ難かった。

 手が痙攣して、全身が徐々に麻痺して、恐ろしくて、だってそんな彼は何も知らなくて、こんな容赦なくできるとは思ってなくて、誰かを殴ってやろうかと想像したことはある、誰かを殴ったらどうなるかを推測もできる、彼は聡明だった、彼は先を見通せた、彼は物事がどう流れていくかも理解していた、でも、決定的に彼は()()()()()()

 その推測の中には、自分の中の悪性が含まれていなかった。

 その推測の中では、自分の中に悪性など存在しなかった。

 自分の()()()()()()()()()()のなら、ここまでやれるなんて想像もしていなかった。

 自分の中に潜むモノならば、()()()()()()ことを知らなかった。

 

「……………………」

 

 行いの全てを覚えている。

 暴行を止めた理由は、一旦止まって、一息入れた方が しやすいからに過ぎない。

 思考の繋がり方も体の動かし方も、何もかもが己の意思一つのままに、少年はただ、綾小路という小さな命が絶たれる瞬間だけを望んでいた。今日会ったばかりの子供を、少年は躊躇いもなく。

 もし止まらなければ、自分は悦楽の中で人を、きっと。

 

「───────普通には生きられないな、俺」

 

 少年は、笑っていた。

 母親の言葉が、楽しくなるほどに当て嵌まっていた。それに「流石は俺のバ母さんだ、目の付け所が違うぜ」とか、親のことを誇らしくなる少年は、やっぱりちょっとだけ違うのだろう。

 知ることは、一つの羽化だ。

 不可逆の変化の一つ、知識を得るとは、知覚するとは、知る前の透明な自分から遠ざかっていくのと同じ意味を持つ。

 一度知ったのなら、もう自覚からは逃げられない。この先、佐々木乃亜の中には、『自分なら出来る』という選択肢が一生涯付き纏う事になるだろう。

 乃亜はもう、自分から逃げることができない。

 拳に感じた甘い感触を、もう2度と、忘れることができない。

 

 もう白い部屋に、子供(乃亜)の笑い声が響き渡ることはない。

 自分がどう生きるのかを決めた、その瞬間の、記録(ゆめ)を見た。

 これは佐々木乃亜が、自分の中の『悪魔』を最初に知覚した日だった。

 


 

 箸でフレンチ料理を食べるのもアリだよね───そう信じた乃亜は、迷う事なくウェイトレスを呼んでいた。

 畏まってテーブルへ近づいてくるウェイトレスさんへ、ビシッと乃亜の食事スタイルを伝えようとした、したけど、伝えるには至らなかったのだ。

 

「もー面倒なんで箸くださぃっっってぇぇぇ!!!??」

「お騒がせしました、この犬の事はお気になさらず」

 

 元気の良い挙手をした乃亜を、突如として小指の激痛が襲う。もはや慣れた足元の痛みだ、だが痛いのは痛かった。マナーとか伝統とかを一々守ってられない歴史の破壊者であろうとしただけなのに、日本の誇るスーパーカトラリーで済ませようとしただけでこの有様とは。

 ウェイトレスさんが恭しく下がっていってしまう。心なしか面倒事から避けようという気配も……乃亜は読めてしまった、『痴話喧嘩Fuck! 末永くExplosion!』とか考えてんなアンタ! 違うんです! 別にその手の甘い関係性ではないのですよ!

 

「待って行かないで俺は箸で食べぇぇぇぇっっっ!!?!?」

「もうっ、乃亜君? お食事中にはしたないですよ」

「オーシャンビューから投げ飛ばすぞ!!」

 

 睨みを利かせても何のその、坂柳とかいう性悪は乃亜の憤りを一笑に付して、優雅にお茶を啜っていた。海を一望できるこのレストラン、小柄な少女一人投げ飛ばせば爽快な気持ちになれそうだが、乃亜はその手の強硬手段とかやっちゃう側なのだが。

 窓から覗ける階下へ、人が落下しても問題が無いクッションがあるかどうかを確認しに席から離れる乃亜。

 人工物の色を確認してみるが、どう見ても怪我をさせる予感しかしない、『坂柳投げ大会』の開催はお預けとなって乃亜は至極残念だった。

 肩を落としながら席へと戻っていく、そんな乃亜の挙動不審をくすくすと面白がって、子供のように笑う坂柳が迎えた。

 

