新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2 作:ゆーじ(女神候補生推し)
ビィトリットと出会ってから一週間が経った。
G.C.2019年7月3日 水曜日
ネプギア達はいつものようにモンスター討伐のクエストしに、ギャザリング城から北西にあるアタリー湿原に訪れていた。
「今日のクエストは、このアタリー湿原に棲みついたスパイダー系のモンスターの退治です」
イストワールがキーボードを操作するとホログラムが現れる。
ホログラムには黄色と黒い蜘蛛が映されていた。
「スパイダー系か……状態異常に注意しないとね」
ファミ通が腕を組みながらそう言うと、「どっちが毒でどっちが麻痺でしたっけ~」とコンパが首を傾げる。
「黒い方が毒を持ってるポイズンスパイダーで、黄色い方が麻痺させてくるパラライズスパイダーよ。状態異常持ちと戦う時はヒーラーの役割が重要よ。期待してるわ、コンパ」
アイエフがそう言うと、「はいです」とコンパは胸の前で小さくガッツポーズを作る。
「今日もサッサと倒して、早くレッスンにいきましょ」
ユニがそう言うと、「そうだね、ビィトリットさん達も待ってるだろうし」とネプギアが続く。
「今日も頑張って踊るわよ~」
ラムがステップを踏みながらそう言うと、「舞い踊る(ひらひら)」とロムもそれに続く。更にプラエも、「プラエも頑張って演奏する」と小さくガッツポーズをする。
「ネギちゃんのおかげで、エルフ語の歌もだいぶ歌えるようになってきたよ」
ビィトリットに会って地鎮祭をすることになった女神候補生達は、エルフの村に毎日通い地鎮祭で踊る舞を練習しているのだ。
ミクのエルフ語の歌も理解の早いネプギアが上手く調律して歌えるようにしてくれたのだ。
「あたしに任せてよ。サクッと終わらせてあげるよ」
ファルコムがそう言うと、バイオリンケースからドラゴンスレイヤーを取り出して正眼の構えを取る。
女神候補生達は地鎮祭の練習もあるので、ここ最近は女神候補生だけで敵を倒すのではなく、全員で効率良くクエストをこなしている。
「はい、ファルコムさんは本当に頼りになるので助かってます」
ネプギアがそう言うとアイエフはお手上げのポーズをとって、「ファルコムの強さはチート級よね。私達がレベル36なのに一人だけ53なんだもの」と言う。
「そうだね。それにレベルが高いだけじゃなくて、剣技は勿論、剣魔法って言う魔法攻撃も使えるし、回復魔法も使えるし、戦士として完璧だと思うよ」
ファミ通がそう言って感心すると、「ファルコムさんだけで、殆どの敵を倒しちゃいます~」とコンパも感心する。
ファルコムが仲間に加わって一週間経つが、その間にファルコムは大活躍で殆ど無双状態であった。
レベルが10以上高いのもあるが攻守バランスが取れており、何より冒険を繰り返している彼女は戦闘経験が豊富であった。
「蜘蛛型のモンスターなら、斬属性が有効だと思うよ」
ファルコムがあごに手を当てながら言うと、「ありがとうございます。ファルコムさんがいつもアドバイスしてくれるから助かります」とネプギアがお礼を言う。
彼女は勘と経験で、Nギアの解析より早く敵の特性や弱点を見抜いてしまう。
「ファルコムみたいのをワンタンアーミーって言うのよね」
ラムが自信満々にそう言うと、「何で中華料理になるのよ……」とユニが呆れ、「それを言うならワンマンアーミーだよ」とネプギアが付け加えると、「そう、それよそれ」とラムが言う。
「ファルコムさん大活躍(きらきら)」
ロムが尊敬の眼差しでファルコムを見ると、ラムは自信満々に、「まさに獅子分身の活躍よね」と言う。
「あはは……ライオンが分身したら確かに強そうだね。でも、そこは獅子奮迅だよ」
ネプギアがにこやかに笑い、やんわりとラムの言い間違いを訂正すると、ユニが、「どうしてラムはこうも言い間違いが多いのかしら」と言って溜息を吐く。
「でも、本当にファルコムさんって強いですよね。一人で何でも出来ちゃうし、憧れちゃいます」
ネプギアもロムと同じく尊敬の眼差しでファルコムを見ると、「あたしは一人で冒険してたからね。一人で出来ないと生き抜けないんだよ」とファルコムが言う。
「私のトコでもファルコムのことを書いたら大人気だったよ。主に女性に」
ファミ通がそう言うと、ファルコムは【まいったな】と言わんがばかりに右手で後頭部を掻く。
「ファルコムってば、【だんそーのれーじん】だからね」
ラムがそう言うと、「あたし、ちゃんと女の恰好してるんだけど……」ファルコムが自分のスカートの端を摘まむ。
「ラムちゃんの言いたいことは何となく分かるよ。女の子に人気の出そうな、男の人っぽいカッコイイ女の人のことを言いたいんだよね」
ネプギアがそう言うと、「うん、そう」とラムが頷き、「それは男装の麗人じゃなくて、ボーイッシュな女の人でいいのよ」とユニが答える。
「ネプギアちゃん(くいっくいっ)」
ロムがそう言ってネプギアの右手の袖を引っ張ると、「なあに?」とネプギアが優しく答える。
すると、「わたしはネプギアちゃんの方が憧れる……優しくて綺麗(どきどき)」とロムが小声で顔を赤くして言う。「ありがとうロムちゃん」ネプギアはそう言って微笑んでロムの頭を撫でる。
更にプラエがネプギアの左手に抱き着くと、「プラエもネプギアお姉さんの方が憧れるよ」と頬擦りしながら言う。「プラエちゃんもありがとう」ネプギアはそう言ってプラエの頭も撫でてあげる。
「でも、憧れるって言うなら、あたしもネプギアに憧れるよ」
ファルコムがそう言ってネプギアの方を向くと、ネプギアは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、「私にですか? ファルコムさんが?」と首を傾げる。
「うん、君みたいに仲間の力を何倍にも引き出せる存在は稀だと思うよ」
ファルコムがあごに右手を当てながら頷いてそう言うと、ネプギアは両手を胸に当てて、「そんな……私なんて器用貧乏なだけで……」と謙遜してしまう。
「そうでもないよ。犯罪組織との戦いの時もそうだったけど、君は1+1を3にも4にも……いや、100にも出来る存在だよ」
ファルコムがそう言うと、ラムが、「1+1の答えは違うわよ」と言う。「ラムちゃん、ファルコムさんの言ったことは比喩で……」とネプギアが言いかけるが、「1+1は田んぼの田よ!」とラムがドヤ顔で言い放つ。
「ラムちゃん、凄い。天才(ぱちぱち)」
ロムがそう言ってラムに拍手を送ると、「ふふっ……こいつは一本取られたな」とファルコムがラムを見ながらそう言って微笑む。
「もぅ……ラムちゃんったら……」
ネプギアは恥ずかしそうにそう言うと、ファルコムはネプギアに向き直る。
「あたしの言ったことは本当のことだよ。君がもし女神様じゃなかったら、冒険のパートナーにしたいと思うぐらいだし」
ファルコムはそう言うと、「それに君はもっともっと強くなれる。今はあたしの方が強いかもしれないけど、すぐにあたしなんか追い抜いてしまうよ。だから自信を持って」と続けて言い右手でネプギアの左肩をポンと叩くと、「それじゃ、モンスター退治に行こうか」と歩き出す。
「ファルコムさん……」
ネプギアはファルコムの背中を見ながらそう呟くと、「そうよ。アタシ達はもっと強くなれる。そうでしょ、ネプギア」とユニが言うと、「うん、そうだね。みんなで一緒に強くなろう」とネプギアが力強く頷く。
「うん、わたしも強くなる(むきむき)」
ロムがそう言って頷くと、「わたし達なら史上最強になれるわよ」とラムがVサインを決める。
「あ、ファルコムさん、偵察するので少し待っていて下さい」
ネプギアがそう言って、先を歩くファルコムを呼び止めると、「そうだったね。いけない、いけない……単独行動が身に染み付いてしまっていてね」ファルコムはそう言いながら足を止める。
「ネプギアンダム発進!」
ネプギアは、いつものカタパルトからネプギアンダムを発進させる。
ファルコムは上空に飛び上がっていくネプギアンダムを見ながら、「君達はあたしのことを強い強いって言うけど、こういう情報収集をしたり作戦を立てたりする面では君達の方が優れているよ」と言う。
「そうですか?」
ネプギアはそう言って首を傾げると、「うん、君達が集めた敵の配置とかの情報や作戦はとても頼りになるよ。あたしも計画とか効率とか考えた方がいいんだけど、なかなか上手くいかなくてね」とファルコムがお手上げのポーズをする。
「ネプギアは本当に色々なことができるよね。あたしが戦士として完璧だと言うなら、ネプギアは人として万能だと思うよ」
ファルコムはそう言うと「おっと……人じゃなくて女神様だったね」と訂正を加える。
「そんな……万能だなんて私……」
ネプギアが胸の前で両指を組んで困ったような顔をすると、「ネプギアは万能どころか【ぜんぎぼんのう】よ!」とラムが腰に手を当てて自分のことのように言い誇る。
「ぶっ……ぜ、前戯って! ラム様、どこでそんな言葉を憶えたんです!」
アイエフは偵察の間に水分補給しておこうと飲んでいたお茶を吹き出す。
「えっと……全知全能の言い間違いだと思います」
ネプギアが落ち着いてそう言うと、コンパが首を傾げて、「あいちゃん、前戯ってなんですか?」とアイエフに質問する。
「え゛……」
アイエフはコンパの質問に変な声を出してしまう。
気付けば、ネプギア達女神候補生とプラエとミクも不思議そうな顔でアイエフを見ている。
どうやらコンパと同じで前戯の意味を知らないのだろう。
「あ……う……えーっと……」
アイエフは困った顔で周りを見渡すが、イストワールはキーボードをイジっており、ファミ通はメモを見ており、あんみつは刀の手入れをして、ファルコムは空を見上げながら口笛を吹いている。
どう見ても助けてくれそうな雰囲気ではなかった。
「ね、ねねねネプギア! 偵察は! もうデータ着てるでしょ!」
アイエフは思いっきり吃音しながらも、何とか話をそらそうとネプギアに話しかけると、「あ、ちょうど着ました。アイエフさん流石ですね」とネプギアがNギアを見ながら感心した声を上げる。
「そ、そうでしょ! さあ、さっさと作戦立てて終わらせましょ!」
アイエフは真剣な顔でそう言って、早足でネプギアに歩み寄ると両手でネプギアの両肩を掴む。
ネプギアはアイエフの剣幕に圧されながらも素直に、「はい」と言ってNギアを操作し始める。
他の女神候補生達も作戦会議を始める為に携帯ゲーム機を取り出す。
何とか話題を変えられたアイエフは、「ほっ……」と安堵の溜息を漏らした。
***
ネプギア達はファルコムを先頭に湿原を進むと、体長2メートルはある黒と黄色の巨大な蜘蛛が50匹ほどの群れをなしていた。
「じゃあ、早速退治しようか」
ファルコムが剣を構えてそう言うと、ネプギアは、「はい」と頷いてファルコムの少し後ろに立つ。
続いてファミ通がネプギアの隣に立ちその少し後ろにアイエフとあんみつが立つ。
その後ろにユニとロムとラムとプラエ、それにイストワールとコンパとミクが配置に着く。
レベルが飛び抜けて高いファルコムを最前列に置き、ネプギア達を前衛、ユニ達を後衛にした最近の彼女達の主流のフォーメーションだ。
「ターゲットロック」
ユニは立ちながら銃を構えると、レティクルを動かし黒い蜘蛛の頭部に狙いを定める。
「ミクちゃん、攻撃力アップの歌お願い」
「オッケー、ネギちゃん」
ネプギアの指示でミクが攻撃力アップの歌を歌い始める。
「狙い撃つわ!」
ズキューン!
ミクの歌の効果を確認したユニがトリガーを引くと弾が発射され、見事に黒い蜘蛛の頭部に命中する。
いつものようにヘッドショットとハイドアタックが組み合わさり、812のダメージが当たり黒い蜘蛛の一匹が戦闘不能になる。
「シャアアア!」
狙撃に気付いた他の蜘蛛達がユニ達の居る方向を睨むと、咆哮を上げて八本の足を動かしてカサカサと動かして攻め込んでくる。
「行くよ! あたしに着いてきて」
ファルコムはそう言うと、走り出して迫り来る蜘蛛たちを迎撃する。
「シュゥゥゥーッ!」
蜘蛛達はファルコムの姿を確認すると、口から白い糸を吐き出す。
「なんのっ!」
avoid、ファルコムは横にステップを踏み吐き出された糸を華麗にかわすと、素早く蜘蛛に接近して、「ていっ!」と黄色い蜘蛛の胴体に縦斬りをお見舞いする。
912のダメージを受けて黄色い蜘蛛が戦闘不能になる。
ヘッドショットとハイドアタックを組み合わせたユニの狙撃よりダメージが出せるのは流石である。
しかし、群れに飛び込んだファルコムの左右から黒い蜘蛛が襲い掛かる。
「やらせません!」
ファルコムの右から迫る蜘蛛の頭部に対して、ネプギアがビームソードで袈裟斬りに切り裂く。
512のダメージを受けて怯む蜘蛛。
「連携攻撃!」
同時に蜘蛛の胴体にプラエの鎖が命中し、294ダメージを与えると蜘蛛が戦闘不能になる。
「こっちは任せなさい! クロスエッジ!」
ファルコムの左から迫る蜘蛛にはアイエフが飛び掛かり、両手のカタールで胴体をX字に切り裂く。
クリティカルヒットで618ダメージを受けた蜘蛛に対して、「そおりゃっ!」と今度はファミ通が頭部にエビの打撃を加え364ダメージを与えるとこちらも蜘蛛の戦闘不能になる。
「「……天より来たれし雷よ……爆炎と共に、敵を打ち倒せ……」」
前衛が足止めしている頃、後衛ではラムとイストワールが呪文の詠唱をしている。
ラムとイストワールの周囲にペンネルによって赤と黄色の魔法陣が描かれる。
「「サンダーフレア!!」」
ズガガガガ!
魔法の発動と同時に蜘蛛の群れに何本もの稲妻が広範囲に落ちる。
ゴォォォォ!
