新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2 作:ゆーじ(女神候補生推し)
地鎮祭の翌日……G.C.2019年7月22日 月曜日の朝。
「次!」
ギャザリング城の中庭にファルコムの凛とした声が響く。
その手には竹刀が握られていた。
「やあああ!」
同じく竹刀を持ったネプギアがファルコムに向かって行く。
ばしばしばし!
ネプギアは竹刀の打撃を次々にファルコムに打ち込む。
「うん、だんだん良くなってるね」
しかし、ファルコムは余裕の表情でネプギアの打ち込みを自分の竹刀で全て払いのけてしまう。
「だけど! まだまだ甘いっ!」
ファルコムはそう言うと、素早くネプギアの竹刀を強く払いのける。
「あっ!」
竹刀を払いのけられてしまったネプギアは態勢を崩してしまう。
パシーーーン!
ファルコムの竹刀が素早くネプギアの胴体に当たる。
「胴あり!」
ファルコムの竹刀が当たった瞬間、あんみつが右手を上げて声を上げると、「うぅ……また負けちゃいました……」としょんぼりするネプギア。
「これで何連敗だっけ?」
ネプギアの後ろに居たロムが首を捻ると、「大体一ヶ月前から毎日だから、30近くね」とユニが答える。
「ファルコム強過ぎよー!」
ラムが口を尖らすと、「指南をするからには、あたしも本気でやらないとね」とファルコムが答える。
「流石ファルコムさんです。私達四人がかりでも手も足もでません」
ネプギアはそう言ってファルコムの強さに感服すると、「ここまで勝てないと自信無くすわね……」とユニが肩を落としながら言う。
あんみつの隣で見学していたプラエも、「姉さまと同じくらい凄いかも……」と呟く。
「君達もかなり上達してるから自信もっていいよ」
ファルコムがネプギア達を励ますと、「毎日毎日もの凄いスピードで成長していくから、あたしも教え甲斐があるよ」と続けて言う。
「あっ! それって、【まったく、小学生は最高だぜ】ってヤツ?」
ラムが嬉しそうに左手を上げながら言うと、「それはちょっと違うかな……」とファルコムは苦笑いをする。
一ヶ月前ファルコムと出会った時にファルコムの強さと経験の豊富さを買ってネプギアはファルコムに剣術の指南をお願いしたのである。
ユニ、ロム、ラムも一緒にしたいと申し出て、こうして毎日のジョギングの後に朝稽古をしているのである。
ファルコムの実力は高く四対一でもネプギア達は一本も取れないでいた。
あんみつは審判、プラエは見学として参加していた。
「そう言うけど、ジョギングもファルコムの方が速いじゃない」
ユニは口を尖らせて言う。
自分でも自信のあったジョギングでも負けているのが悔しいようだ。
「ファルコムさん凄い(きらきら)」
ロムがそう言うと、「流石は歴戦の冒険家よね」とラムが言い二人は素直にファルコムを称賛する。
「ただの年季の差だよ。君達ならあたしなんてあっという間に追い抜けるよ」
ファルコムは謙遜すると、ニッコリ微笑む。
「ねぇねぇ、いつになったら、メンマ海鮮になるの?」
ラムが左手を上げてそう言うと、「ラムちゃん、メンマは海鮮物じゃなくて、タケノコから出来てるんだよ」とネプギアが答えるが、「それを言うなら免許皆伝でしょ……」とユニが呆れた声を出す。
「うーん……一介の冒険者のあたしが免許皆伝を出すなんて、おこがましい気もするけど……」
ファルコムはそう言って腕を組んで難しい顔をする。「でも、私達はファルコムさんの弟子みたいなものですから」とネプギアが言い、「そうよ! 和尚様でしょ!」とラムが言うが、「お師匠様ね」とユニがツッコミを入れる。
「お師匠様お願いします(うるうる)」
ロムがそう言ってお願いすると、ファルコムは更に困った顔で、「まいったな……」と頬を指でかく。
「あの……迷惑でしたか?」
ネプギアがそう言うと、「いや、そんなことはないよ。師匠って呼んでくれるのはうれしいし。でも、君達には君達の戦い方があって、あたしの八葉一刀流にこだわる必要はないかなって思ったんだ」とファルコムが答える。
「そうね……アタシの基本スタイルは銃だし、ロムとラムは魔法だもんね」
ユニがそう言うと「えー? でも、わたしはアイスハンマーとかアイスカリバー使うから、剣とかのことも知りたいー!」とラムが言う。
「それじゃあ、ラムはどんな風な戦い方をしたいのかな?」
ファルコムがそう言うとラムは元気よく左手を上げて、「ズキューンと先手必勝のズバーンな一撃必殺なヤツが良い!」と言う。
するとファルコムはあごに手を当てて少し考えると、「それなら、示現流がいいかもね」と言う。
「次元流? わたしが習いたいのは銃じゃなくて剣よ」
ラムがそう言って首を傾げると、「その次元流なら、アタシが習いたいわね」とユニが言う。
すると、「でも、早撃ちはのぶ太君の方が0.2秒早いんだよ」とネプギアがユニに言う。
「うーん……銃を持つと凄いんだけど、それ以外がね……」
ユニがそう言って難しい顔をするとネプギアは、「あとはあやとりが上手くなったり、0.93秒で昼寝もできるかな」と付け加えるが、「ショボいオマケね」とユニは呆れた顔をする。
「のぶ太君って聞いたら、ブタさんが食べたくなってきた(ぶうぶう)」
ロムがそう言うと、「わたしカツ丼がいい!」とラムが元気よく言い、「わたしはチャーシューメン」とロムがそれに続く。
「お肉と言えば、うずめさんが好きだったっけ」
ネプギアがそう言うと、ユニが「そうなの?」と質問し、「うん、前にお姉ちゃんと二人で御馳走したことがあるの。私がハンバーグでお姉ちゃんがカツ丼」とネプギアが答える。
「お肉食べたーい!」
ラムがそう言うと、「食べたい」とロムがそれに続く。
「プラエはどう? お肉食べたい?」
ラムがプラエにそう尋ねると、「ロムさんとラムさんのお話聞いてたら、食べたくなってきたかも……」とプラエが答える。
「それじゃあ、今夜はうずめさんも呼んでバーベキューにしようか?」
ネプギアがそう言うと、「「さんせーーー!」」とロムとラムは嬉しそうに両手を上げる。
「フィナンシェに用意してもらいましょ」
ラムがそう言うと「楽しみ(うきうき)」とロムが嬉しそうに続く。
「プラエ、バーベキューって初めて。あんみつ、できる?」
プラエが隣のあんみつに尋ねると、「問題ありません。フィナンシェと私にお任せ下さい」と答える。
「これがガールズトークってヤツかな……付け入る隙がまったくないね」
ネプギア達の話を途中から黙って聞いていたファルコムがそう言ってしみじみと感心していると、「あっ! ごめんなさい」とネプギアが言うが、「いや、見ているだけで楽しいよ」とファルコムは微笑む。
「えっと、示現流の話でしたよね。あの【ちぇすとー】って叫ぶ剣術ですよね」
ネプギアがファルコムに気付いて慌ててそう言うと、「うん、よく知ってるね。あたしも少しは知ってるから教えられると思うよ」とファルコムが言う。
「じゃあ、教えてー!」
ラムがそう言うと、「いいよ。基礎が済んだらね」とファルコムが答えるが、「基礎ってどれぐらい~?」とラムがやや不満そうに頬を膨らます。
「焦っちゃダメだよ。師弟関係の修行の基本は【守破離】だからね」
ファルコムがにこやかに言うと、「序破急とは違うの?」とラムが質問をする。
「おや? 難しいことを知ってるね」
ファルコムが感心したような声を出すと、「地鎮祭の練習で覚えたのよ」とラムが両手を腰に当てて胸を張る。
「序がゆっくりで静かな始まり、破が静かさを破り、急展開、急はクライマックスへと一気に盛り上がり、速やかに締めくくる(くるくる)」
ロムはそう言いながら、序破急を現すように低速から高速の円舞を踊る。
「武術も同じだよ。最初の序がリラックス、次の破が力の出し始め、最後の急が発力」
ファルコムはゆっくりと竹刀を振りながら、序破急の流れをネプギア達に説明をする。
「そして、守破離は師弟関係のあり方の一つであり、それらの修業における過程を示したものになるんだ」
ファルコムは竹刀を地面に突き立てて、「第1段階の【守】では、師の教えを型どおりに身につける」と守破離についての説明を始める。
「次に型を完全にマスターできたら【破】に移り、師の教えに自分独自のものを加えて行く。最後の【離】で師を離れて独立するというステップをまとめて【守破離】って言うんだよ」
ファルコムが説明を終えると、「なるほど。守だけじゃ師匠には追いつけないですし、守がなければ破も離も成り立ちませんよね」とネプギアが納得したように頷く。
「うん、そうだよ。守は大切だけど、それだけじゃ勝てないよ」
ファルコムの答えに、「教科書通りの動きじゃ実戦では勝てないってことね」とユニも納得すると、「うん。そこに独自のアレンジやを加え、別の流派に昇華するまでが守破離だよ」とファルコムが頷く。
「……ファルコムさん、それって武術だけの考えじゃないですよね?」
ネプギアがやや躊躇いながら質問をすると、「そうだね。君たち女神候補生も、お姉さん達の教えを守るのもいいけど、そろそろ独り立ちが必要かもしれないね」とファルコムが答える。
「どうしてわかったんですか?!」
ネプギアが驚いた顔をすると、「なんとなくかな。これでも冒険で色々な人に会っているからね」とファルコムが少し得意気に答える。
「お姉さんの力になりたい気持ちは分かるけど、一度は自分自身の考えと力で前に進んでみるといいよ」
ファルコムは諭すように言い始め、「あたしも平和で居心地の良い場所はいくつもあったけど、どうしても冒険をやめられないんだ。新しい土地で新しい人達、そして新しい物語に出会うのが楽しくてね」と締めくくる。
「確かに、ずっと居心地の良い場所にいたら、新しい発見はできませんよね」
ネプギアは右手をあごに当てながら納得したように頷き、「井の中の蛙大海を知らずってヤツね」とユニも同じように腕組みをしながら納得したように頷く。
「胃の中のオカズ大腸を知らず?」
ラムが妙な聞き間違いをして、腕組みをしながら首を傾げると、「ご飯とかお味噌汁も大腸を知らないの?」とロムも右手の人差し指を口元に当てながら首を傾げる。
「違うわよ。井の中の蛙大海を知らずよ」
ユニが少し呆れながら訂正を入れると、「狭い世界に生きてて広い世界のことを知らないって意味だよ。小さな井戸の中に住む蛙は、大きな海があることを知らないということから来てるんだよ」とネプギアが付け加える。
「「なるほどー」」
ロムとラムがいつものようにシンクロで納得ししつつ頷く。
「井の中の蛙大海を知らずにも、されど空の蒼さを知るって続きもあるけどね」
ファルコムが腕組みをしながらそう言うと、「それはどういうことですか?」とネプギアが首を傾げる。
「狭い世界にいるからこそ、その世界の深いところや細かいところをよく知っているって事さ。他の分野のことは知らないけれど、自分の専門分野のことはとても詳しい人と言った感じだね」
ファルコムが質問に答えると、「それも一理あるわね」とユニが右手をあごにあてながら頷く。
「うん、あたしの冒険でもそういう人の力を借りたりする時があるからね。でも、君達は多くの人やゲイムギョウ界の未来を担う女神様だ。どちらかというと大海に出て多くを経験して、そういう人達の力を借りる側の人だと思うよ」
ファルコムがそう言うと、「はい、そうですね」とネプギアが素直に頷く。
「皆様、朝食が出来あがりました」
そこにフィナンシェが呼びに来ると、ロムとラムは手を上げて、「「はーい」」と揃って返事をすると駆け足で食堂に向かう。
「あの、フィナンシェさん、今夜バーベキューの用意って出来ますか?」
ネプギアがロムとラム代わって尋ねると、「急ですね」とフィナンシェは少し難しい顔をして答えるが、直ぐに表情を引き締めて「ですが、主人の要望に応えてのメイド道。私に任せて下さい」と力強く言う。
「ありがとうございます」
ネプギアがそう言ってお礼を言うと、フィナンシェはニッコリ微笑んで「この辺りは農業が盛んで、新鮮なお野菜やお肉が手に入りますから、美味しいバーベキューが出来ると思いますよ」と答える。
「それは楽しみね」
ユニがそう言うと、「ささ、皆様、まずは朝食を」とフィナンシェが言い、ネプギアとユニ、それにプラエとファルコムも歩いて食堂に向かう。
「フィナンシェ、今晩はメイドの腕の見せ所よ」
残された、あんみつがフィナンシェにそう言うと、「ええ、忙しくなりますね」とフィナンシェは楽しそうに答える。
ルートビルド計画が始まってから、あんみつはフィナンシェと共にギャザリング城のメイドとして働いているが、その姿は以前に比べて生き生きとしているようだった。
***
「あーーー! 先に食べてるー!」
ネプギアが食堂に入ると、ラムの大声が聞こえてくる。
ラムは、椅子に座ってお茶碗のご飯をガツガツとかき込んでいる人物を指差していた。
「どうして先に食べちゃうの?(しくしく)」
ロムが悲しそうに訴えるように言うと、その人物はお茶碗を置いて、「そこに飯があるからさ!」とドヤ顔を決め込む。
そこには、ほっぺたにご飯粒を付けたネプテューヌが居た。
彼女は昨日の地鎮祭からギャザリング城で一晩泊まったのである。
「なに登山家みたいなこと言ってるのよ!」
ネプギアと同じタイミングで食堂に入っていたアイエフは、スタスタとネプテューヌに隣に歩いていくと、軽くゲンコツを加える。
「いたーい!」
オーバーリアクションに痛がるネプテューヌの横で、「怒られるから止めた方が良いって言ったんですけど~」とコンパがアイエフに説明をする。
「お姉ちゃん、お口の周りが汚れてるよ」
ネプギアもネプテューヌのところに歩いて行くとティッシュで口元を拭く。
「ねぇねぇ! ネプギアー! ネプテューヌちゃん、先にご飯食べてるってズルいよ! 食べるのはみんなが揃って、いただきますをしてからでしょ!」
ラムがネプギアそう言うと、「それにお行儀悪い……ご飯はゆっくりよく噛んで食べなきゃダメってネプギアちゃん言ってた」とロムもそれに続く。
二人のその姿は悪さをした男子生徒を担任の先生に訴えているようだった。
「ごめんね。私も何回も言ってるんだけど、お姉ちゃん聞いてくれなくて……」
ネプギアが申し訳なさそうに二人にそう言うと、「これはアレね、火事を放つってヤツね」とラムが言うと、「放火はダメだよ」とネプギアが言うが、「それを言うなら、サジを投げるでしょ……」とユニが呆れ顔で言う。
