新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2 作:ゆーじ(女神候補生推し)
ネプギア達がドワーフの里を訪れた翌日。
G.C.2019年7月24日 水曜日。
クエストを済ませたネプギア達女神候補生は零次元を訪れていた。
「シェアリングフィールドのことを知りたい?」
うずめが不思議そうにネプギアに質問をする。
【シェアリングフィールド】とは対ダークメガミ用に編み出した技で、シェアエネルギーで出来たフィールドにダークメガミを捕らえてパワーダウンさせる上にフィールド内の女神をパワーアップさせる効果がある。
元々はうずめ専用の技であったが、二手に分かれてダークメガミと戦った際にうずめがネプギアに託したシェアクリスタルからシェアリングフィールドを作り出している。
「まさか、ダークメガミが現れたのか?」
うずめが真剣な声でネプギアに質問をすると、ネプギアは、「そうじゃないんです」と言うと、「ゲハバーンという剣がありまして……」とゲハバーンのことをうずめに話す。
「なるほど……」
話を聞いたうずめが納得して頷くと、「それで、同じく莫大なエネルギーを消費するシェアリングフィールドの原理をゲハバーンの研究の参考にしようと思ったんです」とネプギアが説明を続ける。
「わかった。俺も妄想力が制御できずに自分を封印した身だ。ゲハバーンのことも他人事には思えない」
うずめはそう言うと、「おい、海男。アレってどうなってるんだ?」と側にいた海男に尋ねる。
「えっ!? うずめさんは知らないんですか?」
ネプギアが驚くと、うずめは事もなげに、「ああ、海男が色々調べてくれたものを俺が使ってるだけだ」と答える。
「まぁ、アタシもプロセッサユニットの事とかよく知らないし」
ユニが頷くと、「うん、よくわからない(こくこく)」とロムが続き、「わたしも知らなーい」とラムもそれに続く。
「大体みんなそんなもんだと思うぞ。細かいこと知ってるのって、ぎあっちぐらいだろ」
うずめがそう言うと、「ネプギアはメカオタだからね」とユニもうずめに同意する。
「……私、変なのかな?」
ネプギアが少し悲しそうに言うと、「ネプギアちゃんが色々知ってるから安心できる」とロムが微笑み、「うんうん、ネプギアは今のままでいいのよ」とラムもニコニコと笑う。
「ありがとう」
ネプギアが元気を取り戻してお礼を言うと、海男が、「シェアリングフィールドの研究レポートはあるのだが、まだまとまっていなくてね」とネプギアに話しかける。
「そうなんですか?」
ネプギアが尋ねると、海男は、「あの頃はダークメガミからの逃亡生活だったからね」としみじみと言うと、「レポートがまとまったらぎあっちに渡すよ」と続ける。
「ありがとうございます。急いでいませんので、海男さんのペースでお願いします」
ネプギアはそう言って頭を下げてお礼を言うと、「相変わらず、ぎあっちは優しいな」と海男が微笑む。
「ところで、ゴブりんは元気にしていますか?」
ネプギアが話を変えると、「それなんだが、ぎあっち達に見せたいものがあるんだ」とうずめが楽しそう言う。
「見せたいもの?」
ネプギアが首を傾げると、「こっちだ。ついて来てくれ」とうずめが歩き始めると、海男と女神候補生達もそれに続く。
うずめは暫く歩くと、「あれだ」と指を差す。
ネプギア達はうずめが指差した方を見ると目を丸くする。
「ゴブリンが畑仕事してる……」
ユニが驚いた顔で呟くと、「ゴブリンが仕事してるの初めて見た(まじまじ)」とロムも驚くと、「ゴブりん、光合成したんだ」とラムが嬉しそうに言うが、「ラムちゃん、そこは更生だよ」とネプギアが訂正する。