稲妻が落ちると同時に爆発が起こり周囲一面が燃え上がる。
「ジャアアアア!!」
稲妻と炎に焼き尽くされた五匹の蜘蛛が800以上ダメージを受けて戦闘不能になる。
戦闘開始早々に九匹の蜘蛛を倒す彼女達のコンビネーションはかなりのものだ。
「ガアアア!」
蜘蛛達は怯まずに先頭のファルコムに向けて反撃をしてくる。
一匹の黒い蜘蛛がファルコムに噛みつくが、そのダメージは35と少なく、HPが750あるファルコムのHPゲージは殆ど減らなかった。
「やっぱり毒を持っている」
ファルコムにHPゲージの他に青紫色のゲージが現れて、それが二割程溜まっている。
これは状態異常の毒のゲージで、これが満タンになるとHPゲージが徐々に減っていく【毒】の状態異常になる。
「コンパの解毒剤です~」
コンパがそう言って救急箱を取り出すと、ファルコムの体が白く輝く。
それと同時に青紫色のゲージはゼロになった。
「でも、仲間にヒーラーがいれば状態異常が蓄積することはまずないよ」
ファルコムが余裕の表情でそう言う。
状態異常のゲージは時間と共に減少するが、ヒーラーの回復魔法などを使えば一気に減らすことが出来る。
【コンパの解毒剤】は名前の通り、毒の状態異常ゲージを減少させる効果がある。
「ていっ!」
ファルコムは噛みついてきた黒い蜘蛛に横斬りで反撃するとクリティカルヒットで1712ダメージを与えてオーバーキルで戦闘不能にする。
「シュー!」
今度は黄色い蜘蛛がファルコムに噛みつく。
ファルコムのHPゲージは相変わらず全然減らないが、今度はダークイエローのゲージが二割程溜まっていた。
これは麻痺の状態異常ゲージで、毒と同じくこれが満タンになると【麻痺】となり、痺れて体が動かなくなる。
「リフレッシュ!」
今度はロムが魔法を唱える。
すると、先程と同じくファルコムのダークイエローのゲージがゼロになる。
【リフレッシュ】は状態異常ゲージを減少させる水属性の魔法。
以前に使った【ちりょうだよ】、とは違ってHPまでは回復できないが、素早く発動することが出来る。
ちなみに、リフレッシュは全ての状態異常に有効だが、毒に特化したコンパの解毒剤に比べると状態異常ゲージの減少はやや少ない。
「無駄だよ」
ファルコムは冷静にそう言うと黄色い蜘蛛を縦斬りで反撃し切り裂く。
932ダメージを受けて戦闘不能になる黄色い蜘蛛。
「シャ~~!」
ファルコムの実力と状態異常が通じないことを悟った蜘蛛達は、驚き慄き正に蜘蛛の子を散らすように四方八方に散っていく。
「よし! 道が拓けた!」
ファルコムはそう言うと、前進して蜘蛛の群れの中心に突入する。
「ファルコムさん? 早い、早いですよ! もう少し敵を倒してから……」
ネプギアはそう言ってファルコムを止めようとするが、ファルコムは止まらない。
一気に敵を倒しはしたが、まだ30匹以上の蜘蛛が残っている。
流石のファルコムも囲まれたら危険だ。
「敵は怯んでるよ! この隙に……あっ!」
突然ファルコムの動きが止まる。
「なに?」
ファミ通が驚くと、「見て! 糸がファルコムの足に絡まってるわ!」とアイエフがファルコムを指差す。
アイエフの言う通り、いつの間にかファルコムの足元には白い糸が絡まっていた。
プラエは顔を青くして、「あれじゃあ、ファルコムさんが動けないよ!」と悲鳴を上げる。
「シュゥゥゥーッ!」
それと同時に散って行った蜘蛛達がファルコムに素早く近づいていく、「しまった……罠か……」ファルコムは悔しそうに唇を噛む。
蜘蛛達は逃げると見せかけて、地面に蜘蛛の巣を張って罠を仕掛けたのだ。
「今行きます!」
ネプギアは駆けだすとビームソードで地面に張った蜘蛛の巣を切り裂きながらファルコムの元に進んで行く。
アイエフとファミ通とあんみつもそれに続く。
「来ちゃダメだ。君も囲まれるぞ! それに、あたしはこれぐらいじゃ負けないよ」
ファルコムは足が動かなくても、迫り来る蜘蛛に恐れず剣を構える。
「シャーー!」
蜘蛛達はファルコムを囲むと一斉に口から糸を吐く。
ファルコムは剣で糸を斬り払うが、数が多く少しづつファルコムの体に糸が絡みついて行く。
それと同時に蜘蛛達の一部がファルコムに近づいて行く。
「くっ!」
一匹の黄色い蜘蛛がファルコムに噛みつき、31ダメージが当たるが相変わらずHPゲージは殆ど減らない。
「ていっ!」
ファルコムは糸が絡みつきながらも剣を振るって噛みついてきた蜘蛛を切り裂くと809ダメージを与えて蜘蛛を戦闘不能にする。
糸で動きは鈍ってダメージは落ちているが、問題なく一撃で倒せている。
「これなら、ファルコムだけで倒せるかも」
糸をかき分けながらファミ通がそう言うが、「ダメです。その前に毒と麻痺でファルコムさんが倒れてしまいます!」とネプギアが叫ぶ。
その間にも黄色い蜘蛛は次々とファルコムに群がる。
「ちいっ……」
五匹まではファルコムも応戦していたが、六匹目でファルコムの動きが止まる。
ファルコムのダークイエローのゲージが満タンになっている。
「くっ……麻痺か……」
ファルコムはそう言うと片膝を着いてしまう。「耐性には自信があったんだけど、予想以上に蓄積が早いね」とファルコムは悔しそうにそう言う。
レベルの高いファルコムは高い麻痺耐性を持っていたが、五匹の蜘蛛に連続で噛まれて麻痺ゲージが満タンになってしまったのだ。
「ファルコムさんが遠くて治療が届かないです~」
コンパが半泣きになりながら言う。
前進し過ぎたファルコムはコンパやロムの治療の範囲外に出てしまったのだ。
「こっちも処理が追い付かないわ」
ユニは銃を撃ってファルコムに近づく蜘蛛を牽制するが、数が多すぎて効果が見込めない。
「シャー!」
今度は黒い蜘蛛が集団でファルコムに襲いかかる。
「麻痺の後は毒か……これはマズイかな」
ファルコムがそう言っている間にも六匹の黒い蜘蛛がファルコムに噛みつく。
同時に青紫色のゲージが満タンになって毒が発動してしまう。
「ファルコムさん!」
ネプギアは声を上げながらファルコムに近づこうとするが、残りの20匹近い蜘蛛が妨害しに来て近づけない。
「はぁはぁ……」
ファルコムが毒で苦しそうに息をしている間に12匹の蜘蛛が次々と攻撃をしてくる。
毒の状態異常の効果と麻痺で動けない状態で、連続で攻撃を受けて、ファルコムのHPゲージはあっという間に五割を切っていた。
「女神化します! 足止めを! プラエちゃんは時間操作で私達の援護をミクちゃんはスピードアップの歌に切り替えて」
ネプギアが指示を出すと、アイエフは、「了解!」と頷き蜘蛛の群れに斬り込み、ファミ通も、「オッケー」と言ってアイエフの後に続き、「承知。ファルコム殿を頼みます」とあんみつもそれに続く。
同時にミクの歌が切り替わり、プラエの超能力が発動する。
「アタシ達も変身するわ。行くわよ、ロム、ラム」
ユニがそう言うと、ロムとラムは「「うん」」と同時に頷く。
「「「「プロセッサユニット装着」」」」
アイエフとファミ通とあんみつが足止めをしている間に四人の女神候補生達が女神化をする。
「はあああああ!」
女神化したネプギアは雄叫びと共に蜘蛛の群れに突入していく。
「ていっ!」
M.P.B.Lのブレード部分で素早く一体の蜘蛛を切り裂くと、クリティカルヒットで3892のダメージが出て蜘蛛がオーバーキルで戦闘不能になる。
「シュー!」
蜘蛛達は突入して来たネプギアに対して、遠巻きに距離を置いて囲ってくる。
ファルコムを倒すまでの時間稼ぎをするようだった。
「このままじゃファルコムさんが……」
女神化したネプギアでも、この散らばった蜘蛛を一体一体倒して行ったら、その間にファルコムが倒されてしまう。
(これしかない!)
ネプギアは心の中でそう決めると、右手のM.P.B.Lを降ろす。
「なにしてるの! 早く倒しなさい!」
ユニは武器を降ろしたネプギアを叱りつけるが、ネプギアはそのまま無防備で突撃をしてしまう。
「ここなら届く! ヒール!」
ネプギアは前進を止めるとヒールの魔法を唱える。
同時にファルコムのHPが回復する。
「え……」
驚きの声を上げるファルコムに、「ヒール!」と続けてネプギアが魔法を唱える。
更にファルコムのHPが回復する。
「なにしてるの! そんなことしたらアンタが襲われるわ!」
ユニが悲鳴に近い叫びを上げる。
ネプギアは強引にヒールの魔法の射程内に飛び込みファルコムを救おうというのだ。
しかし、HPを回復する行為は敵のヘイトを蓄積し、攻撃対象になりやすくなる上に、今のネプギアはファルコムを助ける為にヒールを連続で唱え続けているので動けない。
「シャーー!」
案の定ヘイトの溜まった蜘蛛達は遠巻きに時間稼ぎをするのを止めて、無防備なネプギアに襲い掛かる。
ネプギアの周囲に蜘蛛が群がると蜘蛛達はネプギアに噛みつく。
「くぅぅ!」
連続で攻撃を受けたネプギアの表情が歪む。
単体のダメージ自体20前後に満たないが、ファルコムと同じように状態異常のゲージがどんどん上昇していく。
「ロム、コンパ! 麻痺の治療を優先に! ラムとイストワールさんはネプギアのHPを回復して!」
ユニが素早く指示を飛ばすと前進をする。
合わせてロム達も前進すると、ネプギアを回復魔法の射程内に入れる。
「リフレッシュ!」
「コンパの麻痺治しです~」
ロムとコンパが同時に状態異常の治療をすると、ネプギアの状態異常ゲージの上昇が止まる。
「ラムちゃん式ヒール!」
「天の恵み!」
続いて、ラムとイストワールがネプギアのHPを回復する。
ネプギアのHPが回復するが、また蜘蛛の攻撃を受けて減少してしまう。
「くっ……こっちの回復速度とダメージ速度が拮抗していますね」
イストワールは、彼女にしては珍しく焦りの表情を浮かべて唇を噛む。
「ファミ通! 少しでも敵を倒して!」
アイエフはそう叫びながら蜘蛛の一体を切り裂くと、「うん!」とファミ通も同じ蜘蛛を殴り付ける。
一体の蜘蛛が戦闘不能になるが、まだまだ蜘蛛は沢山残っている。
「ああっ! ギアちゃんが毒になってしまいました~」
コンパは青ざめた顔でそう言うと、イストワールが、「麻痺になったらファルコムさんも倒れてしまいます。今は、毒は無視して麻痺にならないようにしてください」と叫ぶ。
「まったく! 無茶をしてくれるわ!」
ユニはそう言うと、回復弾をネプギアに撃ち込んでHPを回復させる。
ネプギアは瀕死のファルコムを回復し、後衛は全員でネプギアを回復、アイエフとファミ通は少しでも敵の数を減らすという状態になっていた。
(よかった……みんなにも私の思っていることが伝わったみたい)
ネプギアはヒールを唱えながら、心の中でそう呟く。
ネプギアは仲間を信頼して、ファルコムを救う為に敵陣のど真ん中で回復魔法を使うという無茶をしたのだ。
(でも、このままじゃキリがない……MPも無くなっちゃう……何とかファルコムさんを状態異常から回復させないと……やっぱりアレしかない。出来るかどうか分からないけど、私がやらなくちゃ!)