「ふふ、まったく、さっきからどうかしましたか? 周りにご迷惑をお掛けしてますよ、それとも具合でも悪いのでしょうか」

「……」

「乃亜君……?」

「…………」

 

 キレた。乃亜は、ブチ切れた。

 有言実行のお時間がきてしまったようで、乃亜はとっても無念である。

 まさか坂柳を、乃亜の大切な存在を、今からこの手で天へ向かって捧げ(ぶん投げ)なくてはならないとは。

 

「あ、あの───きゃっ!?」

 

 黙り込んだ乃亜の様子に、怪訝な声を掛ける坂柳。

 彼女の膝と肩へ腕を回し、一息に抱き抱える。

 ところで、このレストラン、外の風景がよく見えるデカデカウィンドウ付き。オーシャンビューってやつだ。

 もう一度、そう、オーシャンビューってやつだ。

 だから、もうやっちまおうってことで、有言実行の時間ってやつだ。

 

「ののの、の、のあっ、く、ん……!?」

「いやほら、オーシャンビューから投げ飛ばすって言ったじゃん」

「……こっ、この、窓に……開閉機構が付いている、ようには……見えませんけれど」

 

 たどたどしい口調の坂柳が、口を窄めながらも乃亜の行動を咎める。

 成程──────こいつ、照れているな。

 Aクラスで威厳を保っている坂柳が、クラスメイトの多いこの場でお姫様抱っこされて、動揺して、言葉も噛み噛みで、頬が赤いことすら自覚しているだろう。───己の状態を自覚して、尚更に羞恥は加速している。

 彼女の優秀な頭脳が裏目に出ているのだ、無様である、笑えるぜ坂柳。

 

「お前って頭強いし、こんくらいなら割れるでしょ、多分」

「頭が強いの意味が違います!」

 

 恥ずかしさを紛らわそうとして大きな声を出すも、普段の深窓の令嬢っぽい雰囲気とは乖離した子供っぽい声量が、更に衆目の意識を引くという地獄へと。

 ざまぁねぇぜ坂柳、まるで生娘だぜ坂柳、うぶにも程があるぜ坂柳。

 へらへらと、抱きかかえた坂柳へ向けて勝者たる笑みをぶつけていると、騒ぎを見かねた葛城が苦情を差し込む。……あの、『痴話喧嘩はやめろ』とか考えるのやめてくださるかしら。

 

「何をしてるんだ佐々木……食事中だぞ」

「あー? どっからどう見ても食事中だろうが」

「……坂柳をか?」

「ああ」

「肯定ッ!? っ、こっ、こんなっ! 人の目がある場所でっ、たべ、食べっ、られちゃうのですか!?」

「ああ」

「ひっ、ひぇっ……ぁ、の……せっ、せめて、2人きりで……おねがいしましゅ……」

「やだ」

「やだ!??」

 

 佐々木乃亜 は 打てば 響く オモチャ を 手に入れた !!

 今後も不定期開催でこれをやろうと心へ決めた時、船内スピーカーから、女性の声が聞こえた。

 

『生徒の皆さんにご連絡致します』

 

 前にも聞いた覚えのあるこの声は、無人島試験の金前兆だった。金文字継続や金文字SU、要は金色に輝ける信頼度ということであり、唐突に流れ始めたそれに、乃亜は、期待せざるを得ない。

 楽しい予感は───的中する。

 

『間もなく、特別試験を開始いたします』

「よっしゃきたぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「ふぇっ!?」

 

 腕に抱えたまま坂柳の存在を忘れて、乃亜は放送の声の続きも聞かずに走り出す。葛城の止める声も届かず、乃亜(+坂柳)はレストランをダッシュで抜け出し、船内を駆け抜ける。

 向かう先は、My friend(相棒)綾小路! そして佐々木乃亜イチオシのHobby(道楽)堀北!