「最初はうずめが畑仕事するのを眺めているだけだったんだが、その内真似をするようになってね」
海男は嬉しそうに言うと、「今では彼も立派な人手だよ」と続ける。
「それだけじゃないんだぜ」
うずめは嬉しそうに言うと、「おーい! ゴブりーん!」とゴブりんを呼ぶと、ゴブりんは畑仕事を止めて嬉しそうにうずめの方に向かって来る。
「ほら、ゴブりん」
うずめはゴブりんをネプギアの前に立たせて両肩を叩くと、「あり……が……とう。たすけてくれて、ありがとう」とゴブりんがたどたどしく言う。
「わあ! ゴブりんが喋った!」
ラムが大声で驚くと、「びっくり(どきどき)」とロムも驚く。
「私達の言葉喋れるようになったんですか?」
ネプギアが嬉しそうにうずめに尋ねると、「ああ、まだ上手く喋れないけどな。ぎあっちにお礼を言いたくて待ってたんだ」とうずめが答える。
「ゴブリンが人に感謝するなんて、信じられないわ……」
ユニが信じられないものを見る目で言うと、「凄いです! 流石はうずめさんです!」とネプギアは感動で興奮しながらうずめも両手を握る。
「まあな。俺はカッコイイからな」
うずめが自慢気に言うと、「やるじゃない、うずめ」とユニが言い、「うずめちゃん凄い(ぱちぱち)」とロムがも続き、「うずめ最高にカッコイイわ!」と更にラムも続く。
「へへっ、ぎあっちの役に立てるなんて、こんなに嬉しいことはねぇよ」
うずめは嬉しそうに言うと、「よかったな、うずめ」と海男が微笑む。
その後、女神候補生はうずめと雑談をした後にギャザリング城に戻って行った。
***
翌日 G.C.2019年7月25日 木曜日。
今日も午前中にクエストを済ませたネプギア達。
午後からネプギアはイストワールから預かったゲハバーンの研究資料に目を通し、ユニはその付き添い。
ロムとラムはプラエと日本一を誘って広間でドンジャラをしていた。
「……凄いなー、千年前にこんな技術がったなんて……」
ネプギアは真剣に資料を眺めながら呟く、「そんなに凄いのそれ?」ユニが不思議そうに尋ねる。
「うん、本当にオーパーツって感じだよ。エネルギーに問題は抱えているけど、この技術は今の文明レベルも遥かに超えてるよ」
ネプギアが少し興奮気味に言うと、ユニが「そうなの?」と首を傾げる。
「例えるなら、石器時代に縮退炉が出来ちゃったようなものだよ」
ネプギアがそう言うと、「いや、その説明わかりずらいわ」とユニが呆れ顔になる。
縮退炉とは、莫大なエネルギーを持ち星間宇宙船や巨大ロボットの動力源として使用される物。
今のところ実現不可能なエンジンでロボットアニメ等のSF作品などにしか出てこない。
「でも、それを起動させる為のエネルギーが大問題じゃない」
ユニは落ち着いてと言うと、「うん……やり方は間違っていても、エネルギー問題も同時に解決したエルデさんは同じ技術者として凄いと思う」と言う。
「自分自身を被検者にして、かなり過酷な実験もしているし、心の底からゲイムギョウ界を守りたかったんだと思う」
ネプギアが続けて言うと、「只のマッドサイエンティストじゃないってことか……」とユニが呟くと、ネプギアは、「うん」と頷く。
「ごめんね、ユニちゃんも忙しいのに付き合ってもらっちゃって」
ネプギアは少し申し訳なさそうに言うと、「いいのよ。アタシが好きでやってるんだし」とユニは優しく言う。
「……それに研究の内容がエグイのだったら、ネプギアも見るの辛いでしょうし、研究で力になれない分、ネプギアを支えてあげようかなって……」