ネプギアはそう心に決めると、「ファルコムさん少しだけ! あと少しだけ耐えて下さい!」と叫ぶと祈るように両手を組む。
「わ、わかったよ……」
ファルコムは苦悶の表情を浮かべながらネプギアに返事をする。
「……光と水よ……わたしの声に応えて……」
ネプギアが魔法の詠唱を始めると、ペンネルが宙に青白い光の魔法陣を描く。
「あの魔法は……」
イストワールがネプギアの様子を見てそう言うと、「ロムちゃんのちりょうだよ?」とラムが続けて言う。
「ネプギアあの魔法使えたの!?」
ユニが驚きの表情を浮かべると、「ネプギアちゃん、ダメ! 詠唱が間に合わない」とロムが叫ぶ。
ちりょうだよ、はHPを大量に回復し状態異常を全て取り除くという抜群の回復効果を持つが、詠唱に時間がかかり、ロムはその詠唱が終わるまでファルコムの体力が持たないと思ったのだ。
「いえ、魔法の詠唱が早い! あれは詠唱省略!」
イストワールが叫ぶ。
詠唱省略とは呪文を飛ばして短いものにして発動する高等技術。
素早く発動できるが、通常よりMPを大量に消費する上に効果も少し下がってしまう。
尚、更に上位技術に詠唱自体をしない、詠唱破棄がある。
「ちりょうだよ!!」
ネプギアが魔法を発動すると同時に、ファルコムは光り輝く青い水色の光に包まれる。
「これは!」
ファルコムが驚きの声を上げると、ファルコムの毒と麻痺の状態異常が一瞬で消え去る。
詠唱省略をしたのでHPの回復は僅かだが、ファルコムにはそれで充分だった。
「ふん!」
ファルコムが力を入れると絡みついた蜘蛛の糸がブチブチと音を立てて引き裂かれる。
「ガッツの発動したあたしは誰にも止められないよ!」
僅かな回復が功を奏したのか、ファルコムはガッツが発動してパワーアップしていた。
そのおかげで蜘蛛の糸も容易く切れたのだ。
続けてファルコムは剣を構えると、「剣魔法ソーサリアン!」と剣を振り下ろす。
剣は輝きを放ち、剣から無数の光の矢が撃ち出される。
「ジャアアアア!」
光の矢がファルコムの周囲を囲んでいた全ての蜘蛛に突き刺さり、クリティカルヒットで2000近い大ダメージが当たり12匹の蜘蛛が一瞬でオーバーキルで戦闘不能になる。
【剣魔法ソーサリアン】は魔法属性の攻撃で周囲の敵にダメージを与えることが出来る。
ファルコムも蜘蛛の糸に捕まっていなければ、この技で敵を一掃できただろう。
「今行く!」
続いてファルコムは素早くネプギアの元に走り寄り、「フォトンブレーーーード!」と叫び剣を振り上げると、アイスカリバーに匹敵する巨大な光の刃がファルコムの剣を包む。
「てぇぇぇぇい!」
ファルコムはそれを振り下ろすとネプギアの周囲に居た蜘蛛達が5000以上のダメージを受けて全て消滅する。
これで敵は全滅したことになる。
「よかった……間に……合った……」
ネプギアはそう言うと変身が解けて、ガクリと膝を落す。
「おっと」
ファルコムは手を伸ばし素早くネプギアを抱きとめる。
「ごめん。あたしのせいで……」
ファルコムはネプギアをお姫様抱っこで抱きかかえると、そう言って詫びる。
「ファルコムさんが無事ならそれでいいんです」
ネプギアはそう言うとファルコムに向かってニッコリと微笑む。
「ふーむ……ナイトのピンチを救うお姫様ってトコだね。一時はどうなるかと思ったけど、これは良い記事になるよ」
ファミ通はネプギアとファルコムの写真を撮りながらそう言うと、「土壇場で無茶してくれるわね」とアイエフが胸をなでおろす。
「ネプギア、凄いわ! いつの間にちりょうだよが使えるようになったの?」
変身を解いたラムがネプギア達に走り寄ってそう言うと、ロムもそれに続き、「ネプギアちゃん凄い(ぱちぱち)」と感心をする。
「まだ練習中で、ぶっつけ本番だったけど、上手く行ってよかった」
ネプギアがそう言って微笑むと、「しかも詠唱省略なんて無茶して。失敗したらどうするつもりだったのよ」と近づいたユニがネプギアの頭を軽く小突く。
「その時はユニちゃんがフォローしてくれるかなぁ~って……」
ネプギアが上目遣いでユニを見ながらそう言うと、ユニは呆れながら腕を組んで、「まったく……フォローする側の身にもなって欲しいわ」と言う。
「ネプギアさん、今日はお疲れですから地鎮祭の練習は……」
イストワールがそう言うと、「いえ、やります」とネプギアは遮るように言う。
「ぎあちゃん偉いです~。わたしが治療しますから頑張って下さい」
コンパがそう言うと、ファルコムはネプギアを優しく降ろして、コンパの治療を受けされる。
「あたしとしたことが、とんだ失敗だったよ。ごめんね、みんな」
ファルコムは頭を下げてそう言うと、ネプギアは、「そんなに謝らないで下さい。誰にだって失敗はあります」穏やかな声で言う。
「ネプギアちゃんも失敗することがあるの?」
ロムがそう言って首を傾げると、アイエフが、「この子、前におだてられて調子に乗って【一人でモンスターを倒す】とか言ったクセに、全然攻撃が効かなくて、泣きながら私達に助けを求めたことがあるのよ~」と少し意地悪そうな声で言う。
「あーあー! そんなに詳しく言わなくてもいいじゃないですか~」
ネプギアは顔を真っ赤にしながらアイエフに抗議するが、「アンタも結構マヌケなとこがあるわね」とユニがクスリと笑う。
「でも、その後はネプギアさんは慎重に戦いに臨むようになりました。失敗をキチンと反省して次に活かすのは良いことですよ」
イストワールがそう言ってネプギアをフォローすると、「そうだね、あたしも反省しないと」とファルコムが後頭部を掻きながら言う。
「だったら船旅止めたら、毎回嵐に巻き込まれるんでしょ?」
アイエフがそう言うと、「それは無理な相談だね。冒険をしないと、あたし死んじゃうし」とファルコムが平然と言い放つ。
「本当に冒険バカね~」
アイエフはそう言ってお手上げのポーズで呆れると、コンパが、「治療終わりました~」と言う。
「それでは戻りましょう」
イストワールがそう言うと一行は車が停めてある地点まで歩いて行く。
その後一旦ギャザリング城に戻って、エルフの村に向かった。
ちなみにファルコムがネプギアをお姫様だっこしている姿はファミ通の記事に載り大きな話題となったが、ファルコムのファンの女性からは恨まれることになる。
***
ここはエルフの村。
一週間前、ネプギア達はビィトリットにこの場所に案内されて、地鎮祭の練習を始めたのだ。
村の中にある三十畳ほどの建物の中で、ネプギアとユニはTシャツにスパッツ、ロムとラムは体操着にブルマ姿で、エルフ達とプラエの奏でる楽器の音とミクの歌に合わせて舞を踊っている。
その姿をビィトリットと同行したファミ通とあんみつとフィナンシェが見つめている。
「あうっ……」
ロムが足を滑らせて、こてんと転んでしまう。
「痛い(しくしく)」
ロムが膝を押さえて泣きべそをかくと、「ロム様、大丈夫ですか?」とフィナンシェが心配そうに駆け寄る。
「ロムちゃん立って。飽きられたら司会終了よ」
ラムはそう言ってロムに手を差し出すが、ユニは呆れ顔で、「なによそのテレビのチャレンジバラエティーみたいなのは?」と首を傾げる。
「一般の人がテレビの司会にチャレンジして、成功すれば百万クレジットもらえるとか?」
ネプギアは右手の人差し指を頬に当てながらそう言うと、ユニが、「そうそう。でも、失敗すると床が開いて泥のプールに真っ逆さまー……って、違う!それを言うなら、諦めたら試合終了よ!」とノリツッコミをする。
「泥のプール……楽しそう……(ぱしゃぱしゃ)」
ロムが楽しそうにそう言うと、「泥んこ遊び心やり放題ね」とラムも嬉しそうに言うが、「止めて下さい。ブラン様に叱られてしまいます」とフィナンシェ慌てて止める。
「だから、違うって言ってるでしょ!」
ユニは腕を組んでそう言って唇を尖らせると、ネプギアが、「ユニちゃんがボケるからだよ」と言うが、「先にボケたのはアンタとラムでしょうが」とユニが叫ぶ。
「わたし失敗ばっかり……(しゅん)」
ロムはそう言うと、体育座りで落ち込んでしまう。
彼女自身真剣に取り組んでいるのだが、運動神経がお世辞にも良いとは言えず、音楽について行けなかったり、先程のように転倒してしまうことが多々ある。
「みんなに迷惑かけてる……(めそめそ)」
ロムがそう言うと、「そんなことないよ。私達全員でやらなきゃ意味ないんだし、私はロムちゃんが出来るようになるまで、どこまでも付き合うよ」とネプギアが右手でロムの頭を優しく撫でながら言う。
「そうよ、一度や二度の失敗がなんだって言うの。努力、根性、気合よ」
ユニは右手で握りこぶしを作り力強くそう言うと、「わー、ユニちゃん、スポ根」とネプギアが柏手を打ちながら言う。
「立ってロムちゃん」
ラムがそう言って左手をロムに差し出すと、ロムはその手を握る。
ラムが立つように力を入れると、ロムは素直に立ち上がる。
「転んだら立てばいいのよ。人生七転び躍起って言うじゃない」
ラムはロムの目を見ながらそう言うが、「ムキになってどうするのよ……」とユニにツッコミされて、「それを言うなら七転び八起きだよ」とネプギアに訂正される。
「……八回転んだらどうなるの……(おずおず)」
ロムは自信なさそうにそう言うと、「九回立てばいいのよ」とラムが自信満々に言い、「立てないなら、私達が手を貸してあげるから。だから、もうちょっと頑張ってみよ。ね?」とネプギアがロムの顔を覗き込みながら優しい声で言う。
「うん! 頑張る(ふんす)」
ロムは胸の前で小さくガッツポーズを決まると鼻息荒く言うと、「そうそう、その意気よ」とユニが、ぐしぐしと少し乱暴にロムの頭を撫でる。
「ブラン様から伺ったのですが、ロム様は大分変られたそうですよ」
一連のやり取りを見ていたフィナンシェがそう呟くと、「そうなんですか?」とネプギアが首を傾げる。
「以前のロム様は、出来ないことは、出来ないと諦めて、それを伸ばすようなことはしなかったそうです」
ルウィーのメイドとして勤めているフィナンシェはブランからロムとラムの話を色々と聞いているようだ。
「やはり、ネプギア様との出会いが大きいのでしょう。ネプギア様と出会ってからのロム様は口癖のように【ネプギアちゃんみたいになりたい】とおっしゃっているそうですから」
フィナンシェがそう言うと、ネプギアは恥ずかしいのか少し顔を赤くして、「ロムちゃんにそう言ってもらえるのは嬉しいです。私もロムちゃんの目標になれるように頑張ります」と言う。
「そろそろ再開してもいいかしら?」
ビィトリットが涼やかな声でそう言うと、「あっ、すみません。私達の為に時間を割いてもらっているのに」とネプギアが謝る。
「いいのよ。あなた達のその絆は見ていて心地がいいわ。他のエルフもそう思っているし、精霊達もそう言っているわ」
ビィトリットが微笑みながらそう言うと、楽器を奏でていたプラエもエルフ達もにこやかに微笑む。
歌っていたミクも笑顔で手を振ってくれた。
ちなみにプラエのバイオリンはエルフ達にも評判が良く、直ぐに仲間として溶け込めたようだ。
ミクもネプギアとビィトリットが付きっきりでエルフ語の歌を教えたので今は滑らかにエルフ語の歌を歌うことが出来た。
その歌声はエルフ達を驚かせるものだった。
「よーし! それじゃあ、やるわよ」
ラムが元気よく左手を上げてそう言うと、「おー!」とロムも右手を上げる。
「うん、頑張ろうね」
ネプギアはそう言うと、続けて柏手を打って、「そうだ! 今日のレッスン上手く行ったらご褒美に何か買ってあげるね」とロムとラムに向けて言う。
「ホント!」
ラムがそう言って目を輝かせると、「うれしい(わくわく)」とロムも目を輝かせる。
「いいの? そんな約束しちゃって」
ユニはネプギアの甘やかしぶりに少し呆れながらそう言う。
「いーすんさんにおこづかい貰ったから大丈夫だよ。それに、ご褒美とかあった方が張り合いが出ると思うんだ」
ネプギアがそう言うと「まぁ、一理あるわね」とユニが腕組みしながら頷く。
「だから、私もご褒美欲しいな~」
ネプギアはそう言いながら、ユニの顔を覗き込む。
ユニは溜息を吐いて、「はいはい……終わったらポカルぐらいおごってあげるわよ」と呆れながら言うと、ネプギアは両手を上げてバンザイして、「わーい」と子供のように喜ぶ。
ちなみにポカルとは正式名は【ポカルスィート】と呼ばれる定番のスポーツドリンクだ。
その後、女神候補生達は今まで以上に真剣にレッスンに取り込み、驚く程の成長を見せた。
***
エルフの村でのレッスンを済ませたネプギア達は思い思いの場所で自由時間を過ごしていた。
ネプギアは広間で休憩をしているロムとラムに近づくと、二人に向かって、「今日はよく頑張ったね。ご褒美なにがいいかな?」と言う。
二人はごしょごしょと小声で相談した後に、「「おもちゃ屋さんに行きたい!!」」と声を揃えて言う。
「おもちゃ屋さんか……」
ネプギアがあごに右手を当てて少し難しい顔をすると、「ダメなの(しゅん)」とロムが少し悲しそうな顔をする。
「ううん、全然ダメじゃないよ。ただ、この辺りにはおもちゃ屋さんが無いからプラネテューヌまで行かなくちゃって思ったの」
ネプギアがそう言って説明をすると、「そっかー、この辺田舎だもんね」とラムが納得したように頷く。
「おもちゃ屋さんだけに、トーイね」
ネプギアがそう言うと、ロムとラムは、「「え?」」と言いながら同時に小首を傾げる。
「バカなこと言ってるんじゃないわよ」
「ひゃん!」
ユニの声がすると同時にネプギアの頬に冷えた缶ジュースが当てられる。
「そのつまらないダジャレいい加減に止めなさい」
ユニは呆れた声でそう言うと、おごりの約束をした缶のスポーツドリンクをネプギアに手渡す。
ネプギアは、「ありがと、ユニちゃん」とお礼を言うが、「でも、つまらないはヒドイよー」とダジャレに関しては口を尖らせて抗議する。
「え! ダジャレ? どこどこ、どの辺がダジャレなのー! 気になるー!」
ラムが興味津々にそう言ってネプギアに詰め寄ると、「教えてネプギアちゃん(すりすり)」とロムもネプギアに擦り寄ってくる。
「うんとね、おもちゃは英語でTOY【トーイ】って言うの。それで、おもちゃ屋さんが遠いから、トーイと遠いをかけてダジャレになるんだよ」
ネプギアがダジャレを解説すると、「「おおー」」とロムとラムが感嘆の声を上げる。
「はぁ……」
ユニはそんな三人を見て頭を押さえながら、溜息を吐く。
「それじゃあ、今月の神次元のお仕事の帰りにプラネテューヌのおもちゃ屋さんに寄ろうね」
ネプギアがそう言うと、「「はーい」」とロムとラムは声を揃えて返事をする。
ルートビルド計画の最中だからといって、神次元の仕事を放っておくわけにもいかない。
神次元にもネプギア達を待っている多くの信者がいるのだから。
***
それから数日後。
G.C.2019年7月7日 日曜日
ネプギア達は神次元に赴き、溜まった仕事を片付けると、おもちゃ屋さんに行くべくプラネテューヌの街を歩いていた。
イストワール、アイエフ、コンパ、ファルコム、ミクは先にギャザリング城に戻り、ファミ通は出版社に用事があるので、それを片付けた後で女神候補生達と合流し車でギャザリング城に帰る予定だった。
「プラエ、大丈夫かな?」
ラムが心配そうな声を出すと、「うん、心配」とロムも同じく心配そうな声を出す。
プラエもネプギア達と同行したがったが、病弱な彼女は途中で発熱をしてしまい、あんみつに抱きかかえられながら、タクシーでギャザリング城に戻って行った。
「あとでお見舞いに行こうよ」
ネプギアがそう言うと、「そうね、そうしましょ」とユニが答える。
