「〝ブルー〟アーカイブ」?反動的だな!今すぐ名を改めろ、「〝レッド〟アーカイブ」だ。 作:どうでもいいや
アビドス自治区のどこかにある砂に塗れた廃病院。
そこでカール・マルクス、この世界では曙メアと呼ばれていた
「なんだここは……研究所か?そもそも私は家にいたはずだが……いやそれ以前にこの身体はなんだ。天国や地獄、死後の世界、生まれ変わりなどと言った宗教的、或いは反動的な物事を信じるつもりなど毛頭ないが───何かのユメ、或いは幻覚の類とでも認識すればいいのか?」
『返せ……』
「───確かに私は自著にて宗教は大衆の阿片と称したが、比喩でなくとも、あのような麻薬に手を染めたつもりは微塵もないのだがな」
『わたしの……身体を……』
「……なんだこの幻聴は?───」
『返せっっ!!!!』
「ッ……!!五月蠅いッ!黙れ!!ただの幻聴が肉体の所有権を主張するか!この搾取資本主義反動分子めがッ!!」
マルクス───今や曙メアという女子生徒に
『──―はぁっ!?意味分かんないし、わたしの身体なんだけど?!!!!それを言うなら搾取してんのはあんたでしょ!!』
「であれば貴様は独占主義的思考に染まりきった資本主義分子ということになるな!安心しろ、じきに階級闘争により大革命が起きる。そうなれば、資本主義の威権は潰え、社会主義・共産主義の明日がやってくる。階級差の無い、財産の共同所有が基軸となりえる未来はすぐ目の前にあるのだ」
『な、何言ってんのコイツ……』
当然、この程度のことで自我が揺れることはない。
未だに文句を垂れる脳内の幻聴を綺麗に無視しつつ、自らが寝ていた硬いベッドのサイドテーブルに置かれていた古びた生徒証のようなものを手に取る。
そこにはアビドス高等学校三年所属・曙メア、と名が記されていた。
「ふむ、これが此処での私の名前か。幻覚だか、夢だか知らんが醒めるまでにやるべきことがある。夢だからといって反動勢力、或いはルンプロへと堕落するつもりなどは無いということだ」
『いっとくけどお前の名前じゃない。
「それもそうだ。私は他の誰でもないカール・マルクスだからな。この名を名乗ることも殆ど無いだろう。―――まずはこの世界の情勢を調べる。その上で社会主義革命が起きていないのであれば、共に革命を目指す同志、それから革命資金を集めねばならん」
マルクスは生徒証を懐に仕舞い、玄関へ向けて歩き出した。
頭上には
───万国の労働者よ、団結せよ!
―――そして、それを廃病院の屋上から覗き見る者が一人……
「まさか、虚構のアペプが今になって成立するとは―――器となるのは曙メア、五年程前に
彼―――黒服は思わず黒い笑みをこぼす。
この黒服とカール・マルクスが出会うのは当分先の事であった―――
果たして、その邂逅の先に何が待つのか……
彼が、このキヴォトスに一体何を齎すのか───それは誰にも分からない。