「ロム様、ラム様、ネプ子のやることは真似してはダメですよ」
アイエフが丁寧にロムとラムに説明すると、「お姉ちゃんもネプテューヌちゃんの真似はするなって言ってた(こくこく)」とロムが言い、「はんぺん教師だって」とラムがそれに続くが、「それを言うなら反面教師」と再度ユニがツッコミをする。
「とりあえず、いただきますしようよ」
ネプギアがそう言うと、全員が席に着いて、「いただきます」と言う。
「がっがっがっがっ! 美味い! おかわり!」
ネプテューヌは相変わらず、ご飯をガツガツとかき込んで勢いよく食べていた。
「はいです~」
コンパは嬉しそうにご飯をよそると、「いや~、久々のコンパ飯は箸が進むね~」とネプテューヌは茶碗を受け取る。
「プラネタワーのシェフの食事も美味しいんだけど、やっぱりコンパ飯が一番だね」
ネプテューヌはそう言うと再びご飯をガツガツと食べ始めると、「子供の前よ。もう少し行儀良く食べなさいよ」とアイエフはそんなネプテューヌを呆れながら見る。
「ネプテューヌちゃんいっぱい食べてる……」
ロムがネプテューヌの食べっぷりに驚いていると、「ネプテューヌちゃんみたいな人を、フールファイターって言うのよね」とラムが言う。
「ラムちゃん、フールじゃなくてフード。フードファイターだよ」
ネプギアがラムの言葉を訂正すると、「フールと言うのはあながち間違いじゃないけどね」とアイエフがさらりと毒を吐く。
「ゲーム三昧の日々もいいけど、たまにはこうやってみんなで食べるものいいね」
ネプテューヌはアイエフの言葉を特に気にした様子もなく食べ続けてそう言うと、「そうだね。みんなで食べるご飯は美味しいよね」とネプギアはネプテューヌに同意する。
「ところで、ネプ子は何で泊まったの?」
アイエフがネプテューヌに問いかけると、「あいちゃん、さっきから冷たいよー。わたしに何か恨みでもあるのー」ネプテューヌは軽いノリでアイエフに抗議する。
「そんなの無いわよ。サッサと戻ってダラダラすると思ったから不思議に思っただけよ」
別にアイエフはネプテューヌを邪険に扱っている訳ではなかった。
友人なりに気を許した仲ならではの発言である。
「そうそう、それなんだけど、わたし目立ちたい」
ネプテューヌがアイエフの疑問に答えると、「目立ちたい?」とネプギアが首を傾げる。
「ベール張りのゲーム人生もいいけど、目立ってこその主人公だと思うんだよね」
ネプテューヌがうんうんと頷きながら答えると、「……何か嫌な予感がします」とイストワールが眉をひそめる。
「と、言うことで、超目立ててシェアが爆上げで全然疲れないボーナスステージ的なクエスト無い?」
ネプテューヌがイストワールに質問するが、「ありません」とイストワールは即座に言う。
「いや、そんな筈はない。主人公たるわたしに相応しいビックなクエストがあるよ! 無いなら今すぐ起こるよ!」
ネプテューヌはそう言って握りこぶしを作って力説する。
「だから、そんな都合よく……」
ピピピピ……
ネプテューヌの発言を返そうとしたイストワールから電子音がする。
「通信? こんな時間に」
イストワールは通信モードになると「はい、私です」と通話を始める。
「ええっ! 本当ですか? わかりました。今すぐ向かいます」
イストワールが驚いた顔をして通話を切ると、「なに! もしかして、わたし向けのクエストが舞い込んできたの?」とネプテューヌが目を輝かせてイストワールに詰め寄る。
「……そうかどうかは分かりませんが、近くの村がモンスターに襲われているんです」
イストワールがネプテューヌの質問に答えると、「やっぱり! 流石わたし。主人公補正バリバリで緊急クエストまで呼び起こしちゃったよ!」とネプテューヌは自慢気に腕を組む。
「……村が襲われてるんだから、この場合疫病神でしょアンタ」
アイエフが冷ややかにツッコミをするが、ネプテューヌ気にもせず元気よく、【ぴょいん】とジャンプすると、「とうとう満を持しての主人公登場! 視聴者の皆さん、お待たせしました。これからはずっとわたしのターンだよ!」と言い横ピースを決める。
「どこに向かって言ってるのよアンタは……」
アイエフはそんなネプテューヌを呆れ気味に再度ツッコミするが、ネプテューヌは今度も気にした様子もなく、「あいちゃん達脇役のみんなにも感謝してるよ。わたしの為に場を温めてくれてありがとう!」と腕を組んでうんうんと頷く。
「はいはい……」
ネプテューヌのハイテンショントークに付いて行けないと言わんがばかりに、やれやれのポーズをとるアイエフ。
「とにかく、早く向かいましょう」
ネプギアは食事を止めて席を立つと、「車の準備してくるです~」と言ってコンパも立ち上がり、「私も!」とファミ通も立ち上がる。
他のメンバーも次々に席を立ち外に向かう。
***
外に出たネプテューヌはアイエフのバイクに飛び乗ると、「ゴーゴー!あいちゃんレッツゴー!」とアイエフを急かす。
アイエフは、「こら、騒ぐな!」とネプテューヌを注意しつつバイクに跨ってエンジンを始動させる。
続いてファミ通がワゴン車に乗り込むと、助手席にネプギア、後部座席にユニとロムとラムとプラエが乗り込む。
「村が襲われているなんて大変です。急いで下さい」
ネプギアがファミ通にそうお願いをすると、「了解。今日も良いネタ掴めそうだね」と言いながらエンジンを始動させる。
コンパが車に乗ると、続いてイストワールとあんみつとミクとファルコムが乗り込む。
その光景を見送るフィナンシェが、「行ってらっしゃいませ」と一礼すると、バイクと二台の車が発進する。
ネプギア達は村に到着すると、急いで車から降りる。
「まだ本格的に襲われていないみたいですね」
ネプギアはそう言って安堵のため息をつくと、「ああ、ネプギア様、イストワール様、お待ちしておりました」と駐屯の兵士がネプギア達を歓迎する。
「被害は?」
イストワールがそう尋ねると、「幸いまだありません」と兵士が答える。
「よーし! ここでわたしが大活躍して目立てるって寸法だね」
ネプテューヌはそう言って駆け出すが、「ああ、お嬢ちゃん危ないから非難して」と兵士に前を塞がれて止められてしまう。
「ちょっとー! なにするの? わたしだよ! ネプテューヌだよ!」
ネプテューヌは憤慨して兵士に詰め寄るが「ね、ねぷちゅー?」と兵士は首を傾げる。
ネプテューヌの名前がよく聞き取れなかったようだ。
「おおっと! 出ましたよ! わたしの名前が言えないパターン!」
ネプテューヌは、この状況もお決まりのパターンだと楽しそうに言うが、「……って、わたしの国の兵士なのにわたしの名前知らないの?」と冷静に戻って自国の兵士が自分の名前を知らないことに驚く。
「オラ、一か月前に兵士に志願したばっかりだし」
兵士は地の方言でしゃべりながら答えると、「お姉ちゃん、この辺りの村の人は女神のことあんまり知らないんだよ」とネプギアがネプテューヌに説明をする。
「えー? 田舎者だなー」
不満そうに言うネプテューヌに、「事実田舎だしね、私も電波が届いてなくて驚いたし」とアイエフが言うと「テレビもラジオも民放が一局あるだけです~」とコンパが続き、「PHKも映らないからお姉ちゃんのことも知らないのかも」とネプギアが言う。
【PHK】とはプラネテューヌ放送協会の略称で、プラネテューヌの国営放送である。
「ここプラネテューヌの土地でしょ? いーすん仕事してよー」
ネプテューヌは口を尖らせて不満を言うが、「私も何とかしようとしましたが、その度にネプテューヌさんが大赤字を出して、その立て直しで手が回りませんでした」とイストワールが落ち着いた声で答える。
アイエフがため息をついて、「自業自得ね」と言うと、ネプテューヌはバツが悪そうに右手で後頭部を掻いて、「そんなこともあったかもねー」と口笛を吹く。
「それじゃ、聞いて驚け! 見て笑え! わたしこそプラネテューヌの守護女神ネプテューヌなるぞー!」
ネプテューヌはいつものように腰に手を当てて自慢げにポーズを取るが、「それじゃあ、ネプギア様よろしくお願いします」と兵士にはネプテューヌは既に眼中に無く、ネプギアに頭を下げてモンスター討伐をお願いしていた。
「聞いてないみたいね」
アイエフが冷ややかにネプテューヌにツッコミを入れると、「ガーン!」とショックを受けるネプテューヌ。
「ねぷねぷ元気出すです~」
コンパがネプテューヌを慰めるが、「お仕事しないからこういうことになるんですよ」とイストワールはネプテューヌを説教する。
「まずは偵察機飛ばすね」
ネプギアはいつものようにNギアを操作すると偵察用ネプギアンダムを呼び出し上空に放つ。
空に舞い上がるネプギアンダムを見た村人達はプギア達の来訪を気付いて駆け寄って来る。
「女神様が来て下ったぞ!」
「ネプギア様だー!」
「ユニ様もいるぞー!」
駆け寄って来た村人達は口々にネプギア達を歓迎すると、「皆さん安心して下さい。モンスターは私達が倒します」とネプギアが村人達に向かってそう言うと、村人達から歓声が沸き起こる。
「ロム様ー!」
「ラム様ー!」
村の子供達がロムとラムに駆け寄ると「危ないからお家で待ってて」とロムがその子供達に言う。
「知り合い?」
ユニが質問すると、「わたし達の親衛隊よ」とラムが答え、「ああ、前に地鎮祭で言ってたのね」とユニが納得する。
「おおっ! ギャラリーも集まって来てお膳立てもバッチリだね」
ネプテューヌが嬉しそうに言うと、「あんまり油断しない方がいいわよ」とアイエフが釘を刺す。
「大丈夫だよ。こんなのわたしの人気上げイベントなんだし」
ネプテューヌは余裕の表情でそう言うと、「見ててよー。今は無視されても、わたしが華麗に討伐した暁には【さすねぷ】コールで村中溢れかえるよ」と続ける。
立ち直りはしたが、目立ちたがり屋のネプテューヌには無視は応えたらしくリベンジに燃えているようだ。
「さすねぷ?」
ロムがそう言って首を傾げると、「なにそれー?」とラムがネプテューヌに質問する。
「さすねぷは、【流石ネプテューヌ】の略で、わたしをひたすらに褒めちぎる言葉だよ! 主人公オブ主人公のわたしにこそ相応しい言葉だね」
ネプテューヌはロムとラムにVサインを向けながら、いつものハイテンションで説明をする。
「子供になに教えてるんだか……」
アイエフは呆れ顔で頭を抱えると、「ねぷねぷがやる気になったんですからいいじゃないですかー」とコンパがフォローを入れる。
「敵は村はずれに陣取ってるね」
その間にネプギアがネプギアンダムから送られたデータをNギアで確認すると、「タイプは?」とユニがすかさずモンスターの種類を尋ねる。
「映像から見るとカニ型のモンスターだよ。一匹だけ大きいボスがいるよ」
ネプギアが答えると、「カニ! もう勝ったも同然!」ネプテューヌが嬉しそうに話に割り込んで来る。
「……カニさん弱いの?」
ロムがネプテューヌに質問すると、「そりゃ、弱いよ弱い。カニって言ったら雑魚の代名詞。ジャンケンでチョキしか出せないし、黄金聖戦士もライダーも超人も最弱はカニだからね」とネプテューヌは早口にまくし立てる。
「どれぐらい弱いの?」
今度はラムがネプテューヌに質問すると、「主人公のわたしと比べたら、核兵器VS竹槍だよ!」ネプテューヌは自信満々に言い放つ。
「「おお~」」
ロムとラムが感嘆するが、「それ、なんかのフラグ立ててない……」とアイエフが心配そうにツッコミを入れる。
「大丈夫! カニなんて、指先一つでダウンだよ」
ネプテューヌが人差し指を立ててそう言うと、「と、言うことで行ってきまーす!」とネプテューヌは走り出す。
手にはネプテューヌの武器である日本刀が握られていた。
「え! お姉ちゃん、まだ作戦も立ててないんだけど!」
ネプギアは慌ててネプテューヌを止めようとするが、「そんなのわたしが全部倒して終わりだよー! さーて! さすねぷ無双伝説の始まりだーーー!」とネプテューヌはネプギアの制止も聞かずに意気揚々と走り去る。
「どうするの?」
アイエフが溜息を吐きながら言うと、ネプギアは、「追いましょう。お姉ちゃんなら大丈夫だと思いますけど、万が一ってこともありますし」と言う。
「わかったよ」
ファルコムがそう言って頷くと、「あと、水棲系のモンスターなら雷属性に弱いはずだよ」と続けて言う。
「ありがとうございます。それじゃあ、お姉ちゃんを追いましょう」
ネプギアはファルコムのアドバイスに感謝の言葉を述べるとネプテューヌの後を追う。
他のメンバーもネプギアの後に続く。
「ふっふっふー、カニカニカニ! どこを見てもカニだらけ! これは勝ったも同然だね」
一番に村はずれに到達したネプテューヌは、柵を壊して村に侵入している全長1メートルぐらいのカニ型モンスターの群れを見て満足そうに頷く。
「おい、あの子供は誰だ?」
その様子を見ていた付近の村人がひそひそ話をすると、「みんなー! 見ててね! わたしがサクッと倒しちゃうから!」とネプテューヌは村人に手を振ってアピールする。
「お姉ちゃん、待って!」
そこにネプギア達が追い付いてくるが、「よーし!一番強そうなボスモンスター発見! ネプ子少尉吶喊します!」と言って、ネプテューヌは群れの一番大きな5メートル程度のカニ型ボスモンスターに向かって行ってしまう。
「くらえ! スーパウルトラグレートデリシャスワンダフルキーーック!」
ネプテューヌは巨大なカニ型モンスターに背後から飛び蹴りを食らわすと、「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃ!」と続けて刀でラッシュをする。
「ネプテューヌの連続攻撃! モンスターはめった打ちで手も足も出ない!」
ネプテューヌは自分の攻撃を声に出して説明をする。
ネプテューヌはバランス型のネプギアと違い、物理攻撃を得意とした戦士系のキャラクターであり、特に刀を使用した斬属性の攻撃力は目を見張るものがある。
「お姉ちゃん、凄い……」
ネプギアはネプテューヌの連続攻撃に感心する。
しかし、「ねぇ、あれってダメージ当たってるの? 苦しんでるようには見えないんだけど?」とユニが言う。
すると、「あれはきっと有情剣なんだよ」とネプギアが説明する。
有情とは相手に痛みを感じさせず、安らかな死を与えるという技と言われている。
「……」
巨大カニ型のモンスターはネプテューヌの方に向くと右手のハサミを振り上げる。
パンッ!