 放送に足を止めた生徒たちの波を掻い潜って、乃亜は心が躍るままに、走り続けた。

 坂柳を抱えたまま。

 

「あのっ! っ、のあくんっ! 見られ、見られてます!」

「はてさて何かな! 頭使うものなら楽しそうだけど! 全クラス入り乱れてのババ抜きとかもやってみてぇなおい!!」

「聞いてくださぃっ……!」

 

 坂柳を抱えたまま。

 


 

「やっほーマイフレンドー!」

「ごっ、ごきげんよう、綾小路、くん……っ」

「? どうして坂柳まで連れてきたんだ」

「? あれ、お前そういや何でいるの?」

「本当にどうしてでしょうね……!」

 

 綾小路の言葉で、ようやく疾走する視界の端でチラついていた銀髪の正体を知った乃亜。

 腕を乃亜の首へ回して、何故か必死にしがみ付いていた坂柳へ純粋な疑問を覚えた。綾小路と堀北を交えて色々と意見を交換をしたいというのに、彼女がいると普通に邪魔なのだ。だというのになんだこいつ、コアラみたいに抱き着いてきて、暇なのかな?

 憔悴した様子の坂柳を、ゆっくりと降ろす乃亜。……ごめんなさい、杖を回収するのを忘れていました、大人しく手摺になります。

 坂柳の姿を認めた瞬間、綾小路は携帯で、何かしらの操作をしていた。送り主は堀北と予想するがどうだろうか───今のこの一帯には近づくな、とか。

 

「それで……特別試験の話だろう?」

「ああ! やっぱしあったぜ二回目! で、内容は?」

「は? ……まさか放送を聞いていなかったのか」

「嬉しさに任せて走ってたら聞き逃しちゃった!」

「薄々感づいていたがやっぱりバカだな佐々木は」

「乃亜君のこれはまだまだ序の口です、綾小路君もその内慣れますよ」

 

 向かい風で乱れた前髪を片手で整えながら、坂柳が呆れた声で言った。

 だが仕方ないと思う乃亜である、だって前回のがあまりにも楽しすぎた、だから二回目も楽しくあれと期待してしまうのは人の宿痾とも言えるのだ。

 そんな乃亜の無反省を感じ取ったのか、坂柳は杖を足の小指へ───残念! 今の彼女には杖という小指骨格歪曲兵装を持ち合わせない! 故に痛みを乃亜へぶつけることは不可能───

 

「えいっ」

「うぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 ───乃亜が大人しく手摺となって逃げられないのを良いことに、坂柳はその細い指で、乃亜の右腕を鋭く抓った。それだけでなく、乃亜の右手に繋がれた彼女の左手の爪も、繋がれたまま乃亜の手の甲を抉りにかかる。流血へと至る恋人繋ぎである、末路はきっと鉄の臭い。

 慣れがある分、杖の方がマシだったかもしれない。

 

「今の光景を見ながら炭酸水を飲めばソーダになりそうだ」

「私たちの逢瀬はシロップではなく角砂糖に近いものですから、ブラックコーヒーの方が適切かもしれませんね」

「なるほど違いが分からない、これが2人だけの世界というやつか」

「血ぃ! 血が出てるのに甘いのか!?」

 

 ──────どうにか機嫌を和らげて頂いて、数分後。

 

「いたい……もうせんせぇにほうこくするぅ……おまえらのクラスポイントさげるぅ……───証拠の傷も証人の綾小路もいる、偶発的だが美味しいアクシデントだったな、これで俺達は相対的にAクラスへ一歩近づいたって訳だ」

「発端はお前だろうにえげつないやつだな」

「あら、お気に召しましたら、もう少し()()を増やすお手伝いをして差し上げましょうか?」

「嘘ですごめんなさい」

 

 お茶目な冗談(ガチ)を真に受けて威嚇する坂柳へ、左手をひらひらと掲げて全面降伏の意志を示す乃亜。やはり物理だ、声も物理現象だから言葉も物理現象、痛みも物理現象だから抓りも物理現象、ゆえに対話とは物理で解決する。

 世界の真理をまた一つ知った乃亜は、改まった話題を放り込んだ。

 

「まあ予想外ではあるが……でも坂柳がいるほうが楽しいからそれでいいよ、早く放送の内容教えてくれ」

「……はぁ……そうですね、私にもお聞かせください」

「ああ。……とは言っても、2人にもメールが来ていると思う、それを見た方が早いな」

 

