新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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012ゲイムギョウ界の歴史

G.C.2019年6月24日 月曜日の夕方。

 

 

 昼食を済ませたネプギア達は全員で、かくれんぼを楽しんだ後にバンドの練習を終えていた。

 

今は広間で休憩中だ。

 

 

「ミクちゃん、どこか痛いところとかない?」

 

 

 ネプギアがソファーに座ってノートパソコンを操作しながら、同じソファーに座っているミクに尋ねる。

 

 

「大丈夫だよ。ネギちゃんの調律はいつも優しくて気持ちいいよ」

 

 

 ミクがネプギアの質問に笑顔で答える。

 

ミクの首筋にはネプギアの操作しているパソコンからUSBコードが刺さっており、今のミクはこれで色々調整するのだ。

 

ネプギアの持つNギアは超高性能ではあるが、リアルボーカロイドを調整するには性能不足なので、ネプギアが制作した専用ノートパソコンで調整している。

 

 

「ちょっと、調整してみたけど、どうかな?」

 

 

 ネプギアはそう言いながらミクの首筋に刺さったUSBコード抜く。

 

ミクは立ち上がると同時に、軽くステップを踏み、「あーあー」と声を出す。

 

 

「うん、いい感じだよ。流石ネギちゃん」

 

 

 ミクがそう言いながら微笑むと、「何かおかしなところとかあったら、すぐ言ってね」と言いながらネプギアはノートパソコンを閉じる。

 

そのタイミングを待っていたかのようにネプギアの側に、ロムとラムとプラエが速足でやってくる。

 

 

「ネプギア、これ読んでー!」

 

「……読んでほしい……(もじもじ)」

 

「ネプギアお姉さん、お願い」

 

 

 ラムはとても元気よく大きな声で、ロムは少し恥ずかしそうにもじもじしながら小さな声で、プラエはおねだりするような上目づかいだ。

 

 

「いいよ。三人ともこっちにおいで」

 

 

 ネプギアが柔らかく優しい声で三人を手招きする。

 

 

「「「わーい」」」

 

 

 三人は声を揃えて嬉しそうに喜びを表現するようにバンザイをする。

 

ラムがA4サイズの絵本をもってネプギアに近づく。

 

 

「ラムちゃんの持ってる絵本を読めばいいのかな?」

 

 

 ネプギアが言うと、「うん、わたしもロムちゃんもプラエも読めない字があるの」と言ってラムがネプギアに絵本を手渡す。

 

 

「それにネプギアちゃんに読んでもらうと心があったかくなる(ほかほか)」

 

 

 ロムはネプギア座っているソファーの右隣に座り込んで、甘えるように彼女に抱きつくと頬ずりをする。

 

ネプギアの鼻にロムの甘いミルクのような香りがした。

 

ネプギアはその匂いを心地よく感じながらロムの頭に右の手のひらを置く。

 

 

「そう? ありがとう」

 

 

 ネプギアはロムの褒め言葉にお礼を言うと、その手でロムの頭を優しくなでる。サラサラの髪が心地よい。

 

 

「えへへ……(てれてれ)」

 

 

 ロムが嬉しそうに目を細める。

 

彼女はいつも穏やかで優しいネプギアが大好きであった。

 

ロムのしゃべる擬音は心の声と呼ばれており、その時の気分を表しているらしい。

 

正確なところは本人も忘れてしまい、癖となっているのでよくわらなかったりする。

 

 

 気持ちよさそうなでられているロムを見たラムも、「わたしも」と言ってロムとは逆側から同じようにネプギアに抱きついた。

 

ラムもロムと同じような甘いミルクの香りがする。

 

ネプギアは二人の匂いを心地よく感じながら、左手でラムの頭も撫でてあげる。

 

ラムの髪もサラサラで気持ちよかった。

 

 

 ラムは元気いっぱいの少女で強気で子供扱いを嫌うが、ネプギアの前では甘えん坊さんになる。

 

大半の生き物は誰かに甘えたいもので、プライドの高くかっこつけて赤いロボットに乗ってる人も、ある少女に甘えていたものである。

 

ラムにとってそれがネプギアであり、それを隠しもせず【ネプギアが甘えてほしそうだから甘えてあげている】との言いようである。

 

 

「あう……先越されちゃった……」

 

 

 プラエが残念そうに両脇の取られてしまったネプギアを見つめるが、「ここいいかな?」とネプギアの足にしがみつく。

 

 

「ネプギアお姉さん、プラエのことも撫でて」

 

 

 プラエがすがるように言うと、ネプギアは笑顔でプラエの頭も撫でてあげる。

 

プラエの髪もサラサラで、彼女からも甘いミルクの香りがした。

 

 

「三人ともいい匂いがするね。それに髪もサラサラで触り心地が凄くいいよ」

 

 

 ネプギアは三人の頭を交互に撫で続けながら素直な感想を言うと、「そう? シャンプーもセッケンも変えてないわよ」ラムが小首を傾げながら言う。

 

ラムは更にネプギアのロングヘアーの後ろ髪に手を入れると、「それに髪の毛なら、ネプギアの方がサラサラよ」と楽しそうにネプギアの髪の毛を上下に撫でる。

 

ロムも、「うん、ネプギアちゃんの髪すごく綺麗(さらさら)」と気持ちよさそうにネプギアの後ろ髪に頬ずりする。

 

 

 ロムは髪に頬ずりしながら鼻をひくひくさせて、「ネプギアちゃんもいい匂いがする……お花の匂い……(くんくん)」と言う。

 

ネプギアは右手の人差し指をあごにあてて少し考えるそぶりをしながら、「セッケンの匂いかな? ライラックの花の匂いなんだよ」とロムとラムに説明をしてあげる。

 

ラムもロムと同じく鼻をひくひく動かして、「ふーん、これがライラックって花の匂いなんだー」と ネプギアの匂いを嗅いでいる。

 

ロムが、「いい匂い(ほわほわ)」とうっとりした顔で言うと、「わたしもこの匂い好き。ネプギアの匂いー」とラムも嬉しそうに言う。

 

プラエはソファーの後ろに回り込み、ネプギアの後ろ髪を愛しそうに撫でると、「やっぱり、ネプギアお姉さんは素敵……」と言った。

 

 

「ありがとう」

 

 

 ネプギアはそう言って嬉しそうに微笑み、「それじゃあ、読むね」と手渡された絵本の表紙に目を向けた。

 

ラムは急かすように両腕を振り、「はやくはやくー!」と言う。

 

ロムは、「楽しみ……(どきどき)」と祈るように両手を組んで期待に目を輝かせていた。

 

プラエはネプギアの正面に戻ると、しっかりその足にしがみ付いた。

 

 

 ネプギアが膝の上に絵本を乗せると、ロムとラムは絵本をじっと見る。

 

プラエは絵本は見えないがネプギアが読み聞かせてくれるだけで嬉しかった。

 

ロムとラムとプラエに囲まれたネプギアの様子は【愛らしい子供達に本を読み聞かせる美少女】といった感じでとても絵になっていた。

 

 

「ゲイムギョウ界の歴史」

 

 

 ネプギアは優しく落ち着いた声で絵本のタイトルを読み上げると表紙をめくる。

 

するとネプギアの向かいのソファーに座っていたユニが読んでいた本から目を離して、ネプギアに声をかける。

 

 

「なにそれ、歴史の絵本?」

 

「そうみたいだよ。ユニちゃんも興味ある?」

 

 

 ネプギアは顔を上げてユニの質問に答えながら目を向ける。

 

ユニは、「ちょっと興味あるわね、一緒に聞かせてくれる」と読んでいた本に栞をはさむと本を閉じる。

 

今更だが、【ゲイムギョウ界】とは今彼女達が住んでいる世界の名前である。

 

国の名前ではなく世界の名前。神が住む天界や妖精などが住む妖精界のように我々が住む世界とはまったく別の場所にある世界だ。

 

その為、ゲイムギョウ界の歴史と書かれたこの絵本は歴史を題材にしたものなのだ。

 

 

 ユニは栞を挟んだ本を机の上に置くと、右手で軽く髪をかき上げる。

 

するとネプギアに清涼感のあるミントの香りが漂ってくる。ユニのシャンプーの匂いだろう。

 

彼女は小悪魔的な見た目に反して努力家で自己鍛錬を欠かさないので、運動後のシャワーで爽快感のあるもの使っているのだろう。

 

ネプギアはユニのミントの香りに心地良い清涼感を感じている間に、彼女が聞く態勢になったのを確認すると再び本に目を向ける。

 

 

「ネギちゃん、私も聞きたいな」

 

 

 今まで黙っていたミクがそう言うと、「いいよ、ミクちゃんも聞いて」とネプギア言い、「ここに座るといいわ」とユニが少し動いてソファーに空きスペース作る。

 

ミクがネプギアの前を横切ると何故かネギの匂いがした。

 

 

(うーん……ネギが好きなのは分かるけど、女の子がネギの匂いさせるのはどうなのかな?)

 

 

 ネプギアはミクの要望により彼女のエネルギー源である、【メカビタンA】をネギ味に調整してある。

 

その副作用でミクからほのかにネギの香りがするのだ。

 

勿論、ライブの時などは消臭するのだが。

 

ネプギアはミクが座るのを確認すると絵本を読みはじめる。

 

 

「ゲイムギョウ界は遥か昔に誕生しました」

 

 

 ロムとラムは真剣に絵本を見ながらネプギアの声に耳を傾ける。 

 

 

「最初は0と呼ばれる数字しかありませんでした」

 

 

 ユニは机に両肘を置き両手を組んで大人しくネプギアの声を聞いている。

 

 

「そこに1という数字が生まれてきました。0と1は協力して二進数作り、様々な数字を生み出しました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むとラムが突然手を上げて声を上げ、「【にしんすう】ってなに?」と質問をする。

 

元気で積極的な上に好奇心旺盛なラムは疑問に思ったことはすぐに質問してくる。

 

 

「おさかなの仲間?」

 

 

 ロムが小首をかしげてそう言うと、その勘違いが面白かったのかネプギアが【くすり】と優しく微笑むと口を開く。

 

 

「そのニシンじゃないよ、数字の2に、進む【すすむ】の進に数、【かず】の数で二進数」

 

 

 ネプギアはそう言ってやんわり否定しながら正確な答えを言うと、「0と1ですべての数字を表現する方法よ」とユニが更に説明を付け加える。

 

しかし、ラムが不思議そうに首を傾げながら、「えー? 数字って1から10だよね」と反論する。

 

 

「ラムちゃん、0から9だと思うよ」

 

 

 ロムが少し自信なさそうにラムに向かって言うと、「え? そうなの?」とラムが意外そうな表情を浮かべる。

 

ネプギアは、「うん、ロムちゃんの言う通りだよ」とゆっくりと頷き、「数字には0が必要だし、10は1と0の組み合わせだから」と続ける。

 

ラムはハッと驚いた顔をすると、「そっか! すごーい! さすがはロムちゃんね」と嬉しそうにロムを褒める。

 

ロムも嬉しそうに、「えへへ(てれてれ)」と顔を赤くする。

 

 

 ネプギアはその二人の光景を楽しそうに眺めながら、「普段私達が使っている数字は、0から9の十個の数字を使った十進数」と説明を始める。

 

プラエとミクも大人しくネプギアの話を聞いていた。

 

話ながらネプギアは両手を胸の前に出して、右手の人差し指を立てて1を作り、左手は親指と人差し指で0を作る。

 

 

「二進数は0と1の二つだけで数を数えるの」

 

 

 ネプギアがそう言うと、ロムとラムは不思議な物を見るような目でネプギアの両手を眺める。

 

ネプギアは優しい声で、「0があって1があって、次は桁が上がるの。その代わり2進数は桁が一つ左へ移動する毎に値の重みが2倍になるの」と説明を続ける。

 

ロムとラムはネプギアの話を真剣に聞いている。

 

 

「だから、2を現すのは【10】」

 

 

 ネプギアはそう言うと、右の人差し指と中指を立てて2を作った後に、両手の指を広げて10を作る。

 

ラムは難しい顔で、「じゃあ、3は?」とネプギア尋ねる。

 

 

「3はさっきの10に1を加えて【11】」

 

 

 ネプギアは右の人差し指と中指と薬指を立てて3を作った後に両手の指を広げて10を作り、その後で右手の人差し指を上げて1を作り11を表現する。

 

今度はロムが少し困った顔で、「4は?」とラムと同じようにネプギアに尋ねる。

 

 

「4になるとまた桁を上げて値の重みを2倍にして【100】ってするの」

 

 

 ネプギアが今度は右手の親指だけ伏せて4を作ると、今度は左手の人差し指で宙に100を書くようにして説明を続ける。

 

言葉と一緒に右手と左手を巧みに使って説明をするネプギア。

 

彼女は右利きだが神次元などで様々な経験を積んだ末にほとんど両利きに近いので左手の動きもスムーズである。

 

 

「じゃ、じゃあ……5は101?」

 

 

 ロムが少し自信なさそうにもじもじ言うと、「あたりだよ。凄いねロムちゃん!」とネプギアはやや大げさにロムを褒める。

 

ロムは顔を赤くして、「えへへ……(てれてれ)」と照れると、「なら、6は110でしょー!」ラムが自信満々に言うと、「ラムちゃんもあたり。すごい、すごい!」とネプギアは拍手をして褒める。

 

ラムは腰に手を当てて、「これぐらい当然よ」と嬉しそうに笑う。

 

 

「プラエちゃんはどうかな?」

 

 

 ネプギアは足にしがみ付いているプラエに質問すると、「えと、7が111?」とプラエが言いながら小首をかしげる。

 

 

「うんうん、正解正解。プラエちゃんも凄いね」

 

 

 ネプギアが優しい声で褒めると、「えへへ……」とプラエが嬉しそうに微笑んだ。

 

ユニはそんな四人を見つめながら溜息を吐いて、「相変わらずのメカオタぶりね」と呆れたように言う。

 

ネプギアはユニの方に振り向くと、「えー? これぐらい普通だよ、それにこれはメカじゃなくてコンピューターの話だよ」と口を尖らせて反論する。

 

 

「それにユニちゃんだってできるよ、例えば【1101】は?」

 

 

 ネプギアがユニに質問する。

 

ネプギアはユニのことを友人としても一人の人ととしても高く評価しているので、ロム達より少し難しい問題を出す、

 

ユニがしばらく考え始め、「えっと……は8+4+0+1で13かしら?」とユニが答えると、「あたり! さすがはユニちゃん」とネプギアが手を叩いて拍手をする。

 

 

「うー! 何となくはわかったけど、大きい数字になるとちんぷんかんぷんよー」

 

 

 ラムはユニのように少し難しい問題にスラリと答えが出なかったことを少し悔しそうに首を左右に振りながらそう言う。

 

ロムも、「わたしも……ちょっと難しい(しゅん)」と落ち込んでしまう。

 

プラエはユニを尊敬の眼差しで見ながら、「ユニお姉さん凄い。プラエも全然分からなかったよ」と言う。

 

三人とも二進数の基礎は理解できたようだが、数が多くなると理解が追いつかないようだ。

 

 

「でも、どうしてこんな暗号みたいなことするのー? 桁が多くてわかりづらいじゃない」

 

 

 ラムが不思議そうに首を傾げて言うと、「うん、不思議?」とロムも小首を傾げる。

 

 

「プラエもそう思うわよね?」

 

 

 ラムがプラエに同意を求めると、「うん、凄く難しい」とプラエも頷きながら答える。

 

ネプギアは三人に同意するように頷くと、「そうだね。私達には少しわかりづらいよね」と言う。

 

ラムは、「じゃあなんでー?」と質問すると、「桁が多くてもコンピューターには0と1の二つの状態の組み合わせで数値を表現する二進数の方がわかりやすいの」とネプギアが答える。

 

ネプギアは続けて、「この本でもゲイムギョウ界には0と1しかいなかったから、0と1が頑張って二進数で色々な数字を生んだんだよ」と説明しながら話を絵本の方に戻そうとする。

 

 

「「「おおー」」」

 

 

 ネプギアの説明を理解できたロムとラムとプラエが揃えて感嘆の声をあげる。

 

その反応を見たネプギアは本の続きを読み始める。

 

ロムとラムとプラエに物を教えながら本を読んであげるその姿は、まるで教育テレビのお姉さんのようだ。

 

 

「ミクは大丈夫なの?」

 

 

 ユニが隣のミクに問いかけると、「私は大丈夫。電子の歌姫って呼ばれたこともあるし」とミクはにこやかに答える。

 

 

「そうだったわね。あまりにも人間じみてて忘れててわ」

 

 

 ユニはそう言いながら、ミクをまじまじと見る。

 

その間にネプギアは絵本を読み進める。

 

 

「ゲイムギョウ界は0と1が生み出した数字を使って、音や色をもったドットを作り、それがたくさん集まり大陸や生き物を生み出しました。これが初期の8ビット世界です」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「ビットってなに?」とラムが腕を組んで首を傾げる。

 

ユニが、「情報量の最小単位よ」と答えると、「この数字が大きくなればなるほど、ゲイムギョウ界は広大で精巧で綺麗になるんだよ」とネプギアがそれに続く。

 

 

「今は何ビット世界なの?」

 

 

 今度はロムがあごに右手をあてながら質問すると、「ビット世界の最高は128ビットね」とユニが腕を組んで得意そうに言うと【ふん】と鼻を鳴らす。

 

ユニは続けて、「もちろん、アタシ達ラステイションによる力よ」と自信満々に言う。

 

ビット数などはゲイムギョウ界の規模は国の発展に比例していく。

 

つまり、ユニは自分の住んでいる国がいかに優れているかを自慢したいのだ。

 

 

「でも、128ビットは性能過剰って言われて今は64ビットのとかCPUをたくさん使うマルチコア世界なんだよ」

 

 

 ネプギアがそんなユニに対して落ち着いて、そう言うと、「「「まるちこあ?」」」とロムとラムとプラエが同時に首を傾げる。

 

CPUとは我々の世界で言えば地球の意思のようなものであり、これがゲイムギョウ界の森羅万象を作り続けている。

 

ゲイムギョウ界の国が発展することで、CPUも成長しゲイムギョウ界全体が発展をしていくのだ。

 

 

「128ビット一つのCPUに全部世界を作らせるより、64ビットのCPUをたくさん使って役割分担した方が、より世界がよくなるってことなの」

 

 

 ネプギアが説明を続けると、「わたし達みたいに協力するのね!」とラムが嬉しそうに言い、「みんなで協力!」とロムも嬉しそうに続く。

 