「ところで、ロムちゃんとラムちゃんは何が欲しいか決めてあるの?」
ネプギアがそう尋ねると、ロムとラムは声を合わせて、「「ドンジャラー」」と両手を上げてバンザイしながら言う。
「ドンジャラと言えば、超次元ドンジャラが有名ね」
ユニがそう言うと、「私も昔お姉ちゃんと何度もやったよ」とネプギアが答える。
「一番新しいのは、わたし達も牌になってるのよ」
ラムが自慢気にそう言うと、「わたしとラムちゃんの牌で、ルウィーの双子って役になるの(うきうき)」とロムが嬉しそうに言う。
「そうなんだ。他には何があるの?」
ネプギアがそう尋ねると、「ネプギアちゃんとユニちゃんで、ユニギアって役になるの」とロムが言う。
「何でアタシとネプギアの組み合わせが役になるのよ?」
ユニが意外そうに言うと、「え……ユニちゃん嫌だった」とネプギアが少し悲しそうな声で言う。
それを聞いたユニは顔を赤くして、「べ、別に嫌じゃないわよ! けど、アタシ達姉妹とかじゃないし、国も別だし……とにかく疑問に思っただけよ! だからそんな顔しないでよ!」と一気にまくしたてる。
「そうなんだ、よかった。確かにどうして役になるんだろうね?」
ネプギアはそう言って首を傾げるが、「でも、ユニちゃんと一緒で役になるのは嬉しいかな。ユニギア、ユニギア」とすぐに考えるのを止めて、嬉しそうにユニギアと連呼する。
「あんまり、ユニギアユニギア言わないでよ。恥ずかしいでしょ」
ユニはそう言いながらも顔は少し嬉しそうだった。
***
おもちゃ屋にたどり着いたネプギア達。
ショーウィンドウを見たラムが、ペタリとそれに両手を張り付けると、「あー! マジカルジェミニの変身ステッキだー!」と叫ぶ。
「しかも、プラネテューヌ限定カラー(まじまじ)」
ロムも同じように物欲しそうな顔でショーウィンドウを眺める。
しかし、「同じようなの持ってるでしょ、アンタ達」とユニが冷めた声で二人に言う。
「違うもん。アレはシャイニングダブルの変身ステッキだもん」
ラムがユニに向き直りそう言うと、「全然違う(きりっ)」とロムも真剣な顔で抗議をする。
「そうだよ、ユニちゃん」
ネプギアはそう言うとNギア操作を始めて、インターネットショップの画面を呼び出す。
「これがマジカルジェミニの変身ステッキ、これがシャイニングダブルの変身ステッキ、これがプリンセスツインズの変身ステッキ……」
ネプギアがそう言って説明をするが、「……全部同じじゃないの」とユニは相変わらず冷めた態度を崩さない。
「違う(ぷんぷん)」
ユニの態度に不服そうに声を上げるロム。
更に、「これだから、とーしろは。凍死しちゃうわよ」とラムが言うが、「トーシロはそういう意味じゃなくて、素人って意味よ」と冷めた声でツッコミを入れる。
「ユニちゃん。もっとよく見て、マジカルジェミニの変身ステッキは先端の部分がハート形で持ち手にリボンが付いてるの。シャイニングダブルは先端が星形で持ち手のリボンが蝶々結びになってて、プリンセスツインズは……」
ネプギアは更に一生懸命にユニに説明するが、「何でアンタまでそんなに詳しいのよ……」とユニは説明より、何でネプギアが子供向けのアニメに詳しいのかの方が興味があるようだった。
「ロムちゃんとラムちゃんに頼まれて、改造するついでにアニメの方も見たからだよ」
ネプギアが素直にユニの質問に答えると、「ふーん……どっちにしろ、今日買うのはドンジャラだけにしなさい。ドンジャラならプラエも一緒に遊べるでしょ」とユニはピシャリと言い放つ。
「「はぁ~~い……」」
妹分のプラエのことを持ち出されたロムとラムは、渋々諦めたように元気のない返事をする。
そんな二人を見たネプギアは、「そんなに落ち込まないで。後で私が作ってあげるから」と優しい声で言う。
すると、「ホント(きらきら)」とロムが目を輝かせて、「やったー! ネプギア大好きー!」とラムがネプギアに抱き着く。
「ふぅ……またそうやって甘やかすんだから」
ユニは呆れた声でそう言うが、その表情はやや嬉しそうに見えた。
***
その後、おもちゃ屋でドンジャラを買った女神候補生達が外に出ると、黄色いスーツを着た初老の男性が道行く人に声を掛けていた。
「Excuse me」
初老の男性がそう言うと、通行人は手を横に振って逃げて行ったり、「のー、いんぐりっしゅ~」と言いながら逃げたりしている。
「みんな、何であのおじいちゃんから逃げるのかな?」
ロムが不思議そうに首を傾げると、ラムが、「そりゃそうでしょ。処刑とか言われたら誰だって逃げるわ」と言うが、「それは、エクスキューション。あの人が言ってるのは、エクスキューズミーよ」とユニが訂正を入れる。
「「えくすきゅーずみー?」」
ロムとラムが同時に首を傾げて言うと、「英語で、誰かに話しかける時や、何かを尋ねる時に使う【すみません】とか【失礼します】の意味だよ」とネプギアが説明する。
「英語で話しかけると逃げるって、あれウイルキーさんのワンポイント英会話?」
ラムの言葉に、ユニが、「何でそんな古いこと知ってるのよ……」不思議そうな顔をして尋ねると、ロムが「ミナちゃんが教えてくれた……」と答える。
「何か困ってるかな?」
ネプギアはそう言って男性の側に行くと、「Do you need any help?【何かお困りですか?】」と男性に声を掛ける。
男性は、「Oh!」と言いながら嬉しそうに振り返ると、「Where is the smoking area?【喫煙所はどこにありますか?】」とネプギアに尋ねる。
すると、ラムが、「おじーちゃん、お相撲さんはキングじゃなくて、横綱よ」と言うが、「さっきから英語って言ってるでしょ……」とユニが頭を抱える。
ロムが、「なんて言ってるの?」とユニに質問すると、「タバコが吸えるところはどこですか?……って聞いてるのよ」とユニが答える。
「I will guide you【私はあなたを導きます】」
ネプギアが男性にそう言うと、男性は嬉しそうに、「Thank you」と答える。
ネプギアはユニ達の方に振り返り、「これから、この人を喫煙所まで案内するけど、付き合ってくれる」と尋ねると、ユニは呆れた顔で、「相変わらずお人好しね……」と言うが、直ぐに「いいわよ」と了解の返事をする。
ロムは、「うん」と頷くが、「土俵じゃないの?」とラムが首を傾げながら尋ねる。
ユニは頭を抱えて、「アンタ……アタシの話聞いてた?」と呆れかえる。
***
ネプギアは男性と英語で会話をしながら喫煙所まで案内すると、男性は嬉しそうに「Thank you. Cute lady【ありがとう。かわいいお嬢さん】」と言いネプギアと握手をする。
ネプギアは「You are welcome【どういたしまして】」と言って男性から離れる。
男性は左手を振りながらネプギア達を見送った後、パイプ煙草に火を付ける。
「あれ、ネプギア様じゃないのか?」
「ユニ様にロム様とラム様もいたぞ」
「女神様達がどうしてこんなところに?」
先に喫煙所にいた男性達がそう言うと、初老の男性は、「megami?」と言うと「Those girls……【あの娘たちが】」と言い、ネプギア達が去って行った方を興味深そうに見つめていた。
「ネプギアって、英語話せるだー」
ラムが感心したように言うと、「ネプギアちゃんすごい(きらきら)」とロムも目を輝かせて尊敬の目でネプギアを見る。
「英語は覚えた方がいいよ」
ネプギアがロムとラムに言うと、「そうね、話せればなにかと便利よ」とユニが同意する。
ネプギアは頷きながら、「うん、エエ語だからね」と楽しそうに笑うが、ユニは、「アンタねぇ……」と頭を抱える。
すると、「えー、エゴだよそれは」とネプギアが言ってドヤ顔を決める。
「なになに? エエ語は分かったけど、えーエゴって?」
ラムがネプギアに質問すると、「エゴって言うのはね、自尊心、うぬぼれ、自分の利益を重視し、他の人の利益を軽視する考え方のことを言うんだよ」ネプギアが説明を始め、「ふんふん(こくこく)」とロムがしきりに頷く。
ネプギアは更に、「英語はエエ語だから覚えた方がいいけど、英語が苦手な人にはそれがエゴに見えるかもしれないから、えー、エゴだよそれは、になるんだよ」と説明を続ける。
「「おおーー」」
ロムとラムは感心したように二人で声を揃えてうなずくが、「はぁ……よくもまぁ、そんな下らないダジャレを思いつくわね」とユニが肩を落とす。
「ネプギアみたいな人をバイテンガールって言うんだよね?」
ラムがネプギアに感心しながら質問すると、「新聞と牛乳で250クレジットになりーます」とネプギアが楽しそうに言うが、「って、バイテンガールじゃなくてバイリンガルだよ」とノリツッコミで返してくる。
「ネプギアちゃん楽しい(にこにこ)」
ロムが楽しそうに笑うと、「アタシは疲れるんだけど……」とユニは肩を落とす。
「それにしても、ネプギアは本当にお人好しよね」
ユニ話を変える為にネプギアにそう言うと、「でも、どんな小さなことでも、人助けは大事だよ」とネプギアが答える。
「うん……ネプギアちゃんは優しい(にこにこ)」
ロムは嬉しそうに言うと、「あの時も、わたしのペン一緒に探してくれた(めろめろ)」と続けて顔を赤らめながら言う。
「うんうん、人助けは気持ちいいもんね」
ラムが、うんうんと頷きながら言うと、ユニは、「まぁ、アタシも嫌いじゃないけど」と少しぶっきらぼうに答える。
「ところで、ネプギアはあの横綱のおじーちゃんと何話してたの?」
ラムが質問すると、「もぅ、ツッコむ気も起きないわ」とユニが呆れ顔を浮かべる。
「ええとね、あのおじいさんは色々な世界を旅してるんだけど、ゲイムギョウ界に来るのが初めてで、これからゲイムギョウ界の言葉を勉強して次合う時までに話せるようになるって言ってたよ」
ネプギアがラムの質問に答えると、「ふふっ……アタシ達が女神ってこと知ったら驚くかもね」とユニが笑い、ネプギアも、「そうかもね」と言って微笑む。
ピピピピ!
ネプギアのNギアから着信音がすると、ネプギアはNギアを取り出し、「ファミ通さんだ」と言うと通話を始める。
「はい……はい、もう少し時間がかかるんですか? ……わかりました。それじゃあ、連絡待っています」
ネプギアはそう言うと、Nギアの通話機能をOFFにする。
「ファミ通はまだ迎えにこれないの?」
ユニがそう言うと、「うん、終わったら連絡するから、どこかで時間を潰してて欲しいって」とネプギアが事情を説明する。
「うーん……どこで時間潰そうかしら……」
ユニがそう言って腕組みをすると、ネプギアが、「プラネタワーに行ってみない。私、久しぶりにお姉ちゃんに会いたいし」と提案する。
「まぁ、別にいいけど。相変わらずのシスコンね……もうネプテューヌさんが恋しくなったの?」
ユニが少し意地悪そうに言うと、「そ、そんなのじゃないよ!」とネプギアは慌てて否定するが、「本当に?」とユニに詰め寄られると、「本当はちょっとだけ……」とネプギアは恥ずかしそうにうつむいて言う。
***
ネプギア達女神候補生がプラネタワーに向かっている頃……。
プラネタワーの上層階のテラスには一人の女性が腕組みをして立っていた。
身長は165cm程の女性としてはやや高めな背丈で、頭部にはネジのような髪飾りを二つ付けている。
体のラインは女性としてとても美しい曲線を描いている。かなりグラマーであり、控えめに言ってもボンキュッボンである。
跳ね上がった紫色の前髪を持ち、後ろ髪は長い二つの三つ編みで結ばれている。
瞳は青く、その中にはな電源マーク浮かび上がっているが、女神候補生とは違い完全に白い光が灯っている。
服は女神化したネプギアの着ているレオタード型に似ているが、色は黒く模様もピンクに近い薄紫色のネプギアのものと違い、濃い紫になっている。
女神化したネプギアと同じようにプロセッサユニットも装備しており、全体的にネプギアのものよりワンサイズ大きく重厚なものになっている。
ネプギアの女神化が清楚な天使を連想させるなら、彼女は高貴な戦乙女と言ったところだろう。
「来たわね……」
紫色の女性がそう呟くと、空の彼方から三つの光が、もの凄い速度でこちらに向かって来る。
一つは黒い光、もう一つは白い光、そして最後に緑色の光。
三つ光はテラスに飛び込むように着地すると、その正体が人型の女性だということが分かる。
「わたしの挑戦状に逃げずに来たことは褒めてあげるわ。だけど、これは地獄への片道切符」
紫色の女性がそう言うと、黒い光だった女性が、「ふん……それはこっちの台詞よ」とフンと鼻を鳴らす。
黒い光の女性は紫色の女性より一回り小さいが、それでも女性としてかなり魅惑的であり、こちらもボンキュッボンである。
獅子のたてがみのような荒々しい白く長い髪を持ち、瞳はグリーンで彼女の目にも完全な電源マークが浮かび上がっている。
彼女も同じくレオタード型のスーツとプロセッサユニットを装備している。
色は黒く、ところどころにシルバーの模様が入っているところは、ユニのプロセッサユニットに似っているが、紫色の女性と同じようにサイズが大きく重厚なフォルムになっている。
「今日こそは年貢の納め時よ、ネプテューヌ」
黒い女性は右手で紫色の女性を指差しながらそう言って睨み付けると、「ふふっ……相変わらず威勢だけはいいわね、ノワール」と紫色の女性は余裕の態度で受け流す。
彼女達の言う通り、この紫色の女性の正体は女神化したネプテューヌで、黒の女性の正体は女神化したノワールだった。
ノワールはともかく、ネプテューヌはプルルート並みに姿も口調も変わり過ぎなのだが、事実なのだから仕方ない。
「わたしが最強だってことを教えてやる」
白い光だった女性が仁王立ちでそう言うと、「ブランもやる気満々ね」とネプテューヌが楽しそうに言う。
ネプテューヌ言う通り、彼女は女神化したブランであるが、ネプテューヌ程の変化はなく身長も145cm程度で体つきも凹凸の無いまな板状態であった。
水色のショートヘアーで、もみあげにあたる部分だけが長いのが特徴的だ。
瞳は赤く、女神の印の電源マークが浮かび上がる。
プロセッサユニットの色は全体的に白く、デザインに曲線を多く使用している。
あとは口調も常に荒々しいものに変わっている。
「ふふっ……あなた達では、わたくしに敵いませんわ」
最後の三人目の緑色の光だった女性が自信満々に腕を組んでそう言うと、「それはわたしの台詞よ、ベール」とネプテューヌが言い返す。
最後に残った女性の正体は女神化したベール。
身長はネプテューヌより少し高い程度だが、そのスタイルは圧巻だった、ボンキュッボンどころかボボンキュッボボンである。
緑色の髪をロングポニーテールにしており、瞳は紫で当然のように電源マークが浮かび上がっている。
プロセッサユニット色は白だが、ところどころに緑色の模様がある、他の三人と違い露出が多く、胸の下側と腹部が開いており、レオタードというよりオシャレな水着のようだった。
「勝ち残るのは一人だけだよ」
ネプテューヌがそう言うと、ノワールが、「望むところよ」と言い、ブランも、「この戦いに、二位なんて存在しねぇ。あるのは勝者と敗者だけだ」と言うと、「デッドオアアライブですわ」とベールが言う。
「さあ……ゲームの時間よ……」
ネプテューヌがそう言うと四人の女神の間に緊張が走る。
その時、突然ネプテューヌの体が光り出す。
背が縮み変身前のネプテューヌの姿に戻ると、「ぴょいーん!」といつもの明るい声を出して飛び跳ねる。
「ドキッ☆女神だらけのゲーム大会! ポロリもあるよ!」
ドンドンドン! ぱふぱふぱふ~!