 綾小路が憐れみの視線を坂柳へ向けているのが納得がいかない、それを受け取るべきは肉体的暴力を受けた乃亜だろうに。

 不機嫌の形に口を曲げながら、携帯をポケットから取り出して左手で操作する。……坂柳の様子をチラリと伺うと、携帯を淀みなく操作していた。元々は不参加だからメッセージを送られていないといったことも無いらしい、つまり坂柳が不参加ということにはなっていないようだ。

 すると視線に気が付いたのか、坂柳がこちらへ視線をかち合わせて不思議そうな顔をさせる。だがそれも一瞬のことで、すぐに見透かしたように、それでいて嬉しそうに微笑んだ。ああそうですよ、坂柳が参加できることにホッとしている佐々木乃亜ですが何か文句あるかよ性悪女。

 仄かな恥じらいを隠すようにメッセージボックスを漁ると、すぐに新規のメッセージを見つけた、送信主は学校側だ。

 内容を確認すると───正直、それでも理解は追いつかない。

 指定された部屋へ、指定の時間に集合する。ただし、指定の時刻が夕方であるのが解せない。学校側の準備の問題だろうか。

 遅刻にはペナルティ、制限は10分。遅刻のペナルティは、分かりやすく急かすためのものだろうか? 例えば何だろうか、例えば───後が詰まってるからとか?

 

「あー、これ、説明会か?」

 

 目の前の2人へも届くような独白を呟くが、その程度の予想は2人共に通過済なようで、無視された。悲しい。

 首を伸ばして綾小路のメッセージの内容を覗かせてもらえば、彼の集合時間は乃亜と同じ18:00と記されている。クラスごとに分けられているのだろうかと考えていると、ちょうど堀北から、彼女へ届いたメッセージの内容報告が送られてきた。

 スクリーンショットをそのまま送った画像の中身は、概ねが乃亜と綾小路と同じだ。

 ただし、集合時間と集合場所にはズレが生じている。

 堀北は17:30に507号室、乃亜と綾小路は18:00に504号室。

 

「ふーん、同じクラスでも時間も場所も違うんだ」

「……あらあら、私が居る場でそのような事を喋ってしまってもよろしいのですか?」

 

 挑発したような、けれど単なる掛け合いの色をして彼女は言った。

 だが今のはちょっとムッとした乃亜である。

 

「テメェも自分とこのクラスの連中とすり合わせりゃすぐにでも分かるだろうが、バカにすんな」

「ふふっ、確かにそうですね。先ほどの意趣返しに、乃亜君へちょっとした意地悪をしてみたくなってしまいました」

「あっそ」

「申し訳ありません、私、乃亜君を揶揄うのがとっても好きなのです。許してくださいますか?」

「あー、じゃあ今回の試験でお前()楽しめるなら許すわ」

「───ふふふっ、ええ、それでしたら気を引き締めて臨まなければなりませんね……ふふ」

「すっごいなお前達って、口が砂糖でじゃりじゃりするような気がする、他所でやってくれ」

 

 解せないセリフを吐くマイフレンドだった。

 


 

 時刻は18:07、504号室の前で乃亜と綾小路は、バッタリと出くわす。

 本来ならもっと早めに集合する予定だったのだが、乃亜が遅れてしまい、綾小路までもがその割を食ってしまったのだ。

 乃亜は時間潰しにCクラスの女子と……その……えっと……色々していたのである。作戦会議とかでもなく、完全な私事だ。綾小路は暇を潰せず困っていそうだったが、同伴で逢いに行くのは流石に嫌だった。 

 シャワー上がりの気配をさせた乃亜へ不思議そうに首を傾げる綾小路だが、とにかく今は特別試験だ、それしかない、やめろお前の洞察力を発揮しようとするな。

 目を引く大げさな動作でインターホンを押そうとして、乃亜は少し止まる。

 

「なあ、綾小路はピンポンダッシュって知ってっか?」

「知識としてはな。実際にやる機会には恵まれていない、犯罪行為だろう」

 

 呆れた視線を飛ばしてくるが、逆だ、むしろ乃亜の方が呆れるまである。普通の男の子を自称するのなら、ピンポンダッシュの一度や二度は体験しておかねばなるまい。

 そも何を言っているのかこの男は、彼だって知っている世の真理、『バレなきゃあ犯罪じゃあねえんだぜ』という理論があるだろうに。綾小路とてその理論を積極的に実行していく気質を持っているだろうに。