ネプギアはそれを嬉しそうに眺めながら、「うん、ラムちゃんが絵を描いて、ロムちゃんがお話書いて、私が音楽作って、ユニちゃんがゲームシステム作る感じ」と頷く。

 

 

「で、マルチコアになってから、CPUの構成が複雑化してきているの。だからビット数に関して細かい数値を出すのが難しいんだよ」

 

 

 ネプギアが続けて言うと、「ちょっと、人が自慢してるところに水を差さないでくれる」と話においていかれたユニが不満そうな顔をする。

 

ネプギアは少し困った顔で、「でも、今の世界がどうなのか知りたいみたいだし……」と答える。

 

彼女は真面目過ぎて少し空気の読めないところがある。

 

 

「まぁ、いいわ。続き読んでちょうだい」

 

 

 ユニはそんなネプギアのことをよく知っているようで、あっさりと引き下がり絵本の続きを読むようにうながす。

 

ネプギアは絵本のページをめくると本にはドット絵で地図や生き物が描かれていた。

 

すると、「あ、マーリョだ」とラムが嬉しそうに絵本に指差すと、ロムも同じく指を差しながら、「こっちはニテール」と言う。

 

彼女達が指差したところには帽子をかぶった赤と緑の二人の男性が描かれていた。

 

彼らはマーリョとニテールと言い古くからゲイムギョウ界にいる有名人である。

 

ちなみに赤い方がマーリョ、緑の方がニテールである。

 

ネプギアはロムとラムが絵本の絵を一通り楽しんだのを確認して、本の続きを読み始める。

 

 

「こうしてゲイムギョウ界に二次元世界が完成しました」

 

 

 ネプギアが続きを読むと、「【にじげんせかい】ってなに?」とまたもラムが左手を上げて質問をしてくる。

 

 

「二次元世界って言うのはね、縦方向と横方向の二つの座標を持つ空間で平面的な世界なの」

 

 

 ネプギアが右の人差し指で宙に縦線と横線を描きながら質問に答える。

 

続けてユニが、「たまに薄いペラペラの生き物いるでしょ? あれが縦と横しかなかった二次元世界の名残の生き物なのよ」と付け加える。

 

ゲイムギョウ界には、紙に書いた絵のような生き物や、テレビ画面に映ったようなほとんど厚みのない生命体が居る。

 

以前に出会ったベーダー系のモンスターがそれにあたる。

 

 

「今、私達が住んでいるのは、そこに奥行きを加えて【縦と横と奥行き】の三つの空間のある世界で三次元世界なんだよ」

 

 

 ネプギアが今度は右の人差し指で奥行きを現すように前後に動かしながら言うと、ロムが、「ネプギアちゃんもユニちゃんも物知り」と言って感心すると、「やっぱり、ネプギアお姉さんもユニお姉さんも凄いなー」とプラエが尊敬の眼差しを二人に送る。

 

ネプギアとユニは真面目な努力家で色々と勉強しているので、ロムとラムの質問には大抵答えることができた。

 

ロムとラムはネプギアとユニを素直に頼りにして、ネプギアとユニも頼られることを嬉しく思っており、四人の関係は良好である。

 

そして、二人が自分達の説明で納得したのを確認したネプギアは本を読み続ける。

 

 

「ゲイムギョウ界の人々はゲームをしながら平和に暮らしていました。しかしそれを脅かすものがいましたモンスターです」

 

 

 モンスターは基本的に人間や女神の敵として認知されている異形の生命体。

 

人や作物を襲い害をなす。

 

その姿は大型化した植物や昆虫、動物などの他にドラゴンなどの我々の世界では空想上生き物も存在する。

 

中にはロボットやゲイムギョウ界独自のデータ系と呼ばれる、先ほど話に出た紙に書いた絵のような生き物や、テレビ画面に映ったようなほとんど厚みのないものもいる。

 

 

「モンスターは人々を襲いました。人々は抵抗しましたがモンスターはとても強く歯が立ちません」

 

 

 ネプギアの声を聴きながら、ロムとラムは話の続きが気になるらしく、「どうなっちゃうんだろ?」とラムが言うと、「気になる(どきどき)」とロムがそれに続き、プラエはネプギアの足にしがみ付きながら真剣に話を聞いていた。

 

 

「追いつめられた人々は必死に祈りました。【どうか安らかにゲームを楽しめる平和をお与え下さい】と。その時一つのゲーム機が空に浮かび上がりキラキラと輝き始めました」

 

 

 ネプギアが更に読み続けると、「「おお~!」」とロムとラムが感嘆の声を上げる。

 

 

「ゲーム機はとても美しい女性の姿になりました。その女性はとても強く、あっという間にモンスターを倒してしまいました、人々は喜びの声をあげます【女神様】と」

 

 

 ネプギアが読みながら絵本のページをめくる。

 

すると今度は女神様と思われる女性が描かれていた、「おおー、女神様だ」とラムが言うと、「きれい……(ほれぼれ)」とロムが続く。

 

二人とも女神の絵に釘付けのようだった。

 

ネプギアはロムとラムが落ち着くのを待ってから絵本の続きを読む。

 

 

「女神様は強いだけでなく、とても賢い女性でした。女神様はその知恵で人々をまとめ上げ国を作りました。女神様はその国を【プラネテューヌ】と名付けました」

 

 

 ユニが、「その本、プラネテューヌの本なの?」と質問すると、「プラネテューヌの図書館にあったのを借りてきたのよ」とラムが答える。

 

続けてロムが、「ネプギアちゃんに貸出カード借りたの」と言う。

 

ユニはロムとラムの回答に、「なるほどね」と納得するとネプギアに向かって、「それで終わり?」と質問する。

 

 

「まだまだページがあるから続くみたいだよ」

 

 

 ネプギアはユニの質問に答えると。「ネギちゃん、続きが気になるよ。早く読んで」とミクが言う。

 

それを聞いたネプギアが続きを読み始める。

 

 

「人々が女神様を褒め称えて信仰すればするほど、女神様の力は強くなりました。そうしていく内にプラネテューヌはどんどん大きくなりました」

 

 

 ネプギアがページをめくると女神を褒め称えている民衆の絵が描かれていた。

 

 

「シェアエネルギーってやつね」

 

 

 ユニが腕組みをしながら納得するように頷くと、ネプギアが、「うん、シェアエネルギーは女神の大切な力の源だからね」と続く。

 

ゲイムギョウ界の女神は住人からの信仰を【シェアエネルギー】という力にして受け取ることができる。

 

女神はこのシェアエネルギーを自らの力として国や国民たちを守り導き、人々の信仰が途絶えない限り、女神は不老不死として半永久的に存在することができる。

 

 

 ネプギアは絵本のページをめくると続きを読み始める。

 

 

「しかし、そこで事件が起きました。なんと女神様は一人ではなかったのです。他にも四人の女神様がいてそれぞれ国を持っていたのです」

 

 

 絵本にはプラネテューヌの女神に立ちはだかるように四人の女性が描かれている。

 

 

「四つの国は【ルウィー】、【タリ】、【ピジョン】、【カルディア】と呼ばれました」

 

 

 更に絵本を読み続けるネプギアにラムが嬉しそうに、「あっ、ルウィーが出てきた」と声を出すと、「ルウィーどうなるのかな?(どきどき)」とロムもそれに続く。

 

ロムとラムはルウィーに住んでいるので自分の国が出てきたのが嬉しいのだろう。

 

 

「ラステイションはまだ出ないみたいね。プラネテューヌとルウィーに比べれば歴史は浅いから仕方ないか」

 

 

 ユニは少し残念そうにしながら言う。

 

彼女の言う通りラステイションは比較的新しい国なのでまだ出てこないようだった。

 

 

「そういえば、タリって聞いたことがあるような……」

 

 

 ラムが腕を組んで考え込むと、「確か、神次元にあった古い国だったと思う」とロムがラムの疑問に答える。

 

ラムは右の手のひらを左手のこぶしでポンと叩くと、「そうそう、それそれ。さすがはロムちゃん」と思い出したように言う。

 

 

「ピジョンとカルディアは聞いたことがないわね」

 

 

 ユニはあごに右手を当てながら考え込むと、「ルウィーとタリと合わせて、紀元前のゲイムギョウ界の四国家だったって、いーすんさんに聞いたことがあるよ」とネプギアが答える。

 

ロムが、「きげんぜん?」と首を傾げ、ラムが、「賞味期限前にちゃんと食べること?」と質問する。

 

ユニは少し呆れた声で、「違うわよ。今のG.C.より前の時代だから紀元前って言うの」と説明すると。

 

更に、「G.C.は今のゲイムギョウ界の繁栄の元を作った二代目のルウィー女神の文子様の誕生した年に合わせて作られたんだよ」とネプギアが続く。

 

G.C.【ジーシー】とは我々の世界では西暦を現すA.D.と同じく年の呼称に使われる。

 

 

 ロムが、「ルウィーの文子……様がゲイムギョウ界の元を作ったの?」と質問する。

 

それに対して、「うん、ゲイムギョウ界の存在が他の世界に認められ始めたのは、二代目ルウィー女神の文子様とその妹の音子様の活躍のおかげなんだよ」とネプギアが答える。

 

ゲイムギョウ界は以前よりあったが、その存在が広く認められたのはルウィーの二代目女神の力があってこそであった。

 

勿論、彼女だけの力ではないが、一番の功労者と言って差し支えないだろう。

 

 

「ところで、じーしーってなに?」

 

 

 今度はラムが左手を上げて質問すると、「ゲームの世紀。Game Century【ゲーム・センチュリー】の略よ」とユニが答える。

 

先ほどと同じように、「紀元前はB.G.で、Before Game【ビフォー・ゲーム】になるの」とネプギアがそれに続く。

 

西暦がイエス・キリストの誕生年からと定められたことと同じように、ルウィーの二代目女神の活躍を称して彼女の誕生年の翌年をゲームの世紀の始まりとして、G.C.と名付けたのだ。

 

 

 今まで出て来た、ゲイムギョウ界という世界、マーリョというキャラクター、文子と呼ばれる女神。

 

これらのキーワードで西暦1970~80年頃の生まれの方は何か思い当たる節があると思う。

 

察しの通り、ゲイムギョウ界は我々の住む世界のコンピューターゲームと深い関わりがある世界だ。

 

ルウィーの二代目女神の文子は1983年に発売した有名家庭用ゲーム機のゲイムギョウ界での姿となる。

 

その為、西暦1983がG.C.の始まりになる。

 

昔は現実世界とゲイムギョウ界の時間の流れの早さは別々になっていたが、ここ最近になって現実世界とゲイムギョウ界の時間の流れが完全に同期した。

 

それにより、西暦2019年はゲイムギョウ界もG.C.2019年となっている。

 

 

 尚、ゲイムギョウ界の太陽暦も今はグレゴリオ暦が使用されており、一年は約三百六十五日となり一日も同じく二十四時間となる。

 

気候は雪国であるルウィーを除けば、現実世界の日本と同じく春夏秋冬の順で季節が巡って来る。

 

 

「それじゃあ、プラネテューヌは紀元前の国にならないの?」

 

 

 ロムとラムの質問に答え終わったユニが話を戻してネプギアに質問する。

 

それに対してネプギアは、「うん、プラネテューヌの初代女神様とルウィーの二代目女神様は同い年の生まれなんだって」と答える。

 

 

「紀元前の国の中ではどこが一番古いの?」

 

 

 ラムがネプギアとユニの間に身を乗り出しながら質問すると、「いーすんさんは、タリって言ってたよ」とネプギアが答える。

 

続けてロムは、「じゃあ、タリがゲイムギョウ界で一番古い国?」と質問する。

 

ネプギアはゆっくりと首を左右に振ると、「ううん、それより前に、オデュッセイアって国があって、これがゲイムギョウ界の初めての国って言われているんだって」と答える。

 

ユニは腕を組んで、「アンタ、なかなか物知りね」と感心すると、「最近は、いーすんさんに歴史も習ってるんだ」とネプギアは嬉しそうに言う。

 

ユニはネプギアの知識にライバル心が刺激され、ネプギアはユニに褒められたのが素直に嬉しいようだ。

 

ネプギアとユニは、仲の良い友人としても互いを高めあうライバルとしても良好な関係を築き続けていた。

 

 

「ふわあ~~……」

 

 

 プラエが目を輝かせてネプギアを見上げる。

 

それに気づいたネプギアは、「どうしたの? プラエちゃん、静かだけど気分悪かったりする?」と心配そうにプラエに問いかける。

 

プラエが喋らないので、病弱な彼女の具合が悪いのだと心配したのだ。

 

しかし、プラエは勢いよく首を左右に振ると、「全然平気だよ! ネプギアお姉さんが凄くてボーッとしてた!」と興奮気味に訴える。

 

 

「前々から思ってたけど、ネギちゃんって凄く頭いいんだね。私の調律もすぐ覚えちゃったし」

 

 

 ミクも感心したように言うと、「ふふん、そうでしょ。わたし達のネプギアは凄いのよ」とラムが腕組みして自分の事のように自慢すると、「ネプギアちゃんは凄い(ふんす)」とロムも同じようにネプギアを自慢する。

 

 

「み、みんな褒め過ぎだよ……」

 

 

 ネプギアが恥ずかしそうに言うと、「アタシも負けてられないわね」とユニが意気込む。

 

 

「ねーねー。続き続き~」

 

 

 ラムがネプギアの左手を引っ張りながら絵本の続きを読むようにせがむと、「気になる気になる……」とロムも期待に目を輝かせる。

 

ネプギアは、「じゃあ、読むね」と言うと再び絵本に目を向けて読み始める。

 

 

「五人の女神様は集まって、ゲイムギョウ界の今後について話し合いを始めました」

 

 

 ネプギアがページをめくると話し合いをする五人の女神が描かれている。 

 

 

「しかし、どの女神様も自分が一番強く自分がゲイムギョウ界のリーダーになると譲らずに争いになってしまいました。こうして第一次ハード戦争が起こりました」

 

 

 ネプギアが読むのを聞いてラムが興奮気味に、「おお、せんそーだ、せんそー」と言うと、「どこが勝つのかな?」とロムが小首を傾げる。

 

 

「最初はタリの国がとても有利でした」

 

 

 ネプギアが読むのに対して、「ちょっと意外ね」とユニが右手をあごにあてながら言う。

 

先述したように昔のゲイムギョウ界はルウィーがとても強く、てっきりルウィーがスタートダッシュをすると思っていたようだ。

 

 

「しかし、タリの女神様は戦争に勝つために国民に信仰を強要して信仰しない人には厳しい罰を与えました。その上に高い税金も定めていました。そのことが国民の怒りを買いました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、ラムがまた、「それってどんなふうに悪いの?」質問をする。

 

ラムには信仰の強要や高い税金という言葉がピンとこないらしい。

 

 

「そうだね……。例えばちょっと意見に反対しただけでお尻ペンペンされたり、いきなり、おこづかい半分にされたら、ロムちゃんもラムちゃんも怒るよね?」

 

 

ネプギアがそう例えると、ロムは、「うん、怒る(ぷんぷん)」と言い、ラムは、「ロムちゃんにそんなことするヤツは、わたしがやっつけるわ」と憤る。

 

 

「タリの国の人たちはそんなことをされたんだよ」

 

 

 ネプギアが言うと、ロムとラムが、「「なるほどー」」と声を揃えて頷く。

 

ネプギアはそんな二人の反応を確認して続きを読む。

 

 

「怒った国民は女神様を信仰しなくなってしまいました。信仰の無くなったタリの女神様はあっという間に弱くなってしまい、ルウィーの女神様にあっさりと負けてしまいました」

 

 

 それを聞いたラムが、「お~! ルウィー、つよーい!」とバンザイと両手を上げると、ロムも、「つよい、つよい(にこにこ)」と拍手をする。

 

女神がゲイムギョウ界の住人から得ることの出来るシェアエネルギーは前述のように人々の信仰心からなるもの。

 

人々をモンスターなどの脅威から守り、そして人々の生活を豊かにするよう導くことで得ることができる。

 

だが、好かれるだけではなく、時には神として堂々たる威厳を見せ、異端者や犯罪者を厳しく罰して人々に畏怖の念を抱かせることも必要なことがある。

 

その舵取りは女神やその側近の裁量次第となる。

 

タリのような恐怖政治を行うと、人心は離れてしまい信仰が無くなってシェアエネルギーを得られなくなって女神は弱って滅びてしまうのが常であった。

 

 

「悪い専制政治のお手本みたいな終わり方ね」

 

 

 ユニが頷きながら言うと、ネプギアも同じように頷いて、「そうだね。人あっての国と女神だもんね」と答える。

 

ネプギアとユニは見た目より知識と教養が豊富で、本の内容から反面教師となる部分をしっかりと理解しているようだった。

 

 

「【せんせーせーじ】ってなに?」

 

 

 それを聞いたラムがまたも質問すると、ロムも、「気になる……」と続く。

 

ラムが少し考えて、「先生が、せーじって名前?」と言って首を傾げるが、「違うわよ」とユニが少し呆れた声で答える。

 

そこにネプギアが、「政治って言うのは国のルールとか作って、世の中をよくしようとすることだよ」と二人の質問に答える。

 

続いてユニが、「で、専制政治っていうのは王様とか偉い身分の人が思いのままに政治を決めることよ。身分が血統っていう親子とかの血の繋がりとかで最初から決まってね」と言う。

 

 

 ロムとラムが、「「ふーん」」と声を合わせて言うと、ユニは「男爵とか侯爵とか聞いたことない?」とロムとラムに質問する。

 

ラムが左手を上げて、「あるある!」と言うと、ロムも右手を上げると、「おイモ」と答える。

 

ネプギアは苦笑いを浮かべながら、「それも男爵だけど違うかな……人の身分の名前のことだよ、称号とかそんな感じの」とやんわりと否定しながら説明を付け加える。

 

ラムはそれを聞くと、「じゃあ、あっちよ、あっち。びよーんって、帽子かぶってるの」と両手を頭の上で伸ばして丈の長い帽子を表現する。

 

ロムもそれに合わせて、「シルクハットで、びよよーんって長いおヒゲしてるんだよね」と付け加えながら、両手の人差し指を長いひげを表すように左右に動かす。

 

 

「それよそれ、少し偏見入ってるけどね」

 

 

 思い通りの回答をえられたユニが嬉しそうにそう言う。

 