ユニが少し恥ずかしそうにそう言いながら、ネプギアの右手に自分の左手を重ねると、ネプギアは頬を赤く染めて「……ユニちゃん……」と呟く。
「と、とにかく! アタシが応援してあげてるんだから頑張りなさいよね!」
ユニは顔を真っ赤にしながら言うと、「うん、ユニちゃんが居れば百人力だよ」とネプギアは嬉しそうに微笑む。
その後、ネプギアはユニと話しながら研究資料を読み続ける。
「少し目が疲れたし、休憩にしよっか?」
暫くしてネプギアがそう言うと、「そうね、体動かしましょう」とユニが言う、「じゃあ、ファルコムさんに稽古付けてもらおうよ」とネプギアが提案すると、「そうしましょ」とユニが頷く。
ネプギアとユニがファルコムを探して広間に行くと、「どんじゃら~」とラムの明るい声が聞こえてくる。
「ラムちゃん、ドンジャラ強い(しょぼん)」
ロムが少ししょぼんとした声を出すと、「また負けちゃったよー」と日本一が肩を落とし、もう一人金髪の少女が、「今度は負けないよ」と牌をかき混ぜる。
「ビーシャさん」
ネプギアがそう言うと少女は振り返り、「お邪魔してるよー」と明るい声で答える。
以前にエフーシャと共にプロセッサユニットの改造でプラネテューヌを訪れたゴールドサァドの一人だ。
「ビーシャさん、どうしてここに? プロセッサユニットの改造で何か進展とかあったんですか?」
ネプギアが質問すると、「そうじゃなくて、ねぷねぷから聞いたんだけど、この前ワレチューに会ったんだって?」とビーシャが言うと、「ええ、相変わらず悪事を働いてたわ」とユニが答える。
ネプテューヌはワレチューに会ってはいないが、プラネテューヌへの帰り道でアイエフから話を聞いて、それをビーシャに話したのだ。
「わたしはそのワレチューを連れ戻す為にココに来たんだよ」
ビーシャはウィンクをしてサムズアップを決めると、「チューコも心配してるしね」と続けて言う。
チューコとはワレチューと同じような人語を話す白いネズミでゲームの中古ショップを営んでいる。
ワレチューを更生させるために店で雇っていたのだが、先日の通りワレチューは逃げ出し、今は犯罪組織の下っ端と行動を共にしている。
「そういうことで、これから一緒に戦うから、よろしくー!」
ビーシャはそう言うと、「こちらこそよろしくお願いします」とネプギアが返し、ビーシャは再びドンジャラの牌をかき混ぜて、綺麗に並べると、「さあ、もう一勝負!」と言う。
「今度は負けないよー!」
日本一も同じく牌を綺麗に並べて言うと、「わたしも負けない」とロムも意気込む。
「そう言えば、プラエはどうしたの?」
ユニが質問をすると、「プラエちゃん、少し具合が悪くなっちゃって……」とロムが悲しそうに言うと、「今はお部屋で休んでるわ」とラムが付け加える。
「ファルコムさん、稽古をつけてもらっていいですか?」
ネプギアは少し離れて、ロム達のドンジャラを眺めていたファルコムに声を掛けると、「いいよ」と答え、「ネプギアは修業熱心だね」と言いながらネプギアに近づいてくる。
「勉強ばかりじゃ体がなまっちゃいますし、みんなを守れるように少しでも強くならないと」
ネプギアは小さくガッツポーズを決めて意気込みを示すと、ユニは腕を組んで「アタシもやるわよ。ネプギアに負けてられないもの」と言う。
「ロムちゃんとラムちゃんはどうする?」
ネプギアがロムとラムに尋ねると、「今いいところだから、また今度」とラムが言うと、「うん、わたしもラムちゃんと一緒」とロムもそれ続く。
「うん、わかった」
ネプギアはそう言うと楽しそうにドンジャラをするロムとラムを見ながら、「あんなに喜んでもらえて、買ってあげた甲斐があったな」と嬉しそうに微笑む。