「ねっぷぅぅぅぅぅぅ!?」
横薙ぎに振り下ろされたハサミに叩かれてネプテューヌは、679ダメージを受けると一撃で吹き飛ばされる。
どうやら、手も足もでないではなく気にも留めていなかったようだ。
地面に突き刺さるように墜落したネプテューヌは、「ネプ子さんがログアウトしました~」と言ってぐったりしてしまう。どうやら戦闘不能に陥ってしまったようだ。
「えええええ!?」
愕然とするネプギア。その隣で、「バカ……だから油断するなって言ったのに」と言ってアイエフは頭を抱える。
ボスの巨大カニ型のモンスターはネプテューヌの存在でこちらに気付いたのか、手下の小型モンスターに指示を出す。
ネプギア達に群がってくるカニ型モンスター。
「そんな! お姉ちゃんがやられるなんて!?」
ネプギアはネプテューヌがやられたことでパニックになってしまい、いつものような判断が出来ない。
「ファルコムさん、アイエフさん、コンパさん! ネプテューヌさんの救助をお願いします。残りのメンバーは各自迎撃を!」
そこにイストワールが素早く指示を飛ばすと、「任せて!」と言ってファルコムはネプテューヌに向かって真っ直ぐ走り出す。
ザクッ! ザクッ!
ファルコムの通り道に居る小型モンスターは、ファルコムに次々と切り払われ900台のダメージを受けて一撃で戦闘不能になる。
「もう、世話が焼ける」
アイエフがそう言って駆けだすと、「ねぷねぷ、今助けるです~」とコンパもそれに続く。
「敵はあたしが引き受けるから、アイエフとコンパは救助を」
ファルコムが地面に突き刺さっているネプテューヌのところまで着くとネプテューヌの盾になるようにモンスターの前に立ち塞がる。
「コンパは右足を持って」
アイエフはそう言いながらネプテューヌの左足を持つと、「はいです~」と言ってコンパはアイエフの指示通りネプテューヌ右足を持つ。
「せーの、で一気に引き抜くわよ!」
アイエフが続けて指示を出すと、「わかりましたー」と言ってコンパは両手に力を入れる。
「「せーの!」」
アイエフとコンパが突き刺さったネプテューヌを引き抜く。
「ネプ子しっかりしなさい!」
アイエフはネプテューヌの両肩を持ち激しく揺するがネプテューヌは目を覚まさない。
「ここはわたしに任せるです~」
コンパはそう言いながら武器である巨大注射器を持つと、「蘇生なんて朝飯前です~」と言いながらネプテューヌのお尻に巨大注射器の針を刺す。
ブスリ!
「ウボァー!?」
針を刺されたネプテューヌが断末魔に近い悲鳴を上げながら立ち上がる。
「ネプ子起きた?」
アイエフはネプテューヌの意識が回復したことを確認すると声を掛ける。
すると、「いたた……ちょっとー! こんな蘇生方法ってなくない?」とネプテューヌはお尻をさすりながら抗議する。
「油断してるから、こんなことになるのよ」
アイエフはネプテューヌの抗議を受け流して説教するが、「足が滑っただけだよ~」とネプテューヌは言い訳をする。
「いや、足が滑って地面に突き刺さったりはしないでしょ」
ネプテューヌの言い訳にアイエフが素早くツッコミを入れるが、「でも、今度は大丈夫!」とネプテューヌは立ち上がり、近くの小型カニ型モンスターに向かう。
「あっ、ねぷねぷ待つです~」
コンパは止めるがネプテューヌは止まらない。
「これが本気になったわたしの力だよー!」
ザシュッ!
ネプテューヌが小型のカニ型モンスターを斬り抜ける。
「ネプ子さんに断てぬものなし!」
ネプテューヌはドヤ顔で刀を鞘に納める。
「……」
しかし、カニ型モンスターは平然として斬り抜けをして背後がガラ空きのネプテューヌを手のハサミでパンチする。
パンッ!
「止まるんじゃねぇぞ……」
ネプテューヌは左腕を立てた状態でうつ伏せに倒れてしまうと、「ちょ、ネプ子! 何してるのよ!」と勢いよく返り討ちにあったネプテューヌにアイエフがツッコミを入れる。
「ねぷねぷ、お助けするです!」
コンパがまたネプテューヌのお尻に巨大注射器の針を刺す。
ブスリ!
「ぬわーーっっ!!」
ネプテューヌはまたも断末魔の叫びを上げる。
「君達、遊んでるの?」
ファルコムが怪訝そうな顔で三人を見ると、「私はそのつもりはないんだけど、ネプ子がね」とアイエフが言い訳をする。
「えー! こんなのおかしいよ、ゲームバランスの崩壊だよ!」
ネプテューヌはどこかには分からないが思いっ切り抗議すると、「ねぷねぷ、新作期からレベル上げてますか?」とコンパが質問する。
「えー? なにそれ? 美味しいの?」
ネプテューヌが不思議そうに言うと、「新作期って言うのは、ゲイムギョウ界の住人の強さがリセットされちゃう時期のこと。つまりレベルが1に戻っちゃうのよ」とアイエフが簡単な説明をする。
「……じゃあ、もしかして、わたしレベル1?」
ネプテューヌがそう言って首を傾げると、「そうみたいです~」とコンパが言い、「ちなみに私達は38で、ファルコムは54。ネプ子だけダントツでレベル低いわね」とアイエフがそれに続く。
いくら優れた戦士のネプテューヌと言えど、レベル30後半が適正の地点でレベル1ではダメージが当たらないのも仕方ない。
「えー? 物申す! そんな換毛期みたいなのでレベルが落ちるなんて納得いかなーい!」
ネプテューヌは口を尖らせて不満を言うが、ファルコムは涼しい顔で、「レベルって結構簡単に落ちるよ。あたしは冒険の度にレベル1に戻ってるし」とあっさり返す。
「原理は? 理由は? 目的はー? わたしにわかるように50文字以内で説明せよ!」
ネプテューヌはファルコムの言うことが納得できないようだったが、「細かい事はいいじゃないか。その方が冒険をより楽しめるし」とファルコムは特に気にした様子もなく明るく言う。
「一流の冒険家さんは言うことが違うです~」
コンパがファルコムに感心すると、「そういうことらしいから、ネプ子は足手まといだから引っ込んでなさい」とアイエフがネプテューヌを守るように前に出る。
「うっす! 寄生プレイしますんで、パワーレベリングお願いします!」
ネプテューヌはキッパリと言い放つ。
【寄生プレイ】と自分は戦わずに安全な場所で、仲間の稼いだ経験値やアイテムだけ手に入れる行為。
【パワーレベリング】とは高レベルプレイヤーの力を借りて、通常より早いスピードで経験値稼ぎをする行為。
「ねぷねぷ、ダメなプレイヤーさんになってるです~」
コンパが言う通り、基本的にはダメなプレイスタイルである。
「蹴りたくなるわね」
アイエフが呆れながらそう言う。
【蹴る】とは物理的に蹴るのではなく、ネットゲームで迷惑プレイヤーをパーティメンバーから追放する行為である。
「そんなことしてる暇はないようだよ」
ファルコムが言う通り、そんなことをしている間に小型カニ型モンスターに包囲されていた。
「わわっ! 敵さんに囲まれてるです~」
慌てるコンパに対して、ファルコムは勇敢にモンスターに斬り込んで行く。
「一気に突破するよ! 竜鳳烈破!」
ファルコムは怒涛のラッシュで敵を切り裂くと、1232のダメージが当たり敵が戦闘不能になる。
「やるわね、ファルコム!」
アイエフはそう言うとファルコムとは逆の方向のモンスターに斬り込む。
「真魔烈皇斬!」
アイエフが素早いコンビネーションでクリティカルヒットで754ダメージを与えると続けて、「わたしも頑張るですー! 超圧縮です!」とコンパの注射器から圧縮された液体が連射される。
液体の命中したモンスターは221のダメージを受けて戦闘不能になった。
「究極奥義、極楽浄土!」
ネプテューヌは寝そべりながら漫画を読んでポテトチップスを頬張る。
「……」
ドカッ!
アイエフが無言で寝そべってるネプテューヌのお尻をヤクザキックで蹴り飛ばす。
「あいちゃん、痛い~」
ネプテューヌはお尻をさすりながら抗議すると、「なにやってるのよ、アンタは!」とアイエフがネプテューヌを叱る。
「いやー、みんな漢字の技でカッコいいから、わたしも真似してみようかなって」
ネプテューヌがそう言い訳すると、「だったら普通に戦いなさい! アイテム使って援護するなり出来ることあるでしょ!」とアイエフが言うが、「寄生プレイなんだから、コントローラー放置でくつろぐのは常識じゃんかー」とネプテューヌは悪びれもなく反論する。
「……お姉ちゃん達楽しそう……」
姉の無事を確認し落ち着きを取り戻して、敵を迎撃していたネプギアがポツリとそう言うと「……アレを楽しそうって言えるアンタの神経凄いわ……ネトゲだったら、普通寄生の時点でキックよ」とユニが呆れたように言う。
***
ネプギア達はネプギアとファミ通とあんみつを前衛に置き、後衛にユニとロムとラム、それにプラエとイストワールとミクのフォーメーションで敵を迎撃していた。
「やあっ!」
ネプギアが小型のカニモンスターを切り裂くと、625ダメージを受けて消滅するカニ型モンスター。
「あとはボスだけだね」
ファミ通の言う通り、ネプギア達の周りの小型のモンスターは退治し終えて、残るはボスの大型カニモンスター【モリガニ】だけだった。
「シャーーー!」
モリガニに雄叫びを上げると横歩きで近づいて来る。
「速い!」
ユニの言う通り、巨体に見合わぬスピードで迫って来るモリガニ。
「ファミ通さん、あんみつさん、挟みこんで下さい! ミクちゃんは攻撃力アップの歌を!」
ネプギアがそう言うと、ネプギアは右側からファミ通とあんみつは左側からモリガニに回り込む。
「ていっ!」
ネプギアはビームソードで斬りかかる。
ガンッ!