 クソガキを自称することもできる幼少期、ムカつく近所のジジイの盆栽弄りの集中力を削ぐためだけに鍛え上げたこの、人差し指の連打力。───鈍っているかもしれぬ、だが存外全盛期のままかもしれぬ、己が実力を試したがるのはやはり男子の本能か。

 尚、坂柳家で試したら、普通にバレて坂柳の親父さんに怒られた。

 マイフレンドへこの実力を見せつけるのも一興か……ピンポンダッシュはやっちゃダメとか言われてねーし。

 

「……」

「絶対にやるなよ」

「GOサインを出すなよお前、マジでやるぞ」

「マジかよお前、NOサインを出したつもりだぞ」

 

 驚愕を薄っすらと浮かべる男を無視して、乃亜は一度、ベルを鳴らした。……うっわこの押し心地、連打したら楽しそう。

 

「入りなさい」

 

 扉の向こうから、Aクラス担任である真嶋の声が聞こえた。

 綾小路と共に部屋へと入っていく、が、速攻で声が出た。

 

「うわ暗っ、危ねぇだろ転ぶぞこれ、先生ぇー! 電気強くしていいっすかぁー!?」

「……構わない」

 

 返事を貰った時には既にスイッチを勝手にいじり始めていた乃亜は、真嶋の許可と同時に、天井の照明の光量を全開にした。

 薄暗い部屋が、一気に明かりで照らされていく。

 部屋の奥へと進むと、先んじて到着していた生徒が2人、それから部屋の暗さに慣れてしまって眩しそうに目を細める真嶋が、ダイニングテーブルへ着席していた。ごめん先生、でも暗いんだもん、つい坂柳と歩く時の癖で。

 

「遅刻だぞ」

「いやーすんません、ちと野暮……じゃないな、うん、野暮なんかじゃない、むしろ素敵な……まあ、はい、すんませんでした」

「お前……まさか……嘘だろ?」

「俺には綾小路の考えが何も分からないから何も答えない」

 

 戦慄の色を纏い始める綾小路は無視した。

 席へ近づくと、乃亜の大声で既に予想していたのか、表情を分かりやすくげんなりとさせていく生徒が───軽井沢と幸村が、乃亜の顔を見た途端に、更に顔を歪ませた。

 おやおやどうしたかね、そんなにも乃亜の顔が嫌かね、そうかそうか──────残念だったなお二人さんよ、その敵視交じりの目つき、乃亜は気に入ったぜ。

 

「うげぇー……佐々木くんかぁ……」

「あー? 誰だテメェ、俺には生憎だがヤマアラシの知り合いはいねぇんだが」

「ねえそれ! そのくだり前にもやったよね!?」

「ハッ! テメェとの会話なんぞ定型文だけで事足りんだよ。なにせワンパターンな語彙力しかねぇもんだから、口を開きゃ『意味わかんないしぃー(裏声)』が十八番だもんなぁ!」

「このっっ!!」

 

 座っていた椅子を持ち上げようとするが、その寸前に乃亜の足が椅子を踏みつけて、何も出来なくなった軽井沢は目を血走らせながら乃亜を睨みつけるだけだった。

 うーむ素晴らしい、乃亜は良い音色を響かせる楽器を見つけたようだ。今後も暇な時はこの音色を楽しむのも良いだろう、やはり人には無限の魅力があるんだね!

 

「まあ座れよ、どうも今回の試験、この四人がグループとして行動させられるっぽいしなぁ」

「何だと? 佐々木……お前、いったいどこからそんな情報を知ったんだ」

「ほぼ勘と推測。でも俺の発言を聞いた先生ぇの様子を見て確信に変わった、この集まりはクラスを更に細分化させるグループ分けで、グループごとに説明する内容が違ってくるのか、或いは単なる顔合わせだったりとか」

「……だ、だめだ……俺には佐々木が何を言っているのかが全く分からない……!」

「まともに受け止めるだけ無駄だと思うぞー」

 

 頭を抱える幸村を励ますように、彼の隣へ座った綾小路が優しく肩を叩く。

 席の余りはもはや一択しかない、そう、キーキーと怒っている軽井沢ちゃんのお隣である。

 乃亜はウッキウキで座った。何なら座る際に、キラッキラに輝いた満面な笑みを浮かべながら、ちょっと軽井沢の方へ音を鳴らしながら寄せてみた。

 

