ハイスクール・フリート Cross World War   作:冬吉

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第27話 各担当科の部屋

エレベーターを降り、水瀬1曹と橘3曹に案内されてたどり着いたのは、隊員宿舎の特別フロアだった。

通路には真新しいカーペットが敷かれ、ビジネスホテルのような清潔で落ち着いた空間が広がっている。

 

「ここが、皆さんに使っていただく専用フロアです。他の隊員が立ち入ることはありませんので、安心してくださいね」

 

水瀬1曹が、カードキーの束を取り出しながら説明を始める。

 

「皆さんが少しでもリラックスできるように、部屋割りは『晴風』での担当科ごとに大部屋をご用意しました。艦橋要員、航海科、砲雷科、機関科、そして主計科の5部屋です。ベッドやクローゼットはもちろん、談話スペースもありますよ」

 

その配慮に、晴風の乗員たちはパッと顔を明るくした。

見知らぬ未来の施設で、もし一人ずつ個室に隔離されたらどうしようかと、心のどこかで怯えていたからだ。

 

「やったー! いつものみんなと一緒だね!」

艦長の**明乃(ミケ)**が喜んで飛び跳ねると、肩に乗っていた**五十六**がバランスを崩しそうになって「ぬぅ!」と抗議の声を上げた。

 

「……フッ、我らを分断し各個撃破するのではなく、あえて群れにしておくとは。未来の看守たちも中々粋な計らいをするではないか」

主計科の部屋の鍵を受け取った記録員の**ココ(納沙幸子)**が、タブレットを片手に一人芝居を始める。

「ココちゃん、看守って言わないの! 水瀬さんたち、ありがとうございますぅ……一人ぼっちじゃなくて本当に良かったですぅ……!」

航海長の**リン(知床鈴)**が、安心したようにポロポロと涙ぐみながら航海科の部屋の扉を開けた。

 

「さあみんな、自分たちの部屋に入ってみよう!」

 

明乃の号令で、各科のメンバーがそれぞれの部屋へと散っていく。

 

**【艦橋要員・オブザーバー部屋】**

明乃、副長の**ましろ(シロ)**、そしてオブザーバーの**ミーナ**があてがわれた部屋に入ると、そこにはゆったりとした三つのベッドと、ソファが置かれたくつろぎの空間が広がっていた。

 

「わぁっ、ふかふかだー!」

明乃がさっそくベッドにダイブする。

「艦長、はしたないぞ。……だが、確かに悪くない設備だな」

ましろもホッとしたように肩の力を抜き、腕に抱いていた子猫の**多聞丸**をそっと床に下ろした。

 

「あっ、岬さん、宗谷さん!」

橘3曹がひょっこりと顔を出し、部屋の隅を指差した。

「五十六ちゃんと多聞丸ちゃん用のトイレと、ご飯とお水のお皿はそこにセットしてあります! もし足りないものがあったら言ってくださいね!」

「橘さん、ありがとう! ほら、五十六、多聞丸、ご飯だよ!」

キャットフードの匂いにつられ、二匹の猫が一直線に皿へと走っていった。

「猫の世話まで未来の軍隊にしてもらうとは……変な気分じゃが、ありがたいのう」

ミーナもクスクスと笑いながら、自分の荷物をベッドの横に置いた。

 

**【機関科部屋】**

「てやんでえ! 見ろよクロちゃん、床が全然揺れねえぞ! 当たり前だけどな!」

機関長の**麻論(マロン)**が、ふかふかのカーペットの上で大きく伸びをした。

「もう、麻論ったら。ここは船じゃないんだから当たり前でしょ」

幼馴染の**黒木洋美(クロちゃん)**が呆れながらも、嬉しそうに微笑む。

「ベッドがちゃんと8つあるっす! これでゆっくり寝られるっすね!」

応急長の**和住媛萌(ひめちゃん)**と応急員の**青木百々(モモちゃん)**が、**若狭(れおちゃん)**や**伊勢(サクラちゃん)**たち機関員と共に、さっそくベッドの場所取りジャンケンを始めていた。

 

**【砲雷科部屋】**

「わーい! 探検! 探検していい!? 未来のテレビ、どうやってつけるのかなー!」

水雷長の**西崎芽依(メイ)**が、壁掛けの大型液晶テレビのリモコンをカチャカチャと弄り回す。

「……うぃ。メイちゃん、うるさい。タマ、もう寝る」

砲術長の**立石志摩(タマ)**は、制服のまま一番奥のベッドに潜り込もうとして、砲術員の**小笠原(ヒカリ)**たちに「タマちゃん、お風呂が先だよ!」と引っ張り出されている。

「まりこうじさん、お茶、淹れましょうか? ティーバッグが置いてありますよ」

水雷員の**松永(りっちゃん)**と**姫路(かよちゃん)**が急須を見つけて準備を始めると、**万里小路楓(まりこー)**はおっとりと微笑んで頷いた。

「ええ、かよちゃん、りっちゃん。未来のお茶……どんなお味がするのか、楽しみですわ」

 

**【主計科部屋】**

「とりあえず、冷蔵庫と湯沸かし器の使い方は確認したよ! 明日からのご飯の事もあるしね」

主計長の**等松(ミミちゃん)**が、備え付けのミニキッチンを素早くチェックする。

「私たち炊事委員の出番ですね! 未来のキッチン、コンロから火が出ないで熱くなるみたいです! 不思議!」

給養員の**伊良子(ミカンちゃん)**と**杵崎姉妹(ほっちゃん・あっちゃん)**が、IHクッキングヒーターに驚きながらも興味津々で覗き込んでいる。

「……怪我人はいないとはいえ、皆疲労が溜まっている。衛生長として、健康管理には気を配りをしなければ...」

**鏑木(みなみさん)**が救急箱を棚に丁寧にしまいながら、みんなの様子を優しく見守っていた。

 

***

 

ひとしきり各部屋での荷解きが落ち着いた頃。

通路に水瀬1曹と橘3曹の声が響いた。

 

「皆さーん、荷物の整理は終わりましたか? 食堂に夕食の準備ができています。その後は、大浴場でゆっくり汗を流してくださいね!」

 

その呼びかけに、各部屋から「はーい!」という元気な声が飛び出してくる。

 

「シロちゃん、ミーナちゃん、行こう! ご飯だ!」

「ああ。だが艦長、廊下を走るな」

 

明乃たちは、少しだけ未来の空気に慣れ始めた安堵感を胸に、水瀬と橘の待つ通路へと元気よく飛び出していった。

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