ハイスクール・フリート Cross World War   作:冬吉

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第65話 あの時の嵐 後編

**もう一つの世界(2016年)――次元の磁気嵐の渦中**

 

赤と白の『みくら』、そして漆黒の『べんてん』。

荒れ狂う高波を強引に叩き割りながら、巨大な次元の嵐の「目」へと突入した直後だった。

 

『ピカァァァァァッッ!!』

 

視界を完全に白く染め上げる、異常な極彩色の閃光。

そして、鼓膜を破らんばかりの轟音。

空を引き裂くように落ちてきた紫色の巨大な雷の束が、二隻の最新鋭沿海域戦闘艦の中枢である巨大なマストへと同時に直撃した。

 

「きゃあああっ!?」

「くっ……!!」

 

『みくら』の艦橋に強烈な電流のスパークが走り、無数の計器類から火花が吹き飛んだ。

 

「メインシステム、ダウン!!」

コンソールにしがみついていた**寒川二等保安監督正**が、絶望的な声を上げる。

「統合電子戦システム、および航行管制プログラムが完全に沈黙! 再起動を受け付けません!」

「レーダー、ソナー、ともに真っ暗です! 予備電源すら立ち上がらないわ!」

**志度二等保安監督正**も、完全に暗転したモニターの前で声を荒らげる。

 

最新鋭の主力艦であり、そのすべてを高度な電子制御(フライ・バイ・ワイヤ)で動かしているインディペンデンス級にとって、完全なシステムダウンは「致命傷」を意味する。

三つの船体を支える巨大なウォータージェット推進器の唸りが不気味に静まり、艦は荒れ狂う波の力になす術もなく翻弄され始めた。

 

「落ち着いて! 総員、衝撃に備えなさい! アナログ操舵器へ切り替え、物理的に舵を固定するのよ!」

艦長の**福内**が、真っ暗な艦橋で必死に指示を飛ばす。

 

「……通信も、ダメね」

**平賀**が、耳に押し当てたインカムを外し、忌々しそうに舌打ちをした。

広域ネットワークはおろか、近距離用のVHF通信すらも、まるで空間そのものが妨害電波を出しているかのように完全に死んでいる。

 

「真冬!! 応答しなさい、真冬!!」

 

福内艦長が、ノイズが激しく鳴り響く有線のアナログ通信機を掴み、すぐ前方を走っているはずの『べんてん』に向かって絶叫した。

 

『ザザザッ……ガガッ……ピーーーッ……』

 

通信機からは、耳をつんざくようなひどいノイズが返ってくるだけだった。

しかし、そのノイズの奥底から、途切れ途切れに、だが決して折れることのない怒声が微かに響いてきた。

 

『……ザザッ……くそったれ……! ……システムが落ちたからなんだ……ッ!』

 

漆黒の『べんてん』の艦橋。

非常用バッテリーの赤い警告灯だけが不気味に点滅する中、**宗谷真冬**は、完全に動かなくなったデジタルコンソールを蹴り飛ばし、自らの手で重いアナログの操舵輪を渾身の力で握りしめていた。

 

『……舵輪が……重かろうが……ッ! 宗谷の女は、止まらん……!!』

 

「真冬! ムチャよ、波に逆らえば船体が折れるわ!」

福内が必死に叫ぶが、ノイズはますますひどくなる。

 

『ザザザッ……ましろは……必ず……私が……ガガガガッ!!』

 

通信機からのノイズが極限まで高まり、ついに「プツン」という音と共に完全に途絶えた。

 

「真冬!!」

 

福内が叫んだ直後。

二隻の沿海域戦闘艦の周囲を取り囲んでいた分厚い紫色の雲が、まるで生き物のようにうねりを上げ、巨大な「渦」となって船体を丸ごと呑み込み始めた。

波の音も、雷鳴も、艦の軋む音も、すべてが奇妙な無音空間へと吸い込まれていく。

 

最先端の電子兵装をもぎ取られ、ただの巨大な鉄の塊となった『みくら』と『べんてん』。

妹を救うという血を吐くような執念の叫びと共に、ブルーマーメイドが誇る最強の大人たちを乗せた二隻の艦は、晴風が消えたのと同じ「次元の歪み」の奥底へと、完全に姿を消したのだった。

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