「ちょっとこっち側こないでよ!」

「ハッ! いじりがいのある齧歯類だなテメェはよぉ!」

「それ以上来るならセクハラで訴えるから!!」

「どうぞご勝手にぃ~? 弁護士に坂柳でも一之瀬でも龍園でも纏めて連れてこいや、1%の勝訴だろうと意地で掴み取ってやるからよぉ!」

「厄介すぎる無敵精神のセクハラ犯だ……」

「強敵を増やすほどに燃えるぞ、佐々木乃亜とはそういう人間だ」

「……時間も惜しい、静かにしなさい」

「はーい」

「うわっ、急に落ち着かないでよ!」

「茶柱先生とも反応が違うな」

「そらそうよ幸たん、真嶋先生ぇは気に入ってるのよねぇ」

「幸たんはやめろ」

「じゃあ幸だるちゃん」

「何がどうなって『じゃあ』なんだ!」

「そこまで言うならしょうがない、お前は今日から蘭蘭(ランラン)だ」

「何が! どうなったら! 日本初のパンダなんだ! しかもメスだろそれ!!」

「頼む……静かに……」

 

 真嶋がそっと頭を抱えるまで、生徒たちのから騒ぎは止まることを知らなかった。

 


 

 真嶋から受けた試験の説明は、言ってしまえば人狼ゲームに近いものだった。

 太陽系惑星にちなんで、12に干支に分けられたグループ。

 乃亜達四名の集まりは、その内の1グループ───兎グループへDクラス代表として参加をする。無論ながら乃亜達だけではなく、他のクラスからも、グループ分けされた生徒が混ざってくるのだが。

 このゲームの要となるのは、『優待者』と呼ばれる役職持ちだ。

 優待者として選ばれるのが誰なのかは知らされず、試験開始の当日、朝8:00にメールで通知される。これは全員に一斉に送られ、優待者本人のみが当選メールを受け取るのだが……。

 そのメールが送られてくる、5分前。

 乃亜の部屋には、綾小路と幸村と軽井沢───兎グループのDクラスメンバーが集まっていた。

 

「ねむいよ……こんな朝早くから集まる必要あった訳?」

「ある」

「その理由は……メールが送られてからか?」

「いや、違う」

 

 目をこすりながら小さく欠伸をする軽井沢。

 幸村は眼鏡を光らせながら、乃亜の指示の内容を聞きたがる。

 綾小路は……いいね、楽しみにしてくれている、この友人は乃亜を分かってきたな。

 

「このゲームは人狼に近い、それは理解できるか? ようは優待者って名前の嘘つきを暴く、そういうゲームだ」

「それくらい分かってるってば、またバカにしてんの?」

「違ぇよアホ、情報の再確認は滅茶苦茶大事なんだよボケ、認識を掛け違えたまま話を進めでもしたら後々の脆弱性に繋がんだよタコ」

「……そこまで言わなくてもいいじゃん」

「悪ぃ、ゲームが楽しみ過ぎて気が逸ってる、言い過ぎた」

 

 嘘吐き───優待者を探して投票する。

 その合否、集団の票の集まり方、それらによって結果は四通りに分かれる。

 少し捻くれて複雑に思えるルールだった。

 前提として、『優待者』が存在したクラスは、その時点で投票権が失われる。投票しても無効票となるのだ、そういう場合は無いものとして扱った方が脳みそが涼しい。

 優待者を指名できるのは、それ以外のクラスに限られるということだが。

 

「俺らの中に優待者が出たのなら、その時点で俺達は防衛側に回る、隠しにいかなくちゃならないんだ」

「だよね」

 