ネプギアとユニとファルコムと一緒にギャザリング城の中庭に向かい竹刀を持ってファルコムとの稽古を始める。
***
「うん、ネプギアもユニも呑み込みが早いね」
稽古が終わると、ファルコムは疲れて地面に座っていたネプギアとユニ見ながら言う。
「そうでしょうか? まだファルコムさんに一太刀も当ててませんよ」
ネプギアが不思議そうに言うと「そうよ、買い被りよ過ぎよ」とユニも不満そうに口を尖らせる。
「そうでもないさ、こう見えても結構本気を出してるんだよ。最初の方は五割ぐらいだったから大成長だよ」
ファルコムが腰に手を当てながら言うと「そうなんですか? 少し自信付いたかも」とネプギアが言うと、「アンタ、相変わらず単純ねー」とユニがお手上げのポーズで呆れる。
「「うわああああああああああん!!!」」
突然、大きな泣き声が聞こえてくる。
「この声、ロムちゃん、ラムちゃん!?」
ネプギアは急いで立ち上がると中庭を走って出ていく、「待って、ネプギア!」とユニも後に続き、「敵が乗り込んで来たの!?」とファルコムもそれに続く。
「ロムちゃん、ラムちゃん!」
ギャザリング城に入ったネプギアは自分の部屋の前で泣き崩れているロムとラムを見つけると、すぐさま腕を伸ばして二人を抱く。
「何があったの? 大丈夫?」
ネプギアが真剣な声でロムとラムに質問すると、「ネプギア~、かいだんが、かいだんが怖いの~」とラムがネプギアの服を両手でギュッと掴み、「かいだん怖い……(しくしく)」とロムもネプギア服を強く掴む。
「階段型のモンスターでも現れたの?」
ユニがそう言うと、ファルコムは素早く階段の方に駆けて行くが、「特に何もないね……」と言う。
それと同時に「ロム様ー! ラム様ー! ごめんごめん! アタシ達が悪かったよー」と日本一の声が聞こえてくる。
「ごめんねー、もうしないからー」
続いてビーシャの声がすると、「か、かいだん嫌~」とラムが更にネプギアの服を強く掴み、「ネプギアちゃん助けて!(びくびく)」とロムも強くネプギアの服を掴む。
すると、日本一とビーシャがやって来るが、ロムとラムはネプギアの服に顔を埋めて二人を見ようともしない。
「なにがあったんですか?」
ネプギアは不思議そうに尋ねると、「小さい子を泣かすなんて感心しないな」とファルコムがすこしキツ目に二人を見る。
「とりあえず、お二人の話を聞いてみましょうよ」
ネプギアがそう言うと、日本一は申し訳なさそうに右手を後頭部に当てて、「えーと……ドンジャラが終わった後さ、あたしとビーシャで特撮ヒーローの話になったんだよ」と言うと、「そう言えば、お二人とも特撮ヒーロー好きでしたね」とネプギアが答える。
ビーシャも反省しているのか肩を落としながら、「でさ、話が盛り上がってる内に、何故か怪談の話になって……」と言い、「怪談って怖い話の方?」とユニが質問すると、「うん、そう」とビーシャが頷く。
「ロム様もラム様も最初は興味津々に聞いてくれたんだけど……」
日本一がそう言うと、ビーシャが、「日本一が思いのほか怖い話を知ってたから、あたしも負けずにとびっきり怖い話をして、二人して怖い話の応酬してたら、ロム様とラム様が泣いて逃げ出しちゃって……」とビーシャが続ける。
「要は二人でヒートアップして、ロムとラムの存在を忘れてたってこと?」
ユニが呆れながら言うと、「面目ない……」と日本一が頭を下げて、「子供を怖がらせるなんてヒーロー失格だよー」とビーシャが嘆く。
「よしよし……そっかそっか怖かったねー」