ネプテューヌはVサインを決めると更に太鼓とラッパを取り出して、それを思いっきり鳴らす。
「どこ見て言ってるのよ……」
ノワールもいつの間にか変身を解いており、ネプテューヌのテンションに付き合っていれれないと言わんがばかりにジト目でネプテューヌを見る。
見ると、ブランとベールも変身を解いていた。
彼女達は戦う為に女神化した訳ではなく、空を飛んで来る為に女神化したのだった。
ネプテューヌに関しては三人が女神化して来ることを予想して、その場ノリで変身したのだろう。
「それにポロリなんて誰もしないわ」
ブランが落ち着いた声でそう言うが、「あ、ブランには元々期待してないから」とネプテューヌが笑顔で手を横に振る。
「なんだとテメェ!!」
ブランがそう叫ぶと、「ここはわたくしの出番ですわね」と自信満々にベールが胸を強調する。
「テメェも黙ってろ!」
ブランが青筋を立てながら叫ぶ。
「それにしても、こんな挑戦状なんて送り付けてこないで、メールなり電話なりすればいいでしょ」
ノワールはネプテューヌから送られたであろう、白い紙をひらひらと振りながら言うと、「ふっふっふ~、これぞ、ねぷの挑戦状!! 難易度SSS【トリプルエス)級の理不尽なゲームの始まりだよ」とネプテューヌがVサインを決める。
「宝の地図を見るには、リアルタイムで一時間日光にさらさなくはならないのですわね」
ベールがそう言うと、「そうそう、ベールはよくわかってるねー」とネプテューヌが嬉しそうに頷き、「こんなゲームにマジになっちゃってどうするの」とブランが言うと、「おおう、意外にもブランもノって来た」と驚くネプテューヌ。
「そんなことより、サッサと始めましょ、私だって忙しいところ時間割いてきてるんだから」
ノワールは三人に付き合っていられないと言わんがばかりに呆れた声でそう言うが、「えー? ウキウキ気分で、お土産まで買って来たのに?」とネプテューヌがノワールの持っている洋菓子店のものと思われる紙袋を覗き込みながら言う。
「こ、これぐらい当然よ! 変な勘違いしないでくれる」
ノワールは顔を赤くして焦りながらそう言うと、「流石ノワール、ナイスツンデレ」とネプテューヌがサムズアップしながら言う。
「あなた達とはゲーマーの格が違うところを見せつけてあげますわ」
ベールが自信満々にそう言うと、「どんなゲームでも勝つのはわたしよ」とブランも自信満々にそう言う。
彼女達の話の通り、ネプテューヌがゲームで対戦しようと言う旨の書簡を三人に送り付けて、三人共それに応じたのである。
廃ゲーマーのベールはともかく、真面目なノワールとブランの参加は意外に思えるが、彼女達四人は非常に負けず嫌いでゲームが大好きと言う共通点がある。
ほっとけば朝から夜まで対戦ゲームに興じて、一時は四人でプラネタワーに居座りイストワールを悩ませていた程だ。
その彼女達が挑戦状なる挑発的な形でゲームの対決に誘われれば応じない道理はない。
***
四人はテラスを後にして、テレビとゲーム機の置いてある部屋に移動する。
「それじゃ、初戦はバーチャロボだー」
ネプテューヌは軽いステップで部屋に入るとゲーム機のところまで行き、ゲームディスクをゲーム機にセットするとコントローラーを握りしめる。
バーチャロボはプラネテューヌのロボット対戦ゲームで、昔は一対一の対戦だったが、最近は複数人で対戦するバトルロイヤル形式も採用されている。
丁寧にモニターも四つ用意されており準備は万端のようだった。
「その前に、ネプテューヌ。あなた挑戦状の字が間違ってたわよ」
後から入って来たノワールが、持っていたお菓子の袋をテーブルに置きながらネプテューヌに向かってそう言うと、ネプテューヌは振り返って、「えー? 挑戦状って読めなかった?」と首を傾げる。
「読めはしますけど、挑の字が超えるの超になってましたわ」
ベールがそう言うと、ブランが紙とペンを取り出して、「挑戦状の挑はこうよ」と紙に挑の字を書いてネプテューヌに見せる。
「あー……変換ミスってヤツだね」
ネプテューヌは、バツが悪そうな表情を浮かべてそう言うが、「手書きの文字でどうやったら変換ミスが起こるのよ」とノワールに至極当然なツッコミを受けてしまう。
「もー、ノワールは細かいなー。スーパーなバトルの招待状ってことでいいじゃん」
ノワールのツッコミに言い返せないネプテューヌが開き直ってそう言うと、「苦し紛れのセルフフォローね」と今度はブランにツッコミを受ける。
「でも、わたしの台詞にはちゃんと挑戦状って正しく書いてあるよね?」
ネプテューヌがお得意のメタ発言でそう言うが、「それは読み手の方が読みやすいようにですわ」とベールにツッコミを受けてしまい、「げぇっ! わたしのメタ発言にツッコミをするなんて、反則だよー!」とネプテューヌが驚きの声を上げる。
「ちぇー……こんなふうに言われるなら果たし状にしとけばよかったなー」
三人に次々とツッコミを受けたネプテューヌは拗ねた表情で口を尖らせてそう言うと、「ちなみに果たし状はどう書くか知っていますの?」とベールに質問される。
「それぐらい知ってるよー! ヤイバの刃に多いの多に死亡の死で、刃多死状でしょ?」
ネプテューヌが自信満々にそう言うと、「それはギャグで言ってるの?」とノワールがジト目で見つめてくる。
「え? 違った?」
ネプテューヌが心底不思議そうに首を傾げると、「全然違うわ」とブランが呆れた声を出し、「なんですの? その一昔前の不良の当て字みたいなのは?」とベールも同じく呆れ果てた声を出す。
「ネプテューヌにも分かり易く言うと、果たし状は果物の果の字を、訓読みで、は、と読み果てると書いて、どちらかが果てるまで戦うと言う意味で果たし状よ」
ブランが落ち着いた声でそう説明すると、「えー? 果物の果なんて地味じゃない?」とネプテューヌが不満そうに言う。
「地味とか派手とかは関係ないわ。果実というのは種から始まる植物の帰結、だから終わりを意味する果てるになるのよ」
ブランが説明を続けると、「まあ、ブランは博識ですのね」とベールが柏手を打って感心する。
「これぐらいの知識は知能派のわたしからすれば当然よ」
ブランは得意そうにそう言うが、「言ってる本人には残念ながら果実は実ってませんけど」とベールに胸の部分を見られながら嘲笑されると、「テメェ! どこ見て言ってやがる! その腐った実をもぎ取られてぇのか!?」といつものようにキレてしまう。
「ブランは今日もキレ味抜群だね」
ネプテューヌが笑いながらそう言うと、「人を刃物みたいに言うんじゃねぇ! って言うか九割がたテメェのせいだ!」とブランは怒鳴るが、ネプテューヌは笑顔で、「ナーイフみたいにとがってて~♪ さーわる人みな傷つける~♪」と歌いだす。
「だああああ! 歌うなっ!」
しかし、その行為が余計にブランの癪に障ったようだった。
「はぁ……ネプテューヌ、あなたその程度の語学力で、よく仕事が務まるわね?」
ノワールは呆れたように為に溜息を吐きながら両手を腰に当ててそう言うと、落ち着きを取り戻したブランも呆れた声で、「本も読めないんじゃないかしら?」と言って溜息を吐き、「ゲームの文字も読めませんわね」とベールが首を傾げて哀れんだ声で言う。
「仕事ならネプギアといーすんがやってくれるからヨシ! マンガならフィーリングで読めるからヨシ! ゲームはボイスが付いてるからヨシ! 何だか知らんが、とにかくヨシ! よって、全てヨシ!!」
ネプテューヌはどこから出したか、黄色いヘルメットをかぶると元気よく一つ一つ指差し確認を行い、最後に「今日も一日、ご安全に!!」と頭を下げる。
「良くないわよ! って言うか工事現場じゃないんだから!」
ノワールが大声でツッコミをすると、「でも、これでは仕事しても誤字脱字まみれで、修正の方が手がかかりそうですわ」とベールが続き、「だから、こんなふうに厄介払いをされているのね」とブランもそれに続く。
「もー! そんなことより、ゲームしよゲーム!」
ネプテューヌは駄々っ子のように両手を振りながらそう言うと、「そうですわね。時間も惜しいですし」とベールがソファーに腰を下ろしコントローラーを握ると、ノワールとブランもそれに続く。
***
「いえーい! ヴィクトリー!」
ネプテューヌがコントローラーを握りながら両手を上げて喜びを表現する。
ネプテューヌ用のモニターには【WIN】と表示されており、それがネプテューヌの勝利を示しているようだ。
「やはり主人公!! 主人公は全てを解決する! わたしこそ約束された勝利の主人公!」
ネプテューヌは立ち上がりソファーの上に立つと、横ピースを決めてウィンクをして、ペロッと舌を出す。
「出たわね、ネプテューヌの主人公病」
ノワールがネプテューヌを見つめながらそう呆れると、「ちょっとー、勝手に病気扱いとか止めてよー」とネプテューヌが不満そうに口を尖らせる。
「一回勝ったぐらいで、主人公アピールする時点で病気だわ」
ブランがそう言うとネプテューヌは右手の親指で自分を指して、「でも、実際わたしって、あらゆる属性を網羅した絶対無敵の主人公だよね。前にも言ったじゃん、わたしってばデレマスの本田美代と三つ葉杏と鷹鍵楓の最強無敵のユニットだって」と言う。
デレマスとは以前にネプテューヌが言った、アイドルゲームの略称で二百人近いアイドルが出演するゲームで、ネプテューヌが上げた三人はその中でも特に人気のあるキャラクターだ。
「ふぅ……あまり属性を盛りすぎると、かえって逆効果ですわよ」
ベールはそんなネプテューヌを見ながら呆れると、ブランが、「シンプルイズベスト……わたしのように知的な読書家という一つのコンセプトを突き詰めた方が効果的よ。デレマスで言うなら、根強い人気を誇る先沢文花ね」と話に乗ってくる。
「ああ、確かに」
ネプテューヌが納得したように頷くと、ブランは満足気に、「ふっ……そうでしょう」と言うが、「あの子って、綺麗なブランみたいだよね」とネプテューヌが続けて言うと、「わたしが汚いみたいに言うなっ!!!」とまたキレてしまう。
「ノワールは、滝花有栖で決まりだよね」
ネプテューヌはそんなブランを放っておいて、ノワールに向かってそう言うが、ノワールは、「私はあんな子供っぽくないわよ」と不満そうに言うと、「私を例えるなら、クールで誇り高い一番人気の静谷凜よ」と自信満々にそう言う。
「有栖だよー。いじられキャラ、素直になれない、わりとポンコツ、自己賛美のドヤ発言とかそっくりだよ。実際にクールノワールとか言いそうだし」
しかし、ネプテューヌが構わずそう続けて言うと、「勝手に不名誉な属性付けないでよ!って言うか、自己賛美のドヤ発言なんてネプテューヌだけには言われたくないわ!」とノワールがネプテューヌを怒鳴りつける。
「あなた達は全然分かっていませんわね。殿方が求めるのは、高貴な生まれでありながら、それをひけらかさない奥ゆかしさがあり、さらに清純さを兼ね備え、更に上品なのに少女っぽさもあるお姫様キャラ!」
ベールはそう言うと、右手を胸に当てながら、「つまり、わたくしですわ!」と自信満々にそう言い、「しかも、ブロンドのロングへアーで緑色の衣装、更に槍使いとくれば完璧ですわ」と続ける。
「あー、わたし、ベールが何が言いたいのかわかっちゃった」
ネプテューヌはベールの言いたいことを理解したらしく、そう言って頷くと、「流石はネプテューヌ、わたくしのことをよくわかってますわ」とベールは嬉しそうに微笑む。
「でもさ、聖杯伝説のリーナはガチで乙女じゃん。ベールみたいな年増じゃないし」
ネプテューヌが続けてそう言うと、「としっ……!?」とベールの表情が凍りつく。更に、「そもそも、そんな古いゲーム持ち出す時点でBBAだよね」とネプテューヌが畳み掛けるように言うと、(ぷちん…)と何かが切れる音がする。
「あ、ベールがキレた」
その音を聞いたノワールが落ち着いた声でそう言うと、ベールはニッコリ微笑んで、「ネプテューヌ……ちょっとこちらにいらしていただけるかしら?」と立ち上がる。その周囲にはドス黒いオーラが渦巻いているようだった。
「え? なになに?」
ネプテューヌがその黒いオーラに気付かないようで、不思議そうに首を傾げて質問すると、ベールは、「いいから」と言ってネプテューヌの右手をギュッと握る。
「ちょっ……ベール痛いって、それになんか笑顔が怖いよ?」
ネプテューヌはベールに手を引かれて、つんのめりながら部屋の端に連れて行かれる。
「ちょっ!? ベール? ベール?」
慌てるネプテューヌをよそにベールは、ネプテューヌの背後に立つと、両手をグーにして思いっきりネプテューヌの頭を挟んでぐりぐりする。通称、梅干し攻撃である。
「痛いっ! 痛いよベール!」
ネプテューヌは悲鳴を上げるが、ベールは落ち着いた低い声で、「ネプテューヌ、BBAの判別方法は?」と質問すると、「あっ……あっ……見た目式という方法が……あっ最も簡単で……あっあっ一般的な……あっ……」とネプテューヌはうわ言のように呟く。
「ネプテューヌって、何であんな簡単に人の逆鱗に触れられるのかしら?」
ノワールがその光景を見つめながらそう言うと、「バカだからよ」とブランがストレートに答える。
その後、ベールの怒りが収まるとネプテューヌ達はゲームに戻り、一進一退の勝負を繰り広げていた。
***
「わーん! 一人狙い禁止~」
ネプテューヌがコントローラーを握りながら悲鳴を上げると、「落ちろ! 落ちろ! 落ちろぉーー!!」とヒートアップしたブランが叫びを上げ、「遊びでやってるんじゃないのよ!」とノワールが言い、「これでダウンですわ」とベールがニヤリと笑う。
ボカーーン!