モリガニは右手のハサミでガードしてしまい、8しかダメージが当たらない。
「後ろがガラ空きだよ」
ガンッ!
その隙にファミ通は後ろから殴るが、モリガニの甲羅のあまりの硬さに弾かれてしまう、ダメージも15止まりである。
「硬いー!」
ファミ通はそう言いながら、痺れた手を左右に振る。
「ならばこれでどうだ! 旋風裂剣!」
あんみつの刀から放たれた竜巻がモリガニに命中するがダメージが当たらず弾かれてしまう。
「ファルコムさんのアドバイス通り。雷魔法で攻撃しましょう」
イストワールがロムとラムに指示を出すと、「雷の矢よ敵を蹂躙せよ!! サンダーラッシュ!」とラムが、「……雷の矢よ敵を蹂躙せよ……サンダーラッシュ(びりびり)」とロムが言って連続で杖から雷を放つと、イストワールは暫く詠唱してから、「雷の記憶!」と雷のビームを放つ。
バリバリバリ!
雷に包まれるモリガニだが、ダメージは合計でも500程度しか当たらない。
ブウンッ!
モリガニは弱点の雷をものともせずに左腕のハサミで正面のネプギアに攻撃してくる。
「くっ……」
ネプギアは左手の防御の魔方陣で受け止めると185ダメージを受けHPゲージが三割程減るが、即座にファルコムのアドバイスを思い出して、「サンダーエッジ!」と右手のビームソードに雷を纏わせて反撃する。
ガンッ!
しかし、甲羅で守られたモリガニには113しかダメージが当たらずモリガニは平然としている。
「すごい防御力……」
ネプギアはモリガ二の防御力の高さに驚愕する。
ファミ通も攻撃を加えるが、ダメージは一桁止まりで、「硬すぎー、勘弁してよー」とファミ通が弱音を吐く。
「ファミ通さん」
ネプギアが真面目な顔でそう言うと、ファミ通は慌てながら、「あっ、始まって早々に弱音はよくないよね」と言う。
「いえ、相手はカニなんですから、カニだけに堪忍してほしいの方が良いと思うんです」
真面目な顔でダジャレを言うネプギアに、「ネプギア様、結構余裕あるね……」とファミ通が呆れながら言う。
「戦闘中にバカなこと言ってるんじゃないの! あんまフザけてると当てるわよ!」
ユニがそう言って後ろから脅すと、「ご、ごめん、ユニちゃん」とネプギアが素直に謝る。
「この前覚えた、あの弾使うわよ」
ユニがそう言うと、「うん、お願い」とネプギアが答える。
同時にユニはライフルのモードを変更すると新しい特殊弾を込めて、「5秒後に右手にウィークネスバレットを貼るわ!」とライフルを構えながら大声で言う。
「わかった! みんな、ユニちゃんの射撃の後に右手を集中攻撃!」
ネプギアが全体に指示を出すと、「「「了解!」」」とロムとラムとプラエが頷き、「また何か策があるのかな?」とファミ通が嬉しそうにニヤリと笑う。
ズキューン!
ユニが銃を放つとモリガニの右手に弾が当たる。
するとモリガニの右手が赤い模様が付く。
「てやっ! サンダーエッジ!」
ネプギアがモリガニの右手を狙う。
ザシュッ!
先程と違い雷の刃が固い甲羅をアッサリ貫通すると623ものダメージが当たる。
「ジャアアア!」
モリガニは狼狽えるように後退すると、「おおっ! 攻撃が通った!」とファミ通が驚き「ユニちゃんのウィークネスバレットは当たった場所の防御力を大きく下げてくれるんです」とネプギアがファミ通に説明する。
【ウィークネスバレット】とは当たった場所の防御力を大きく下げる脆弱化弾を発射する技である。
モンスター1体に対し1ヶ所づつしか効果が無いが効果は抜群である。
これはプラネテューヌで発売されたオンラインゲームの弾を参考に作られている。
「よし! じゃあ、私も!」
ファミ通がエビで叩きつけるようにモリガニの右手を叩くと610のダメージを与える。
「これなら行ける!」
あんみつは一瞬でモリガニとの距離を詰めるとモリガニの右手を刀で切り裂き、615のダメージを与える。
「それそれそれ!」
ラムが雷魔法を連発すると、「右のお手々を集中攻撃だよ」とロムもそれに続く。
更にプラエが、「クロックチェーン九時! サンダーチェーン!」と左手の鎖を伸ばす。
バリバリバリ!
右手に雷と鎖が連続して当たると、合計で1500以上のダメージが当たり、モリガニは防御力が下がったことを自覚して、たまらず後方に逃げる。
「逃がしません!」
イストワールがその行動を見透かしたように魔法を放つ。
ズガーン!
モリガニの右手に落雷が落ちると1325もの大ダメージが当たる。
バキーーン
落雷が当たると同時にモリガニの右手の甲羅にヒビが入り、部位破壊をさせる。
同時にウィークネスバレットの赤い模様が消えてしまう。
部位破壊するとウィークネスバレットは効果を失ってしまうのだ。
「次は左いくわよ!」
ズキューン!
しかし、ウィークネスバレットの効果の消失を待っていたかのようにユニが銃を放つと、モリガニの左手に弾が当たる。
先程と同じように左手が赤い模様に包まれる。
右手のウィークネスバレット効果が無くなったことにより、今度は左手に付与したのである。
「ナイス、ユニちゃん」
ネプギアはそう言いながら、サンダーエッジでモリガニの左手を攻撃すると、「私もやらせてもらうよ!」とファミ通が、「好機!」とあんみつ同時に攻撃し合計で1500以上のダメージが当たる。
それに合わせるように、「サンダーチェーン!」とプラエが、「サンダーアロー!」とイストワールが攻撃をする。
「ギャァァァァ!」
モリガニが悲鳴を上げると同時に、今度も合計で1000以上のダメージが当たる。
「「……雷光よ……我が声に応えその眩い輝きを解き放て……」」
ロムとラムが同時に呪文を唱えるており、詠唱が終わると二人して両手を突き出して、「「ドロン!!」」と叫ぶ。
二人の手から巨大な雷が一直線に突き進み、モリガニの左手を貫通すると、3545のダメージが当たる。
【ドロン】とはヴォルガノンと同じくルウィーに伝わる強力な雷属性同士の合体魔法。
バキーーン
ドロンが命中するとモリガニの左手の甲羅が破壊される。
「ウィークネスバレット、リキャスト中。再装填まで80秒」
ユニはウィークネスバレットが撃てない事と再び撃てるようになるまでの時間を伝える。
「やっぱり便利な弾は連射できないんだね」
ファミ通の言う通り、ウィークネスバレットや内蔵破壊弾などの強力な特殊弾は、ユニのポーチ枠にセットされている弾を使い切ると一時的に弾切れになる。
弾切れになると同時にポーチの中にセットしてある自動装弾プログラムによって、素材アイテムを自動による合成で弾の製造が始まり、作られた弾がセットされ、再び撃てるようになるまでの時間がリキャスト時間と言う。
その為、ポーチに弾を合成するアイテムが無くなった時点で本当の意味での弾切れとなる。
「みんな、再装填まで破壊した場所に集中攻撃して!」
ネプギア全員に指示を飛ばす。
甲羅を破壊した場所なら攻撃が通るので、そこを集中攻撃作戦に出る。
「サンダーギアナックル!」
ネプギアがビームソードをしまい、雷を纏ったパンチをモリガニの右手に向けて繰り出す。
【サンダーギアナックル】は雷属性の打撃技である。
攻撃を受けたモリガニはウィークネスバレット無しで732ものダメージを受ける。
「ネプギア、いつの間にか打属性も弱点ってことに気付いたわね」
ユニがそう言って感心すると、「雷属性の打撃攻撃の組み合わせは相手が最も苦手とする攻撃ようですね。流石はネプギアさん」とイストワールがそれに続く。
ネプギアは弱点である雷を纏った斬属性攻撃や攻撃力の高いあんみつの攻撃がファミ通の通常の打属性攻撃のダメージがほぼ同じことで、打属性もモリガニの弱点であると気付いたのだ。
「ネプギアちゃん何でも出来る(うんうん)」
ロムが尊敬の眼差しでネプギアを見るが、「そうでもありません」とイストワールがロムの言葉に返す。
「えー? ネプギアに出来ないことなんてあるの? 剣で斬りも突きも出来るし、パンチやキックで打撃も出来るし、変身すれば銃も使えるし、わたしとロムちゃんには敵わないけど魔法も使えるわよ」
ラムがそう言って反論すると、「状態異常です。これだけはどうしても身に付かないのです」とイストワールが少し残念そうに答える。
「性格的な問題ね。その辺りはアタシ達がフォローするわ」
ユニは即納得すると、イストワールに心配しないようにそう言う。
その言葉に、「よろしくお願いします」とイストワールは頭を下げる。
「さあ、ジャンジャン攻撃するわよ! 電撃よ、我が手に宿り敵を滅ぼせ!! サンダーボルト!」
その間に魔法の詠唱が終わったラムが攻撃する。
「わたしも、電撃よ、我が手に宿り敵を滅ぼせ……サンダーボルト(びりびり)」
続けてロムがサンダーボルトを放つと、「では、私も……電撃よ、我が手に宿り敵を滅ぼせ! サンダーボルト!」更にイストワールも放つ。
三本の電撃の束がモリガニの左手に直撃をする。
ビリビリビリ!
合計で3000以上のダメージを受けて苦しみ悶えるモリガニ。
「これはおまけよ! サンダーバレット!」
更にユニの狙撃がまたもモリガニの右手に当たり582ダメージが当たり、「私もやるよ!」と続けてファミ通がモリガニの左手を叩くと535のダメージが当たる。
ブンブンブン!
モリガニもやられてばかりではなく、正面のネプギアに両手でパンチ攻撃してくる。
「あうっ!」
パンチがネプギアに当たりネプギアは吹き飛ばされ、205ダメージを受ける。
最初に受けたダメージと合わせて、ネプギアのHPゲージが残り半分以上減ってしまうが、立ち上がると即座に、「ヒール!」と回復魔法でHPゲージを八割まで回復させる。
「サンダーギアナックル!」
そして、モリガニに素早く走り寄りサンダーギアナックルで攻撃すると711ダメージを与える。
モリガニが血走った目でネプギアを睨む。
「ネプギア様、敵がかなり怒ってるよ」
ファミ通は少し怯えたように言うが、「大丈夫。計算通りです! もっと私を狙って下さい!」とネプギアがモリガニの前に立ち塞がる。
タンクとして仲間を守ることを意識した立ち回りだ。
「援護しますぞ、ネプギア殿」
あんみつはそう言うと、ネプギアに集中しているモリガニの右側に回り込んで、「孤月剣!」と斬り上げ攻撃をモリガニの右手に723ダメージを食らわせる。
「クッシュゥゥゥ!」
モリガニが右手を抱えてうずくまる。
「怯みました! 一気に攻撃です!」
ネプギアが素早く指示を飛ばす。
【怯み】とは大型モンスターの特定の部位を連続で攻撃してダメージが一定以上になるとモンスターの動きが止まることを指す。
主に狩りゲーで起こる現象だが、このゲイムギョウ界でも起こるようになっている。
頭部を打撃属性で攻撃すると起こる気絶と似てはいるが、怯みの方が時間が短い。
上級者パーティーはこれをうまく管理し、安全かつ確実にモンスターを仕留める。
「よーし、やるよー」
ファミ通が走りながら勢いよくエビでモリガニの右手を殴ると623のダメージが当たる。
「敵の時間を遅くするから、一気に攻撃して!」
プラエの目が蒼く光るとモリガニの動きが遅くなる。
これで怯みの時間も長くなるのだ。
「感謝します、プラエ様」
あんみつはそう言いながら再びモリガニの右手に孤月剣を当てと732のダメージが当たる。
「「「……雷光よ……我が声に応えその眩い輝きを解き放て……」」」
ロムとラムとイストワールが声を揃えて魔法の詠唱を行う。
「「「ドロン!!」」」
三人が両手を前に突き出すと、先程のドロンより巨大な電撃がモリガニの右手を襲う。
電撃はモリガニに命中すると6222のダメージが当たる。
合体魔法は参加人数が増えると威力が増す。
「これでどうですか!」
ネプギアはそう言いながら跳躍すると、「ギアキーーーック!」とモリガニの右手に飛び蹴りを当てる。
「たあっ!」
続けて強烈なパンチをモリガニの右手に当てると、「キャンセル! サンダーギアナックル!!」と叫びながら雷を纏った正拳突きを食らわせる。格ゲーによくあるコンボだ。
合計で1100以上のダメージが当たると、モリガニは怯み状態から回復する。
同時にネプギア達前衛のメンバーはバックステップで後退して距離を取る。
「シュゥゥゥーッ!!」
モリガニが一番ヘイトの高いネプギアを睨みつける。
ザシュッザシュッザシュッ!