ネプギアはそう言って、ロムとラムの頭を優しく撫でると、「怖くて、ロムちゃんの手を握ってネプギアの部屋に来たんだけど鍵が掛かってて……ひっくひっく……」ラムが泣きながら言うと、ネプギアは、「ごめんね」と言いながらラムの頭を撫で続ける。
「ふぇぇぇ~ん、ネプギアちゃ~ん」
ロムがネプギアの顔を見ながら言うと、「大丈夫だよー、今日はみんなで一緒に寝ようね」と優しい声で言うとロムは少し嬉しそうに、「うん」と頷いてネプギアの胸に顔を埋める。
「ネプギアって、わたしやねぷねぷとは違う意味で子供に懐かれるよね」
ビーシャがそう言うと、「この子は優しいからね」とファルコムが答える。
「そうだ! 怪談が怖くなくなるお話してあげるね」
ネプギアがそう言うと、「ホントに……」と言ってラムが、「どんなお話」とロムがそれぞれ顔を上げる。
するとネプギアが、「怪談をしてたら、痒くなってきちゃった……」と痒がる真似をすると、「蚊いたんだ」と続けてドヤ顔で言う。
辺りに寒い風が吹き、ユニは頭を抱えながら、「こんな時にダジャレ言ってどうするのよ……」と呆れかえる。
ロムとラムは目を丸くして、「怪談……か、いたんだ?」とロムが首を傾げると、「怪談で蚊いたんだー!」とラムが嬉しそうな顔をし、「面白い(ほのぼの)」とロムも嬉しそうな顔をする。
「よかった。それじゃ、お部屋に行こう。絵本読んであげるね」
そう言ってネプギアが立ち上がると、ロムとラムはネプギアの袖を摘まみながら立ち上がり、ネプギアの部屋に入って行く。
「それにしても、二人が怪談に詳しいなんて意外ね」
ユニが腕組みしながら尋ねると、「アタシ、都市伝説とか詳しいんだ」と日本一が言い、「わたしは学校の怪談」とビーシャが言う。
「人は見かけによらないね」
ファルコムはそう言うと溜息を吐いて、「次は気を付けなよ」と続ける。「「はい……」」と日本一とビーシャがしょんぼりしながら返事をする。
その後、ネプギアは夕食後もロムとラムに寝るまで絵本を読んであげて、三人で一緒に寝たのだった。
***
翌日 G.C.2019年7月25日 木曜日。
予定通り午前中のクエストを済ませたネプギア達、午後からは女神候補生達が女神化して空を飛んでルウィーに行き、ブランの執務室を訪れていた。
「なるほど……」
執務室の椅子に座っていたブランが手に持っていた書類を読みながら呟くと、「ゲハバーンか……妄想力といい、プラネテューヌはとんでもない物ばかり作るわね」と言って溜息を吐く。
「お姉ちゃん、ネプギアに協力してくれるんだよね?」
ラムがそう言うと、ロムも、「協力してほしい(まじまじ)」と続く。
すると、「イストワールの書類の通りなら、協力もやぶさかでないわ」とブランが答える。
女神候補生達は、イストワールが各国の女神宛に書いたゲハバーンの説明とその研究に協力して欲しいという書面を女神達に届けていた。
「ありがとうございます!」
ネプギアが喜んでお礼言うと、「やぶさかってなに?」とラムが質問し、「やぶ医者の仲間?」とロムが首を傾げる。
「協力を惜しまないって意味よ」
ユニが説明をすると、「おお~、お姉ちゃん太っ腹~」とラムが喜び、「太っ腹(ぽんぽこ)」とロムが続けて喜ぶ。
「……ゲイムギョウ界を守る最後の手段として有用だから認めただけのことよ」
ブランが冷静に言うと、隣に立っていた女性が「しかし、ブラン様……」と怪訝な表情を浮かべる。
水色のロングヘアーを二つに分けて、赤い学者帽とコートを身に着け、眼鏡をかけた二十代ぐらいの女性だ。
身長はネプギアと同じぐらいだが、知的で大人びており、教師のような印象を受ける。