しかし、ラムが更に、「それで手品師なんだよね」と言うと、ロムが、「【へるすまじしゃん】ってミナちゃんが言ってた」と言う。

 

ユニは一転して呆れ顔で、「なにそれ……」と呆然としてしまう。

 

ネプギアは少し考えた後に「それ多分、ヘルスじゃなくて、【ヘルズマジシャン】じゃないかな?」と言うと、「あっ、それそれ」とラムがうなずく。

 

それを見たネプギアは、「それは漫画とかだけの特殊な設定だと思うよ」とユニと同じく少し呆れながら答える。

 

 

「とにかく、生まれた時から偉い人が決まってるから、性格の悪い人や頭の悪い人でも偉くなれちゃうのよ」

 

 

 ユニが気を取り直して両腕を組みながら言うと、「で、悪い人は自分勝手なルールを作って国をメチャクチャにして国民を苦しませるのよ」と続けて言う。

 

ネプギアは、「タリは女神がそんなふうに悪い人だったから、国民に見捨てられて負けちゃったんだよ」とロムとラムに言い聞かせるように付け加える。

 

更に、「女神と国民は持ちつ持たれつなんだから、女神だからってあんまり勝手なことしちゃダメなんだよ」と付け加えた。

 

 

「でも、お姉ちゃんみたいに良い女神様ならいいんだよね」

 

 

 ラムが言うと、ロムも、「お姉ちゃんなら大丈夫(こくこく)」と続いた。

 

 ロムとラムは姉でありルウィーの女神でもあるブランを尊敬している。

 

それでもイタズラをするのはかまって欲しいからだ。

 

 

「そうだね、うちのお姉ちゃんも安心だよ」

 

 

 それにネプギアも続くと、ユニも、「アタシのお姉ちゃんは完璧だからね」と自慢気言う。

 

ネプテューヌはあんな感じだが妹であるネプギアは彼女を尊敬している。

 

ユニもラステイションの女神で姉であるノワールを尊敬し目標としている。

 

 

 ちなみにネプギア達はまだ半人前なので、一人前の女神は【守護女神】と呼ばれるが彼女達四人は【女神候補生】と呼ばれている。

 

神とはいっても姿形は人間と変わりない。

 

女神化と呼ばれる変身を行うと多少は人間との違いは出てくるが、それでも大差はない。

 

 

「って、ネプギアのところはダメでしょ……」

 

 

 ユニはすかさずネプギアにツッコミをいれると、「ええっ!? なんで! お姉ちゃんダメじゃないよ!」とネプギアは反論する。

 

 

「いつも勝手なことして貿易赤字出してるって、お姉ちゃんが言ってるわよ」

 

 

 ユニは落ち着いてネプギアの反論に答えるとネプギアは、「うっ……」と言葉に詰まってしまう。

 

今までの話や、ユニの言う通りネプテューヌはかなり自由奔放な性格で、思い付きで国の方針などを勝手に決めてしまうのだ。

 

専制政治みたいな感じではあるが悪意や我欲などではなく、本人は純粋に名案だと思って止める間の無くノリノリで突き進んでしまうのだ。

 

しかし、ユニの言う通り毎回失敗に終わっており、その後はネプギア達プラネテューヌの要職クラスがフォローに奔走するのがお決まりになっていた。

 

 

 ネプギアが怯んでいる隙に、「悪い人じゃないけど、政治経済においては頭が悪いわよね」ユニがキッパリそう言う。

 

ネプギアは肩を落とすと、「ううっ……ごめんね、お姉ちゃん。私、フォローできないよ」とうなだれてしょんぼりしてしまう。

 

素直で真面目なネプギアはウソをついてまで姉をかばえなかった。

 

 

「でも、プラネテューヌって滅びたりしないよね?」

 

 

 ネプギアとユニのやりとりを見ていたラムがそう言って腕組みして首を傾げると、ロムも、「ネプテューヌちゃん、面白い人だからかな?」と小首をかしげる。

 

 

「そうだよ! お姉ちゃん、頭は悪いかもだけど、すっごく面白いから!」

 

 

 ネプギアはロムとラムの言葉に何とかフォローを思い付いたようだ。

 

 

「頭が悪いことは正直に認めるのね」

 

 

 そこにユニは意地悪そうな笑みを浮かべて言うと、ネプギアは、「……う~……あんまりイジメなんでよ」と恨めしそうな声を出す。

 

 

「ごめん、ごめん。でも……」

 

 

 ユニは素直に謝りながら、「でも、プラネテューヌが保ってるのは、どっちかって言うと教祖のおかげじゃないの?」と言葉を続ける。

 

 

「そうだね、いーすんさんにはお世話になりっぱなしだね」

 

 

 ネプギアはその言葉に自分の国の教祖であるイストワールに感謝をする。

 

彼女は優秀で物知りな人物でネプギアも色々と教えて貰うことがある。

 

毎回ネプテューヌの自由奔放に振り回され、ネプギアと共にフォローに奔走する苦労人。

 

 

「教祖が優秀なら問題ないって点は民主的よね」

 

 

 ユニがそう言うと、またまたラムが、「みんしゅてきってなーに?」質問すると、ロムも「気になる気になる(なぞなぞ)」と続く。

 

 

「えーと、国とか政治とかのみんなのことには、みんなが話し合って決めるってことを、【民主主義】って言って、その通りになってることを【民主的】って言うの」

 

 

 ネプギアはロムとラムも疑問に丁寧に答えると、「さっきの専制政治に対して、国民のみんなも政治に参加できるのよ」ユニがそれに続く。

 

こうやって幼いロムとラムが分からないことを質問して、真面目で勉強家のネプギアとユニがそれに答える会話は四人の中で定型化していた。

 

 

「みんなの代表になって女神に政治とかの意見ができる教祖とか教団の偉い人は、国民が選挙で決めるから、みんなで決める民主的ってことよ」

 

 

 ユニがロムとラムに説明をする。

 

【教祖】は各国の女神に仕える機関である【教会】のリーダー。

 

女神に次ぐ権限が与えられ、女神のよき相談役となる。

 

選ばれる条件は国ごとに様々で、女神が直に指名する場合もあれば世襲の場合もある。

 

ただし、国民による信任投票は行われており、能力の無い者や我欲に溺れている者がなれることは基本的に無い。

 

 

「プラネテューヌは信任投票で、国民のほぼ100%が【いーすんさんでいいよ】って言ってくれてるんだよ」

 

 

 ネプギアが自分達の教祖であるイストワールが国民に信用されていることを自慢気に言う。

 

プラネテューヌの女神であるネプギアの姉ネプテューヌは先程ユニが言ったように政治向きの人物で無いので、国民は彼女のフォローをし続けるイストワールを心から信用している。 

 

 

「ウチは75%だったかしら? ケイが悪いってわけじゃないんだけど、ちょっとドライすぎるところがあるから誤解受けやすいのよね」

 

 

 ユニはあごに右人差し指をあてて思い出しながら言う。

 

ケイとは【神宮寺ケイ】というラステイションの教祖の名前である。

 

ユニの言う通り、神宮寺ケイはイストワールに負けず劣らずの優秀な人物だがビジネスライクな人物であり、ユニの言うようにドライな性格が、いらぬ誤解を受けることがある。

 

 

「しんにんとーひょーってミナちゃんどれぐらいだったっけ?」

 

 

 ラムが腕を組むと、ロムが、「……たしか60%だったと思う」と答える。

 

それを聞いてユニは、「ルウィーの紳士はブレないわね」と呆れると、「でも、小さくないのに60%も獲得してるミナさんも凄いと思うよ」とネプギアが言う。

 

 

 ミナとは【西沢ミナ】というルウィーの教祖の名前で、見た目は二十歳前後の女性である。

 

しかし、ルウィーの国民はロムとラムのような小さな子が好きなのでミナのような大人の女性が支持を得るのは大変なことなのだ。

 

それだけ彼女が優秀であり、その働きが国民に認められていると言っていい。

 

 

「私達もタリみたいにならないように、国民のみんなが選んだ教祖の人達と一緒によく考えて物事を決めようね」

 

 

 ネプギアは言うとユニが、「女神は強いだけじゃなくて、為政者としても優れていないとダメなのよ」と続くと、ロムが、「いせいしゃ?」と不思議そうに首を傾げる。

 

ラムも、「威勢のいいお医者さん?」と言いながら首を傾げる。

 

続けて両手叩いてを鳴らすとすると大きな声で、「いらっしゃい、いらっしゃい! 今日は手術の大出血サービスよ!」と言って魚屋の客引きのような真似をする。

 

ユニは右手をこめかみに当てながら、「手術の大出血なんて、サービスじゃないわよ」と呆れてしまう。

 

続けてネプギアが、「為政者って言うのは政治をする人の中でも、特に偉くて決定権をもつ人のことを言うの。だから女神がそれにあたるんだよ」と説明する。

 

 

「「なるほどー」」

 

 

 ロムとラムが納得するのを見たネプギアはちらりと足元を見る。

 

そこには尊敬の眼差しを送り続けているプラエがじっとこちらを見ていた。

 

ネプギアは左手で優しくプラエの頭を撫でると、「プラエちゃんも分かったかな?」と質問する。

 

プラエは首が千切れんばかりの勢いで頷くと、「ネプギアお姉さんもユニお姉さんも凄い。プラエ凄く尊敬しちゃう」と目を輝かせながら言う。

 

ネプギアは、「ありがとう、プラエちゃん」と言うと絵本のページをめくり続きを読み始める。

 

 

「タリを倒したルウィーはその勢いでカルディアも倒し、ルウィーはゲイムギョウ界で一番強い国になりました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、ラムは、「さすがはルウィーね」と左手でガッツポーズを作り、ロムも、「ルウィーつよい」とバンザイして喜ぶ。

 

 

「ルウィーの強さの秘密はたくさんのメーカーが力を貸したからです。メーカーによって多くのゲームが作られ、ルウィーの信仰はますます上がりました」

 

 

 本の続きを読み始めるネプギア。

 

【メーカー】とは本国以外でゲームソフトを作ってくれる企業や団体である。

 

各国のゲーム機に対応したゲームを作ることで、ゲーム機の面白さが増してその国のゲーム機の人気が上がる。

 

 

 女神が信仰を得るには人々を守り導く他に、女神の分身とも言える自国のゲーム機の人気を上げる必要がある。

 

ゲイムギョウ界の名の通り、人々はゲームを楽しむためにこの世界で生きているのでゲーム機の人気を上げることは非常に重要なことだ。

 

 

 ゲーム機の人気を上げる為に必要な物は面白いゲームソフトを沢山作ること。

 

その為には本国だけでなくメーカーのような民間の企業などの協力も必要になってくる。

 

メーカーの協力を得るには優れたゲーム機を作るだけでなく、交渉術なども重要になってくる。

 

 

 その為に女神がシェアエネルギーを得る為には、戦闘が強いだけでなく内政や外交など各方面に高い能力を有し、優れた人材を扱うことも必要となってくる。

 

ちなみに現在のゲイムギョウ界では、テレビ画面でゲームができる家庭用ゲーム機となる据え置きゲーム機が守護女神の分身。

 

携帯型ゲーム機が女神候補生の分身と言われている。

 

 

「特に【RPG革命】で作られ現在も続編が作られている【ドランククエスト】や【ファイナリストファンタジア】を筆頭とするRPGゲームは人々の心を魅了しました」

 

 

 ネプギアが読むのを聞いていたユニは腕組みをしながら、「RPGの人気は不動よね~。お姉ちゃんも大好きだし」と感心する。

 

ネプギアも同じように、「そうだね。今のゲームはどこかしらにRPG要素があるよね」と感心する。

 

 

 RPGとは【ロールプレイングゲーム】の略。

 

プレイヤーが主人公とその仲間を操作し、障害として立ちふさがるモンスターとの戦闘を繰り返しながら【経験値】や【お金】などを蓄積してパワーアップする。

 

そして徐々に行動範囲を広げていき最終的に目標を達成するというものである。

 

ゲイムギョウ界では圧倒的な人気を誇るジャンルで、後に様々な革命が起きてもRPGは衰退する気配を見せない。

 

このRPG革命により、ゲームに少しずつ育成をしていきながら先に進めるという概念の物が生まれ始める。

 

 

「こうして、ゲイムギョウ界=ルウィーと呼ばれるほどにルウィーは強大になりました」

 

 

 ネプギアが続きを読みながら次のページをめくると、黒い魔女のような姿が描かれていた。

 

 

「このままルウィーがゲイムギョウ界の覇者になるかと思われた時に事件が起きました。【犯罪神マジェコンヌ】の誕生です」

 

 

 ネプギアが更に続きを読むと、「犯罪神がルウィーで誕生したことは聞いてたけど、こんな昔に生まれたのね」とユニが右手をあごに当てながら言う。

 

犯罪神マジェコンヌとはゲイムギョウ界の邪神で女神であるネプギア達は彼女達と死闘を繰り広げたことがある。

 

 

「マジェコンヌは突如としてルウィーに現れ、【マジェコン】と呼ばれるほとんどのゲームをコピーできる悪い機械を広めました」

 

 

 続きを読むネプギア。

 

自分のよく知る邪神のことを読むその声と表情はやや緊張しているようだった。

 

マジェコンとは、マジェコンヌの力で大半の物を複製できてしまうコピーツール。

 

これによりゲイムギョウ界の物の価値が暴落して市場破壊を招き、ゲイムギョウ界全体が危機に瀕した。 

 

 

「マジェコンはルウィーの国民の心を壊してしまいました」

 

 

 ネプギアが少し悲しそうな声で読む。

 

絵本の中とは言え、ゲイムギョウ界の人々がマジェコンの誘惑に負けてしまったのが悲しいのだろう。

 

 

「それによりゲームショップは枯れ果て、ゲームメーカーやゲームクリエイターは飢え苦しみ、ルウィーは滅亡の危機にさらされました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、ラムが、「犯罪神はやっぱり悪いヤツね」と腕を組んで憤慨し、ロムも、「ゆるせない(ぷんぷん)」と怒っているようだった。

 

ラムはそこで思いついたように左手を上げて、「なんでコピーツールが広まると国が亡んじゃうの?」と質問する。

 

ロムも、「そういえば、わたしも知らない」と不思議そうに首を傾げる。

 

 

「まずマジェコンを手に入れるのは、女神への信仰を捨てて犯罪神を信仰しなきゃならないのよ。この時点で女神のシェアエネルギーが落ちちゃうでしょ?」

 

 

 ユニが右手の人差し指を上げて説明を始める。

 

ロムとラムはユニの説明に納得したようにこくこくと首を縦に振る。

 

更にネプギアが、「次にゲームをコピーされちゃうと、元になったゲームが売れないよね? そうすると国やメーカーにお金が入らなくなって国もメーカーも弱っちゃうの」と説明する。

 

 

「コピーする方は軽い気持ちだろうけど、ゲームに限らず商品はクリエイター知恵と技と努力の結晶なのよ。それを対価であるお金を払わずに手に入れるなんて最低よ」

 

 

 ユニはそう言いながら腕を組んで憤りをあらわにする。

 

ネプギアは少し悲しい顔と声で、「クリエイターさんも人間だからお金が入らないと、ご飯が食べられなくて困っちゃうの」と言う。

 

ロムとラムはネプギアとユニの言うことを理解できているようで、うんうんとしきりに頷く。

 

ネプギアはそんな二人を見ながら、「クリエイターさんもそれで元気がなくなっちゃって面白いゲームが作れなくなっちゃうの」と説明を続ける。

 

更に、「それによって、面白いゲームがなくなってゲイムギョウ界全体が衰退しちゃうんだよ」と続けて説明する。

 

 

 ユニは憤慨するように軽く右手で机をバンと叩くと、「要するに、悪貨が良貨を駆逐するってヤツよ」と言い放つ。

 

続けて、「悪くて能力のないマジェコン信仰者がルールを破って善良で優秀なクリエイター達に迷惑を掛けて滅ぼそうとしてるのよ」と言い捨てる。

 

ネプギアがあごに右手の人差し指を当てながら、「元は悪い人じゃない人がコピーツールの誘惑に負けて悪い人になっちゃうのも問題だよね」と言う。

 

ユニはうなずくと、「そうね。特に何も知らない子供を標的にするのは最悪よね」と答える。

 

ロムとラムはネプギアとユニの説明に納得したようで、「じゃあ、わたし達女神は違法コピーをやっつけるのにもがんばるのね」と力強く言う。

 

ロムも、「がんばる(ぐっ)」と言いながら二人とも胸の前で両手でガッツポーズをする。

 

ネプギアはその二人の姿を心強く思う。そして、「そうだね。一緒にがんばろうね」と言うと本の続きを読む。

 

 

「ルウィーの危機にプラネテューヌの女神様達とピジョンの女神様達が助けにきました」

 

 

 ラムは嬉しそうに、「戦争してても、こういう時はちゃんと協力できるのね」と言うと、「よかった(ほっ)」とロムも安堵のため息をつく。

 

 

「ルウィーの女神様の姉妹、ピジョンの女神様の姉妹、そしてプラネテューヌの三姉妹の女神様、七人の女神様が犯罪神と激しい戦いを繰り広げました」

 

 

 ネプギアがページをめくると、魔女と戦う七人の女性が描かれていた。

 

 

「七人の女神様達は協力して犯罪神を封印しましたが、戦いの中でピジョンの女神様二人とも死んでしまい、その結果ピジョンは滅びてしまいました」

 

 

 ネプギアが続きを読むと、「やっぱり、犯罪神に滅ぼされた国っていうのもあるのね」とユニが深刻な顔で呟く。

 

 

「プラネテューヌも長女と次女を失い、傷ついた三女の女神様だけが残され、ルウィーの女神様達も深い傷を負ってしまいました」

 

 

 ネプギアは更に読み続ける。

 

ユニは少し心配そうな顔で、「勝ったはいいけど、ゲイムギョウ界全体が満身創痍ね」とつぶやく。

 

 

「それにより、残されたプラネテューヌもルウィーもモンスターから国を守ることが難しくなってしまいました。ここでゲイムギョウ界に転換期が訪れます」

 

 

 ラムが首を傾げながら、「転換期ってなんだっけ? 最近聞いたような気がするんだけど」と言うと、「……病気の名前で聞いたことがあるかも」とロムが自信なさそうに言う。

 

 

「その、【てんかん】じゃないわよ。転換期は人々が新しい女神を望んで女神や国がそれに応える時期のことを言うのよ」

 

 