爆発音と共にネプテューヌ用のモニターに【LOST】と表示され、それはネプテューヌの敗北を意味していた。
「ぶぅ~! みんなしてズルいよー!」
ネプテューヌが不満そうに口を尖らせると、「主人公ならこれぐらい乗り越えてみせなさいよ」とノワールはモニターを見ながらコントローラーを操作して言う。
「えーと……こんにちは~」
ネプテューヌ達がゲームに興じているところに、ネプギアがひょっこり顔を出して控えめに挨拶をする。
ゲームに熱中しているところに申し訳ないという気分なのだろう。
「あ、ネプギア、ちょうどいいところに来たね」
ネプテューヌはそう言ってコントローラーを置いて、ネプギアに近づくと「視聴者から、【ポロリはまだか!】ってクレーム入ってるから、ポロリしてくれる?」とネプギアに真顔で伝える。
「え? ポロリ?」
そう言ってネプギアが小首を傾げると、「そう、ポロリ」とネプテューヌが頷く。
「えーと……ポロリポロリ……うん、それじゃあ行くよ」
ネプギアがそう言うと、後ろに居たユニが「え……ネプギア、アンタ正気?」と驚く。
「この落とし物は誰のですか~?」
ネプギアがそう言ってハンカチを持つと、続けて声色を変えて、「ああ、あのロリータ・ファッションの子ですよ」と言い、今度は元の声に戻して「なるほど、だから、ポロリって音がしたんですね」と言う。
ヒュゥゥゥゥ~
周囲に寒い風が吹いたようだ。
「あ、アンタ……正気なの……」
ユニが右手で頭を押さえてそう言うと、「なになに? なんなの今の?」とラムがネプギアの袖を引っ張って質問する。
「ロリータ・ファッションの子が落とし物したから、ポロリって音がしたんだよ」
ネプギアがそう説明すると、「なるほどー(かんしん)」とロムが頷く。
「いやー……流石のわたしでも、ここまでの変化球は予想できなかったかな……」
ネプテューヌは右手を後頭部に当てて、まいったなーと言う表情でそう言うと、「予想の斜め上を行くところは流石ネプテューヌの妹ね」とノワールがネプテューヌに向けて言う。
「ネプギアちゃんはダジャレも愛らしいですわ」
ベールは小動物を見るような目でネプギアを視線で愛でている。
「えーと……ポロリを題材に面白いこと言うんだよね」
ネプギアは周囲のウケがイマイチなので、ネプテューヌにそう確認すると、「そっかー、ネプギアはウブだからポロリの意味を知らないのかー」とネプテューヌは腕を組んで頷く。
「え? うっかり取り落としたり、もろくて取れちゃったりした時の使うんだよね」
ネプギアはそう言うとネプテューヌは、「ならば教えてやろう! 見ておくがいい、ポロリとは、こういうことだ!」と言ってネプギアに飛び掛かる。
「きゃっ!? お姉ちゃん?」
ネプギアはネプテューヌに押し倒され、ネプギアにネプテューヌが覆いかぶさる形になると、ネプテューヌはネプギアの服の胸元に手を突っ込んで、もぞもぞと手を動かす。
「ほーら、ほーら、ここか? ここかー?」
ネプテューヌは中年のオジサンみたいな声を出すと、「やだ、お姉ちゃん、ちょっと止めて~!」とネプギアは困った声を上げるが、それでもネプテューヌが止めないと、「わーん、ユニちゃん助けて~」と半泣きでユニに助けを求める。
「な、なにやってるんですか!」
ユニはネプテューヌの唐突な行動に呆然としていたが、ネプギアの言葉で我に返り、ネプテューヌのパーカーのフードを引っ張ってネプギアから引き剥がそうとする。
「ヘンタイよー! ヘンタイだわー!」
ラムがネプテューヌを見てそう叫ぶと「へんたいふしんしゃさん……」とロムがそれに続く。
「ふっふっふっ-! とったどー! ネプギアの取れたてホヤホヤのブラジャー!」
ネプテューヌはネプギアから離れると、ピンクと白のストライプのブラジャーを高く掲げる。
「さあ、視聴者の諸君! ネプギアがついポロリしてしまった、このブラジャー! なんとこの場でオークションにかけるよ! まずは3000クレジットから!」
ネプテューヌが威勢よくそう言うと、「ポロリじゃなくて、ネプテューヌさんがもぎ取ったんでしょ!」とユニが抗議して、「お姉ちゃん、止めてよー」とネプギアは顔を真っ赤にして、半泣きで胸を手で隠しながら恥ずかしがる。
「許せネプギア、これも視聴率と言う名のシェアの為だ!」
ネプテューヌはそんなネプギアを見て、断腸の思いっぽくそう言うと、「こんなので上がるシェアって、かなり嫌なんだけど……」とノワールが呆れた声を上げる。
「そんなあざとい格好でシェア上げてるノワールに言われたくないよー」
ネプテューヌは口を尖らせてノワールにそう言うと、ノワールを指差して「かーっ! 見んねネプギア! 卑しか女ばい!」と叫ぶ。
「何で方言なのよ! それにラステイションのシェアが高いのは私の仕事ぶりが優秀だからよ!」
ノワールは腰に手を当てて思いっきり抗議すると、「それ以前に、卑しいのは妹の下着を剥ぎ取ってオークションにかけるネプテューヌさんの方じゃないですか」とユニが腕を組んでジト目で言う。
「さあ、買った買った~! 今ならサイン入りだよー」
ネプテューヌが八百屋の店主のように呼び込みをすると、「そんなの書かないってば~、いい加減返してよ~」とネプギアは相変わらず胸を隠したまま、ネプテューヌに返すように懇願する。
「ふぅ……民度が知れるわね。もっと女神としての立場や誇りを持つべきだと思わない、そうでしょ、ベー…」
ブランがベールの方を見ながらそう言おうとすると、「3億クレジット!!」とベールは右手の指を三本立ててネプテューヌに向かって突き出す。
がくっ……
ブランは肩を落とすと、頭に乗った帽子がずり落ちる。
「売った!」
ネプテューヌは威勢よくそう言うと、ベールとガッチリ握手を交わして、ネプギアのブラジャーをベールに手渡す。
「ちょ、ベール! なにしてるのよ、あなた!」
ノワールが焦りながらそう言うと、「ネプギアちゃんの為なら悪魔にでも魂を売りますわ」とベールは狡猾な笑みを浮かべる。
「……本人には完全に嫌われるわよ」
ブランがそう言うと、「そんなことありませんわ」とベールはが言うとブラジャーをネプギアに差し出して、「はい、ネプギアちゃん、取り返してあげましたわよ」とニッコリ笑う。
「あ、ありがとうございます」
ネプギアが感謝の言葉を言う隣で、「えー! ベール、狡いよー! ノリが悪いなー」ネプテューヌが不満そうに言と、ベールはブラジャーを持った手を引っ込めてしまう。
「え? 返してくれるんじゃ……」
ネプギアがベールの行動を疑問に思うと、「……このまま返すのも勿体ない気がしますわ。確かにネプテューヌ言うようにノリも悪いですし」とベールが首を傾げる。
「え、えーと……普通に返してくれた方が嬉しいんですけど……」
ネプギアは控えめにそう言うが、「匂いぐらい嗅いではだめかしら?」とベールが真顔で言うと、「だ、ダメです!」とネプギアは顔を真っ赤にして叫ぶ。
「ここにもヘンタイがいるわ!」
ラムはそう言ってベールを指差すと、「へんたいふしんしゃさん、その2」とロムもそれに続く。
「ふふっ……、冗談ですわ。ちゃんとお返ししますわ」
ベールはそう言うと、ネプギアにブラジャーを手渡し、ネプギアは、「ふぅ……」と安堵の溜息を漏らす。
「お姉ちゃん、何でこんなことになってるの? 来るなりポロリしろなんてどういう状況?」
ユニがノワールに質問すると、「私が知りたいわよ……」とノワールが呆れながら答える。
その間にネプギアは隠れて下着を着けなしていた。
「ドキッ☆女神だらけのゲーム大会だからだよー」
そこにネプテューヌが自信満々にそう言うと、「……お姉ちゃん、そんなのに参加したの?」ユニがドン引きした声で答える。
「か、勘違いしないで! ネプテューヌがどうしてもって言うから! それに挑戦状とか受けたら逃げる訳にもいかないでしょ!」
ノワールがそう言うと、隣でブランが、「次は負けないわ。今度はスマクラで勝負よ」と言う。
スマクラとは【スマイルクラッシャーズ】という名前のルウィーのバトルロイヤル形式の対戦ゲームの略称。
「わたくし、デカポンがいいですわ」
その横ではベールがそう言って提案をする。
【デカポン】とはRPGの要素を取り込んだ、すごろくタイプの対戦ボードゲームで、対戦相手に対してえげつない妨害手段が多数存在するゲームだ。
「私はダークタウン鉄血狂想曲」
更に今度はノワールが提案する。
【ダークタウン鉄血狂想曲】とは数々の運動会のような競技種目を競う対戦ゲームだが、競技中の【殴る・蹴る・武器の使用】がルールで認められており、当然大乱闘となる。
「三人とも高度な友情破壊ゲームを持って来たね~!」
ネプテューヌは笑いながら言う。
三人の上げたゲームは、やり方次第ではリアルファイトに発展する程に激しい対戦ゲームだ。
だが、四人の女神は犯罪組織と戦う前は熾烈な争いを続けており、これぐらい激しい対戦ゲームで本気で争わないと盛り上がらないのである。
「ふふっ……黒いルウィーの力を見せてあげるわ」
ブランはそう言うと、不審な笑みを浮かべる。
「黒いルウィー?」
その様子を見たロムが首を傾げると、「ルウィーは白じゃないの?」とラムも首を傾げる。
「ふっ……明るく楽しい、家族で楽しめる白いルウィーの裏には、えげつない友情破壊ゲームの王者たる黒いルウィーがあるのよ」
ブランが自信満々にそう言うと、「わたくしの本気見せてさしあげますわ」とベールが意気込み、「私だって負けないわよ」とノワールもそれに続く。
「まぁ、どっちにしろ主人公のわたしの勝利は揺るがないけどね~」
ネプテューヌはさっきの敗北をまったく気にしてない様子で、ドヤ顔でそう言い放つ。
「だから、その主人公アピールくどいのよ……」
ノワールがそう言うと、「えー? 誰も彼も、主人公オブ主人公かつ属性マシマシのもりもりのわたしの活躍に期待してるんだってばー」とネプテューヌは抗議をする。
「妄言もここまでくると立派ね……」
ブランが呆れた声でそう言うと、「嘘も百回言えば真実になるという言葉を聞いたことがありますわ」とベールがそれに続くが、「低レベルなプロパガンダよ」とブランが答える。
「プロパンガスだか何だか知らないけど、わたしの主人公補正は本物なの!」
ネプテューヌはそう言って憤慨すると、「そうだ! こういうのは素直な子供に聞いてみるのが一番だよ」と言って、ロムとラムを見ると、「ロムちゃん、ラムちゃん、わたしって属性マシマシもりもりの究極主人公キャラだよね」と二人に尋ねる。
「えっと……」
ロムは少し困ったような顔をし、ラムは腰に手を当てながら、「ネプテューヌちゃん、【杉花粉は親の仇のごとし】って言葉を知らないの?」と呆れたような口調で言う。
「なによその花粉症の人の怨み言みたいなのは……」
ユニがそう言って呆れると、「えっと……【過ぎたるは猶及ばざるが如し】って言いたいのかな?」とネプギアが解説し、「そうよそれそれ」とラムが頷く。
「がーん!」
ネプテューヌが彼女にしては珍しくショックを受けていると、「子供にすらそう言われるなんて終わってるわね、ネプテューヌ」とノワールに言われてしまう。
「まったくだわ、流石は私の妹。よく見ているわ」
ブランは嬉しそうにそう言うと、フフンと笑みを浮かべ得意そうな顔をする。
「えー? だったら、ブランも聞いてみれば?」
ネプテューヌがそう言うと、「ふっ……そんな結果の分りきったことを……」とブランが自信満々に言い、「ロム、ラム、あなた達から見て、わたしはどんな女神かしら?」とロムとラムに尋ねる。
「えっと……お姉ちゃんはパワフル(むきむき)」
ロムがそう答えると、「ぱわ……ふる……?」とブランは眉をピクピクさせるが「……ま、まぁ、文武両道と言うのも悪くないわ」とすぐに冷静さを取り戻す。
「お姉ちゃんはガッテン系女神よ」
続けてラムがそう言うと、ブランは不思議そうな顔で「ガッテン?」と言う。
「えーと、多分ガテン系のことだと思います」
ネプギアがそう説明すると、「うん! ガテン系!」とラムが元気よく頷く。
「誰が肉体労働者だゴルァ!!」
それを聞いたブランはロムとラムに向かって大声で怒鳴るが、「わー! お姉ちゃんが怒った~」とラムが楽しそうに逃げ回り、「たのしい(うきうき)」とロムもそれに続く。
「わたしは頭脳労働専門の知能派だって、いつも言ってるだろうが!!」
ブランはロムとラムを追いかけながらそう言うが、「その発言と行動の時点で知性的とは言えませんわ……」とベールにツッコミを受けてしまい、「ぐっ……」と言って足を止めてしまう。
「ぷぷーっ! 流石はブランの妹! よく見てるね~」
その姿を見たネプテューヌは、仕返しと言わんがばかりに楽しそうに口に手を当てて、笑いを吹き出す。
「さて、次はわたくしですわ」
ベールは後ろ髪を優雅にかき上げると、足を止めたロムとラムの前にしゃがみ込んで、「ロムちゃん、ラムちゃん、わたくしは年増なんかに見えませんよね?」と質問する。
「え……としま?」
ロムがそう言って首を傾げると「遊園地? ベールさん遊園地なの?」とラムがそれに続く。
どうやら二人とも年増の意味を知らないようだ。
「こほん……わたくしは高貴な生まれでありながら、それをひけらかさない奥ゆかしさがあり、さらに清純さを兼ね備え、更に上品なのに少女っぽさもあるお姫様キャラ……ですわよね?」
ベールが改めて、先程ネプテューヌ達に言ったことと同じことをロムとラムに言う。
「お姫様? ベールさんが……」
ロムは首を傾げ、ラムが、「ベールさんはどっちかって言うと、じょお……」と言おうとすると、「ロムちゃん、ラムちゃん。わたくし、とっても美味しいお菓子を持ってきていますの」ベールはそう言って、素早くお菓子の箱を取り出す。
「「ベールさんはお姫様!」」
するとロムとラムは嬉しそうにバンザイして声を揃えて即答する。
「はい、よくできました。これがお菓子ですわ」
ベールがお菓子の箱をロムとラムに手渡すと、「「わーい」」とロムとラムは嬉しそうにお菓子の箱を高く掲げる。
「……ウチの妹がこんな単純な手で篭絡されるなんて……」
ブランがそう言ってショックを受けていると、「汚いな、さすがベールきたない!」とネプテューヌがベールを非難するが、「ふふっ……汚いは、褒め言葉ですわ」とベールは鼻で笑って答える。
「こういうの老練って言うのよね……」
ノワールがぼそりとそう呟くと、「ノワール?」とベールは黒いオーラを纏いながらノワールの顔を見る。
老練とはそう言う意味ではないが、【老】の字がNGワードに引っかかったらしい。
「な、ななな何でもないわ! それより、ユニ達はネプテューヌに何か用事? ルートビルドはどうなったの?」
ノワールは慌ててそう話を逸らすと、「ついでだから、お姉ちゃん達に地鎮祭のこと話しちゃいましょ」とユニがネプギアを見ながら言い、「うん、そうだね」とネプギアも頷いて同意する。
「これからお茶を淹れますので、休憩がてらでいいので私達の話を聞いて下さい」
ネプギアがそう言うと、ネプテューヌが、「いいよ。みんなもいいよね」とノワールとブランとベールを見ながら確認する。
「いいわ、聞かせてちょうだい」
ノワールがそう言うと、「興味があるわね」とブランがそれに続き、「わたくしの妹達の武勇伝、是非とも聞きたいですわ」とベールが言うが、「「「ベールの妹じゃない」」」とネプテューヌ、ノワール、ブランの三人の同時ツッコミを受けてしまう。
「がーん……せっかく既成事実を作ってしまおうと思いましたのに……」
ベールがそう言ってショックを受けていると、ネプギアが、「ベールさんは本当のお姉ちゃんじゃないですけど、頼りになるお姉さんだと思っていますから」とフォローを入れる。
「まぁ、ネプギアちゃんは本当に優しいですわね」
ベールはそう言って嬉しそうに柏手を打つと、ネプギアの側に駆け寄りネプギアを力一杯抱きしめる。
「うぅ~、ベールさん苦しいです~」
ネプギアが苦しそうに言うと、ネプテューヌが、「もー、あんまり甘やかすと調子に乗るよ」と言うが、「ネプギアに甘やかされているのは、あなたの方でしょ」とノワールが、「今日のお前が言うなスレはここかしら?」とブランが連続でツッコミを入れてくる。
しかし、ネプテューヌがキリリと顔を引き締めて、「何言ってるの! ネプギアは容赦なく厳しい妹だよ!!」と言うと、「……過去に似たようなことを言った御曹司は滅茶苦茶甘やかされていたと言うわ」とブランが落ち着いて答える。
ネプテューヌは後頭部に手を当てて、「いやー、ブランはノリがいいねー」と笑うと、「ついでにアレ行っとく?」と言うとブランに近づく。
「ともだちん……」
「ふんっ!」
ガスッ!