モリガニが今度はハサミを連続で突き立ててながら、ネプギアに突進してくる。
「くうっ!」
ハサミに連続で切り裂かれ、合計で423ダメージを受けたネプギアのHPゲージが五割以上減ってしまうが、「ハイヒール」と回復魔法で即座に全快まで回復する。
【ハイヒール】はヒールの上位魔法で、より多くのHPが回復出来る。ちなみに女物の靴とは関係はない。
「サンダーギアナックル!」
ネプギアはまたもモリガニに近寄り、サンダーギアナックルで攻撃し715ダメージを当てる。
「ヴァシャーーー!」
モリガニは両手を大きく上に上げて怒りを露わにする。
「もう敵にはネプギアしか見えてないわね」
ユニがその様子を見ながら言うと、「モンスターは回復行動と弱点属性の攻撃を嫌がりますからね」イストワールがそれに続く。
「ネプギアって、色々出来るからヘイトコントロール上手よね」
ラム腕を組んで嬉しそうにそう言うと、「ネプギアちゃん、ヘイトコントロールのおかげで安心して戦える(こくこく)」とロムもネプギアを褒める。
器用な属性の使い分けで敵のヘイトが上がりやすい属性で攻撃をし、更に回復魔法も使えるネプギアはヘイトコントロールが上手い。
相手がモンスターと言えど、嫌がらせをしてるような気分にはなるが、仲間を守る為なので躊躇はない。
「わわっ! 本気で怒ってるよ!」
ファミ通は怒り狂うモリガニに驚くが、「大丈夫です!」とネプギアがボムを投げると水色の爆風が巻き起こる。
「ロムちゃん、行って!」
ラムがその爆風を見てロムに言うと、「うん!」ロムがネプギアに向けて走り出す。
ブブブブブブン!
モリガニが怒りにより先程とは比べものにならない速さでパンチを繰り出す。
「くぅぅぅっ!」
ネプギアは左手の魔方陣で何とか耐え凌ぐがHPゲージがグングンと減少して、あっという間に三割を切ってしまう
「ネプギア様!」
ファミ通がそう叫ぶと、「私に構わず攻撃を続けて下さい!」とネプギアは防御しながらファミ通に指示する。
ネプギアの体力はモリガニの連続攻撃で二割まで減ってしまう。
「ちりょうするよ!」
しかし、そこに駆け付けたロムが回復魔法を唱えると瞬く間にネプギアのHPが回復する。
水色のボムは回復援護を頼む信号であった。
「おおっ! ナイスタイミング!」
歓喜するファミ通。
それに対してモリガニは自慢のラッシュを耐えきったネプギアに驚きおののく。
「ウィークネスバレット! 腹よ」
その隙にユニが大声で叫ぶ。
ズキューン!
同時にモリガニの腹に赤い模様に付く。
ユニがリキャストの終了したウィークネスバレットを放ったのだ。
「「サンダーボルト!」」
同時に二本のサンダーボルトがモリガニの腹に襲い掛かる。
ラムとイストワールの魔法攻撃である。
「サンダーチェーン!」
更にプラエの伸ばした鎖が援護攻撃に加わる。
ビリビリビリ!
モリガニに合計で5000以上のダメージが当たり、「グワーー!」と苦しむモリガニ。
「可能な限り接近します!」
ネプギアはその隙にモリガニの腹部に猛然とダッシュする。
「とびでるよ!」
そのタイミングに合わせてロムが攻撃力アップの魔法を唱える。
「サンダーギアナックルⅡ!」
ネプギアは雷を纏った右手で連続パンチを繰り出す。
バキッ!
それによりモリガニに951ダメージが当たり腹部の甲羅にヒビが入り、部位破壊される。
「次、背中!」
ユニが叫ぶと、ネプギアは、「オッケー」と言い、素早くモリガニの背後に回り込む。
モリガニはネプギアの方に向き直るが、それによりユニに背中を晒すことになってしまう。
「いいわよ、ネプギア!」
ユニは息の合ったネプギアの行動に感心しつつ、トリガーを引く。
ズキューン!
同時に銃声が鳴り、モリガニの背中にウィークネスバレットの赤い模様が付く。
「「「サンダーボルト!」」
先程と同じくラムとイストワールの放った、二本のサンダーボルトがモリガニの背中に襲い掛かると同時に、「同時攻撃だー!」とファミ通のエビの振り下ろしによる打撃攻撃が背中に命中し合計で6000近いダメージが当たる。
「ギャアアアス!」
モリガニが悲鳴を上げると同時に、「決めます!」とネプギアが言いながら、素早くモリガニの後ろに回り込む。
「とびでるよ!」
同時にロムが今度はユニの攻撃力をアップさせると、「華麗に決めるわ」とユニが銃に特殊弾を装填し、「プラエもお手伝いするよ!」とプラエも前に出る。
「サンダーギアナックルⅢ!!」
「雷属性の内蔵破壊弾よ!!」
「クロックチェーン九時! 雷の力よ!」
モリガニの背中に、ネプギアが雷を纏った両手のパンチのラッシュに加えて雷を纏った回し蹴りを食らわせると同時に、プラエの鎖が巻き付いて電撃を与える。
更にユニの内蔵破壊弾が命中し、雷を帯びた光線が乱発されて合計で9000以上の大ダメージが当たる。
バキッ!
背中の甲羅が割れ部位破壊がされると、モリガニの巨体がズシンと崩れ落ちる。
「やった?」
ファミ通はモリガニを倒したと思い近づくと、「いえ、まだ動きます」とネプギアはファミ通の前に出てファイティングポーズを取る。
「よーし! 一番美味しいところ貰ったー!」
そこに周囲のモンスターをファルコム達に倒してもらったネプテューヌが猛然とダッシュして近寄って来る。
「お姉ちゃん!?」
突然のネプテューヌの乱入に驚くネプギア。
「ボスモンスターのトドメを刺せば貢献度ナンバーワンはいただきだよ!」
ネプテューヌはそう言いながらモリガニに接近する。
【貢献度】とは点数みたいなものである。
「お姉ちゃん、油断しちゃダメだよ!」
ネプギアはネプテューヌを制止するが、「寄生プレイでレベルは上がってるから大丈夫!!」と言ってネプテューヌは止まらない。
「天上天下無双けーーーん!」
ネプテューヌの縦切りが崩れ落ちたカニモンスターの顔にヒットすると、「うりゃうりゃうりゃー!!」とネプテューヌは連続でモリガニを斬りつける。
「ユニちゃーん、ここにウィークネスバレットよろしくー」
ネプテューヌはユニの方を向いて、両手を上げてアピールするが、「今リキャスト中です。再装填まで50秒」とユニはネプテューヌに答える。
「えー? 使えないなー、主人公の登場に合わせて残しといてよ」
ネプテューヌは不満そうに言うと、背後のモリガニの目が光る。
「お姉ちゃん、危ない!」
それに気付いたネプギアがネプテューヌを両手で突き飛ばす。
ぶくぶくぶくぶく!
次の瞬間ネプテューヌの居た場所に、モリガニの口から出た大量の泡が襲い掛かる。
泡はネプテューヌの身代わりになったネプギアに振りかかる。
「きゃーーーー!」
悲鳴を上げるネプギア。
突き飛ばされて転んだ為に状況が分かっていないネプテューヌは、「いたた……酷いなー、ネプギア」とネプギアに文句を言うと、「ヒドイのはアンタよ!」と駆け寄ってきたアイエフがネプテューヌの頭にゲンコツする。
同時に、「ねぷねぷ、お仕置きです」とコンパが巨大注射器でネプテューヌのお尻を刺す。
「ぎにゃぁぁぁぁ!!」
断末魔の叫びを上げるネプテューヌ。
「どうなってるの?」
ユニは大量の泡に包まれて見えなくなったネプギアを心配する。
「ううっ……」
その頃ネプギアは泡のダメージで受けて片膝をついてうずくまっていた。
「泡がまとわり付いて動けない……」
ネプギアは動こうとするが、粘着質の泡がまとわりついて動けないでいた。
ブウンッ!
そこにモリガニのハサミが襲い掛かる。
「きゃあっ!」
避けることも出来ずハサミに挟まれるネプギア。
泡が晴れたユニ達の目には、モリガニのハサミに捕らわれているネプギアの姿が映る。
「ネプギアちゃん!」
ロムが悲鳴を上げる。
「うぅぅぅっ……」
ネプギアはハサミに挟まれて苦しそうにしている。
HPゲージは五割を切っており、更にハサミの圧力でジワジワと減少して行く。
「あの状態で戦闘不能になったら蘇生も出来ません! 集中攻撃をして下さい! 私とロムさんは回復を!」
イストワールが血相を変えて指示を出すと、「変身は!?」とラムが叫び、「間に合わないわよ。今は攻撃しなさい!」とユニが答える。
「ネプギアを放せぇぇぇぇぇ!!」
ユニが銃を乱射すると、「撃って撃って撃ちまくるわ!」とラムの電撃魔法がモリガニに当たり、5000以上のダメージが当たるがモリガニはネプギアを離さない。
「ネプギアちゃん頑張って!」
ロムがそう言って回復魔法を唱えると、「必ず助けてみせます!」とイストワールも回復魔法を唱える。
ネプギアのHPゲージが六割ほど回復する。
ぐぐぐっ……
しかしハサミの締め付けが強くなり、「ああああっ!」とネプギアは悲鳴を上げる。
HPの減少が更に激しくなり、あっという間に二割を切る。
「くっ! 回復が間に合わない」
ユニは銃を連射しながらも焦りの表情を浮かべる。
「装甲は剥がれているのに効いてないの!?」
ファミ通も何度も攻撃するが、それでも離さないモリガニに焦る。
「くっ! 凄い根性だね。ネプギアだけでも道連れにするつもり?」
ファルコムも攻撃に加わり、トータルのダメージは20000を超えるがそれでもモリガニはネプギアを離さない。
それと同時に、モリガニの体が黒い霧に包まれる。
「まさか……汚染!?」
イストワールが驚きの声を上げる。
以前にもあったが、汚染とは犯罪神の力でモンスターがパワーアップする現象である。
犯罪神を倒した今も、僅かに残った犯罪組織の残党の信仰心で、稀にこの現象が起きていた。
「そんな、大型のボスモンスターが汚染されるなんて聞いてないよ!」
ファミ通が顔を真っ青にして叫ぶ。
「どうしたら? どうしたらいいの?」
プラエが半泣きで狼狽える。
「もっと強力な一撃が必要よ」
アイエフはそう言うと、「コンパ、走って! アイツにマークツストライクを食らわせるわ!」と走り出す。
「はいです!」
コンパが走り出す。
ネプギアを頂点にマークツストライクを放つには、モリガニを囲む必要があるので、アイエフとコンパがモリガニの背後に回り込み三角形を作る必要がある。
ぐぐぐぐぐっ……
その間にもハサミの締め付けが更に強くなり、「うあぁぁぁぁっ!!」とネプギアは更に苦しそうな悲鳴を上げる。
HPは最早一割を切っていた。
「ネプギア、アタシ達が着くまで耐えて!」
アイエフが叫ぶと、「マークツストライクです~」とコンパがそれに続く。
「……マークツストライク……頑張らなきゃ……」
ネプギアはアイエフ達言うことを理解して必死に抵抗する。
「でも、もう力が……」
しかし、ネプギアの体力は限界に来ていた。
HPゼロになり意識を失いそうになるネプギア。
このままハサミに潰されてしまったら蘇生も出来ずに消滅してしまうだろう。
「ほにゃああああああああ!!!」
意識を失いかけたネプギアの耳に大きな叫び声が聞こえる。
「え……」
ネプギアが声のした方向を見ると、オレンジ色に光る流星が地面を滑るようにして、もの凄い速度で迫ってくる。
「あれは!」
ユニ驚いてオレンジ色の流星を見る。
その間にもオレンジ色の流星はグングンとモリガニに迫って行き、モリガニの目と鼻の先まで接近する。
「て・つ・ざ・ん・こぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーー!」
オレンジ色の流星はそう叫ぶと、モリガニに激しい体当たりを食らわせる。
モリガニに25378ダメージが当たり、転がりながら大きくノックバックをすると同時にハサミに挟んだネプギアを手放す。
流星は空に投げ出されたネプギアに向かって飛んで行くと、「きゃっち!」と言ってネプギアを受け止める。
「女神様!?」
ファミ通が叫ぶ。
オレンジ色の流星の正体は女神化したネプギア達と同じスーツを着てプロセッサユニットを装備した女性であった。
その女性はネプギアを大事そうにお姫様抱っこすると、「……光と水の精霊よ……傷つき倒れた英霊を救いたまえ……」と呪文を詠唱し始める。
「リバイブ!」
女性が魔法を放つと、ネプギアの体が白く光り輝いてゼロだったHPゲージが五割まで回復する。
蘇生したネプギアがゆっくりと目を開けると、目の前にはオレンジ色の髪を渦巻きのようなお団子テールで二つに纏め、エメラルドグリーンの瞳に電源マークが浮かび上がった女性がいた。
「ぎあっち大丈夫?」
オレンジ色の髪の女性がそう尋ねると、「……うずめ……さん?」とネプギアが呟く。
ネプギアの危機を救ったのは零次元でゴブりんのことをお願いした天王星うずめの女神化した姿であった。
ちなみに【リバイブ】はうずめの使用する蘇生魔法である。
うずめは打撃攻撃と回復魔法を得意とする女神なのだ。
「よかったー、間に合ったよ~」
うずめはニッコリと微笑む。
変身前の男勝りな姿から一変して、表情も声色も非常に柔らかい感じがする。
白にオレンジ色の模様があるスーツを着て、同色のプロセッサユニットを装備したその姿は可愛らしい女の子そのものであった。
ネプギア達との違いは左手に装備した円形の盾と、足に装備したローラーブレードのプロセッサユニットだ。
彼女はこのローラーブレードで地面を高速で滑ってきたのだ。
「ウジューーーー!」
ネプギアを奪われたモリガニは、怒り狂って接近してくると右手をうずめに振り下ろす。
ガンッ!