 この試験(ゲーム)は四日間に分けて行われる。三日目は完全な休息日、ここで各クラスの方針などを本格的に話し合う時間に当てさせるためのモラトリアムだ。

 そして最終日、話し合った情報を元に、優待者への投票の機会がその日に訪れる。

 ───結果1、『優待者』とそのクラスの生徒を除いた、『全員が正解だった場合』

 グループの全員へプライベートポイントを50万付与、()()()追加の50万を、優待者自身へ贈られるのだ。

 ようは仲良しこよしで、平和に優待者も名乗り出て、全員が優待者へ投票して、安心安全にみんな得をする───実につまらん結果である、平田やひより辺りは嬉しがりそうだ。

 乃亜は断固としてこの結果にだけはさせないと誓った。つまらん、絶対に嫌だ、バチバチとしのぎを削って寿命すら削る勢いで激しく言論を交わせたい。

 ───結果2、『優待者』とそのクラスの生徒を除いた、『全員が正解出来なかった場合』

 優待者()()()、50万プライベートポイントを付与。

 これは単純に、優待者の正体を暴ききれなかった時に起こるものだ。或いは各クラスの事情や作戦上、敢えて外させるなんて可能性も起こり得る。

 ここまでを聞けば、「えっ? じゃあ優待者の正体を晒せばみんなハッピー!」となりそうだが。

 そうはならないのが、このゲームの楽しいところ。

 結果3と結果4───このゲームの肝は、間違いなくここだ。

 

「優待者の存在、これをどう扱うかだ。当てさせないように動くのか、外させるように動くのか」

「結果1と2の方向へ話を進ませる気はないのか?」

「何言ってんだ幸村、んなクソゴミカスの択なんぞ真嶋の説明途中の時点で切ったわ」

「……こいつ、もしかして想像とは違った方向性でヤバい奴か?」

「佐々木は全方位にヤバいぞ」

 

 試験終了日の投票タイム前にも常に投票することが可能だ。

 ただしその場合は、上記の仲良しこよしの結果には繋がらない投票結果となる。

 これが行われた場合、プライベートポイントのみでなく、クラスポイントを左右する結果へと繋がるのだ。

『優待者』以外の者が、投票タイム前に学校へメールを送った場合、こうなる。

 ───結果3、正解した生徒のクラスは『50クラスポイントを獲得する』。尚且つ、正解者には50万プライベートポイントも追加で上乗せだ。

 ───結果4、不正解した生徒のクラスは『50クラスポイントを、優待者のクラスへ奪われる』。それでいて、50万プライベートポイントを獲得。

 当てれば、50クラスポイントの獲得。

 外れれば、或いは───()()()()()、50クラスポイントを直接奪い取れる。

 乃亜が狙うのは無論結果4だが、こればかりは、この場にいる4名の中に優待者が居なければ難しいだろう。

 

「俺は、もしも優待者がこの中に出たのなら───是非とも外させたい他の連中に外させたい絶対に外させたい勝ちたい完膚なきまでに勝ちたい外させて50ぶんどって50のマイナスを押し付けたい通算で100ポイントの差をググっと埋めてやりたい本当なら全クラスに外させたいけど1クラスに優待者は3人までだろうからそこは諦める」

「好戦的すぎるだろこいつ…………ん? 今、さり気なくとんでもないことを……」

「オレ達はこの賭博プリンスと同じ檻に取り残されてしまったんだ、諦めよう」

「佐々木くんの言いたいことは分かるけどさ、優待者を当てる側だったらどうするの?」

「俺がその場で即当てして一分足らずで試験を終わらせる。良かったなお前ら、その場合だと他よりも一足早く自由時間だぞ」

「「「(自信しかない眼だ)」」」

 

 そして、これから行うのは、優待者が現れた場合の仕込みだ。

 

「昨日言った通り、メールボックスの整理は終わったか? 見られて困るメールは秘蔵のロックフォルダに隠したか? 知らんぞー、俺の目にうっかり触れるようなヤバい文書とかあったらヤバいぞー、俺はそれを使って強請るぞー」

「終わったけどさ……大変だったんだからね? 女の子がどれだけ携帯を使う生き物なのかってのをわかってないよね」

「完全勝利の四文字に比べりゃ性差なんぞ塵芥よ」

「……佐々木、オレもそろそろ知りたい、何をするつもりなんだ」

 

 期待に焦がれた色をした綾小路が、待ちきれない様子を薄っすらと表情へ浮かべながら、乃亜へと問う。

 それへ向けて、乃亜は、笑いながら告げた。

 

「テメェらの携帯を俺に寄越せ」

 

 そして──────時刻は、8:00を迎える。

 


 

『今回は指示はあるのかしら』

「えっと……──────やらせてみるか」

 

 堀北からのメールに、そして乃亜は、『Weapons Free(やりたい放題やっちまえ)』と、メールを飛ばす。

 