「……ミナの言いたいことは分かるわ。でも、私達女神はゲイムギョウ界を守る為にいつでも命を捨てる覚悟が必要よ……それが例えロムとラムのような小さな子でも」
ブランが真剣な声で言うと、「すみません。出過ぎたことを申しました」とミナと呼ばれた女性が頭を下げる。
彼女の名前は西沢ミナ、ルウィーの教祖である。
数年前から修業の旅に出ていたが、つい最近、修業を終えて戻って来たのだ。
「そうよ! みんなを守る為なら、死ぬことだってやぶさかじゃないわ!」
ラムが覚えたての言葉で威勢よく言うと、「怖いけど、みんなの為なら……(ぶるぶる)」とロムも続けて言う。
「……ロム、ラム、命は投げ捨てるものではないわ」
ブランが厳しい声でそう言うと、「これはあくまで最後の手段。わたし達女神全員が人事を尽くして、それでもどうにもならない時の為の物よ」と続ける。
「ブラン様の言う通りですよ。最後まで希望を捨ててはいけません」
続いてミナが諭すように言うと、「「ごめんなさい……」」とロムとラムは声を揃えて素直に謝る。
「謝ることではないわ。わたし達女神は大切な物を守る為に命を掛ける覚悟は大事よ。あなた達もそう思うわよね?」
ブランがそう言ってネプギアとユニの方を見ると、「はい、まだ未熟ですけど覚悟は出来ているつもりです」とネプギアが言うと、「アタシもネプギアと同じです」とユニが答える。
「未熟ではないわ。前の戦いでネプギアはうずめを守る為、ユニはノワールを守る為に命を掛けたと聞いているわ」
ブランがネプギアとユニを褒めるように言うと、「ブランさんもルウィーを猛争モンスターの大群から守る為にたった一人で命がけの防衛をしたって、ロムちゃんとラムちゃんから聞いています」とネプギアが尊敬の念を込めて言う。
三人の言う通り、ネプギアはうずめをマジェコンヌの攻撃から守る為に超次元への帰還を捨てた上に身を挺してうずめを守った。
ユニも女神に対して有害な毒からノワールを守る為に身代わりになり、ブランもルウィーを守る為に一人でモンスターの大群を迎え撃った。
今でこそこうして生きて顔を合わせているが、一歩間違えれば三人共命を落としていたかもしれないのだ。
「ロムもネプギアが心次元へ引き返す時に、危険を承知でネプギアの力になってあげたいと思う気持ち。あの時の勇気を忘れないで」
ブランがそう言ってロムを褒めると、「うん(てれてれ)」とロムが嬉しそうにはにかむが、「わたしだって、本当はネプギアのこと助けてあげたかったのよ。けど……」とラムは元気がなさそうに呟く。
ブランが言ったように、ネプギアは死を覚悟で心次元に残ったうずめを救うべく、無茶を承知でネプテューヌと共にうずめを助けに行ったのだが、その際に大人しいロムが勇気を出してネプギアを助けたいと訴え出たのだ。
しかし、ラムはそんなロムの無茶を止めるよう説得したのだ。
「ラムも間違ってはいないわ。さっきも言った通り命は投げ捨てるものじゃないわ。無謀な戦いは出来るだけ避けるべきよ」
ブランがラムを励ますように言うが、「じゃあ、どうすればいいの?」とラムが首を傾げ、「むずかしい(ぐるぐる)」とロムが悩むように両手で頭を抱える。
「そうね。事前に何が正しいと分かって実行するのは難しい。特にわたし達のような危険な仕事をしていると、無謀と勇気が違うと分かっていても、考える時間が短すぎて判断を誤ってしまうこともあるわ」
ブランはそう言うと、「でも、絶対にやってはいけないことがあるわ」と真面目な声で言うと、「自分が死や恐怖、苦しみから逃れる為に守るべきものを裏切ることよ」と厳しい声で言うと椅子から立ち上がる。
「あの革命家さんみたいに?」