 ユニがそう言うと、ネプギアは、「お姉ちゃん達はネクストフォームに進化する形で、みんなの期待に応えたけど昔は違ったみたいだね」と言いながら本の続きを読む。

 

【転換期】とは人々が今まで信仰して女神ではなく新しい女神を求めるようになる時期のことで、既存の女神に対するネガティブな嘘やデマが出回る。

 

ネガティブな嘘やデマというのは、既存の女神に対する力不足を指摘することが多い。

 

この場合は犯罪神による大きな被害を受けた国と女神がこの先国を守ることが難しいのではないか? という疑問の声から人々の不安や不満が噴出したのだろう。

 

 

「人々は犯罪神のような脅威に負けないように、今の女神様より更に強い女神の誕生を願いました。その願いにより新しい女神様が誕生しました」

 

 

 ネプギアは絵本を読み続ける。

 

女神は人々の信仰心によって生まれる。

 

その為、人々の強い願いがあれば新しい女神が生まれるのだ。

 

とは言え、既存の女神が大きな実績を上げて、【この国に新しい女神が生まれて欲しい】という願いが無いと後継者となる女神は生まれない。

 

例えばピジョンはルウィーに大きくシェアを奪われた末に犯罪神との戦いで姉妹共に命を落としてしまった。

 

それにより、国民の多くがルウィーやプラネテューヌに宗旨替えをしてしまいピジョンに対する信仰が足りず新しい女神が生まれず滅んでしまったのだ。

 

無情とも言えるかもしれないが、これがゲイムギョウ界で女神が生まれる法則の一つである。

 

 

「プラネテューヌの女神様もルウィーの女神様も、素直に国民の願いにより生まれた新しい女神様に国を譲り引退し、新しい女神様が国を継ぎました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「引退した女神様ってどうなるの?」とラムが質問する。

 

ユニが、「どこかで隠居してるって聞いたことがあるわ」と答えると、今度はロムが、「いんきょ?」と首を傾げる。

 

今度はネプギアが、「若い世代に仕事を譲って、のんびりと暮らすことだよ」と答える。

 

 

 ゲイムギョウ界の女神は国民の願いにより誕生し、人々を守り導き信仰を受け、転換期までに次の女神が生まれるだけの実績を上げる。

 

そして新しい女神に国を譲るというサイクルを繰り返し長年に渡り国を維持してきた。

 

引退した女神はユニの言う通りどこかで隠居しており、人々の心に残った偉大な業績がシェアエネルギーとなって今も生き続けているらしい。

 

 

 ネプギアはロムとラムが納得したのを見て絵本を読み続ける。

 

 

「それと同じ頃に一つのメーカーが新しい女神様を生み出し【エディン】という国を建てます」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「あれ? それもどこかで聞いたことがあるような……」とラムが首をひねる。

 

ロムが少し自信なさそうに、「……ピーシェちゃんの昔の国……だったと思う」とラムの疑問に答える。

 

ラムはまた右の手のひらを左手のこぶしでポンと叩くと、「すっごーい。さすがはロムちゃんね」とロムを褒める。

 

ネプギアも、「うん、すごい、すごい」と右手でロムも頭をなでてあげると、「えへへ(てれてれ)」とロムは気持ちよさそうに目を細める。

 

以前にも書いたが、神次元は超次元とよく似たところがあり、存在する人の名前と容姿や国の名前が同じことも珍しくない。

 

 

 女神が生まれるもう一つの法則に、エディンのようなメーカーや他のギョウ界から来た団体が技術と資金を使って新しいゲーム機と女神を生み出すことがある。

 

ユニのラステイションも元々は別のギョウ界の巨大な組織がゲイムギョウ界で新しい国を興したものである。

 

現在のゲイムギョウ界にある四つの国、プラネテューヌとルウィーは古くからゲイムギョウ界にある国。

 

ラステイションとリーンボックスは他のギョウ界の大組織がゲイムギョウ界に進出して新しい国を興して出来たものだ。

 

ネプギアは絵本のページをめくるとそこには戦う三人の女神の姿が描かれていた。

 

 

「新しい女神様達も戦いが好きで、様々なメーカーを巻き込んで第二次ハード戦争を始めてしまいました。ルウィーが優位ながらも他の二国も互いに譲らず戦いは長きに渡りました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「やっぱり、この時期はルウィーが強いわね」とユニが納得するように頷く。

 

ネプギアは更に、「ここでゲイムギョウ界二つ目の革命、【格闘ゲーム革命】がおこります。人々はゲームセンターで格闘ゲームに熱狂しました」と読み上げる。

 

すると、「……格闘ゲーム、ちょっと苦手……」とロムがしょんぼりしたようと言うと、反対にラムは、「わたしは得意よ」と胸をはる。

 

 

 格闘ゲームとは格闘技などを身に付けたキャラを操作し、主に一対一で戦い、攻撃とガードを駆使して相手を倒すことを目的としたゲーム。

 

対人戦で反応速度などの技術と、駆け引きなどの知恵を競い合うことで大きな人気を博した。

 

この格闘ゲーム革命により、ゲイムギョウ界で対人戦は強く意識されるようになる。

 

対人戦自体は、スパイ同士が戦ったり、電車で旅行しながら貧乏神から逃げるゲームなどがあったが、格闘ゲームのような一瞬の攻防で戦い続けるものは珍しくあった。

 

格闘ゲーム自体は長いブームを経た後に衰退してしまうが、対人戦の概要は今も強くゲイムギョウ界に根付いている。

 

 

 ネプギアは少し渋い顔で、「私は格闘ゲームは少し苦手かな」とロムに同意する。

 

ユニが少し呆れたように、「アンタは対人ゲームは総じて苦手よね」と言い、「協力したり、対人でもチーム組んで戦うゲームは妙に上手いのにね」と今度は不思議そうに言う。

 

ラムも、「うん! ネプギアは【戦闘の絆】とか【ヴァーサスシリーズ】だと凄く上手いよね」と言い、ロムも、「わたしもいつも助けてもらってる」と嬉しそうに言う。

 

 

 【戦闘の絆】や【ヴァーサスシリーズ】というのは現実世界やアニメギョウ界で四十年以上続いている人気ロボットアニメシリーズのゲーム版だ。

 

勧善懲悪モノではなく、未来の人類が様々な理由で人類同士の戦争をする話で、その戦争に巨大ロボットが出て来るのだ。

 

メカ以外にストーリーも評価が高く、大人から子供まで人気があり、更に女性ファンも多いロボットアニメの金字塔である。

 

ゲイムギョウ界もその影響を強く受けて、G.C.初期から多種多様なゲームが作られており、最近はチームを組んで敵味方に分かれて戦う作品が流行っている。

 

ネプギア達はこのチームを組んで戦うゲームをよく一緒にプレイしている。

 

ユニ達はネプギアは一対一の対戦ゲームは強くないが、仲間と協力するゲームになると急に強くなると評価しているのである。

 

ネプギアはSFなどのロボットアニメが好きで、特にこのシリーズは大好きである。

 

ちなみにメカオタの少年が戦いの中で一人前の男性に成長していくという初代主人公にシンパシーを感じるので好きらしい。

 

 

 ネプギアは、「あはは、何でだろうね。みんなと一緒だと力が湧いてくるのかな?」と恥ずかしそうに言うと、「じゃあ、続きを読むね」と絵本を読もうとする。

 

 

くいくいっ……

 

 

 ネプギアはそこでスカートが引っ張られていることに気付く。

 

 

「ん? プラエちゃん、何かな?」

 

 

 ネプギアは優しく落ち着いた声でプラエに声を掛けると、「ネプギアお姉さんは格闘ゲーム苦手なの?」とプラエが質問してくる。

 

 

「うん、そうなんだ。お姉ちゃんにも弱すぎて面白くないって言われちゃって……」

 

 

 ネプギアが恥ずかしそうに言うと、「プラエ、格闘ゲーム凄く得意だから教えてあげる!」とプラエが元気よく言う。

 

 

「え? そうなの?」

 

 

 ネプギアはそう言って意外そうな顔をする。

 

プラエの見た目と性格が格闘ゲームが得意そうには見えなかったからだ。

 

 

「プラエが教えれば、ネプテューヌさんなんかに負けないよ!」

 

 

 プラエが興奮気味にそう言うと、「そっか、ありがとうプラエちゃん。その時はよろしくね」とネプギアが左手でプラエの頭を撫でながら言う。

 

 

「うんっ! プラエに任せて」

 

(なんだか凄くイキイキしてる。よっぽど格闘ゲームが好きなんだ)

 

 

 プラエのその姿にネプギアは格闘ゲームが本当に好きなんだなと思った。

 

 

「ネプギアお姉さん、続き読んで」

 

 

 プラエが少し落ち着いたふうに言うと、「うん」とネプギアが頷き続きを読み始める。

 

 

「しかし、格闘ゲームはその時代の家庭用ゲーム機で再現することが難しいものでした。そこで格闘ゲームに特化した新たなる女神様と国の【ネオジェネシス】が生まれました」

 

 

 そこでロムが、「また知らない国が出て来た……」と少し困った顔をし、ラムも首を傾げて、「ねおじゃねしすってどんな国?」と質問する。

 

ユニが、「ネプギアの言った通り格闘ゲームに特化した国よ。特に2D格闘ゲームにおいてかなりシェアを独占していたそうよ」と答える。

 

ネプギアも、「格闘ゲームのブームの時には凄い発展をして、専用のゲームセンターや巨大なアミューズメントパークとかも経営してたんだって」と付け加える。

 

 

「でも、今は無いわよね」

 

 

 ネプギアとユニの高い評価に対して、ラムがあっさりと斬り捨てると、「うん、わたしも知らなかった」とロムが頷く。

 

ネプギアは右手をあごに当てて少し考え込むと、「ゲイムギョウ界には色々なゲームがあるからね。2D格闘ゲームだけでやっていくのは苦しかったのかな」と答える。

 

ユニもネプギアの言葉に軽く頷くと、「そうね。特化って言うのはハマれば凄いけど、それだけでやっていけるほどゲイムギョウ界のユーザーは甘くないわ」と同意する。

 

更に、「稼いだ資金を他のジャンルの技術開発に充てていれば結果は違ったかもしれないわね」と言う。

 

今度はネプギアがユニの言葉に頷いて、「うん、そうだね」と言うと、「どういうこと?」とラムが首を傾げる。

 

ネプギアが、「ルウィーだって、ユーザーさんが飽きないように色々な種類のゲームを作るでしょ?」とロムとラムに向けて言う。 

 

ネプギアとユニの説明に、「うん、マーリョも色々してる」とロムが頷く。

 

ラムも腕組みしながら、「マーリョって本当に色々してるわよね。何回もお姫様助けに行ったり、お医者さんしたり、テニスやゴルフもするし、カートにも乗るわね」と感心する。

 

ラムの言う通り、ルウィーの看板キャラクターであるマーリョはG.C.初期から約二千年以上様々な種類のゲームに出演している。

 

 

「じゃあ、色々なゲームをガンガン作ればいいのね」

 

 

 ラムが自信満々に言うが、「それは少し違うかな」とネプギアがやんわりとダメ出しをしてしまう。

 

ラムは頬を膨らませると、「えー? なんでよー」と不満そうに言う。

 

ネプギアは右手を唇に当てて少し考え込むと、「ロムちゃん、ラムちゃん、美味しいご飯を作るコツって何だと思う?」とロムとラムに質問する。

 

ラムは、「え?」と何で料理の話? といった感じで不思議そうに首を傾げるが、ロムが、「……愛情(てれてれ)」と素直に答えるので、自分も真面目に考えることにする。

 

ネプギアはロムに向けて少し残念そうな顔をすると、「愛情は大切だけど、コツとは少し違うかな」とロムが落ち込まないよう優しい声で言う。

 

ロムは少し残念そうな顔をするが、「ふみ~~(しゅん)」と唸るだけで、そこまでは落ち込んでいないようだ。

 

その時にラムが思いついたように左手を上げると、「そんなの簡単よ。食べたい時に食べたいものを作ればいいのよ」と自信満々に答える。

 

ユニは、「はぁ……」と溜息を吐くと、「そんな単純な答えな訳ないでしょ」と呆れるが、「おしい」とネプギアが言うので、「えっ!?」と驚いてしまう。

 

ラムは、「やったー!」と喜ぶと、「じゃあ、次はユニちゃんね」とユニの方を見る。

 

ユニは疑問顔で、「アタシも答えるの?」と首を傾げるが、「ユニちゃんなら分かると思うよ」とネプギアが言うので少し考えてみる。

 

数十秒考えたユニが、右手のこぶしで左の手のひらをポンと叩くと、「なるほどね。わかったわ」と言う。ネプギアが、「それじゃあ、ユニちゃん答えは?」とネプギアが尋ねる。

 

ユニは自信満々に、「食べる人が食べたいものを、出来立てで用意するのよ」と答える。

 

ネプギアは拍手すると、「当たり、さすがはユニちゃん」と嬉しそうに言う。

 

 

 前述したようにネプギアはユニを高く評価している。その上で尊敬し、友人としてとても好いている

 

ユニも口には出さないが同じように、ネプギアを高く評価し尊敬し、そして好いている。

 

二人は互いを尊敬しあい、時に応じて協力しあい競争し互いを高めあっている。

 

その為にネプギアはロムとラムに自分の言いたいことを伝える為に、ユニを巻き込むような行動をしたのだ。

 

 

「つまり、ゲームを作るのも料理と同じで、ユーザーの求めているものを出来立てで提供するのよ」

 

 

 ユニは、ネプギアが突然料理の話を持ち出したネプギアの真意をロムとラムに伝えると、「「おお~~」」とまたもロムとラムは声を揃えて感心をする。

 

ネプギアが、「ユーザーさんからのアンケートとかで市場調査して、作るゲームを決めて、そのゲームの流行が終わらない内に販売するんだよ」と言う。

 

更に、「要はむやみやたらにガンガン作るのじゃなくて、考えて作れってことよ」とユニが続ける。

 

ロムとラムは、「「なるほどー」」とまた声を揃えて感心すると、「流行が終わったゲームは冷めた料理なの?」とロムが質問する。

 

ユニは、「そうよ。客に冷めた料理を出すマヌケな料理屋なんて、すぐに潰れちゃうわ。ネオジェネシスが今無い理由は恐らくこの辺りね」と答える。

 

今度はラムが、「じゃあ、移植やリメイクは?」と質問する。

 

ネプギアが、「移植やリメイクもユーザーからの熱望があるようなら作るべきだろうけど、あまり作り過ぎるのはよくないかも」と答える。

 

ラムは不思議そうに、「なんで?」と首を傾げる。

 

ネプギアは、「移植とかは昔の料理を作り直すだけだから、懐かしい味はするけど、みんな散々食べた味だからね。やり過ぎると本当に飽きちゃうよ」と再び答える。

 

ロムが少し残念そうな顔で、「ゲーム作るの難しいんだね」と言うと、「ロムちゃんもラムちゃんも勉強していけば自然と分かるようになるよ」とネプギアが慰める。

 

ネプギアの慰めを受けたラムは自信を取り戻し、「そうよね。勉強して美味しい料理になるゲームを作るわ!」と左手を高々と上げる。

 

ロムも頷くと、「おー!」とラムと一緒に右手を上げる。

 

ネプギアはその可愛らしい姿に【くすり】と微笑むと、「それじゃあ、続きを読むね」と絵本に目を落とす。

 

 

「ネオジェネシスが乱入し、四国での争いとなった第二次ハード戦争は熾烈を極めましたが、最終的にルウィーが勝者となりました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「いえーい! ルウィーがナンバーワンよ!」ラムはルウィーが勝利したことを素直にバンザイで喜ぶ。

 

ロムも、「わーい(ぱちぱちぱち)」と小さく拍手をして喜んでいる。

 

 

 しかしネプギアは少し不満そうに、「落ち物パズルについては書いてないんだ……」と肩を落とす。

 

向かいに座るユニは、「まぁ、格ゲーに比べれば影が薄いから仕方ないわよ」と慰めるように言う。

 

落ち物パズルとは、上から落ちてくるブロック等を並べルールに従って消していくゲームで、これも対人戦が盛り上がり人気を集めた。

 

しかし、格闘ゲームに比べると影の薄さは否めない。

 

ネプギアはこの落ち者パズルが大好きなので、本に載っていないことで少し残念な気持ちになってしまったようだ。

 

 

「そういえば、対人ゲームでも落ち物パズルは鬼のように強いわよねアンタ」

 

 

 ユニが思いついたように言う。

 

ネプギアは落ち物パズルが好きなだけなだけでなく、非常に上手い。

 

 

「ああいう何かを作り上げて行って臨機応変に対応するってロジックはゲームに関わらず好きだからかかな? ちょっとプログラミングに似てるし」

 

 

 ネプギアが答えると、「ああ、確かに。アンタ好きよねそういうの」とユニが納得する。

 

メカやコンピューターが好きなネプギアは何かを組み上げるという行為が好きで、パズルゲームもその一環となっているようだ。

 

 

「ネギちゃん、音ゲーは?」

 

 

 ミクの質問に、「音ゲーは次の世代かな?」とネプギアが答えると続いてユニが、「でも、音ゲーはゲーセンの方がメインよね」と言う。

 

 

「専用コントローラーは場所取るし、そのゲームでしか使えないから、ゲームセンターに行った方がお得感があるよね」

 

 

 ネプギアがユニに同意すると、「それに、ミクがゲイムギョウ界で活躍するのはアタシ達の世代だから大分先の話よ」とユニが言う。

 

 

「そっか。残念」

 

 

 ミクの質問が終わったのを確認して、ネプギアは本の続きを読む。

 

 

「第二次ハード戦争が終わるとゲイムギョウ界に二度目の転換期が訪れました。プラネテューヌとエディンとネオジェネシスの三つの国はルウィーに勝てる女神の誕生を強く願いました」

 

 

 ユニは腕を組んで、「国と国民が打倒ルウィーに燃えたってことね」と言う。

 

それに対して、「そうだね。それと、この時期だともっと質の高い対戦ゲームが家でやりたいってこともあるかも」とネプギアが答える。

 

ネプギアの言う通り、この時期は家庭用ゲーム機とゲームセンターの筐体の能力の差が大きく画像や音声が雲泥の差であった。

 

それを可能にしたのがネオジェネシスではあるのだが、ネオジェネシスはハードが高額なこととソフトのラインナップが格闘ゲームのみというネックがあった。

 

 