調子に乗ったネプテューヌはブランに【何か】をしようとしたが、速攻でハンマーで殴られて、窓を突き破り、「そんなバナナーーー!」と叫びながら遥か空の彼方に飛ばされて星になってしまう。
「お、お姉ちゃん……」
ネプギアはベールに抱きしめられながらも心配そうな声を出すが、ブランは落ち着いて「大丈夫よ。この程度で何とかなる相手なら、わたしも苦労しないわ」と言い「そうね。これぐらいで倒せるなら誰も苦労しないわ」とノワールも落ち着いて言う。
「あはは……」
ネプギアが、二人のネプテューヌのぞんざいな扱いに乾いた笑いを浮かべると、「……ガラス代はネプテューヌ持ちにしておいて」とブランが言い、「それより喉が渇いたわ。早くお茶を持ってきてくれる」とノワールも何事もなかったように話を続ける。
「わたくし紅茶がいいですわ」
ベールがそう言ってネプギアを解放すると、ネプギアはネプテューヌなら大丈夫だろうと思うことにして、「それじゃあ、お茶淹れてきますね」と言って部屋を出て行く。
「アタシも手伝うわ」
ユニがそう言うとネプギアに続き、「わたしもー」とラムも続き、「まって~」とロムも三人の後を追いかける。
「四人共、本当に仲が良いですわね」
ベールがそう言うと、「そうね、ネプギアとユニは二人の面倒を良く見てくれるから助かるわ」とブランも同意し、「ユニもあの子達に会ってから随分明るくなったわ」とノワールも同意する。
その間に女神化したネプテューヌが割れたガラスを通って帰ってくると「……わたし、何で空に吹き飛ばされていたのかしら……」と言って首を傾げる。
「あなた憶えてないの?」
ブランが言うと、「ええ、気付いたら空にいたわ」とネプテューヌは素直に答える。
「あなた本当に二重人格なんじゃないの……?」
ノワールはジト目でネプテューヌを見つめると、「これからティータイムですから、元に戻った方がいいですわ」とベールが落ち着いた声で言う。
「そうね。そうするわ」
ネプテューヌはそう言って変身を解いて元に戻ると、「お茶が入りましたー」とネプギア達が戻ってくる。
ネプギア達がお茶とお菓子を並べると、ネプテューヌが、「おおっ! これはあの有名な三ツ星店のプリン」と嬉しそうな声を上げる。
「ノワールさんのお土産だよ」
ネプギアがそう言うと、ノワールは顔を赤くして、「ね、ネプテューヌの為なんかじゃないんだからね! 私がプリン食べたかっただけなんだから!」と言ってソッポを向いてしまう。
「ナイスツンデレ!」
ネプテューヌがそう言ってサムズアップを決めると、ネプギアがティーポットで紅茶を注ぎ始める。
ブランのカップに紅茶が注がれ、ブランがそれを口に含んだ時、「ねーねー! ネプギア! アレやってよ」とラムが言うと、ネプギアは「アレ?」と言って首を傾げる。
「高いことろから、おしっこみたいに注ぐヤツ」
「ブーーーーーー!!」
ラムがそう言うとブランが口に含んだ紅茶を豪快に吹き出す。
「わー! お姉ちゃん、面白ろーい! 噴水みたーい」
ラムがそう言ってケラケラ笑うと、「もう一回やって(うきうき)」とロムもニコニコと笑う。
「人が茶ぁ飲んでる時に下品な話するんじゃねぇ!!!」
ブランはそう言って立ち上がると、ロムとラムは、「「お姉ちゃんが怒った~」」と声を揃えて笑いながら逃げ出し、ブランはそれを追い回す。
「あははは……」
ネプギアが三人の光景を眺めながら渇いた笑いと浮かべると、「相方の左京さんがやってるようなヤツよね。アンタできるの?」とユニが質問する。
【相方】とは人気の刑事ドラマシリーズで、その登場人物が高いところから紅茶を注ぐという芸当をやっているのだ。
「練習したことはあるけど……出来るかな?」
ネプギアがそう言うと、ベールが、「ネプギアちゃんなら出来ますわ。わたくしが教えて差し上げますわ」と言いネプギアの背後に回るとネプギアの手を取り、カップに紅茶を注がせる。
紅茶は見事にカップに注がれ、「あ、出来た」とネプギアが嬉しそうにそう言うと、ベールも嬉しそうに柏手を打って、「流石はネプギアちゃん、その腕を見込んでウチで妹メイドをしていただけないかしら?」と言う。
「ダメだよー。ネプギアはわたしの妹なんだからー!」
ネプテューヌがそう言って抗議すると、「なによ妹メイドって……」とノワールが呆れた声を出すが、「あら? 興味がありますの?」とベールが言うと、「べ、別に興味ないわよ! メイド服なんて全然これっぽっちも!」と焦った声で言う。
その後、紅茶とお菓子を並び終えて、ブランも落ち着くと、ネプギア達はここ数日の地鎮祭についての話を四人の女神に説明をする。
「あなたらしい成り行きね」
「ネプギアちゃんは優しいですわね」
「単に甘いだけでしょ」
「でも、お祭りなんでしょ? 何か楽しそー」
話を聞き終わった四人の女神はブラン、ベール、ノワール、ネプテューヌの順でそれぞれ感想を言う。
「えっと……ダメだったでしょうか?」
ネプギアは甘いと否定的な意見を言ったノワールを見ながらそう言うと、「他種族や自然に肩入れするものいいけど、信仰してくれる人間が一番なんだから、それを忘れないようにね」とノワールが言う。
「そうね。目の前の物事に気を取られて、自国民を蔑ろにしては女神失格よ」
ブランが続けてそう言うと、「はい、気を付けます」とネプギアは素直に返事をする。
すると、「八方美人もいいけど、程々にね」とノワールが釘を刺すように言う。
「はっぽーびじん? なにそれ? 発泡スチロールの仲間?」
ラムがそう言って首を傾げると、「八方美人は、誰にでも愛想良く付き合う人、誰にでもすぐに同調してしまう人を指して言うのよ」とブランが説明する。
「誰にでも優しいのはネプギアちゃんの良いところなのに(しくしく)」
ロムはネプギアの好きなところを悪いふうに言われたのが悲しくて、悲しそうにそう言うと、「確かにそうですけど、時間や資源などのリソースは限られた物ですわ。あまり他に肩入れし過ぎて、自国に影響が出ては困ってしまいますの」とベールが説明する。
「うーん、その辺はいーすんが上手くやってくれるよ」
ネプテューヌは気楽そうにそう言うと、「だからネプギア達の好きにやっていいよ」と続けると、「まぁ。確かにイストワールが居れば下手な間違いは起きないでしょうけど」とノワールが頷く。
「この件は、わたし達があなた達に一任したことだけど、わたし達の顔に泥を塗るような真似は止めてほしいわ」
ブランがそう言うと、「お姉ちゃんの顔に泥を塗るの楽しそう~!」とラムが言い、「泥だんごをお顔にぶつける?」とロムもそれに続く。
「……物理的にではないわ。名誉を傷つけたり、恥をかかせたりすることを、顔に泥を塗ると言うの」
ブランはそう説明すると、「あと、本当に物理的にそんな真似したらただじゃおかないわ」と釘を刺す。
地鎮祭の話はそこで終わり、ネプギア達と四人の女神はお茶とお菓子を楽しみながら近況を話し合う。
ピピピピ!
その最中、ネプギアのNギアが電子音を立てると、「ちょっと失礼しますね」と言ってネプギアがNギアを操作する。
「ファミ通の仕事が終わったの」
ユニがそう言うと「うん、今プラネタワーの近くに居るって」とネプギアが答える。
「それじゃあ、私達そろそろ失礼しますね」
ネプギアがそう言って立ち上がると、ラムも立ち上がり、「ばいばーい」と手を振り、ロムも、「またね」と言う。
ノワールが、「後片付けは私達がやるわ」と言うと、「ありがとうお姉ちゃん」とユニが言う。
「それじゃあ、ゲーム大会の再開だー!」
ネプテューヌが元気よくそう言いながらモニターのスイッチを入れると、「今度は負けないわ」とブランがコントローラーを持ち、「勝つのは私よ」とノワールもそれに続き、「ふふっ……手加減しませんわよ」とベールもコントローラーを握る。
「お姉ちゃん、頑張ってね」
ネプギアがネプテューヌに向かってそう言うと、「よーし! 妹の応援で勝利フラグは立った! この勝負もらったよ」とネプテューヌが元気よくガッツポーズを決める。
「お姉ちゃん、負けないでね」
ユニがノワールにそう言うと、「当然よ。私が負けるはずないでしょ」とノワールが少し嬉しそうに答える。
「応援してる(ふれーふれー)」
「頑張れ頑張れ、お姉ちゃん」
ロムとラムが順々にブランを応援すると、「任せておきなさい」とブランが冷静だが少し嬉しそうに答える。
「……しょぼーん……」
ベールが悲しそうな目でネプギアを見ると、「べ、ベールさんも頑張って下さい!」とネプギアが慌てて付け加える。
「ネプギアちゃん! わたくし、この勝負に勝ってネプギアちゃんを手に入れますわ!」
ベールは力強くそう言うと、「えーと……それは困るんですけど」とネプギアが困り顔で答え、「ゲームに勝ってもネプギアはあげないよー!」とネプテューヌが抗議する。
その後、ネプギア達はファミ通と合流しギャザリング城に帰って行った。
ちなみに四人の女神のゲーム勝負は三日三晩続いたが、勝率は全員同じで勝負は付かなかった。
***
G.C.2019年7月20日 土曜日の夕方。
「ビィトリットさんに出会ってから約一か月が経ち、夏が近づいてきました」
ネプギアはギャザリング城の自分の部屋で日記をつけていた。
「私達は、朝はジョギングとトレーニング、昼はクエスト、夕方は地鎮祭のレッスンと毎日忙しい日々を送っています」
ネプギアは喋りながら日記を付ける。
これはネプギアの癖で、姉のネプテューヌには【独り言が多い】とも言われたりもしていた。
「明日はついに地鎮祭です。いーすんさんに無理を言って工期を伸ばして貰ったので絶対に失敗は出来ません」
地鎮祭を教えて貰っている間、森林を伐採しないようネプギアはイストワールに頼んで工期を伸ばして貰ったのだった。
「でも、心配はしていません。いっぱい練習したし、ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃん、プラエちゃん、ミクちゃんが一緒だから」
コンコン……
そこまで書くとドアがノックされる。
「はーい」
ネプギアは立ち上がりドアの前に移動して返事をすると、「アタシだけど、みんなで最後の合わせしない?」とユニの声がする。
明日の本番に対して最後の練習をしようという提案だった。
「うん、ちょっと待って今準備するから」
ネプギアはそう言うと机に戻る。
「明日の地鎮祭絶対に成功させます。ゲイムギョウ界のみんなの為に」
ネプギアはそう言いながら日記を書き終えると机の棚に日記をしまう。
***
そして翌日。
G.C.2019年7月21日 日曜日。
ネプギア達女神候補生は地鎮祭の準備にエルフの村に来ていた。
エルフの村は森の中で木造の建物ばかりの自然に溢れた場所であった。
「よく来たわね」
ビィトリットの目の前にはネプギア達が女神化した姿があった。
「精一杯頑張りますので、よろしくお願いします」
ネプギアがそう言って、ビィトリットに向かって丁寧に一礼すると、「今日の為に練習したのよ。失敗するわけにいかないわ」とユニが言う。
「少し緊張するね」
ロムがそう言うと、「ばっちりカッコよく決めちゃおうよ」と言ってラムがVサインを決める。
「まずは、あの滝で身清めてきて」
ビィトリットの指差すところには5メートル程度の高さの滝があった。
「エルフに伝わる霊験あらたかな滝よ。そんなに冷たくないから安心して」
ビィトリットがそう言うと、「最近熱いし丁度いいかもね」とユニが言うと、「水かけっこしちゃダメかな?」とロムが言う、「わたしもやりたーい」とラムも言うが「今日は地鎮祭だから、また今度にして」とビィトリットが優しく微笑む。
「やっほー! 一番乗りー!」
ラムがそう言って滝に飛び込むと、「わーい」とロムも続いて飛び込み、激しい水飛沫が飛び散る。
続いてネプギアがそっと足を入れると、「冷たくて気持ちいい……」と言い「本当ね。水が澄んでいるわ」とユニも足を入れる。
そして滝に打たれて身を清めたネプギア達をビィトリットが出迎える。
「ご苦労様。次はこれに着替えて」
ビィトリットがそう言うと、後ろに控えていた女性のエルフ達が茶色、水色、赤、緑の羽衣をネプギア達に差し出す。
「なにこれキレイー!」
ラムが喜びの声を上げると「地、水、火、風の精霊を祭る羽衣よ。エルフの職人が特殊な糸を神聖な織機で織った特注品よ」とビィトリットが羽衣の説明をする。
「この金細工も綺麗だわ」
ユニがそう言うと「そうか、喜んでもらえたようで何よりだ」とビィトリットの隣に居た男性のエルフが嬉しそうにニヤリと笑う。
「彼はヴェルンド、エルフ随一の名工よ」
ビィトリットがそう言って男性を紹介すると、「よろしく。今回は久々に女神の装飾品を作るというので、胸が躍ったよ」とヴェルンドが言う。
「久々? 前にも女神の装飾品を作ったことがあるんですか?」
ネプギアがそう質問すると、「ああ、前世と言う遠い昔にね」とヴェルンドが答える。
「前世?」
ユニがそう言って首を傾げると、「世迷い言だ、気にしないでくれ」とヴェルンドが言う。
「ここまでしていただいて、ありがとうございます」
ネプギアはビィトリットとヴェルンドに対して頭を下げてお礼を言う。
「気にすることはないわ。私もあなた達に興味があるし」
ビィトリットはにこりと笑うと、「地の茶色はネプギア、水の水色はロム、火の赤はユニ、風の緑はラムに合わせてあるわ」と言う。
「これの割り当てって何か意味があるんですか?」
ネプギアがビィトリットに尋ねると、「あなた達と精霊との相性よ。前にも言ったけど、あなた達は、地、水、火、風の四大元素が綺麗に揃っていて、とてもバランスが良いわ」とビィトリットが感心する。
「それじゃあ、あそこの小屋で着替えて来て」
ビィトリットがそう言うとネプギア達は小屋に移動して羽衣に着替える。
ネプギア達は各色の羽衣と金細工を身にまとい、いつもの女神化とは別の神秘さがあった。
「外に馬車を出してあるわ」
ビィトリットがそう言って馬車までネプギア達を案内し、一緒に五人で馬車に乗り込み地鎮祭場の森に向かう。
馬車の中には舞の音楽を奏でてくれるエルフの音楽隊も一緒に乗っていた。
その中にはエルフ達と同じ衣装を着たプラエとミクもいる。
「みんな」
プラエが嬉しそうにネプギア達に声を掛ける。
そして、ネプギア達の羽衣姿を見たプラエは、「わー! すっごく綺麗」と感嘆の声を上げた。
ミクも、「ネギちゃん達素敵ー」と褒める。
「ありがとう。プラエちゃんとミクちゃんも似合っててかわいいよ」
ネプギアがそう言うと、「ありがとう。ネプギアお姉さん」とプラエが嬉しそうに微笑む。
「今日はよろしくお願いします」
ネプギアは音楽隊の人々にそう言うと丁寧に一礼する。
「こちらこそよろしく頼むよ」
「がんばってね」
音楽隊の人々はニコリと笑いながらネプギアの挨拶に応える。
エルフは元々人間に対して友好的だが、この一か月のネプギア達の真剣に練習をする姿に心打たれたようだ。
馬車が地鎮祭の場所である森の前に付くと、野外に設置された舞台の周りに大きな人だかりが出来ていた。
「わわっ! なんだかいっぱいいるよ」
驚くネプギアに、「それだけ、村人がネプギア達に興味があるのじゃないかしら?」とビィトリットが言う。
「ここ一ヶ月毎日クエストして、お礼とか結構言われてたしね」
ユニはこの一ヶ月で村人達と仲良くなれたことを実感して笑顔を浮かべる。
「わたし達の親衛隊は来てるかな?」