「堀北か」

「指示待ち人間になられても困る」

「今のあいつなら……少し、楽しみだな」

「そっちの楽しみもあるからな、やっぱ特別試験って最高だわ」

 

 さて、彼女の面子はどんな連中だろうか───坂柳だけは嫌だなぁ、時期尚早なんですよなぁ。

 とはいえ、こちらも手を抜くような結果で終わる訳にもいかない。ゲームには全力で臨まなくては、それでこそ全力で楽しめるのだから。

 

「いくぜテメェら、携帯は持ったか?」

「持ったけど……うわぁ、なんかこう、落ち着かないっていうか……」

「俺もだ……言い知れない恐怖と緊張があるな」

「ハッ! 結構結構! この手の表情伺ってハッタリかまし合うゲームは大好物だ任せやがれよ!! ──────尚、坂柳がこの先に居るのなら勝率は大分ブレます」

「「はぁ!?」」

 

 流石の長い付き合いだ、人読みを使われるとどうにも。

 だが、それでも、だとしても。

 いいや、だからこそ。

 

「フッ……お前はむしろそれを望んでいるというのに、弱気なフリをしてどうした」

 

 お見通されている、そんな友人へニヒルに笑って、扉に手を触れさせた。

 

「上等、行くぞ」

 

 そして乃亜は──────扉を思い切り蹴って開いた。

 

「手で開けると思ったのに」

「もう気にしない方がいいぞ、俺はもう理屈を求めないことにした」

 


 

 扉の向こうの面子を確認した瞬間、乃亜は迅速に、携帯から通話のダイヤルを呼び起こす。

 それもその筈、この面子は、実に()()()

 

「あら、乃亜君も兎グループなのですね。これは……ふふ、楽しいお話が出来そうです」

「佐々木くんと一緒かぁ……手強いんだろうなー」

「! こんにちは乃亜君くん。……乃亜くんと争うのは、少し、やり辛そうですね」

 

 好戦的に笑う坂柳有栖!

 困ったように笑う一之瀬帆波!

 苦しそうに笑う椎名ひより!

 頭良くて回転早くて機転が利く! まごうこと無きクラス筆頭級の実力者揃い!

 ならばだ! 補うのは乃亜の役目ではなかろうか! そうだと思う絶対に!!

 

「あー、もしもし茶柱先生? あの、グループのメンバー交換ってポイントで出来ません? 龍園と葛城と神崎と高円寺をどうにかこっちのグルー『真面目にやれ』……くたばれヤニカス」

 

 接続を切られた意味を示す単調な電子音が、乃亜の耳へ運ばれてくる。

 悲しみに暮れた乃亜は、渋々と席へ座ることにした。

 

「とほほ……取り合ってもくれなかったよ幸村ちゃん……」

「強敵を増やそうとするな!」

「だってここに強いの集中させれば他の負担が減るじゃん……とほほ……」

「意外と考えてるんだ……」

 

 こうして、初日のシンキングタイムは始まった。

 


 

 ──────同時刻、竜グループ。

 

「龍園君、一つ、私からの提案があるの」

 

 同じグループの櫛田も、平田も、それを知らずにいた。

 この試験が始まった時から……いいや、堀北はその前から、無人島試験が終わってから考え続けていた。

 ただ、()()()()()()()、佐々木乃亜にも綾小路清隆にも言わず。

 

「クク。……佐々木の妾如きが? 俺にだと? 笑わせるなよ」

いつか絶対に貴方を惨死体に仕立て上げるわ

 

 龍園ですら……その他の周りの全ての人間までもが慄く威圧感を出しつつ。

 こほんと、一度咳ばらいを入れてから、堀北は再度言葉を紡ぐ。

 

「貴方はこれから、私の言葉の全てを無視できなくなる」

「ほお? いいぜ、言ってみろよ、それに値するなら数分だけ記憶に留めておいてやるよ」

 

 そして賭博馬鹿も、ホワイトルームの馬鹿も、監督役の2人が知らぬ内に。

 堀北は、弾けた。

 

「私の言葉の全てが──────佐々木乃亜の言葉そのものであると認識しなさい」

 

Weapons Free(やりたい放題やっちまえ)

 そのメッセージ通りに、彼女はやらかしにいく。

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