「プラネテューヌとエディンとネオジェネシスの三つの国はROMカセットに代わる技術、安価で高性能なCDソフトの研究を進めつつ、新たな女神様への世代交代を行いました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「ようやくCDソフトの登場ね」とユニが腕を組みながら言い、「これからはラステイションの時代よ」と、【ふふっ】と楽しそうに笑う。

 

 

「一方、ルウィーは勝利の余韻に浸り転換期が起こらず、今の女神様が治め続けました」

 

 

 ネプギアが読むのを聞きながら、「そうやってられるのも今のうちよ」とユニが先ほどと同じように笑う。

 

 

「そして三つの国が新しい女神様でルウィーに反撃をしようとしたところに、またも新しい国が四つも現れたのです」

 

 

 ネプギアが更に読み続けると、「「四つも?」」とロムとラムが声を揃えて驚く。

 

 

「同じくCDソフトを開発した【ラステイション】と【サンダイオー】に復興したタリとカルディアです」

 

 

 続きを読むネプギア。

 

タリやカルディアのように過去に滅んだ国も新たな信者や資産を調えて再興することがある。

 

特にカルディアはゲイムギョウ界外に巨大な母体があり、その組織が前述したロボットアニメのゲームや他にも多くのアニメのゲームを作る権利を持っている。

 

その上にモケイギョウ界などに強大な勢力を築いている。

 

その為カルディアは滅んでも、メーカーとしてロボットアニメのゲームなどで力を蓄え、更に別のギョウ界からの援助で再び国を興すということを繰り返している。

 

しかし、現在のゲイムギョウ界ではカルディアは滅んでおり再興の気配は見せない。

 

今はゲイムギョウ界の老舗メーカーと合併して、ロボットアニメゲームの他も色々なゲームを作っており、今はアイドル育成ゲームが特に勢いがある。

 

 

「ふふん、ようやくラステイションの登場ね」

 

 

 ユニは先程言ったラステイションの登場の予感が的中すると、嬉しそうに笑いながら右手をあごに当てる。

 

 

「八国による群雄割拠の戦い、これが第三次ハード戦争となります」

 

 

 ネプギアが絵本を読み続けると、「ぐんゆーかっきょってなに?」ラムが首を傾げる。

 

ユニはラムの方を向くと、「沢山の実力者たちが、競い合っている状態のことよ」と答える。

 

 

「お姉ちゃん達もぐんゆーかっきょ?」

 

 

 今度はロムが質問すると、「お姉ちゃん達は四人で競い合ってるから、この第三次ハード戦争に比べると群雄割拠ではないかもね」とネプギアが質問に答えると続きを読み始める。

 

 

「この戦争からゲイムギョウ界全体に大きな変化が起こります。ローポリゴンによる三次元世界への移行です」

 

 

 そこでネプギアは自分の右腕の袖が引っ張られていることに気付く、ロムが【くいっくいっ】と可愛らしく引っ張っているのだ。

 

 

「なあに? ロムちゃん」

 

 

 ネプギアは優しくロムに問いかけると、ロムは、「ローポリゴンってなに?」と質問する。

 

たまにはラムからではなく自分から質問したかったのだろう。

 

 

「ポリゴンっていうのは三角形とか四角形みたいな多角形のことで、三次元を表現するのに使われるてるものなの」

 

 

 ネプギアは両手の人差し指を使って、宙に三角形や四角形を描きながら説明を始める。

 

 

「ポリゴンの数が増えるほど細かいな表現ができるようになるんだけど、ローポリゴンっていうのは少ないポリゴン数で作られた物のことを言うんだよ」

 

 

 ネプギアはそう言いながら両手の人差し指で自分の顔の周囲を角ばったように線を引きながら「たまにすごくカクカクして角ばった人とかいるでしょ?」と言う。

 

ネプギアの問いかけに、「いるいるー! カクカクしてて面白いよねー!」とラムが答え、「ああいうのが、その時代の名残。ローポリゴンよ」とユニが付け加える。

 

ロムが、「ああいうのが、ローポリゴンなんだね」と納得をする。

 

ネプギアはロムとラムが納得したのを確認するとページをめくり絵本を読み進める。

 

 

「まずはプラネテューヌがポリゴンを使った格闘ゲーム【バーチャバトラー】でスタートダッシュをかけました」

 

 

 ネプギアが少し嬉しそうに声を弾ませる、ここまでイマイチ良いところがなかったプラネテューヌの活躍が嬉しいようだ。

 

 

「新世界である三次元と格闘ゲームの組み合わせは大人気を呼び、これにより他の国に大きく差をつけました」

 

 

 ネプギアの声にユニが関心したように腕組みをすると、「3D格闘はプラネテューヌが先駆けだからね」と言う。

 

それに対して、「先進的な技術ではプラネテューヌは強いよ」とネプギアが自分の国を自慢するかのように言う。

 

ネプギアの言う通り、プラネテューヌは常に先を見据えた技術を開発しゲイムギョウ界一の先進国家と呼ばれている。

 

 

「その勢いでプラネテューヌの女神様はサンダイオーとタリとカルディアの三国もの女神様を一挙に倒してしまいました」

 

 

 ネプギアが嬉しそうに、「プラネテューヌ大活躍だね」と言うと、「ラステイションの活躍はまだなの?」とユニが少し不満そうに言う。

 

ネプギアは、「えーと……次のページかな?」と言うとページをめくり、続きを読み始める。

 

 

「サンダイオーとタリは滅びてしまいましたが、カルディアは何とか滅びずに済みました。この大勝利によりプラネテューヌは大きくリードしました」

 

 

 ネプギアの読むのを聞いたロムが、「サンダイオーって出てきてすぐに負けちゃうなんて少しかわいそうだね」と言う。

 

ラムは、「ぽっと出が勝てるほどゲイムギョウ界は甘くないのよ」と堂々と言う。

 

その姿はやはり歴史あるルウィーへの自信があるようだ。

 

 

「しかし、そのすぐ後ろには巧みな交渉術で色々なメーカーの協力をとりつけたラステイションがたくさんのゲームソフトを出して後を追いかけました」

 

 

 ネプギアがそこまで読んだとき、「流石はラステイションね。最初から上位をキープしてるわ」とユニが嬉しそうに言う。

 

彼女もネプギアと同じように自分の国を自慢したいようだった。

 

ラステイションは開国から地道に勢力を伸ばし維持し続けてきた強国である。

 

母体である巨大な組織からのバックアップもあったが、それ以上にラステイションの舵取りが優れていたのだ。

 

現にサンダイオーもラステイションの母体と同じぐらいの大組織からバックアップを受けていたが、あえなく敗れてしまっている。

 

 

「ルウィーだって負けてないわよ」

 

 

 ラムが負けじとそう言うと、ロムも、「負けない(きりっ)」と続く。

 

ルウィーは前述の通りゲイムギョウ界に古くからある歴史ある国家なのだ。

 

自分の国を自慢する四人は自国に対する思い入れは強いようだ。

 

 

「うん、みんなで切磋琢磨していこうね」

 

 

 ネプギアがそう答えると今度はネプギアの左腕の袖が引っ張られていることに気付く。

 

ラムが【ぶんぶん】と上下に思いっきり引っ張っているのだ、どうやらさっきのロムの真似をしたいようだが元気が有り余っているラムにはロムのように大人しくはできないらしい。

 

 

「ラ、ラムちゃん、そんなに引っ張ると服伸びちゃうから……えっと、切磋琢磨のことが分からないのかな?」

 

 

ネプギアは少し慌てながら、ラムの意図を読んだかのように質問すると、ラムは「うん!」と元気よくうなずいて袖を離してくれる。

 

 

「切磋琢磨っていうのはね、仲間が互いに協力したり競ったりして、力や技や知識を高め合うことだよ」

 

 

 ネプギアがそう答えると、「みんなで一緒に強くなろうってこと?」とロムが言うと、「そんなところね」とユニが締めくくる。

 

二人が納得したのを見たネプギアが続きを読む。

 

 

「プラネテューヌとラステイションは新技術の3Dゲームを主力に応酬を繰り返します」

 

 

 ネプギアが絵本のページをめくるとローポリゴンで描かれた様々な物が本一面に描かれていた。

 

 

「巨大な3Dフィールドをロボットが駆け抜けるゲームや飛行機が3Dの大空を飛び回るゲーム。リアルな建物でゾンビや殺人鬼から逃げるゲームや敵を罠に嵌めるゲーム」

 

 

 ネプギアが絵本を読み続ける。

 

 

「3Dになるとゲームの広さが一気に広がるわよね。ラステイションでもロボットのウサギが凄い高さまでジャンプするゲームとか出してたらしいし」

 

 

 ユニはあごに右手を当てながら感心するように言う。

 

ネプギアも同じく感心するように頷くと、「無双系とか狩りゲーも3Dの広さがあってのものだからね」とユニに答える。

 

 

 無双系とはプレイヤーが百人から千人近い敵を薙ぎ倒して行くゲームで、その一騎当千を演じる爽快感は並外れたものだった。

 

狩りゲーとは多彩な攻撃をしてくる強力で巨大なモンスターと広いフィールドで戦うというもので、その迫力と緊張感で人気を博している。

 

どちらも3Dだからこそ出来たゲームと言える。

 

ちなみに、技術力の関係で無双系も狩りゲーも発売されるのは次の世代になるが、3Dゲームの基礎はこの世代で培われている。

 

 

「今までの2Dのゲームに比べて広大なスケールで展開される3Dゲームは人々を驚かせ魅了し、人々はこぞってプラネテューヌとラステイションのゲームを楽しみました」

 

 

 ネプギアの話を大人しく聞いてるロムとラムだが、「……なんかルウィーが置いてけぼり……(しゅん)」とロムが寂しそうに言う。

 

ラムが慌てて、「き、きっとすぐに活躍するわよ」とそれを慰める。

 

現在のロムとラムの言うように、この時期のルウィーは出遅れた感があった。

 

携帯ゲームは独占していたが、据え置き型ではあっという間に時代遅れになりつつあった。

 

前の世代交代はグラフィックやサウンドの強化が主だったが、今回は3D化という大きな変化があった。

 

それにより、人々の関心や信仰はあっという間にプラネテューヌとラステイションに移ってしまったのだ。

 

 

「プラネテューヌと拮抗するラステイションに好機が訪れます。ラステイションで発売された【ときめきメモリーR】から発生した三つ目の革命、【美少女ゲーム革命】です」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、ラムが腕を組んで、「ギャルゲーってルウィーにはないよね」と言うとロムは首を傾げながら、「規制が厳しいからってミナちゃんが言ってた」と答える。

 

ギャルゲーというのは主に魅力的な女性が登場することを売り物とするゲーム。

 

育成ゲームやノベルタイプのアドベンチャーゲームなど美少女と疑似的なコミュニケーションするギャルゲーは沢山の男性を魅了した。

 

また美少女だけではなく、逆に主人公が女性で美少年や美青年とコミュニケーションを取る、乙女ゲームというジャンルも同時に生まれた。

 

これによりゲイムギョウ界にも女性ユーザーが増え始めた。

 

 

 伝統を重んじ性教育に厳しいルウィーでは、当時ギャルゲーはふしだらと規制されてしまいこの革命の波に乗らず独自の道を行った。

 

今は多少緩くなってはいるが、それでも他の国に比べれば遥かに厳しい。

 

 

 この美少女ゲーム革命により、今までは男性キャラクターが中心だったゲイムギョウ界に可愛らしい女性キャラクターが急増する。

 

更に今まであったRPGなどにも、ヒロインとの恋愛要素が付きストーリーにも恋愛要素が深く絡むようになってくる。

 

格闘ゲームと同じく長いブームの後に育成やノベルタイプのギャルゲーは衰退するが、先述の通り様々なジャンルのゲームに魅力的な女性が多く出演するようになる。

 

この時代では3Dの技術力が足りず2Dのイラストが主だが、二世代後からは技術も上がり美しい3Dの美男美女が現れる。

 

その美形キャラが華麗に戦ったり歌ったり踊ったりなどしてプレイヤーの目を楽しませている。

 

また、この革命はゲイムギョウ界だけに留まらず萌えという文化となり様々な世界に大きな影響を与えることになる。

 

 

「ときめきメモリーRは、元々はエディンで発売したものだったのですが、革命が起きたのはラステイションでした」

 

 

 当時はエディンがゲームによる萌えの文化の先駆け者であったが、先述のようにたくさんのメーカーの協力を得たラステイションはその技術を巧みに吸収してしまう。

 

 

「その為、エディンのギャルゲーのシェアはラステイションに取られてしまい、エディンの女神様はラステイションの女神様に負けてしまいました」

 

 

 ネプギアが本の続きを読むと、ユニは右手をあごに当てながら、「ギャルゲーはラステイションとプラネテューヌの二国の争いよね」と言う。

 

ネプギアも、「そうだね。本にもそう書いてあるよ」と頷いて絵本の続きを読む。

 

 

「これによりラステイションがプラネテューヌに追い抜きましたが、プラネテューヌも負けじとギャルゲーを取り入れて後を追いかけます」

 

 

 ネプギアが本を読み続けると、「もーーー! プラネテューヌとラステイションばっかりー! ルウィーは?」とラムが両手を上げて不満そうに頬を膨らませる。

 

先程はロムを慰めていたが、あまり気の長くないラムは堪忍袋の緒が切れてしまったようだ。

 

ネプギアが優しい声で、「もうちょっと待ってね」と上手くラムをあやす。

 

ユニも少し優し気な声で、「この時期は時代の流れが早すぎて、流石のルウィーも時代の波に乗り遅れていたのよ」と慰めるように言う。

 

プラエとミクはネプギアの話を聞きながら、話にのめり込んでいく女神候補生達を楽しそうに見ていた。

 

ネプギアはプラエとミクも真剣に話を聞いているのを確認すると続きを読み始める。

 

 

「他の国はこの二国の勢いには及びませんでした」

 

 

 ネプギアがページをめくると挫折したような姿の女神達が描かれていた。

 

 

「カルディアは新しい女神様を迎えて再興しましたがすぐに滅びてしまい、ネオジェネシスは格闘ゲームの衰退と同時に勢いを失い、ルウィーも国を守るだけで精一杯でした」

 

 

 ラムは少し悲しそうな声で、「うぅ~、ユニちゃんの言う通りだ……ルウィーが苦戦しているー……」と呟く。

 

続けてロムが、「どんどん国が少なくなっていくね。もう半分しか残ってないよ」と言う。

 

ラムは気を取り直して、「こーゆーの【ジンギスカンな戦い】って言うのよね」と得意げに答える。

 

それを聞いたユニは、「それは【仁義なき戦い】よ」と呆れながら訂正を加える。

 

更にネプギアが、「【仁義】って言うのは思いやりとか情けとかの道徳的な意味だから、仁義なき戦いって言うのはそれを無視したルール無用の争いのこと言うんだよ」と説明をする。

 

 

「凄くて怖い戦いのこと言うんじゃないの?」

 

 

 ラムが質問すると、「ヤクザとか怖い人の戦いの映画でよく使われるキャッチコピーだから、そういうイメージがあるのかもね」とネプギアが答える。

 

そこにロムが、「わたし達も仁義なき戦いになったりする? (おろおろ)」と不安そうに質問する。

 

ユニは落ち着いた声で、「アタシやお姉ちゃん達はちゃんとルールとか道徳を守って競ってるから、そんなことにはならないわよ」と答える。

 

ロムが、「よかった(ほっ)」と安心したのを見てネプギアが本の続きを読む。

 

 

「更にラステイションに追い風が吹きます。大物RPGの【ファイナリストファンタジア】が今までのルウィーではなくラステイションのゲームで発売されることになりました」

 

 

 それを聞いたラムは両手を上げて、「えー? なんでー!」と憤慨しながら抗議の声を上げる。

 

ユニは対照的に落ち着いて腕を組んで、「技術の差ね。国全体が転換期を甘く見たのが敗因だったのよ」と言う。

 

ネプギアも、「そうだね。メーカーさんも勢いのあるハードで新作を出したいだろうし。それにこの本にも似たようなことが書いてあるよ」と言って続きを読む。

 

 

「プラネテューヌとラステイションの台頭に危機感を覚えたルウィーにもようやく転換期を迎えて、新しい女神様とハードを生み出しましたが、転換期が遅すぎたのです」

 

 

 ロムが首を傾げながら、「遅すぎたから腐っちゃったの?」と言うと、「それは早すぎたでしょ……」とユニが呆れた声を出す。

 

ネプギアも苦笑いをしながら、「それに国やハードは腐ったりしないよ」とやんわりと説明してあげる。

 

早すぎて腐るというのは有名なアニメの台詞で、パロディなどで色々と使われている。

 

 

「転換期が遅すぎたからどうなったの?」

 

 

 今度はラムが質問すると、「それはこれから読む続きに書いてあるよ」とネプギアが答えて、絵本の続きを読み始める。

 

 

「既にゲイムギョウ界はプラネテューヌとラステイションが勢力を持ってしまい、ほとんどのメーカーがルウィーを去ってしまったのです」

 

 

 ネプギアが続きを読むと、ロムは「がっかり(しょぼん)」と肩を落としてしまう。

 

ラムは頬を膨らませながら、「なによー。冷たいわねー!」とルウィーを去ったメーカー達に抗議の声を上げる。

 

 

「メーカーが冷たい訳じゃないわ。ルウィーの転換期が遅すぎたって本にも書いてあるでしょ?」

 

 

 ユニが憤慨するラムに冷静に声を掛ける。

 

ネプギアも落ち着いた声で、「メーカーさんや技術者さんもやるなら性能の高いハードで、今までにない新しいことをしてユーザーさんの関心を得たいんだよ」と付け加える。

 

それでも不満そうな顔をするラムに、「さっきの料理の話にすれば、料理屋が冬になっても夏物メニュー続けていれば、お客も離れちゃうし、店員も辞めちゃうわ」とユニが言う。

 

更にネプギアが、「それに時代の流れが早くなりすぎてたんだよ。ユニちゃんの言い方で言えば、お店側が気付かない内に冬になってたって感じかな」と付け加える。

 

 

「まぁ、一番の要因はラステイションの技術力の高さとメーカー達との交渉術の上手さでしょうけどね」

 

 

 ユニが腕を組んで得意気に鼻を【フン】と鳴らすと、「むぅ~~! くーやーしーい!!」とラムが両手をバタバタさせながら暴れる。

 

ロムは祈るように両手を組んで、「ユニちゃんがいじめる……(うるうる)」と目を潤ませる。

 