うずめはネプギアを右手一本で抱きかかえると、左手の盾でモリガニの攻撃を軽々と受け止める。
「ネプギア!」
「ぎあちゃん!」
そこにアイエフとコンパがマークツストライクの配置に付いたことを伝える声が聞こえる。
モリガニはネプギアを頂点とした三角形の中に入っていた。
「ぎあっち今だよ」
うずめがネプギアにそう言うと、ネプギアは、「はいっ!」と力強く頷くと、うずめに抱きかかえられたまま右手を上げる。
「「「マークツストライク!!!」」」
同時にネプギアとアイエフとコンパと声が重なりマークツストライクが放たれる。
バリバリバリ!
「グギャーーーー!」
モリガニは巨大な稲妻に焼かれて12345ダメージが当たり黒焦げになるが、まだ消滅はせずに、うずめの盾を押し込もうと力を籠めて来る。
「ほわー、まだ生きてるよー」
うずめがそう言って感心すると、左手に力を入れてモリガニの腕を弾き飛ばすと同時に「ぎあっち、アレをやるよ」と叫ぶ。
「はいっ! アレですね!」
ネプギアはそう言うと、薄紫色の光に包まれて女神化をする。
女神化したネプギアが、うずめ腕から上空に飛び上がると、うずめの右手に白い拡声器が握られる。
うずめが拡声器をモリガニに向けると、拡声器のスピーカー部分に緑色のエネルギーの塊が蓄積される。
「いくよー! ぎあっち!」
うずめがそう叫ぶと、スピーカー部分に溜まったエネルギーの弾がモリガニに向けて発射される。
エネルギー弾が当たると同時にモリガニは、「グアーー!」と悲鳴を上げ、続けて、「後は任せて下さい!」とネプギアが上空からM.P.B.Lのブレード部分をモリガニに向けて急降下してくる。
ズシャッ!
ネプギアがそのままモリガニを突き抜けると31541ダメージが当たり、モリガニが痙攣しながら、「オォォォォォ!」と断末魔を上げて消滅する。
「どうだっ! これが私とぎあっちの必殺技、ドリームスラッシャーだよ。ブイ!」
うずめはそう言ってVサインを決めると、「やりましたね、うずめさん」と言ってネプギアが近づいて来る。
【ドリームスラッシャー】はネプギアとうずめの連携攻撃で風属性を纏った物理攻撃である。
「ふぅ……何とかなりましたね」
イストワールがそう言って額の汗を拭うと、「うずめが来てくれて助かったわ」とラムが続き、「ネプテューヌさんが邪魔しなければ、もう少し楽に倒せたんですけどね」とユニがネプテューヌに冷ややかな目を向ける。
「お尻がお尻が~! ギャアアアム!!!!」
しかし、ネプテューヌは立て続けにコンパの注射器がお尻に刺さったのがよっぽど痛かったのか、もんどりをうって転げまわっていた。
「そんなに痛いの(つんつん)」
ロムがそう言ってネプテューヌのお尻を人差し指でつつくと、「はうっ!」とネプテューヌが飛び上がって悲鳴を上げ、「なにそれ! 面白そう!」とラムもネプテューヌのお尻をつつこうとする。
「ちょっと、ダメだって~」
ネプテューヌはそう言って逃げ回るが、ロムとラムは、「「わーい」」と言いながら楽しそうにネプテューヌを追い回す。
「はぁ……どうして、お姉ちゃんはこんな人をライバル視してるのかしら……」
ユニはロムとラムに追い回されるネプテューヌを見ながら溜息を吐く。
「でも、記事としては面白いものが書けそうだよ。超次元と零次元の女神の友情って感じで」
ファミ通がそう言うと、「零次元への関心も高まるかもしれませんね」とイストワールが嬉しそうに答える。
「あ、それとネプテューヌさんのことは……」
イストワールがそう言うと、「面白そうだけど、記事にはしないよ。流石にかわいそうだしね」とファミ通が答える。
「なに気にすることはないさ。冒険に失敗は付きものだよ」
ファルコムがそう言ってネプテューヌをフォローするが、「ネプテューヌさんの場合は完全に自業自得なのですが……」とイストワールが呟く。
***
ネプギアとうずめは地面に着陸すると変身を解く。
「うずめさん、助けてくれてありがとうございます。でも、どうしてここへ?」
ネプギアがそう尋ねると、「メールでバーベキューに誘ってくれただろ。待ちきれなくて早く行ったら、ぎあっち達がクエストに向かったって聞いたから変身して追いかけてきたんだ」とうずめが答える。
「そうだったんですか……本当に助かりました。うずめさんが来てくれなかったら、どうなっていたか……」
ネプギアがそう言うと、うずめはサムズアップをしながら、「ぎあっちがピンチだったら世界の反対からでも駆け付けるぜ! なんてったって、ぎあっちは俺の命を三度も救ってくれたんだからな」と答える。
ネプギアは過去にネプテューヌ共に零次元に迷い込んだ時に天王星うずめと出会った。
出会った当初はネプテューヌを敵と認識したうずめだったが、ネプギアの説得で和解し、その後は零次元を救う為に冒険を続けた。
その最中で、ネプギアとネプテューヌは超次元に方法が見つかり帰ることになった。
しかし、丁度その時に敵の襲撃を受けて、ネプテューヌは無事に超次元に帰ることが出来たが、ネプギアはピンチになったうずめ救う為に超次元に帰るチャンスを捨ててうずめを守ったのだ、これが一度目。
二度目は、その後も行動を共にしたネプギアとうずめは強敵と戦い、うずめが重傷を負ってしまう。
ネプギアはうずめを救う為に不慣れではあるが薬を調合して、うずめの治療に成功している。
三度目はうずめが死を覚悟して、単身で敵の足止めをした時にネプギアはネプテューヌと共に引き返して、うずめを救い出している。
義理人情に厚いうずめはこのことを深く感謝しており、ネプギアのことを【一緒に夢を見る親友】と呼んでいる。
「俺はぎあっちのためなら死ねる!」
うずめが力強くそう言うとネプギアは、「うずめさん……」と言って頬を赤く染める。
そこに突然ネプテューヌが割り込んで来て、「うずめの次のセリフは【赤ちゃんはどこからくるか?】と言う!」とビシッと指差しポーズを決める。
「「へ?」」
声を揃えてポカーンとするネプギアとうずめ。
「なんで、赤ちゃん?」
ネプギアがそう尋ねると、「そーゆー流れなんだよー!」とネプテューヌが答える。
「ありがとう、うずめ。助かったわ」
続いてユニが近づいて来てそう言うと、「それじゃ、帰りましょう」とネプギアの手を握る。
「う、うん……」
つんのめりながらもユニに付いて行くネプギア。
「あーあー。ヤキモチ焼かれちゃったねー!」
ネプテューヌは両手を後頭部に置くとそう言い、うずめは、「あはは……まいったな。そんなつもりじゃなかったんだけどな」と言って後頭部をかく。
ユニとしては、うずめのことは好きだし今回の件はとても感謝している。
でも、やっぱり自分以外がネプギアといい雰囲気になっているのは面白くないようだ。
***
そうして、ネプギアとユニを先頭に村の中心部まで戻ると村人達が歓喜の声を上げる。
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
「流石は女神様だー!」
「ネプギア様バンザーイ! ユニ様バンザーイ! ロム様バンザーイ! ラム様バンザーイ! それにオレンジ色の女神様もありがとうございます!」
歓声を上げる村人に囲まれる女神候補生とうずめ。
「えー? ここは流石ネプテューヌ様じゃないのー?」
ネプテューヌが不満そうに言うが、「寄生した挙句にパーティの邪魔したアンタを褒める要素がどこにあるのよ」とアイエフは冷ややかに言うが、「ほら、わたしって居るだけで愛されるキャラだし」とネプテューヌは平然と答える。
ネプテューヌはあれぐらいの失敗で、めげるようなキャラではないのだ。
「キャ~~~!」
そこに若い村娘の集団が駆け寄ってくると、「おおっと! これはネプ子さんへのキッスの嵐の予感!」とネプテューヌは喜び勇んで前に出る。
「ファルコム様ーーーー!」
ドドドドド!!!
村娘は、ネプテューヌは眼中になくファルコムに向かう。
「ねぷぅ~」
ネプテューヌは村娘の集団に踏み潰される。
その後ろで村娘達がファルコムを囲んで黄色い歓声を上げていた。
「ねぷねぷ、大丈夫ですか?」
コンパがネプテューヌに優しく声を掛けるが、「大丈夫だからお尻は止めて!」とネプテューヌはすかさずお尻を隠して立ち上がる。
コンパの注射器がトラウマになってしまったようだ。
「お! 見つけたぞ、カニ頭」
そこに厳つい村人がネプテューヌに寄って来る。
「え? カニ頭ってわたしのこと?」
ネプテューヌが自分を指差して確認すると「おめぇ、どこの子だ! 女神様に迷惑かけて! 戦いはヒーローごっこじゃねぇ!」と厳つい男はネプテューヌにゲンコツをする。
村の兵士のように、この男もネプテューヌのことを知らないようで、村の子供と勘違いしたようだった。
「い、いたーーー! ちょ、女神ぶつなんて不敬罪だよ!」
涙目で抗議するネプテューヌだが、「いたぞー! カニ頭だ!」と更に村の子供たちがネプテューヌを囲む。
「この頭がサザAさんみてェーだとォ?」
ネプテューヌが男性風の口調で言うと、「サザAさんじゃなくて、カニよ」とアイエフがツッコミを入れるが、「髪型けなされた時の常套句だよー」とネプテューヌが答える。
ちなみにサザAさんとは日曜日の夕方に放送している国民的アニメのキャラクターである。
「でも、わたしをカニ頭って言うには微妙でしょ? これだってハサミじゃないよ」
ネプテューヌは両手で左右の伸びた前髪を掴みながら文句を言う。
どうやら子供達にはネプテューヌの跳ねた髪がカニの足で、伸びた左右の前髪がハサミに見えたようだ。
「でも、見えなくもないですー。ねぷねぷカニさんです」
コンパが悪気の無い声でそう言うと、ネプテューヌは、「ガーン!」とショックを受ける。
「カニは海に帰れー!」
「カニ弱いんだよー!」
「カニ邪魔ー!」
子供たちはネプテューヌに容赦なく罵詈雑言を浴びせる。
「……主人公のわたしがカニの悲しみを背負うなんて……」
ガッカリと肩を落とすネプテューヌは、「こうなったら女神化だー!」と叫ぶ。
ネプテューヌが光に包まれ、光が晴れるとパープルハートに変身したネプテューヌの姿があった。
「どう? これでカニなんて言わせないわよ」
ネプテューヌは子供達に向けて自信満々に言うと、アイエフが、「子供相手にムキになって変身するぐらいなら、さっきの戦いで変身しときなさいよ……」と言って頭を抱え、コンパは、「でも、ねぷねぷらしいですー」と嬉しそうに言う。
厳つい村人は驚いたようだが、子供の一人がネプテューヌの頭を差して、「カニがカブトエビになったぞー!」と声を上げる。
「カブトエビ!?」
クールな変身後のネプテューヌも、この発言には流石に目を丸くしてしまう。
子供達には跳ねた髪は足で、三つ編みは尻尾に見えたようだ、多少強引な気もするが、子供の発想は自由である。
アイエフはあごに手を当てながら、「まぁ、見えなくもないわね」と言うと、「あいちゃんまで!」とネプテューヌがショックを受けると、更にコンパが、「似てると言えば似てるですー」と追い打ちをかけると、「ガーン!」と言ってネプテューヌはヘコんでしまう。
「もう! わたしは、カニでもカブトエビでもないわ! わたしはプラネテューヌの守護女が…」
スパーーーン!