ラムがそう言うと、「居たよ、ラムちゃん」とロムとが外を指差す。
「なによ? 親衛隊って」
ユニが首を傾げると、「近くの村の子供たち集めて、わたし達直属の部下にしてあげたのよ」とラムが腕を組んで自慢げに言い、「もう50人ぐらい居るよ」とロムも嬉しそうだ。
「いつの間にそんなことしてたの?」
驚くネプギアに、「子供って友達になるの早いわね」とユニが腕組みして感心をする。
「さあ、そろそろ会場入りよ。手を振って応えてあげるといいわ」
ビィトリットがそう言うと馬車の窓を開く。
開拓する予定の森の前に作られた木製の舞台の近くには大勢の人だかりが出来ていた。
ネプギア達はビィトリットの言葉に、「はい」と応え馬車の窓から人々に向けて手を振る。
「ネプギア様ー!」
「ユニー様ー!」
「ロム様ー! ラム様ー!」
人々から好意の声援が聞こえてくる。
精一杯大きく手を振るロムとラム、小さく手を振って応えるネプギアとユニ。
そうしている内に舞台の手前で馬車が止まる。
「私が出来るのはここまでよ」
ビィトリットはそう言うと、「最後に舞の最中は精霊や動物達への感謝の気持ちと、共存を願う祈りは絶やさないようにして」とアドバイスをする。
「ありがとうございます。絶対に成功させます」
ネプギアは力強く答える。
ネプギア達が馬車を降りると、「あー! ネプギアだー!」とネプギアの耳に聞き覚えがある声が聞こえてきた。
「お姉ちゃん!」
ネプギアは明るい声で、声の主である姉ネプテューヌを呼ぶ。
ネプテューヌは手を振りながらネプギアに駆け寄ると、「なにその服、ネプギアかわいいかわいいよー!」とネプテューヌは地の羽衣を着たネプギアを褒める。
「地の精霊を祭る羽衣だよ」
ネプギアがネプテューヌに説明すると、「えー? 地属性なの? 地味ー!」ネプテューヌは一転して不満そうに言う。
「そんなこと言ったら地の精霊さんに失礼だよ」
ネプギアはやんわりフォローするが、「だって、地って土だよね? 土ってドラゴンにしたらモグラだよー!」と不満そうに言う。
ネプテューヌはそう言うが、モグラが漢字で【土竜】と書かれるだけであって、地属性のドラゴンがモグラになってしまう訳ではない。
「でも、地味なネプギアにはマッチしてるね」
ネプテューヌは褒めてるか貶してるか分からない意見を言うが、「ありがとう、お姉ちゃん」とネプギアは素直に好意と受け止めお礼を言う。
「ユニ」
ネプテューヌが向かって来た方向からユニを呼ぶ声がするとノワールがこちらに歩いて来ていた。
「お姉ちゃん」
ユニが返事をすると、ノワールはユニの目の前に立ち、「綺麗になったじゃない。見違えたわ」とノワールはユニを褒める。
「ありがとう……」
ユニは尊敬する姉に褒められて嬉しくて、顔を赤くする。
「本当に綺麗な衣装ね」
ノワールがユニの羽衣をまじまじと見つめると、「エルフの職人が織ってくれたものよ」とユニが羽衣の説明をする。
「プロの仕事か……流石ね」
ノワールは更に羽衣をのめり込んで凝視する。
かなりの興味を持ったらしい。
「お姉ちゃん……目が真剣過ぎ……」
その姿にちょっと引き気味のユニ。
「ロム、ラム」
今度はロムとラムを呼ぶ声と共にブランが歩いて来る。
「あー! お姉ちゃんだー!」
ラムが嬉しそうに声を上げてブランに駆け寄ると、「お姉ちゃんに会うの久しぶり」とロムも同じく嬉しそうに駆け寄る。
「その衣装とても似合っているわ」
ブランがロムとラムの衣装を褒めると、「それはそうよ。わたし達は何着ても似合うんだから。【孫にも衣装】って言うじゃない」
ラムは胸を張って言うと、「ラムちゃん、今日は間違えなかったね」とロムが隣で拍手する。
「……ラム、それは間違い。子供の孫ではなくて、馬に子と書いて【馬子】」
ブランが落ち着いてそう言うと、「お馬さんの子供?」とロムが首を傾げる。
ロムは馬子の意味が分からないようだ。
「馬子とは昔の言葉で身分の低い人下働きの人のことを言うの。つまり、どんな人でも身なりをととのえれば立派に見える……という殆ど逆の意味よ」
ブランはそうロムとラムに説明すると、「えー! そうなのガッカリー」と肩を落とすラム。
「みんなとても初々しくて可愛らしいですわ」
今度はベールが現れ、ネプギア達を見て嬉しそうに身をくねらせる。
「これだけの女神が集まるなんて、珍しいこともあるものね」
ビィトリットがその光景を物珍しそうに眺めると、「あら? 貴女は?」とベールがビィトリットに気付いて話しかける。
「私はビィトリット。この辺りのエルフの長をしているわ」
ビィトリットが簡単に自己紹介をするとベールも、「わたくしはベール。リーンボックスの女神をしておりますわ」と自己紹介をする。
「エルフは美形をいいますけど、本当ですわね~」
ベールそう言って、ビィトリットを見つめると「しかも、金髪でロングヘアー、更にグリーンの衣装。わたくしと被りますわね」と付け加える。
ベールは更にビィトリットの胸を眺めると「しかし、胸の大きさはわたくしが圧勝ですわね」とベールは腕組みして胸を揺らしながら満足そうに言う。
「人間の女性は胸の大きさを必要以上に気にすると言うけど、女神も同じなのね」
ビィトリットは特に気を悪くした様子もなく冷静に答える。
「みなさん来てくれたんですね」
ネプギアは四女神の来訪を嬉しそうに喜ぶ。
出来れば来て欲しいとの連絡をしたが、実際に来てくれたのは嬉しいようだ、
「一ヶ月も工期を遅らせたんだから、女神としてちゃんと見届ける義務があるのよ」
ノワールは女神の義務だと主張し、「それもあるけど、単純に興味もあるわ」とブランが言い、「わたくしの妹達の晴れ姿、見届けないわけにはいきませんわ」とベールがにこやかに言う。
「「あなたの妹じゃない」」
「ガーン!」
しかし、ノワールとブランに即ツッコミを受けてショックを受けるベール。
「ねー! ネプギア。お祭りだって言うけど、タコ焼きもイカ焼きもチョコバナナも売ってないよー」
ネプテューヌが辺りを見回しながら不満そうに言うと、「これは厳粛なお祭りだから仕方ないよ」とネプギアがネプテューヌの不満を抑えるように言う。
「えー? 珍事祭なのにー!」
しかし、ネプテューヌの不満は収まらない。
それ以前に何か勘違いしているようだった。
「珍事祭【ちんじさい】、じゃなくて地鎮祭【じちんさい】だよ」
ネプギアはやんわりとネプテューヌの間違いを訂正すると、「うそー! じゃあ、ネプギア達が面白おかしいことやって笑わしてくれるんじゃないんだ!?」と衝撃を受けるネプテューヌ。
「うん、ごめんね」
ネプテューヌの勘違いなのだが、素直に謝るネプギア。
それを聞いて、「飛び入り参加しようとして、とっておきのネタ考えて来たのに~」と肩を落としてガッカリするネプテューヌ。
「みなさん、そろそろお時間ですよ」
舞台からイストワールが現れると地鎮祭開始の時間だと告げる。
「じゃあ、わたし達は向こうで見てるから」
ネプテューヌがそう言うと、「頑張りなさいよ」とノワールが続き、「期待してるわ」とブランが言い、「楽しみにしていますわ」とベールが言うと四女神は特等席の方に向かって行った。
ネプギア達は舞台に入ると、「かなり人が集まったわね」とユニが草原に集まった人達を見ながら言う。
ユニの言う通り森の前に設置されたステージの前には沢山の人が集まっている。
「周囲の村と工事の関係者、合わせて五百人近い人々が見物に訪れていますよ」
イストワールがそう言うと、「そんなに来たんですか?」とネプギアが目を丸くして驚く。
イストワールは、「実際には見に行きたいと言う問い合わせが数千万件ありましたが、厳粛な催しなので地域住民と工事関係者のみに限らせてもらいました」と続ける。
「数千万ですか!」
ネプギアがそう言って驚くと、「そんなに来たら緊張しちゃって踊れないかも……」ロムが言う。
すると、「ロムちゃん、緊張した時は手のひらにヒトデを三回書いて飲み込むのよ」とラムが言うが、「ヒトデじゃなくて、人って字よ」とユニに訂正されてしまう。
「皆さんは自分達が思っている以上にゲイムギョウ界から注目されているんですよ」
イストワールはそう言うと、「それにファミ通さんの雑誌でも紹介したことにより注目が集まりましたので」と続けると、「ファミ通さんにはもの凄くお世話になっちゃってますね」とネプギアが言う。
「そんなに人が集まったら困るわ」
ビィトリットがそう言うと、「そうですね。あんまり知らない人が集まったら動物や精霊さん達も驚いてしまいますよね」とネプギアが頷く。
「その代わりに各国のテレビ局がライブ放送をする為に訪れていますよ」
イストワールが更に説明を続けると、「ゲイムギョウ界全体がアタシ達に注目しているのね」とユニが言い、「わたし達の踊りで、みんな魅了しちゃうんだから」とラムが自信満々に言う
「そろそろ時間です。舞台に上がって下さい」
イストワールがそう言うと、女神候補生達は円陣を組み、「みんな、頑張ろう!」とネプギアが右手を出すと、ユニ、ロム、ラムが手を重ねてくる。
「「「「えいえい、おー!」」」」
四人は声を合わせて気合を入れると円陣を解き、ネプギアを先頭に舞台に移動する。
女神候補生達が舞台に現れると、「来た来たー! ネプギア達だよー!」と特等席のネプテューヌが声を上げるが、「こらっ、静かにしなさい」とノワールに叱られてしまう。
女神候補生達は舞台の中央まで移動すると、丁寧に一礼して、ネプギアが置いてあるマイクを手に取る。
「今日はお集りいただきましてありがとうございます」
ネプギアが集まった村人達に挨拶をする。
「今日はルートビルド計画により拓かれる道にある森や動物達に、今までこの土地を護り育み続けてくれたことの感謝と、これからの共存と繁栄を願い地鎮の舞を踊らせてもらいます。みなさんも共に祈りを捧げて下さい」
ネプギアはそう言うと一礼をしてマイクを置く。
すると舞台の後ろに居たエルフの音楽隊とプラエが楽器を奏で始める。
「はじまるわね」
ネプテューヌと同じく特等席に居たアイエフがネプギア達を見守る。
音楽に合わせてネプギア達が舞い始めるとミクがエルフ語で歌を歌い始める。
「みなさま頑張って下さい」
フィナンシェが祈るように舞台を見つめる。
その隣で、あんみつが同じく祈るように、「プラエ様……」とバイオリンを奏でるプラエを見守っていた、
その間も、女神候補生達は華麗な舞を踊り続ける。
「まさか、二人がこれほどの踊りを踊れるようになるなんて」
ブランが驚きの表情を浮かべると、「ロム様もラム様も毎日毎日レッスンを頑張ったんですよ」とフィナンシェが説明する。
「ラムはともかく、ロムまで……」
ブランはそう言った後に、「……これでは運動音痴の女神が、わたしだけになってしまうわ」と呟くと、「ブラン様?」フィナンシェがブランに声を掛けるが、「……何でもないわ」とブランは黙ってしまう。
「ギアちゃん達綺麗です~」
コンパはネプギア達の踊りに感動すると、「心を奪われるような踊りだね」ファミ通も、うっとりしながらネプギア達を眺め、「あたしも色々旅して来たけど、これ程の踊りは初めて見るね」とファルコムが感嘆する
一糸乱れない踊りを見せるネプギア達。
村人たちも、ネプギア達のしとやかで美しい踊りに見惚れていた。
その時静かに風が吹く。
「精霊達が歓迎している……」
ビィトリットが呟く。
ネプギア達の地鎮の舞は精霊達に通じたようだった。
「あれ? 鳥が集まってくるよ」
ネプテューヌが言う通り、森から小鳥たちが出てくると舞台の周りを旋回し始める。
「それだけじゃないわ、キツネやウサギまで……」
ノワールが言うように、森から動物まで現れてネプギア達の舞を見始める。
「警戒心の高い野生動物がこれだけの人だかりの前に現れるなんて……」
ブランが動物たちの行動に驚くと、「これはネプギアちゃん達が森の生き物に受け入れられたと取ってよいのしょうね」とベールが動物達の行動を分析する。
ネプギア達は二時間近く地鎮の舞を踊り続け、その間人間も動物もその姿に見惚れていた。
地鎮の舞が終わると村人達から拍手が沸き起こり、動物達は静かに森に帰って行った。
「お疲れ様でした。素晴らしい舞台でしたよ」
舞台を降りたネプギア達にイストワールが声を掛ける。
降りた先には特等席に居たネプテューヌ達もいた。
「タオルです。汗をお拭き下さい」
フィナンシェがタオルを差し出すと、「ふぅ……成功だね」ネプギアが汗を拭いながら一息ついて成功を喜ぶ。
「成功も成功、大成功よ!」
ラムがそう言って笑顔Vサインを決めると、「うまく出来たよ」とロムも笑顔とVサインを見せる。
「これなら動物も精霊も満足でしょうね」
ユニも地鎮の舞に確かな手ごたえを感じているようだった。
「ええ、あなた達の祈りは通じているわ」
ビィトリットがネプギア達に言うと、「凄いじゃない。感心したわ」とアイエフがネプギアの肩を叩き労い、「すごく綺麗だったです~」とコンパも目をキラキラさせて感動し、「これは良い記事になるよー!」とファミ通も満足そうだった。
「うん、いいものを見せてもらったよ」
ファルコムもネプギア達を褒める。
あんみつは、演奏を終えたプラエの側に寄ると、「プラエ様、大丈夫ですか?」と心配そうに尋ねる。
プラエは、「大丈夫だよ。途中クラッとしたけど、ネプギアお姉さん達の踊りを見てたら治っちゃった」とガッツポーズをして元気をアピールする。
「ネプギアお姉さん、みんなもとっても素敵だったよ」
プラエがネプギア達にそう言うと、「ありがとう。プラエちゃんの演奏もとっても力になったよ」とネプギアが答える。
プラエは頬を赤くして、「えへへ……そう言って貰えると嬉しいな」と言うが、次の瞬間ヒザを折ってよろけてしまう。
「プラエ様!」
慌てて、あんみつがプラエを抱きかかえると、「プラエ大丈夫?」とラムが心配そうな声を出す。
「少し疲れちゃったのかも……」
プラエがラムに微笑みながらそう言うと、「少し横になりましょう」とあんみつがプラエを休憩所まで運んで行く。
「ミクのエルフ語の歌も上手かったよ。あたしよりエルフ語上手いんじゃないかな」
ファルコムがそう言うと、「これもネギちゃん達のお陰だよ。今日も気持ちよく歌えたし」とミクが嬉しそうに言う。
「わたし達もユニット組もうか【ネプブラ・ベール】とか」
ネプテューヌが女神達に提案をするが、「断るわ。わたし忙しいし」とブランが即答で断る。
「……それ以前に誰か抜けてない?」
ノワールが不満そうに言うと、「まあまあ、ノワール落ち着いて」ベールがノワールを宥める。
「そうだよ、ノワールがぼっちなのは、お約束じゃない」
しかし、ネプテューヌが思いっ切り煽ると、「誰がぼっちよ!」と憤慨するノワール。
「これもビィトリットさんのおかげです。ありがとうございました」
ネプギアがビィトリットにお辞儀しながらお礼を言うと、「私は手伝いをしただけ、この成果はあなた達のものよ」とビィトリットはネプギア達の成果と努力を素直に認める。
「そうそう、その羽衣はあげるわ」
ビィトリットがそう言うと、「いいですか? こんなに良い物を……」とネプギアが遠慮気味に言うが、「ええ、あなた達とエルフの友好の証と思ってちょうだい」とビィトリットがハッキリと言う。
「ありがとうございます」
ネプギアがそう言うと、「これから期待してるわ。エルフの族長としても私個人としても」とビィトリットが言う。
こうして、地鎮祭は大成功に終わった。