ネプギアは、「はぁ……」と溜息を吐き、「ユニちゃん、大人げないよ」と呆れてしまう。

 

ユニは、「ごめん。ラステイションの活躍が嬉しくてつい……」と少しバツの悪そうな顔で右手の人差し指で右頬を掻く。

 

 

 ネプギアは絵本を机の上に置くとロムとラムに手を伸ばし、右手でロム、左手でラムの頭を抱きかかえると胸元に寄せる。

 

ネプギアが、「ごめんねー。ユニちゃんが意地悪だったねー」と子供をあやすように優しい声で言う。

 

ロムとラムはネプギアにされるままに彼女の胸に顔をうずめると、二人の顔に柔らかいネプギアの胸の感触が当たり、ネプギアのライラックの香りが二人を包む。

 

ネプギア胸は78のCカップと特別大きい訳ではないが、幼いロムとラムには十分な大きさだった。

 

 

「よしよし……」

 

 

 ロムとラムの頭を優しく撫でるネプギア。

 

やや内気で恥ずかしがり屋のネプギアとしては同性の年下とはいえ胸に触れられるのに抵抗が無い訳ではないが、悲しんでいる子供を癒す方が優先である。

 

以前に書いたが彼女には神次元で子育ての経験があり、こうすれば大抵の子供が落ち着くというのを知っていての行為だった。

 

 

「ほら、ユニちゃん、謝って」

 

 

 ネプギアがやや厳しい口調で言うと、「二人ともごめんね。少し調子に乗り過ぎたわ」とユニが素直かつ丁寧に謝る。

 

更に、「ルウィーはこれだけ劣勢になっても今もあるんだから、地力が凄いんだよ」とネプギアがロムとラムを励ますように力強くフォローする。

 

 

「そうよね! 最後に勝つのはルウィーなんだから」

 

 

 ネプギアの励ましでラムが機嫌を治すと、「うん、そうだね」とロムもそれに続く。

 

二人ともネプギアのフォローで機嫌を直したようだった。

 

 

「それじゃあ、続き読むよ」

 

 

 ネプギアがそう言ってロムとラムの頭から手を放そうとすると、「もう少しー!」とラムが左手でネプギアの左手を掴んで、再び自分の頭に置く。

 

ロムは更にネプギアの胸に顔をうずめると、「ネプギアちゃんのなでなで気持ちいいし、お胸も柔らかい(ふかふか)」と気持ちよさそうにネプギアの胸に顔を擦りつける。

 

ラムも、「わたし、これ好きー!」とネプギアの胸に頬ずりすると、「あんっ……そんなに激しくしちゃダメ」とネプギアが少し色っぽい声でロムとラムを注意する。

 

プラエは指を咥えながら、羨ましそうにロムとラムを見ていた。

 

 

「いつまで甘えてるのよ」

 

 

 ネプギアの向かいに座っているユニが不満顔をしながら呆れた声で言うと、「ユニちゃんもする?」とラムが言い、「すごく気持ちいいよ」とロムも誘ってくる。

 

 

「ええっ!? ゆ、ユニちゃんもしたいの?」

 

 

 ネプギアが驚きの声を上げる。

 

流石に同年代のユニに触られるのは少し恥ずかしいらしい。

 

ネプギアは頬を赤く染めながら、「ゆ、ユニちゃんがどうしてもって言うならいいよ……」と小声で言うと、少し不安そうな顔で、「でも、やさしくしてね?」と付け加える。

 

健全な男子であればネプギアのような清楚な美少女にこんなこと言われてしまえば色々なところが収まらなくなるだろう。

 

 

「そんな訳ないでしょ……」

 

 

 ユニは落ち着いてそう言うと、「ほら、離れてなさい」と右手でラムをネプギアから引きはがし、左手でロムを引きはがす。

 

ラムが口を尖らせて、「むぅ~、ユニちゃんの意地悪~」と言うと、「気持ちよかったのに……(しゅん)」とロムも不満そうに言う。

 

 

「あれ? ユニちゃん、甘えてくれないの?」

 

 

 ネプギアがユニを見ながらやや残念そうに言うと、「アタシがいつ甘えたいって言ったのよ。アンタの早とちりよ」とユニが呆れながら言う。

 

ユニは更に腕を組むと、「女の子がやすやすと胸なんて触らせるものじゃないわよ」とネプギアを軽く注意する。

 

ネプギアはにこやかに微笑むと、「ありがとうユニちゃん。次からは気を付けるね」とお礼を言う。ユニが心配してくれたのが嬉しかったようだ。

 

 

「でも、ユニちゃんならいいって言うのは本当だよ。ユニちゃんが癒してほしかったらいつでも言ってね。私、頑張って癒してあげるから」

 

 

 ネプギアが続けて言うと、ユニは顔を横に逸らして、「見くびらないでよ。アンタに癒してもらう程アタシは弱くないわよ」と素っ気なく言い放つ。

 

正直を言えばネプギアの優しい気遣いが嬉しくはあるのだが、ユニなりのプライドがあり、それをやすやすと認める訳には行かないのだ。

 

ネプギアは少し困った顔で、「けど、ノワールさんにもケイさんにもユニちゃんの事よろしくって言われてるし」と言う。

 

すると、「もぅ……。お姉ちゃんもケイも余計なこと吹きこんで……」とユニが少し不満そうな顔をする。

 

 

「何よりユニちゃんは大事な友達だから、落ち込んでいる時とかあったら力になってあげたいな」

 

 

 ネプギアがユニをウソ偽りの無い純粋な目で見ながら言うと、ユニは少し顔が赤くなるような気がした。ネプギアの真摯な気持ちが素直に嬉しいのだ、

 

 

「わかったわ。なら少しヘコんだことがあったら買い物でも付き合ってよ」

 

 

 ユニは素っ気なく言う。

 

本当は【ありがとう】と言って手を握るなり抱き着くなりしたいぐらいなのだが、前述したように彼女にもプライドがある。

 

 

「うん、わかった。いつでも言ってね」

 

 

 ネプギアがそう言って、ニッコリと微笑む。

 

 

「ネプギアー! 続きー!」

 

 

 二人の話が終わったのを見測ってラムが素早く声を掛けて来る。

 

ロムも上目遣いで、「続き、気になる……(そわそわ)」とネプギアに催促をすると、「ごめんね。今から読むから」とネプギアは本の続きを読みだす。

 

 

「これが決め手となりラステイションはプラネテューヌを引き離し、第三次ハード戦争はラステイションの勝利になりました」

 

 

 ユニが嬉しそうに、「やったわ、流石はラステイションね」と言うと、「ラステイションはやっぱり強いね」とネプギアが素直に称賛する。

 

それに対してユニは、「当り前よ、プラネテューヌには負けられないわ」と声高々に言う。

 

ネプギアがあごに人差し指を当てながら、「プラネテューヌとラステイションのライバル関係はこの頃からあったのかな?」と言う。

 

ラステイションはプラネテューヌをライバル視しており何かと競争したがる。

 

現にユニはネプギアをライバル視しており、ノワールもネプテューヌをライバル視している。

 

実際に第三次ハード戦争でプラネテューヌがラステイションに対抗できなければ、全ゲイムギョウ界がラステイションの勢いに呑まれルウィーですら滅んでいたかもしれない。

 

第三次ハード戦争で後手に回ったルウィーはなかなか反撃の糸口が掴めず、ルウィーが再びゲイムギョウ界のトップ争いに加わるのは第五次ハード戦争まで待つことになる。

 

その間ラステイションに対抗していたのはプラネテューヌであった。

 

その為、ラステイションは長い間競い続けてきたプラネテューヌをライバルとしているのだ。

 

逆にラステイションの躍進がなければ、プラネテューヌがルウィーを抜いて全ゲイムギョウ界を治めていたかもしれない。

 

そう考えて、ラステイションをライバル視するプラネテューヌの国民も多くいる。

 

 

「ラステイションに引き離されてしまったプラネテューヌは反撃をする為に、いち早く転換期を迎えようとしました」

 

 

 ネプギアは絵本を読みながらページをめくる。

 

すると、見覚えのあるオレンジ色の髪をした女性が描かれていた。

 

ネプギアはその絵が多少気になったが、とりあえず絵本の続きを読むことにする。

 

 

「プラネテューヌの全ての人々がラステイションに勝てる女神様の誕生を願います。すると、妄想力という自分の妄想を現実にしてしまうという強力な女神様が生まれました」

 

 

 ネプギアはそこまで読むと何か思いついたように考え込む。

 

するとユニがあごに右手を当てながら、「妄想力って、うずめのこと?」と不思議そうに尋ねる。

 

ネプギアはユニの言葉に小さく頷くと、「多分そうだよ。このことが書いてあるってことは最近の本なのかなこれ?」と答える。

 

 

 【うずめ】とは【天王星うずめ】という名前の女神でネプギア達からすると二世代前のプラネテューヌの女神なのだが、ある事情でネプギアは彼女に出会うことになる。

 

ネプギアはうずめと一緒に行動している内に、超次元の人々が、うずめが女神だった頃の記憶を失い、更に記録までも消失していたことを知る。

 

このことが発覚したのはごく最近のことなので、これが書かれたのが最近なのだとネプギアは推測したようだ。

 

 

「とりあえず、続き読んでみて」

 

 

 ユニがそう言うと、「うん」とネプギアは頷き絵本を読む。

 

 

「更に最先端の技術を駆使してインターネットをゲームに取り入れ、またもプラネテューヌが先行する形で次の大戦、第四次ハード戦争が始まりました」

 

 

 ユニとロムとラムは今まで以上にネプギアの声を真剣に聞いていた。

 

プラエとミクもその空気を感じ取り真剣に聞く。

 

 

「妄想力はとても凄い力でした。その力は封印を解かれた犯罪神をも一人で倒してしまう程でした」

 

 

 それを聞いたラムは、「一人で? 凄いねー」と感心をし、「うずめちゃん、強い」とロムも関心をする。

 

 

「しかし、女神様は妄想力うまくコントロールができず暴走をして、ゲイムギョウ界の破壊を繰り返してしまいます」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「やっぱりそうなっちゃうのね……」とユニが悲しそうな声で言う。

 

ネプギアもロムとラムも同じく悲しい気持ちのようで表情が暗い。

 

うずめと出会ったネプギア達は暴走のことを知っており、当時のうずめがそれに悩んだことを知っているのだ。

 

 

 「更にプラネテューヌのゲームもインターネットはこの頃は技術力不足で回線のスピードや料金に問題が多く、なかなか普及しませんでした」

 

 

 ネプギアが気を取り直して続きを読むと、「この頃は光回線とかないみたいだしね」とユニも気を取り直したようで意見言う。

 

ラムが、「この頃の回線と今の回線ってどれぐらい違うの?」と質問する。

 

 

「この頃の回線との速度差は二十倍以上かな。つまり、今は読み込みが三秒で済むことが一分以上かかっちゃうんだよ」

 

 

 ネプギアが答えると、「それじゃあ、ゲームするの難しいね(こくこく)」とロムが言う。

 

インターネットの回線速度は今の技術でも、まだまだ遅いと言うプレイヤーも多い。

 

特に対戦のアクションゲームともなれば一瞬の遅れが勝敗を分けるし、回線の遅さによるコントロールとのタイムラグが大きなストレスになる。

 

その為に回線速度の遅いプレイヤーとのプレイを断ったりする光景も見られる。

 

この時代では更に遅いので、人々の不満も大きかったのだ。

 

 

「価格も今みたいな安い定額制がなくて大変だったみたいよ」

 

 

 ユニが更に説明すると、「プラネテューヌの技術に時代がついていけなかったんだよね。ブロードバンド時代にならないとインターネットゲームは難しいよ」とネプギアが続ける。

 

 

「ぶろーどばんど?」

 

 

 ロムが首を傾げ、「なにそれ? ブロードソードの仲間?」とラムが質問する。

 

ネプギアはくすっ小さく笑うと、「武器じゃないよ。ブロードバンドは高速で大容量の情報が送受信できる通信網のことを言うんだよ」と質問に答える。

 

 

「時代を待てなかったプラネテューヌの失敗ね」

 

 

 ユニは辛辣な意見を言うが、ネプギアは素直にユニの言葉に頷き、「そうだね。プラネテューヌの技術は凄いけど、もっとよく周りを見ないとね」と言う。

 

 

「プラネテューヌが転換期に失敗し、ルウィーも転換期を迎えられず苦戦しているところに、ラステイションは転換期を無事に向かえ、その差はますます開いてしまいました」

 

 

 ネプギアが本の続きを読むと、「ラステイションは地道で堅実な発展を遂げているわね」とユニが満足そうに頷く。

 

 

「プラネテューヌは妄想力の暴走とゲームの不振で滅亡に危機に陥りましたが、女神様は自らの意思で眠りにつき、別の女神様を生み出すことで何とか滅亡せずに済みました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「うずめはこの時に封印されちゃったんだよね」とラムが悲しそうに言うと、「ゲイムギョウ界の為とは言えやるせないよね」とネプギアが答える。

 

 

「でも、今はうずめちゃんも、元気元気(にこにこ)」

 

 

 ロムが明るい声でそう言うと、「そうね、救い出せてよかったわ」とユニが続けて言う。

 

彼女達の言う通り、当時の天王星うずめは妄想力が制御できず封印されるが、数年前にネプギア達により封印は解かれ今は元気に暮らしている。

 

それにより超次元の人々もうずめのことを思い出したりするようになった。

 

うずめがプラネテューヌを治めていたのはG.C.1955~1988頃まで。

 

今のG.C.2019では当時は子供だった男の子が老人になっていたが、しっかりとうずめのことを覚えていたらしい。

 

 

「この間に、新しい国が現れました」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「リーンボックスかな?」とロムが首を傾げる。

 

 

「前大戦で滅びたカルディアの女神様の妹が携帯ゲーム中心の国を再興しました」

 

 

 ネプギアが続きを読み上げる。

 

 

「このカルディアって国、強くないけどタフねー」

 

 

 ユニの言うように前述した通りカルディアには巨大なバックがいるのでゲイムギョウ界で滅亡と再興を繰り返している。

 

 

「しかし、携帯ゲーム機ではルウィーに敵いませんでした」

 

 

 ネプギアが続きを読むと、「本当に弱い……」とロムが呟く。

 

カルディアは何度も再興はするものの運や実力に恵まれないのか短期で滅びてしまう。

 

 

「携帯ゲームでルウィーに挑戦なんて100万光年早いのよ」

 

 

 ラムが自信満々に言うが、「ラムちゃん、光年は時間じゃなくて距離だよ」とネプギアにツッコミされてしまう。

 

 

「第四次ハード戦争も第三次から引き続きラステイションが有利となります」

 

 

 ネプギアがページをめくると、ノワールによく似た女性が堂々と仁王立ちをしていた。

 

これが当時のラステイションの女神だろう。

 

 

「ネオジェネシスは転換期を迎えることなく滅びてしまい、カルディアは手も足も出ず、プラネテューヌとルウィーは自国の守りで精一杯でした」

 

 

 続きを読むネプギア。

 

それを聞いたユニが、「ラステイション一強ね」と腕を組んで自慢気に言うが、「しかし、ここで事件が起きました」とネプギアが更に続きを読むと、「えっ?」とユニが驚く。

 

 

「なんと、プラネテューヌの女神様が妄想力で倒した筈の犯罪神が蘇ったのです」

 

 

 ネプギアが続きを読むと、「また犯罪神~? せっかくラステイションがイイ感じだったのに」とユニは忌々し気にそう言う。

 

 

「プラネテューヌの女神様、ラステイションの女神様、そしてルウィーの女神様とその妹の四人の女神様が協力して、犯罪神に戦いを挑みました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「あれ? カルディアの女神は?」とラムが首を傾げる。

 

それに対して、「カルディアの女神様は犯罪神との戦いにはついてこれそうもないので置いていきました」とネプギアが読み上げる。

 

 

「どこかの超能力使う武闘家みたいな扱いね……」

 

 

 ユニが哀れそうにそう言う。

 

それを聞いたプラエは不安そうに、「プラエも置いて行かれちゃうのかな……」と言うと、それを聞いたネプギアは左手でプラエの頭を優しく撫でて、「置いて行ったりなんてしないよ。私が守るって約束したじゃない」と安心させる。

 

 

「うん……ありがとう、ネプギアお姉さん」

 

 

 プラエはその行為に安心を覚え、目を閉じて気持ちよさそうにしている。

 

それを確認したネプギアは本の続きを読む。

 

 

「犯罪神は以前に比べて、とてつもなく強くなっており四人の女神様でも歯が立ちません」

 

 

 ネプギアが更に続きを読むと、「ええっ? 犯罪神に負けちゃうの?」ラムが心配そうに言い、「どうしよう(おろおろ)」とロムも困ったようにオロオロする。

 

 

「女神様達は死を覚悟で最後の力を振り絞って、犯罪神を再び封印しようとしました」

 

 

 ネプギアがページをめくると、巨大な犯罪神を囲むように四人の女神が描かれていた。

 

 

「封印は無事に成功しましたが、プラネテューヌの女神様を除く三人の女神様が戦いで倒れ、残ったプラネテューヌの女神様も封印で力を使い果たし死んでしまいました」

 

 

 ネプギアはそこまで読むと、「このプラネテューヌの女神様って多分ウラヌスさんのことだよね」と言うと、「そうね、アタシもそう思うわ」とユニも頷いてそれに答える。

 

ネプギア達はある事件でこのウラヌスの魂と会話したことがある。

 

その時の話と似ていたので、そうではないかとの予想をしたのだった。

 

 

「ねぇ? 女神様が全員死んじゃったよ?」

 

 

 ラムが不安そうに言うと、ロムも「どうなっちゃうの?(おろおろ)」と同じように言い、それを聞いたネプギアは本の続きを読み始める。

 

 

「残ったカルディアは漁夫の利を得たように見えました」

 

 

 ユニが、「そう言えば残ってたわね」と思い出したように言う。

 

 

「そこに新たな国と女神様が現れます、【リーンボックス】です。リーンボックスは瞬く間にカルディアを滅ぼしゲイムギョウ界の覇権を握ってしまいます」

 

 

 ネプギアが本の続きを読むと、ラムが「えー! ベールさん、ずるーい! 菓子屋泥棒!」と抗議の声を上げる。

 

 

「これは昔のリーンボックスの話で、ベールさんは関係ないから……。それと菓子屋泥棒じゃなくて、火事場泥棒ね」

 

 