ネプテューヌが言い終わる前に、イストワールが頭をハリセンで叩く。
思いがけない不意打ちで、ネプテューヌの変身は解けてしまう。
「すみません、すみません。この子は新入りで何もわかっていないです。どうか許してあげて下さい」
ひたすら平謝りするイストワールに、「でも、変身しましたよねこの子」と厳つい男性が言うと、「あれは手品です。この子、女神様に憧れて、こんな真似事をしてるんです」とイストワールが早口にまくし立てる。
「この子にはしっかり教育をしておきますから、今日のところは矛を収めて下さい」
イストワールが続けてそう言うと、「イストワール様がそう言うなら……」と厳つい男が立ち去り、「ちぇー、帰ろうぜー」と子供達も去って行く。
「いーすん、邪魔しないでよー。ここはわたしの威厳を見せてやるべきなんだからー!」
ネプテューヌはイストワールに抗議するが、「あれだけの失態を晒した上で女神様と分かったらどうなるんですか? 女神様の威厳がインゲン豆になってしまいますよ!」とイストワールが凄い迫力でネプテューヌに詰めよる。
「それ、威厳とインゲン豆のダジャレー? いーすんにもネプギアのダジャレがうつったの?」
ネプテューヌが笑いながらそう言うと、「違います!」とイストワールが顔を真っ赤にして否定する
「ねぷねぷ、全然反省してないですー」
呆れながらも少し嬉しそうなコンパに、「いつものネプ子ね」アイエフも両手を上げてお手上げのポーズで呆れる。
「ねぇねぇ! 早く帰って遊ぼうよー! うずめもいるんだしー!」
ラムがそう言ってネプギアの左手を引っ張ると、続けて、「うずめちゃんと遊びたい」とロムが右手を引っ張る。
「うん、そうだね」
ネプギアはそう言ってうなずくと、「それじゃあ、私達はこのあたりで失礼しますね。また何かあったら、遠慮なく呼んで下さい」と村人達に向けて言う。
村人達は口々にお礼を言うと、ネプギア達にお礼と言って肉や野菜を持たせてくれる。
「意外なところで、バーベキューの材料が手に入ったわね」
ユニがそう言うと、「うーん! うまそうだなー!」とうずめが目を輝かせる。
そして、ネプギア達はギャザリング城に戻って行った。
***
ギャザリング城に戻ったネプギア達。
「そう言えば、海男さんは?」
ネプギアがうずめにそう尋ねると、「海男には留守番を頼んである。ゴブりんもまだ馴染んでないしな」と答える。
「あ……、ゴブりんのことご迷惑でしたか」
ネプギアが心配そうに言うと、「いや、そんなことないぜ。人型ってだけで色々仕事が出来るから助かってる。ただ、まだ俺達と同じ言葉が喋れなくてな……心配だから海男を置いてきたんだ」とうずめが答える。
「そうですか……上手くやれていますか?」
ネプギアがそう尋ねると、「ああ、始めはぬらりんやエビフライとも喧嘩をしたが、今は仲良くやってるぜ」とうずめは嬉しそうに答える。
【ぬらりん】は人の言葉を喋り理解できるスライヌで、【エビフライ】は同じく人の言葉を解するひよこ虫の名前である。
零次元でうずめを慕うモンスター達には、一匹一匹名前が付いているのだ。
ネプギア達はうずめと共に昼食を食べると、仕事を片付けつつ、うずめと遊んで有意義な時間を過ごした。
そして夜になり、バーベキューの時間がやってきた。
「ドキッ☆女神だらけのバーベキュー大会! ポロリもあるよ!」
ネプテューヌはそう言って元気よく飛び跳ねると、手に持ったクラッカーを鳴らす。
「ぽ、ポロリはしないよ!」
ネプギアが慌てて両手で胸を隠すと、ネプテューヌから離れるように後ずさると立ち去ってしまう。
「えー、ケチだなー。じゃあ、ユニちゃん」
ネプテューヌがそう言ってユニの方を見ると、「やりません!」とユニが即答しネプギアの後を追って立ち去る。
「そんなにやりたいなら自分でやりなさい」
そんなネプテューヌに対して近づいて来たノワールがそう言うと、「わたしがやったら、全世界のハートを鷲掴みにし過ぎて、握りつぶしちゃうよ~」とネプテューヌが自慢気に言う。
「それは見るに堪えずに倒れてしまう、という解釈でいいかしら?」
「お目汚しですわね」
ブラン、ベールの順で素早くツッコミを入れてくる。
モリガニを退治した村で貰った食材にフィナンシェとあんみつが用意した食材が合わさり量があまりにも多くなったので、うずめの他にも三人の女神を招いたのである。
又、モリガニのような巨大モンスターが汚染されたという情報を共有する為でもある。
「そんなことないってば~、わたしのセクシーショットには世界中が、感謝っ……! 圧倒的感謝っ……! って言うよ」
ネプテューヌがそう言って口を尖らせると、三人の女神は、「「「はいはい……」」」と言って軽くネプテューヌをあしらう。
「そう言えば、あなた今までレベル1だったんですって?」
ノワールがそう言うと、「ねぷぅ!? 何でそれを!?」とネプテューヌがバツの悪そうな表情を浮かべる。
「イストワールからよ。同じ女神として教育して欲しいとお願いされたわ」
ブランがそう答えると、「流石にレベル1はありませんわー」とベールもネプテューヌを冷ややかな目で見つめる。
「いやー、後で鋼スライヌを大量に狩る予定だったんだよ~」
ネプテューヌがそう言い訳すると、「レベル1じゃ鋼スライヌにすら返り討ちにされるわよ!」とノワールが注意する。
【鋼スライヌ】とは、あまり強くは無いが大量の経験値を持っているモンスターである。
流石にレベル1では倒せる相手ではない。
「同じ女神として恥ずかしくないよう教育して差し上げますわ」
ベールがそう言うと、「いっちょ揉んでやるか」とブランが凶悪な顔で首と手をボキボキと鳴らす。
「ヘルプ! ネプギア、ヘルーーープ!」
ネプテューヌは手を上げて大声でネプギアを呼ぶと、ネプギアは、「どうしたの? お姉ちゃん」と近づいてくる。
「あ、皆さん、今日も来ていただいてありがとうございます」
ノワール達に気付いたネプギアがそう言いながら頭を下げると、「わたくしの可愛い妹の為ならどこへでも行きますわ」ベールがネプギアを抱きしめる。
ネプギアを呼んだことにより、ネプテューヌの教育は有耶無耶なったようだ。
「もー! ベールはしつこいってば~! ネプギアは、わ・た・し・の妹!」
ネプテューヌはそう言うと、ネプギアとベールの間に入って二人を引き剥がす。
「まったく……連日で呼び出される身にもなってよね」
ノワールが腰に手を当てて呆れたように言うと、「だったら来なければいいのに……」とブランがぼそりと呟く。
「そーだ! そーだ! ノワールは素直じゃないんだから!」
ネプテューヌがそう言って煽ると、「ね、ネプギアの顔を立ててあげたのよ!」とノワールが焦りながらそっぽ向いてしまう。
「忙しいところ、すみません」
ネプギアはノワールの言うことを真に受けて素直に頭を下げると、ノワールはバツが悪そうに、「え、ええ……次からは気を付けてちょうだい」と気まずそうに言う。
「……お姉ちゃん、もう少し素直になればいいのに」
ネプギアの隣に居たユニがそう呟くと、「ユニちゃん、なにか言った?」とネプギアが首を傾げるが、ユニは、「なんでもないわ」と返す。
「それにしても、大型モンスターが汚染されるなんて、どういうことかしら? 犯罪組織はほぼ壊滅で、犯罪神への信仰心なんて風前の灯火って言ってもいいくらいなのに」
ノワールが気を取り直してそう言うと、「……わかりません。突然のことだったので。ノワールさんも注意して下さい」とネプギアが答える。
「私の強さなら、汚染されてようがいまいが相手じゃないけどね」
ノワールが腕組みしながら自信満々に言うと、「まぁ、一応忠告として受け取っておくわ」と続けて言う。
「お姉ちゃん、お肉だよ~、お肉っ!」
ラムがバーベキューの串を持ってブランの側に行くと、「お肉美味しい(はむはむ)」とロムもバーベキューを食べながらブランの側に来る。
「ブラン様もお一つどうぞ」
フィナンシェがそう言ってバーベキューの串を差し出すと、「いただくわ」とブランがそれを受け取る。
「聞いたわよ、あなた達またワガママを言ったそうね」
ブランがそう言うと、「違うわよー! わたし達がお肉食べたいって言ったら、ネプギアがバーベキューしてくれるって言ったんだもん」とラムが反論すると、「うん、ネプギアちゃんがバーベキューしてくれるって言った(にこにこ)」とロムもそれに続く。
「そうですよ。それに何か食べたいって言ってくれた方がフィナンシェさんも助かりますよね?」
ネプギアがそう言うと、「はい、そうですね」とフィナンシェもにこやかに頷く。
「まぁ、いいわ。でも、好きな物ばかり食べていてはダメよ」
ブランがそう言うと「わかってるわよ。肉、肉、野菜、肉、野菜、でしょ」とラムが言い、「……野菜、肉、肉、野菜、肉……じゃないかな?」とロムが首を傾げ、「野菜、野菜、肉、肉、野菜、野菜、だよ」とネプギアが答える。
「……どこかの焼き肉のタレのCMみたいなやり取りね……」
ブランがそう言ってため息をつくと、フィナンシェはクスクスと笑い、「でも、ここに来てから、ネプギア様とユニ様がちゃんと野菜を食べるのを見て、お二人も野菜を残さなくなりましたよ」と嬉しそうに言う。
「……そう……それならいいわ」
ブランは少し嬉しそうに言うとバーベキューを食べ始める。
「お肉にレタスを巻くものおススメだよ」
ネプギアはそう言うと、焼けた肉にタレを付けて、レタスに巻いた物をロムとラムに渡す。
「レタス持ってきてくれたの?」
ロムが嬉しそうに言いながら受け取ると、「ありがとう」とラムも嬉しそうに受け取る。
ネプギアは二人にそれを手渡すと、「レタスを持ってきたら疲れたっす!」とドヤ顔で言い放つ。
「あははは! レタスが疲れたっすだって~!」
ネプギアのダジャレにラムが肉を食べながら爆笑すると、「ネプギアちゃん楽しい(にこにこ)」とロムも微笑む。
「あの、ダジャレはうつらないようにしてちょうだい……」
ブランが呆れながら言うと、「ど、努力します」とフィナンシェは困り顔で答える。
「うーん! やっぱり肉はうまいぜー!」
うずめが美味しそうにバーベキューを頬張ると、「うずめさん、よく噛んで味わって食べないとダメですよ」とネプギアが微笑みながら言う。
「おう! 十回ぐらいでいいか?」
うずめがそう言うと「三十回が理想的って言われてますよ」とネプギアが答える。
「そ、そんなに噛むのか?」
うずめが驚くと、「あくまで目安ですよ。よく噛むことを意識して食べれば十分だと思いますよ」とネプギアが答え、「よく噛んだ方がダイエットにもいいのよ」とユニが付け加える。
「ダイエットか……体重が気になる訳じゃないが、ぎあっちとゆにっちが言うなら意識してみるか」
うずめがそう言うと、「じゃあ、一緒に噛みましょう」とラムが言い、ロムも「いっしょに噛み噛み(もぐもぐ)」と言ってくる。
「よし! やろうぜ! ぎあっち数えててくれ!」
うずめがそう言ってバーベキューにかじり付くと、ロムとラムもバーベキューを口にして、一緒にモグモグと咀嚼し始め、ネプギアは「いーち、にー、さーん……」と数を数え始める。
「ねぷねぷ、ロム様もラム様も、お野菜食べてますよ~」
コンパがネプテューヌに向けてそう言うと、「わたしは肉とプリンだけで、全ての栄養素を補えるように出来てるから大丈夫!」と言い、肉だらけのバーベキューを頬張る。
「そんな訳ないでしょうが……」
アイエフが呆れながらそう言うと、「ほら、これ食べなさい」と野菜だらけの串をネプテューヌに差し出す。
「む、無理ーーー! しかも、ナスが入ってるなんて、あいちゃん鬼畜だよー!」
ネプテューヌはそう叫びながら後ずさりする。
ネプテューヌはナスが大嫌いであり、匂いだけで脱力してしまう。
「ナスぐらい食べなさいよ。好き嫌いなんてみっともない」
ノワールがネプテューヌを横目で見ながらそう言うと、隣のベールが、「グリーンピース……」とぼそりと呟く。
「のわっ!?」
ノワールが個性的な驚きの声を上げると、ベールが、「フィナンシェ、グリーンピースはあるかしら?」とフィナンシェを呼ぶ。
「ありますけど、お造りしましょうか?」
フィナンシェがそう言うと、「ええ、ノワールが是非とも食べたいと……」とベールが言いかけたところに、「のわーーーーー!」とノワールが叫ぶ。
「の、ノワール様?」
フィナンシェが驚きで目を丸くすると、「なんでもないわ! 呼び出して悪かったわね!」とノワールが早口でまくし立ててフィナンシェの背中を押して退散させる。
「あらあら……好き嫌いはみっともないのではなくて?」