 ネプギアが丁寧にフォローとツッコミを入れる。

 

ベールとは現在のリーンボックスの女神の名前である。

 

更に続きを読むネプギア。

 

 

「リーンボックスの台頭は続き、女神不在のプラネテューヌ、ラステイション、ルウィーの三国にも手を伸ばしました」

 

 

 ユニは右手をあごに当てながら興味深く、「どうなるのかしら?」と呟き、ロムとラムも興味津々にネプギアの話を聞いている。

 

 

「三つの国はそれぞれの国は教祖が中心となり、国民が一丸となって国を守り続け、女神様の復活を一心に願いしました」

 

 

 ネプギアがページをめくると祈りを捧げる人々が描かれていた。

 

 

「その信仰の心が力となり、それぞれの国に新しい女神様が誕生しました」

 

 

 それを聞いたロムは、「四つの国の女神様が揃った(きらきら)」と目を輝かせて嬉しそうに言う。

 

現在、ネプギア達が住んでいるゲイムギョウ界には四つの国があり、彼女達が住む三つの国とリーンボックスがそれに当たる。

 

馴染みの深い国の女神が揃ったのが嬉しいのだろう。

 

 

「三人の女神様はひとまず協力して、リーンボックスの女神様を倒しました」

 

 

 ネプギアが続きを読むと、「とりあえず、リーンボックスの進行は防げたのね」とユニが少し安心したように言う。

 

更にネプギアが、「しかし、三人の女神様が協力したのはそこまででした」と読むと、「え?」とユニが声を上げる。何か嫌な予感がしていた。

 

 

「女神様達は今までの女神様と同じく自分が一番優れていると言い出し、三人共戦いを始めてしまいました」

 

 

 ネプギアがと読み続けると、ユニは嫌な予感が当たったといわんがばかりに右手で頭を抱える。

 

 

「女神っていつも自分が一番優れているって言いだして戦うわよね……どうしてこうもプライドが高いのかしら……」

 

 

 ユニは本の中の女神達に対して少し呆れた声で言う。 

 

 

「更に転換期を迎え新しい女神様で反撃しようとするリーンボックスを加えて、四国での戦争となり、第五次ハード戦争が始まってしまいました」

 

 

 ネプギアが読み上げるのを聞いたラムは、「五回も戦争するなんて、女神様はみんな戦争が好きなのね」とユニと同じように少し呆れたように言う。

 

 

「まだまだ戦争は続いたみたいだよ」

 

 

 ネプギアがそう答えると、「まぁ、お姉ちゃん達も基本仲いいけど、自国のゲームのことになると延々と言い争うしね」とユニが言う。

 

ネプギアがページをめくると四人の女神が戦う姿が描かれていたが、その姿には見覚えがあった。

 

 

「これって……お姉ちゃん達?」

 

 

 ロム首が傾げて質問する。

 

 

「そうみたいだよ、ここに書いてあるね。この四人が現在のゲイムギョウ界の女神様、パープルハート様、ブラックハート様、ホワイトハート様、グリーンハート様になります」

 

 

 ネプギアがロムの質問に答える形で本の続きを読む。

 

ユニはネプギアの説明に複雑な表情をすると、「もぅ……お姉ちゃんまでそんな理由で戦争始めたの?」と呆れた声を出す。

 

先程言ったようにユニは女神達の戦う理由に辟易しているようで、「どうせネプテューヌさんに煽られたんでしょうけど……」と続けて言うと肩を落とす。

 

ユニは今でこそこんなもの言いをするが、昔はネプギアに凄まじいライバル意識を持っていた。

 

しかし、常に優しく穏やかに一緒に頑張ろうと協力と協調を呼びかけるネプギアに少しずつ心を開くと同時に毒気を抜かれていき今に至る。

 

 

「四つの国の女神様達は、ゲイムギョウ界に大きな繁栄をもたらすが、同時にゲイムギョウ界の覇権を巡り果てしない戦いも繰り返しました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「この果てしない戦いとかのせいで、わたし達ネプギアのことを敵だって教え込まれてたのよね」とラムが少し迷惑そうに言う。

 

ロムとラムも今はネプギアにべっとりだが、はじめて会った時は別の国の女神と名乗っただけでネプギアに襲い掛かって来たのだ。

 

その後、ネプギアが困っているロムとラムを何度か助け、ロムはすぐにネプギアに懐いたがラムはなかなか懐かずにいた。

 

ラム自身もネプギアに好意を持っていたが、自分に素直になれないことと、ネプギアと仲良くしているロムに嫉妬してしまい、なかなか上手く行かずにいた。

 

しかし、いざ素直になればあっさりと懐き、更に今まで嫌っていた態度を気にもせず受け入れてくれたネプギアに心の底から感謝と信頼を置いている。

 

 

 ユニとロムとラムがネプギアと仲良くなる経緯を知りたい方は、プレイステーション3用ソフト【超次元ゲイム ネプテューヌmk2】をプレイされたし。

 

 

「その長い年月の中で一つの現象が確認されました【超次元現象】です」

 

 

 ネプギアが続きを読むと、ロムが、「超次元ってわたし達の住んでる次元のことだよね?」と言うと「うん、そうだよ」とネプギアが答える。

 

ゲイムギョウ界には数々の次元が存在し、それぞれに人や国が存在する。

 

現在は超次元の他に、神次元と零次元と心次元とVR次元の五つの次元が確認されている。

 

 

「超次元現象って、なにが起こるの?」

 

 

 ラムが首を傾げて質問すると、「ゲイムギョウ界で起きた出来事が、他の世界にも強く影響を及ぼすんだよ」とネプギアが答える。

 

 

「ゲイムギョウ界が影響を与えるのは、どの異世界においてもゲームに関することで、ゲイムギョウ界の出来事が異世界のゲーム技術やゲーム業界に影響を与えるのよ」

 

 

 ユニがネプギアに続けるように説明すると、「他の世界って、アニメギョウ界とかマンガギョウ界とかオンガクギョウ界とか?」とラムが指折り数えながら言う。

 

そこに、「あと現実世界もね」とユニが付け加える。

 

ゲイムギョウ界の他にも、【ギョウ界線】という世界線を越えて様々な娯楽に対応するギョウ界が存在する。

 

このゲイムギョウ界にもマンガやアニメがあるように、異世界にもゲームはあり、超次元のゲイムギョウ界で起きた出来事がそれに影響を与えるのだ。

 

勿論、我々が住む高位次元の現実世界も超次元ゲイムギョウ界の影響を受ける。

 

現時点ではゲイムギョウ界と現実世界を行き来する方法は無いが、数年前にある人物により偶然にもゲイムギョウ界と現実世界がコンタクトを取れる【VR次元】が発見される。

 

更にはラステイションで発売されたVRの周辺機器と守護女神の力で、守護女神のみだが何度かVR次元に行くことに成功している。

 

 

「例えば、どんなことが起こるの?」

 

 

 今度はロムが首を質問する。

 

 

「例えばゲイムギョウ界である国家が消滅すると、どこかの世界ではメーカーがゲーム機の販売を中止したり、酷いときにはメーカー自体がつぶれることがあるんだよ」

 

 

 ネプギアがロムの質問に答えると、「なるほどー(ふむふむ)」とロムはうんうんと頷いて納得する。

 

ネプギアは続けて、「後は格闘ゲームが流行れば、スポーツギョウ界や現実世界でも格闘ゲームが流行って、それによって格闘技が人気になったりもするんだよ」と説明する。

 

 

「何かファッションリーダーみたいでカッコいい!」

 

 

 ラムが目を輝かせると、「他には? 他には?」とネプギアに話をせがむ。

 

ネプギアは唇に右手の人差し指を当てて少し考える。

 

 

「ロボットゲームが流行ればアニメギョウ界にもそれが流行って、ロボットアニメが人気になったり、美少女ゲームなら、美少女アニメの人気が出るようになるんだよ」

 

 

 ネプギアが答えると、「うわー、すごーい」とラムが更に目を輝かせる。

 

今度はユニが、「でも、いいことばかりじゃないのよ。ゲイムギョウ界でマジェコンが広まれば、どこかの世界でもマジェコンに似たコピーツールが広まっちゃうのよ」と付け加える。

 

 

「そっちはインフルエンザみたーい」

 

 

 ラムがウンザリした顔で言うと、「ネプギアちゃん、お話は?」とロムが絵本の続きを読むようお願いする。

 

ネプギアは再び本に目を落とす。

 

 

「こうして四つの国は十数年の間戦いと繁栄を繰り返し、G.C.2009年。再び犯罪神復活の兆候が現れました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと「あれ? それってアタシ達の話?」とユニが反応する。

 

前述したが、今はG.C.2019であり、十年前の2009年から2010年にかけてネプギア達女神候補生は姉達守護女神と共に犯罪神と戦ったのだ。

 

ラムが興奮気味に、「えー! なになに! 早く読んで!」と言うと、「気になる(わくわく)」とロムもやや興奮している、自分達の活躍が気になるようだ。

 

 

「ネプギアお姉さんの活躍、プラエも気になる」

 

 

 プラエがそう言うと、「ネギちゃんのことだからきっと大活躍だよ」とミクが続く。

 

ネプギアは絵本を読み続ける。

 

そこには犯罪神の復活を企む犯罪組織とネプギア達の戦いが書かれていた。

 

三年前のG.C.2006年に四人の姉が犯罪組織に敗れ絶望したこと。

 

G.C.2009年に救出されたネプギアが姉達を救う為に立ち上がったこと。

 

女神候補生達が最初は仲違いしたこと。

 

女神候補生が協力して姉達を救い出したこと。

 

復活した犯罪神をネプギアが倒したこと。

 

その続きには神次元と零次元、心次元の話も書かれていた。

 

女神候補生達は懐かしみながら、プラエとミクは女神達の活躍に目を輝かせながら話を聞いていた。

 

 

「こうして、ゲイムギョウ界に平和が戻りました。今もゲイムギョウ界が平和であるのは女神様のおかげなのです。……おしまい」

 

 

 ネプギアはそう言って本を閉じると「あー! 楽しかった。ロムちゃん大活躍だったね」と元気よくラムが言うと、「ラムちゃんも大活躍(ぽっ)」とロムは少し照れながら言う。

 

ロムとラムは、同時にネプギアを見ると、「でも、一番はネプギア【ちゃん】が大活躍~~」と言いながらネプギアに抱き着く。

 

ネプギアは、「わわっ!?」と驚きながらも、右手でロムを左手でラムをしっかりと受け止める。

 

ロムとラムは抱き着いたのをいいことに、再びネプギアの胸に顔をうずめる。

 

二人ともネプギアの胸が相当気に入ったようだ。

 

 

「プラエもネプギアお姉さん、凄いと思う!」

 

 

 プラエはそう言いながら、ロムとラムに負けじとネプギアの足にしがみついて、太ももに頬ずりする。

 

 

ネプギアは特に嫌がる様子を見せず、ロムとラムとプラエの頭を順々に撫でてあげると、三人とも気持ちよさそうに目を細める。

 

 

「それにしても、もう十年近く前の話かー。アンタ達本当に変わってないわよね」

 

 

 ユニがそう言いながら三人の顔を見ると、「ユニちゃんだって変わらないよー」とネプギアが返す。

 

女神は不老不死であり、国民たちの信仰や願いが具現化したものなので、つねに国民に愛される美しい姿を維持できる。

 

ネプテューヌのように怠けていれば太りもするが……。

 

 

「ロムとラムも少しは勉強とかしないさいよ」

 

 

 ユニがロムとラムに対して言う、そろそろ難しい漢字も読めるようになりなさいとの意味をこめてである。

 

それに対してラムはネプギアの胸に顔をうずめながら、「わたし達忙しいもん。ゲームしたり、絵本読んだり、お姉ちゃんにいたずらしたりー」と指折り数えながら返す。

 

そこにネプギアが、「それは遊んでるんじゃないかな……」とやんわりとツッコミをする。

 

同じようにネプギアの胸に顔をうずめているロムが、「お姉ちゃんお仕事教えてくれない」と少し寂しそうに言う。

 

続けてラムも、「いつまでも子供扱いするのよねー」と不満そうに続ける。

 

 

「あと、魔法のお勉強も忙しいのよ」

 

 

 ラムが続けて言うと、「うん、新しい魔法とか考えるの難しい……」とロムも続く。

 

彼女達女神はモンスターなどの外敵と戦う為に剣術や魔法などの戦闘術を優先的に習得しなければならないので、一般的な教育は後回しにされる。

 

 

「ユニちゃん、私達もまだ一人前じゃないんだし、ロムちゃんとラムちゃんのこと言えないよ」

 

 

 ネプギアがそう言うと、ユニも「まぁ、そうなんだけどね。いつになったら一人前になれるのしら……」と言うと、みんな黙ってしまう。

 

 

「それより、この本って誰が書いたんだろう?」

 

 

 ネプギアが少し落ち込んだ場の空気を和ませる為に話題を変えると、「えーと、イストワール……って、いーすんさんがこれ書いたの?」ネプギアは作者名を見て驚いてしまう。

 

 

「そうなの! じゃあじゃあ、何でこんな本書いたのか本人に聞いてみましょうよ」

 

 

 ラムが言うと、「インタビュー(どきどき)」とロムがそれに続く。

 

 

「そうだね。忙しいかもだけど、興味あるしちょっと聞いてみようか?」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「早速行きましょう」とユニが言い、ユニを先頭に六人は部屋を出ていく。

 

 

***

 

 

 ネプギア達はイストワールの執務室を訪れていた。

 

ネプギアは扉を軽く三回ノックする。

 

 

「いーすんさん、少しお時間ありますか?」

 

 

 ネプギアそう言うと、「ネプギアさん、なにか御用でしょうか?」とイストワールの声が聞こえてくる。

 

 

「いーすんさんの書いた絵本のことで聞きたいことがあるんです」

 

 

 ネプギアが扉に向かって言うと、「わかりました。どうぞ」と返事が返ってきた。

 

同時に、ネプギアが、「失礼します」と言いながら室内に入る。

 

続いて、「おじゃまします」とユニも入り、「おっじゃましまーす!」とラムが入って、「おじゃまします(もじもじ)」とロムが入りプラエとミクもそれに続く。

 

 

「みなさん、お揃いでしたか」

 

 

イストワールがネプギア達を確認するとそう言って、「私が書いた絵本というのは、【ゲイムギョウ界の歴史】のことですね」と続けて言う。

 

 

「どうしてあの本を書こうと思ったんですか?」

 

 

 ネプギアがイストワールに質問をすると、イストワールが腰かけていた本と一緒に机の上から浮かび上がる。

 

小さいイストワールの基本的な移動手段は宙に浮いて移動することである。

 

ゲイムギョウ界には魔法と呼ばれる技術があり、イストワールが宙に浮くのは魔法の力で重力を調整し、同じく魔力を推進剤にして動いているのだ。

 

イストワールのような小さく軽い物体なら暫くの間浮いていることが可能だが、人間サイズとなると難しくなる。

 

その為、魔法があるこの世界でもネプギア達の移動手段は女神化した時以外は足を使った歩行である。

 

 

 宙に浮かんだイストワールは滑るように前進するとネプギア達の目の前でピタリと止まって、その場で浮遊する。

 

 

「立ち話もなんですし、まずはお座り下さい」

 

 

 イストワールがそう勧めると、ネプギア達六人は中央にあるソファーに腰かける。

 

イストワールはネプギア達が座ったことを確認すると口を開く。

 

 

「あの本を書こうとしたきっかけは、四年前のうずめさんの事件があってからですね」

 

 

イストワールがそう言うと、「やっぱり、皆さんの記憶が操作された時の為ですか?」とネプギアがイストワールの言葉に対して質問をする。

 

 

「そうです。あの件によってこういった別媒体の記録も必要だと感じました。なので三年かけて記録を整理した際にこの本を書いたのです」

 

 

 イストワールの答えに、「でも、記録も消したって言わなかったっけ?」とユニが首を傾げる。

 

イストワールは落ち着いた声で、「そうですが、どれか一つでも難を逃れることができれば残ります」と答え、「バックアップみたいなものですね」とネプギアが頷く。

 

四年前に、先述した天王星うずめとの出会いから始まる一連の事件で、ゲイムギョウ界全体の歴史からうずめが女神だった頃の記録と記憶が抹消されていることが発覚したのだ。

 

イストワールはそれを憂いて、今後同じようなことがないようにこのような本を書いたと言うのだ。

 

 

「それに、ネプギアさんが大分お仕事が出来るようになってきたので、私の負担もかなり減りましたし」

 

 

 イストワールがネプギアに向かってニッコリと微笑みながら言うと、「そんな、私なんてまだまだですよ……」とネプギアが恥ずかしそうに謙遜をする。

 

ユニはそんなネプギアを見ながら腕を組み、「むむっ……アンタもなかなか頑張ってるみたいね。アタシも負けてられないわ」とネプギアに対してのライバル心を燃やしているようだ。

 

 

 ネプギアはG.C.1996年の生まれだが、G.C.2006までは殆どプラネタワー内で箱入り娘のように暮らし、イストワールの手伝いをする程度であった。

 

彼女が外界に出て本格的な女神の活動を始めたのは、G.C.2009の犯罪組織との戦いの旅からである。

 

旅に同行した友人のアイエフとコンパに仕事であるクエストのことなどを一から教わりつつ、仕事をこなしてきたのだ。

 

後に、時間の流れが違う神次元に行った際に二十年近い仕事の経験を積み、ネプギアの女神としてのキャリアは三十年近くになる。

 

真面目で努力家の彼女は地道に積んだ経験で、ここ最近はイストワールを唸らせる程の仕事ぶりを見せている。

 

 

 ユニはネプギアと同じくG.C.1996年の生まれでネプギアよりは早く仕事を始めているが、神次元へ行っておらすネプギアと二十年近い経験の差がある。

 

しかし、ネプギアは自分が神次元で積んだ経験を惜しみなくユニに伝え、ユニもネプギアに負けじと努力を続けたことにより、二人の差は大きく開いてはいない。

 

 

 ロムとラムはネプギア達より少し遅れたG.C.2000年の生まれで、ネプギアと同じく仕事を始めたのがG.C.2009となる。

 

彼女達もユニと同じようにネプギアから色々と教わってはいるが、ユニほどネプギアに対するライバル心がないので、色々とネプギアとユニに頼ることが多い。

 

 

「あと、なりより一人でも多くの人にゲイムギョウ界の歴史と女神様の活躍を知ってもらいたいとの思いからです」

 

 

 イストワールは話を続けながら、ソファーに腰かけた六人を見渡す。

 

 

「皆さん、この本で少しはゲイムギョウ界の歴史のことが分かっていただけましたか?」

 

 

 イストワールは穏やかな声で質問をする。

 

 

「うん! わかった!」

 

 

 ラムがいち早く元気よく左手を上げて言い、「それに楽しかった(うきうき)」とロムがそれに続く。

 

 

「プラエも凄く勉強になりました」

 

 

 プラエが礼儀正しくお辞儀しながら言うと、「うん、私もゲイムギョウ界のこと良く知れたよ」とミクが言う。

 

 

「やっぱり、ラステイションが一番だってことがよくわかりました」

 

 

 ユニが腕を組んで鼻高々に言うと、「そう言っていられるのも今の内よ。すぐにルウィーが狂い咲くんだから!」とラム言い、「狂い咲くよ!」とロムも続く。

 

 

「狂ってどうするのよ……」

 

 

 ユニが呆れ顔で溜息をつくと、「それを言うなら返り咲きだよ」とネプギアがフォローする。

 

 

「ふふふ……狂い咲きも間違いではありませんが、この場合は返り咲きが正しいでしょう」

 

 

 イストワールは仲良くしつつも競争心を忘れない女神候補生達に対して、嬉しそうな微笑みを浮かべながら言う。

 

 

「もう一つ言うと、私の容量の限界と言うこともあります」

 

 

 イストワールはそう言って話を戻す。

 

 

「そっか、いーすんさん長生きですもんね」

 

 

 ネプギアが納得したように言うと、「プラネテューヌの始まりから歴史を記録してるんだから、膨大なデータ量になりますよね」とユニも続く。

 

 

「はい、それに以前は記録と女神様の補佐をしていたのですが、ネプテューヌさんが女神様になってから、補佐どころか国政全体まで見なくてはならない有様になりまして……」

 

 

 イストワールはそう言って【頭が痛い】と言わんがばかりに右手を額に当てる。

 

ユニはすべてを察したよう額に右手をあてながら、「あー……」と声を上げ、「お姉ちゃんがいつも迷惑かけてごめんなさい」ネプギアが平謝りする。

 

 

「どういうこと?」

 

 

 ロムが首を傾げると、「わたしも分からなーい!」とラムが左手を上げる。

 

 

「えーと、いーすんさんはお姉ちゃんが仕事してくれないから、いっぱいいっぱいなの」

 

 

 ネプギアが説明をすると、「どれぐらい、いっぱいいっぱいなの?」とロムが質問してくる。

 

ネプギアは右手をあごにあてて数秒考え込む。

 

 

「例えるなら、前は本を読んでるだけでよかったのが、今は本を読みながら洗濯して掃除してご飯作ってお買い物にも行かないといけなくなっちゃったんだよ」

 

 

 ネプギアが例えで説明をすると、「はわわ、大変そう(おろおろ)」とロムがあわあわと驚きをあらわにする。

 

ラムは腕を組んで、「孫の手も借りたいってヤツね」と自信満々に言うが、「それを言うなら猫の手よ」とユニに訂正を受けてしまう。

 

 

「この前も次元移動の反動で熱暴走してしまいましたし」

 

 

 イストワールはそう言って肩を落とす。

 

イストワールには別の次元に干渉できる能力が備わっており、先述した神次元や零次元で事件が起きた時もその能力でネプギア達を助けている。

 

しかし、その能力はイストワール自身を酷使するようで、使った後にイストワールが不具合を起こすことがある。

 

 

「でも、あの時はサンシローの入魂パッチでしたっけ? あれで何とかなりましたし」

 

 

 ネプギアはそう言ってイストワールをフォローする。

 

しかし、イストワールの表情は暗く、「更に言うと、記録の整理が追い付かずウラヌスさんのことまでド忘れした上に古の女神様と間違ってしまうなんて恥ずかしいです」と肩を落とす。

 

ウラヌスはうずめの次の女神であり、一世代前の女神となる。

 

ネプギア犯罪神と戦った際に、過去に犯罪神と戦った彼女の経験談が犯罪神を倒す鍵となったのだが、その存在をルウィーの教祖の西沢ミナに言われるまで気付かなかったのである。

 

長きに渡って歴史を記録してきたイストワールは定期的に記憶を整理する必要があるのだが、その量が増えすぎて整理が追い付かずに記憶が混乱していたのだ。

 

 

「ド忘れなんて誰にでもありますよ。ウラヌスさんも気にしてないって言ってくれたじゃないですか」

 

 

 ネプギアが再びイストワールをフォローする。

 

ウラヌスは肉体を失った意識だけの存在で、ネプギア達が犯罪神を倒して後は、以前より彼女の意識が住んでいたギャザリング城にとどまり続けている。

 

ギャザリング城に住み着いたモンスターはネプギア達女神候補生が駆除して、綺麗に掃除をした後に、今はプラネテューヌの職員が数人城に駐在してお供え物や掃除をしている。

 

ネプギアも度々ウラヌスの元を訪れて、今のゲイムギョウ界やプラネテューヌの状況を話したり、女神としてアドバイスを貰ったりしている。

 

 

 ネプギアのフォローにイストワールは首を静かに横に振り、「いいえ、毎回毎回あのような失態を晒すわけにはいきません」と答える

 

 

「そういうことで、少しでも容量を空ける為に過去の記録の別端末への移動と共に、このような紙にも記録を残しているんです。これらがこの絵本を書いた理由です」

 

 

 イストワールがそう締めくくると、「私に何か手伝えることがあったら言って下さい。なんでもしますから」とネプギアが提案する。

 

姉のネプテューヌのせいで苦労を掛けている償いもあるのだろう。

 

 

「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします」

 

 

 イストワールが丁寧に一礼すると、ラムが突然左手を上げ、「ねーねー! 容量が足りないなら増やせばいいじゃない」と言う。

 

ロムも両手をポンと叩いて、「うん、すごいラムちゃん天才」とそれに同意する。

 

 

「増やすって……そう簡単にできるものじゃないでしょ」

 

 

 ユニが首を傾げ不思議そうな顔で言うと、「そうだね、私もいーすんさんみたいな人工生命体のことはよく分からないし」とネプギアも困惑顔をする。

 

機械やコンピューター全般に詳しいネプギアだが、今のところ人工生命体に対しての知識はあまりないようだ、

 

 

「だったら、勉強すればいいじゃない」

 

 

 ラムが事もなげに言うと、「ネプギアちゃんならできるよ、イストワールちゃんを魔改造できる(こくこく)」とロムも続けて言う。

 

二人の言葉に、「魔改造……いーすんさんを魔改造……」とネプギアは考え込んでしまう。

 

その横でユニが、「アンタ、本当に魔改造とかリミッター解除とか、そーゆーキーワードに弱いわね……」と肩を落としながら呆れる。

 

ネプギアの機械好きは前述した通りだが、最先端の技術を持つプラネテューヌの力を駆使するネプギアの改造は魔改造じみた方向に向かうことが稀にある。

 

魔改造とは、時にいろんな意味で無理があったり、常軌を逸した改造のことをいう。

 

 

「あの……できれば【魔】は無い方向でお願いします」

 

 

 イストワールが冷や汗を流しながら提案してくると、「あ、ごめんなさい。つい……」正気に戻ったネプギアが苦笑いを浮かべる。

 

 

「……ですが、そうですね」

 

 

 イストワールは少し考えてからそう言うと、「ネプギアさんがもう少し大人になったら、私の設計図を見てもらってバージョンアップをしてもらいましょうか」と続ける。

 

イストワールはプラネテューヌの初代女神の頃から存在しているが、今まで彼女をバージョンアップできる程の知識と技能を持った人物は存在しなかった。

 

その為に、イストワール自身が作った細かなアップデートに留まっている。

 

 

「本当ですか!」

 

 

 喜びの声を上げるネプギアに、「ええ」と優しく微笑むイストワール。

 

ネプギアの知識と技能、そして人格を信頼している目だった。

 

 

「えっと、胸をミサイルにしてもいいですか!」

 

 

 ネプギアが小さくガッツポーズをして興奮気味にイストワールに言い寄ると、イストワールは肩を落として、「やっぱり、考え直させて下さい」と言う。

 

 

「じょ、冗談ですよ、冗談!」

 

 

 ネプギアが胸の前で両手を振りながら言うと、「アンタのは冗談に聞こえないのよ」とユニが呆れながら右手で額を抑える。

 

 

「イストワールを作った女神様って、どんな人なの?」

 

 

 ラムが質問すると、「わたしも気になる(こくこく)とロムが頷き、「確かプラネテューヌの昔の女神様でしたよね?」とユニがそれに続く。

 

ネプギアがあごに指を当てながら、「えーと、SG三姉妹でしたっけ?」と言う。

 

 

「はい、プラネテューヌの初代女神のサウザンドハート・ワンのソレイユ様、その次女のサウザンドハート・ツーのルナ様、そして三女のサウザンドハート・スリーのエルデ様がSG三姉妹と呼ばれています」

 

 

 イストワールが答えると、「SGってなに?」とロムが質問し、「スーパーグレードとか?」とラムが首を傾げる。

 

 

「SGはシザシー・ジェネシス【Syzygy Genesis】の意味で、シザジーは、地球、太陽、月の三つが一線上に並んだ配置のことで、ジェネシスは創世を意味します」

 

 

 イストワールがそう言うと、「なるほど、太陽のソレイユと月のルナ、そして地球のエルデで、プラネテューヌの始まりだから創世なのね」とユニが腕を組みながら納得したように頷く。

 

 

「創世ってなに? ソーセージの仲間?」

 

 

 ラムが首を傾げると、ネプギアが「創世はね、世界を最初に作ることって意味があるの。だから、プラネテューヌを作った女神様達だから創世って言われているんだよ」と説明する。

 

ロムがネプギアの説明に、「ふんふん(こくこく)」と頷く。

 

 

「私を作ったのは三女のエルデ様になります。ルナ様もソレイユ様も関わりましたが、殆どはエルデ様です」

 

 

 イストワールが説明を続けると、「どんな方だったんですか?」とユニが質問をする。

 

 

「エルデ様は、優しく、穏やかで 少し甘えん坊なところがあって 機械をいじるのが好きな女神様であり優秀な研究者でもありました」

 

 

 イストワールが話を続けると、「優しく、穏やかで 少し甘えん坊なところがあって 機械をいじるのが好き……誰かに似てるような……」とラムが腕を組んで考え込む。

 

ロムは思いついたように両手をポンと叩くと、「それって、ネプギアちゃん?」と言う。

 

 

「そうですね、よく似ていますね」

 

 

 イストワールが静かに頷く。

 

彼女はネプギアの顔を眺めながら、ネプギアとエルデの姿を重ねているようだ。

 

 

「そう言えば超レア素材に、森羅万象ってこの世のありとあらゆる情報が詰まっていると言われているデータ結晶のエルデクリスタルってありますよね。何か関係あるんですか?」

 

 

 ネプギアはそんなイストワールの意図には気づかず自分の思いついたことを質問する。

 

 

「よくお気づきになられましたね。お察しの通り、エルデクリスタルはエルデ様が発見したことにより、その名前が付けられた名前です」

 

 

 イストワールはそう言いながら右の手のひらを開くと、そこから三人の女性のホログラムが現れ、「これがSG三姉妹の方々です」と説明する。

 

 

「これは、ネプギア? それにネプテューヌさんにプルルートさんも」

 

 

 ユニはホログラムを見ながら驚いたように言う、ユニが言うようにその三人はネプギア達が女神化した時の姿によく似ていた。

 

 

「でも、ちょっと違うわ」

 

 

 ラムがそう言うと、「うん、髪型とか少し違う」とロムがそれに続く。

 

 

「私に似た人は同じロングだけど小さいお団子が二つあるし、お姉ちゃんに似た人はおさげが一本だし、プルルートさんに似た人は眼鏡かけてベレー帽かぶってるね」

 

 

 ネプギアが目立った違いを解説し、「やっぱり、同じプラネテューヌの女神だから似てるんでしょうか?」と質問をする。

 

イストワールは小さくうなずくと、「そうですね。次の世代のマース様はうずめさんに似ていましたし」と答える。

 

 

「ゲイムギョウ界は新作期を迎えましたが、皆さんは鍛錬を怠っていないようですね」

 

 

 イストワールが話を変えて、女神候補生の四人に向けて質問をする。

 

すると、「しんさくき? 何かの収穫?」とラムが首を傾げ、「……こないだお姉ちゃんがそんな感じのこと言ってた気がする」とロムが少し自信なさそうに言う。

 

 

「新作期って言うのはね、ゲイムギョウ界の住人の強さがリセットされちゃう時期のことを言うの。具体的に言うとレベルが1に戻ることなんだよ」

 

 

 ネプギアは考え込んでいるロムとラムに対して丁寧に説明をする。

 

前にも書いたが、【レベル】とはゲイムギョウ界の強さの基準で、鍛錬や戦闘訓練、それに実際の戦闘で敵を倒すことで得られる【経験値】を基準値まで得ることで上昇する。

 

それに合わせて【攻撃力】や【体力】や【技量】などの心身の能力値が上がっていくのである。

 

 

「あっ! そのことね。ちゃんと上げてるわよ」

 

 

 ラムが元気よく宣言すると同時に、「大変だったけど、みんなと一緒にがんばったよ(もりもり)」とロムが小さくガッツポーズをする。

 

 

「でも、レベル1に戻るのは大変だね……プラエだったら挫けちゃうかも」

 

 

 プラエがそう言うと、「ただ戻るだけではないのよ。リセットされる前の強さを基準に初期能力や成長率が上がって、リセットされる前は使えなかった技能が使えるようになったりするのよ」ユニがいつもより優し気な声で言うと、「だから無駄にはならないわ」と励ますように言う。

 

 

「だから、新作期前のレベル99より新作期後のレベル99の方が遥かに強くなるんだよ」

 

 

 ネプギアが続けて説明をすると、「日本一から言わせれば【転生】するってことらしいわ」とユニが付け加える。

 

転生とは生まれ変わることではあるが、【日本一】という以前にネプギア達と共に戦った友人がこの現象のことをそう呼んでいる。

 

彼女の好きなゲームに、同じようにレベルを何度もリセットしてキャラクターを強くしていくものがあり、そのシステムが転生と呼ばれていたのでそこから引用したようだ。

 

 

「それに今まで新作期は二回もあったのよ。もう慣れたものよ」

 

 

 ユニが少し自慢げに言うと、「そんなにあったっけ?」とラムが首を傾げる。

 

すると、「ロムちゃんもラムちゃんも新しい必殺魔法憶えて、凄く強くなったでしょ」とネプギアが続けて説明をする。

 

ネプギアの説明を受けた二人は、「「そういえば」」と声を揃えて柏手を打つ。

 

 

「私も最初は怠けていたからレベルが下がったのかなって慌てたから、気付かないもの無理ないよ」

 

 

 ネプギアがそう言ってフォローする。

 

彼女が初めて新作期を迎えたのは犯罪組織との戦いの二年後である。

 

その頃のネプギアは犯罪神を退けて平和となった世界で、やや怠惰な生活を甘受していた。

 

 

「怠けていてもレベルは下がりますよ。特にネプテューヌさんみたいな人は」

 

 

 ネプギアの言葉にイストワールがやや厳しい声色で忠告する。

 

彼女はネプギアの姉であるネプテューヌの怠けぶりに常日頃頭を悩ませており、こういう話になるとつい彼女の名前が出てしまう。

 

 

「あはは……お姉ちゃんの場合は成長力がもの凄い反面、怠ける時はとことん怠けるから一気にレベルが下がるんですよね……」

 

 

 正直なネプギアはフォローになってるかなってないか分からない発言をしてしまう。

 

 

「ロムさんもラムさんも難しいことは考えずに、ネプギアさんとユニさんと一緒に成長していただければ問題ありませんよ」

 

 

 イストワールは気を取り直してロムとラムに向けて優しく言うと、「わかったわ! みんなで、切磋琢磨するのね!」とラムが元気よく言う。

 

 

「おや? 難しい言葉を知っていますね」

 

 

 イストワールがラムの言葉に感心をすると、「ネプギアちゃんとユニちゃんに教えてもらったの(にこにこ)」とロムが嬉しそうに言う。

 

 

「そうですか。みなさん、その調子でお願いしますね。ゲイムギョウ界の未来はみなさんの双肩に掛かっているのですから」

 

 

 イストワールが微笑みながら言うと、「双剣? わたし達の武器は杖よ」ラムが不思議そうに首を傾げる。

 

 

「武器の剣じゃなくて、体の肩よ」

 

 

 ユニが説明すると、「双肩って言うのは、責任や義務を負うもののたとえで、私達がゲイムギョウ界の未来を肩に乗せてかついでるって感じかな」とネプギアが続ける。

 

 

「おみこし?(わっしょいわっしょい)」

 

 

 ロムが嬉しそうに言うと、「おまつり大好き! わたし達に任せて! わっしょいわっしょい!」とラムがそれに続く。

 

ロムとラムはおみこしを担ぐ真似をしてリズムをとって楽しそうに踊っている。

 

ちなみにラムの言う双剣とは短めの剣を二刀流すること、ゲイムギョウ界では人気のある武器なので同じように勘違いする子供もいるかもしれない。

 

 

「でも、私達の双肩って言いますけど、どっちかって言うとそれはお姉ちゃん達のことじゃないですか?」

 

 

 ネプギアがそう言って首を傾げると、「ネプテューヌさんは毎日ぐーたらしてますし、他の女神様もご自分の趣味が関わると仕事がおろそかになりがちなので……」とイストワールは肩を落として言う。

 

守護女神達はネプテューヌを除いて不真面目ではないのだが、自分の趣味に確固たるプライドをもっており、それに没頭しすぎると国が傾いたりする。

 

また気位が高い上に個性も強く、他人の風下に立つことを快しとしないので協力させるにも一苦労する。

 

仲が悪い訳ではないのだが、四人が四人とも【自分がこそがナンバーワン】と譲らないのである。

 

そんな彼女達が協力する場合は、大体ネプテューヌが厄介ごとに首を突っ込み他の三人を巻き込んで引きずる形になる。

 

そのように扱いの難しい守護女神達に対して、ネプギアを中心に純粋で素直な女神候補生達の方に期待してしまうのも仕方ないことなのかもしれない。

 

その後、ネプギア達はイストワールから色々な話を聞き、その日を終えた。

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