ベールがクスクスと笑いながら言うと、ノワールは、「うぅ~~」と恨めし気なうめき声を上げる。
「ネプギアちゃんは、好き嫌いは無いそうですわ。流石はわたくしの妹」
ベールがそう言うと、「ネプギアはネプギア。私は私。あと、ネプギアはベールの妹じゃないでしょ」とノワールが返す。
「何で皆さん、ネプギアちゃんをわたくしの妹と認めてくれないのかしら?」
ベールが首を傾げてそう言うと、「事実無根だからよ」とノワールが素っ気なく答える。
「それはそうと、ネプギアちゃんに好き嫌いがないのはノワールにも関係ありますわよ」
ベールがそう言うと、「なんでよ?」とノワールが怪訝そうな顔をする。
「ユニちゃん、ちょっといいかしら?」
ベールがユニを呼ぶと、「なんですか?」とユニが近寄ってくる。
「ネプギアちゃんって食べ物の好き嫌いが無いらしいですわ」
ベールがそう言うと、ユニは自信満々の顔で、「知ってますよ。アタシも負けてられないから、好き嫌いなくしましたし」と言うと、「うっ……」とノワールがバツの悪そうな顔をする。
「ロムちゃん、ラムちゃん、いらっしゃい」
ベールは、今度はロムとラムを手招きすると、ロムとラム、そして一緒に居たうずめが近寄ってくる。
「ロムちゃんとラムちゃんは好き嫌いあるかしら?」
ベールがそう尋ねるとラムが元気よく左手を上げて、「あるけど、ネプギアとフィナンシェとコンパが食べられるように色々工夫してくれるから頑張って食べてるわ」と言って、ロムも、「ネプギアちゃんのおかげでシイタケ克服できた(にこにこ)」嬉しそうに言う。
「俺もぎあっちのおかげでシイタケ克服できたぜ」
うずめがそう言うと、「まぁ、まだぎあっちの味付けじゃないと食えないけどな」と続けると、「わたしも……」ロムが言う。
「ノワールは好き嫌いはあるかしら?」
ベールは白々しくノワールにそう尋ねると、「うっ……」とノワールが言葉に詰まってしまうが、「何言ってるんですか? お姉ちゃんは完璧なんです。好き嫌いなんてあるわけないじゃないですか」とユニが自分の事のように誇らしく言う。
「そうよね、好き嫌いなんてカッコ悪いわよね」
ラムがそう言うと、ロムも、「うん、嫌いでも食べられるように頑張る(ぐっ)」と力強く言うと、「そうだな。ぎあっちみたいな真剣に協力してくれるダチがいれば百人力だしな」とうずめが続ける。
「そ、そうね……努力は大事よね」
ノワールがぎこちない笑顔でそう言うと、「私ちょっと席を外すわ」とスタスタと去って行ってしまう。
「くすくす……少しイジメ過ぎてしまったかしら?」
ベールが楽しそうにそう言うと、ユニ達は不思議そうな顔で首を傾げる。
「はふはふ……もぐもぐ……」
プラエが一生懸命にバーベキューを食べていると、「美味しい? プラエちゃん」とネプギアが優しい声で問いかける。
「うん! 美味しい!」
元気よく答えるプラエに、「体の方は大丈夫?」とネプギアが尋ねると、「もう大丈夫だよ。ネプギアお姉さんの方が辛かったのに、プラエが倒れちゃってゴメンね」とプラエが答える。
モリガニを倒した後にプラエは貧血を起こしてしまったようで、立ち眩みをしたところをネプギアに支えられたのだ。
その為、昼食をとらずに夕方まで横になっていた。
「いっぱい食べて早く元気になるからね」
プラエがそう言うと、「プラエ様、食べ過ぎもよくありませんよ」と隣にいたあんみつが言う。
「そうですね。腹八分目って言いますもんね」
ネプギアがあんみつに同意すると、「うん、じゃあ八分目まで頑張って食べるよ」とプラエが微笑んだ。
その後、プラエはお腹いっぱい食べると、大事をとって一足先に床に就いた。
「……ネプギア、ちょっといいかしら?」
ノワールはネプギアの側に行くと小声で話しかける。「なんですか?」とネプギアが答えるとノワールは、「グリーンピースってどうやって克服したらいいかしら?」と少しぎこちない声で質問する。
「えーと……基本的は少量から慣れていったり……カレーに入れるのもいいかもしれませんね」
ネプギアがそう言うと、「そう……それで克服できるかしら?」とノワールが尋ねると、「後は細かい味付けでしょうか……何なら後で調べてお知らせしますよ」とネプギアが言うと「ええ、お願いするわ」とノワールが答える。
「でも、何で急にグリーンピース? ユニちゃんがノワールさんには苦手なものなんかあるわけないって言ってましたけど」
ネプギアがそう言って首を傾げると、「え、えーと……し、信者の中にそういう相談があったのよ! 私、好き嫌いないから、そういうの分からなくて!」とノワールが早口にまくし立てる。
「ノワールさんは信者思いなんですね。分かりました! 私もできる限りご協力します」
ネプギアはノワールの言うことを疑いもせず信じて力強くそう言うと、「それじゃあ、よろしく頼むわ。あと、この話はネプテューヌとベールには絶対話さないでちょうだい」とノワールが念を押すとネプギアは、「はい、わかりました」と素直にうなずく。
ノワールが立ち去ると入れ替わりでユニがやって来て、「お姉ちゃんと何話してたの?」と尋ねてくる。
「グリーンピースが嫌いな信者さんの相談に乗ってあげたいから、協力してほしいって話だよ」
ネプギアがそう言うと「グリーンピースが嫌いなんて子供かしら? まったく、お姉ちゃんに手間を掛けさせて……」と言うと、少し離れたところで聞き耳を立てていたノワールが、「うぅ……」と何とも言えない呻き声を上げる。
「定番はやっぱりグリーンピースカレーよね」
ユニがそう言うと、「私もそう思ってたんだ」とネプギアが言い、「ユニちゃんも協力してくれる?」と尋ねる。
「勿論よ。お姉ちゃんの仕事はアタシの仕事でもあるし、カレーと言われたら黙っていられないわ」
ユニは力強くそう言うと握りつぶしを作る。
ユニはカレーを作るのが大好きで色々アレンジを加えており、その研究には余念がない。
「ありがとう、ユニちゃんが協力してくれるなら心強いよ」
ネプギアが嬉しそうにそう言うと、ユニは胸を叩いて「任せなさい!」と力強く胸を叩いて言う。
「……」
少し離れた場所で、うずめが少し複雑そうな表情で二人を見ていると、「どーしたの? うずめ」とネプテューヌが声を掛けてける。
「ああ、ねぷっちか。別になんでもないさ」
うずめは素っ気なくそう言うが、「ネプギアとユニちゃんが仲良くしてるの気になる?」と質問すると、「あはは……バレバレだな」とうずめが諦めた声を出す。
「いやー、あの二人って本当に百合百合してるよねー」
ネプテューヌがしみじみと言うと、「でも、もっとガンガン行った方が視聴者のみんなも喜ぶと思うんだよね」と続けて言う。
「なんだよ、視聴者って……」
うずめが訳が分からないという感じで言うと、ネプテューヌは普通にお喋りをするネプギアとユニを見ながら、「もう! じれったいな、わたし、ちょっとやらしい雰囲気にしてくるよ!」と言ってネプギア達の方に行こうとする。
「よせよ」
しかし、うずめにパーカーのフードの部分を握られ止められてしまう。「ネプギアが好きなら一緒に話せばいいじゃん」ネプテューヌがフードを握られながらそう言うと、「ほら」とネプギアとユニに近づくロムとラムを指差す。
「ネプギアー! ユニちゃーん! なになに? 何の話? わたし達にも教えてよー!」
ラムがそう言うとロムも、「知りたい(わくわく)」と続く。
「グリーンピースカレーの美味しい作り方を話してたんだよ」
ネプギアが答えると、「グリーンピースかー、食べられるけど、ちょっと苦手かも」とラムが言うと、「わたしも食べられるけど苦手……(ふるふる)」とロムが言う。
「そーゆーお子様の為に、アタシとネプギアが誰でも食べられるグリーンピースカレーを作るのよ」
ユニがそう言うと、「すごーい! それなら、親衛隊のグリーンピース嫌いな子にも食べさせてあげたいわ」とラムが言い、「みんなでグリーンピース克服!(ぐっ)」とロムもそれに続く。
「ロムちゃんとラムちゃんは遠慮せずに入ってるよ。うずめだって入ればいいじゃん」
ネプテューヌはそう言ってうずめの手を引くが、うずめは、「いや、俺なりのケジメってものがある」と言うとネプテューヌから手を離す。
「俺はぎあっち達の先輩だし、ぎあっちとゆにっちの間にはオレの知らないいくつもの絆がある。それに人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られるとも言うしな」
うずめはそう言うと、急に両手の指を組んで、「それにぃ、ぎあっちとゆにっちのカップリングって、チョー尊くない? さっきのヤキモチ焼いたゆにっちの顔なんて、可愛すぎて、うずめぇ、キュンときちゃった!」と言い出す。
「おーい、うずめー! 帰っておいでー」
ネプテューヌが少し呆れた声で言うと、うずめは、「はっ!」と正気に戻り、「そ、そーゆーことだから、俺はクールに去るぜ」と言ってどこかに行ってしまう。
「あんまり我慢し過ぎはよくないと思うんだけどなー」
ネプテューヌがそう言ってうずめの後ろ姿を見送ると、ネプテューヌに気付いたネプギアが、「あっ! お姉ちゃん、今美味しいナスカレーの作り方考えてたんだけど……」と言うと、「ねぷぅぅぅぅぅ!」と言ってネプテューヌは全力疾走で逃げてしまう。
どうやらグリーンピースカレーだけでなく、ネプテューヌにナスを克服させようとナスカレーの話も出ていたようだ。
***
その後各々がバーベキューを楽しみお開きの時間がやってくる。
ノワールとブランは妹に見送られて自国に戻り、ベールはネプギアに見送られて自国に戻り、うずめもネプギアに見送られて零次元に帰ろうとしていた。
「悪ぃな、こんなにお土産もらっちまって」
うずめの前には大量の食材が置かれていた。
「余り物ですけど、よかったら零次元のみんなで食べて下さい」
ネプギアがそう言うと、うずめは左手に付いた【ヴィジアルラジオ】と言う腕時計のような携帯端末を操作する。
すると、置いてあった食材が消えて行く。
これはネプギアのNギアと同じく食材をヴィジアルラジオのインベントリに収納したのだ。
「それと、これはNG粒子発生装置とシェアエネルギー効率化システムのデータが入ったディスクです。このディスクの指示通り操作すれば、今までよりシェアエネルギーの効率が約20%上がります」
ネプギアはそう言って、30㎝程の円錐の物体とディスクをうずめに手渡すと、「ぎあっちにはいつも世話になっちまってるな」とうずめはそれを受け取って、少し恥ずかしそうに後頭部を掻く。
「お世話になってるのは私の方ですよ。うずめさんはカッコよくて頼りになるから、つい頼っちゃいます」
ネプギアがそう言うと、「ああ、俺はカッコいいからな」とうずめが嬉しそうにサムズアップをする。
「それに零次元に行くのは楽しいです。古いレアパーツとかもありますし」
ネプギアがそう言うと、「本当にぎあっちはメカが大好物だな」とうずめが嬉しそうに笑う。
心次元は、過去にうずめが妄想力で滅ぼしかけた超次元のゲイムギョウ界の悪夢がベースになっている。
その為、心次元の一部である零次元には、うずめが封印されるG.C.1988頃の施設が建っており、ネプギアはそこからG.C.1988製のパーツを代替品を入れて抜き取ったりしていた。
「あ、零次元の修復ですけど、まだ時間が掛かりそうなので、もう少し待ってもらえますか」
ネプギアが思い出したようにうずめに言う。
零次元には、以前にダークメガミに空間ごと破壊され虚無になってしまった部分が多数存在しており、ダークメガミを倒した今もその爪痕は残ったままだった。
零次元はうずめの心の中にできた世界の心次元の一部なので、うずめの力で直せると思われていたが、そこまで万能ではないらしく、妄想力でも修復できなかった。
その為、ネプギアは零次元の復興の手伝いとして、プラネテューヌの科学者達と共に破壊された空間を修復する研究をしているのだ。
「ああ、別に急いでる訳じゃねぇし。直ったらいいなって思ってる程度だから気にしなくていいぜ」
うずめはそう言うが、「大丈夫です! うずめさんの為に絶対に直してみせます」とネプギアが力強く言う。
「……ぎあっちは本当にいいヤツだな。ぎあっちが居てくれたから俺は……」
うずめはネプギアを見つめつつ、一歩近寄るが、すぐにかぶりを振って後ろに下がってしまう。
「うずめさん?」
ネプギアがうずめの行動に首を傾げると、「いや、何でもない。サンキューな」と言うと女神化して、ローラーブレードで早々に立ち去ってしまう。
「うずめさん、具合が悪いのかな?……心配だな」
ネプギアはそう言いながら、去って行くうずめの後ろ姿を見送る。