ロムが思い出したかのように言うと、「アイツ、カッコ悪かったわよねー」とラムが蔑むように言う。
先程ブランがルウィーを守る為に命だけで戦っている時に、本来はその革命家が兵隊を率いて非戦闘員が逃げるまででも戦うべき事態だったのだが、その革命家は保身に走り護衛の兵士と共に一目散に逃げ出してしまったのだ。
「誰だって恐怖や苦しみは味わいたくない、それに命も大切よ。でも、わたし達守護女神はただ生き永らえる事を考えてはいけないわ」
ブランはそう言いながらネプギア達に背中を向けると、ガラス張りの壁からルウィーの街を見下ろす。
「女神には危険をかえりみず、死ぬと分かっていても行動しなくてはならない時がある。負けると分かっていても戦わなくてはならない時があるわ」
ブランが話し続けると、「戦闘員さんが一人で、ヒーローの大群に挑むんですね」とネプギアが力強く言う。「がくっ……」とブランは脱力しながら右膝を折ると着ているコートと帽子がずり落ちる。
「今は真面目な話をしているのだけど……」
ブランがネプギアを見ながら帽子とコートを直しながら呆れたように言うと、「ごめんなさい。宇宙海賊ですよね、宇宙戦艦の方の」とネプギアが謝る。
「そういう事を言ってるんじゃないわ」
ブランが右手で頭を抱えて頭が痛いという仕草をすると、ユニが呆れながらネプギアを見て、「アンタは空気読みなさいよ」と言い、「……あなたのそういう天然ボケは嫌いではないわ。でも、時と場所は弁えて」とブランが溜息を吐く。
「ねーねー、宇宙海賊って?」
ラムが興味津々にネプギアに尋ねると、「凄くカッコイイ男の人が活躍するSFアニメなの。今度一緒に見ようね」とネプギアが答え、「楽しみ(わくわく)」とロムが嬉しそうに言うと、「今は一緒にブランさんの話聞こうね」とネプギアが言う。
「あなたが中断させたのよ」
ブランが疲れたようにネプギアに三度目のツッコミをすると、「まぁ、少し堅苦しくなっていたからちょうどいいかもしれないわね」と再び溜息を吐く。
「大切なものを守るために命を掛ける。その時を見誤ってはいけないわ」
ブランは話を続けると、「臆病風に吹かれて腰抜けになるような恥さらしはもってのほかよ」と少し厳しい声で続けて言う。
「……うん、怖いけど頑張る(ぐっ)」
ロムが少し自信無さそうに言うと、「こういう時は、武士道とは死ぬことと見つけたり。常住死身の覚悟ですね」とネプギアがブランに向かって力強く言う。
「……おかしな天然ボケをしたと思えば、今度は難しいことを言い出す……本当にわからない子ね」
ブランが何度目か分からない呆れの溜息を吐くと、「うずめさんみたいにカッコイイのって何て言うんだろうって調べてたら、あんみつさんに武士道のこと教えてもらったんです。それでこの考え方を見習おうと思って」とネプギアが答える。
「そう……。うずめの戦いに感銘を受けたあなたの感性はいいと思うわ。そして素直に見習おうという姿勢も良いことね。本当に人間性の高い子ねあなたは」
ブランが感心したようにネプギアを褒めると、「ねーねー! なにそれ、不器用とは死ぬことで見つかったり? 女中尻見?」とラムが首を傾げながら質問する。
「女中のお尻見てどうするのよ?」
ユニが呆れた声を出すと、「女中って、中学生のお姉さん?」とロムが質問する。「そうじゃなくて、メイドさんのことだよ」とネプギアが答えると、「えー? フィナンシェのお尻見てどうするの?」とラムが驚く。
「最初に言ったのはラムでしょ……」
ユニが再び呆れた声を出すと、「武士道とは死ぬことと見つけたり。常住死身の覚悟よ」と続ける。
ブランは女神候補生達を少し楽しそうに見て微笑みながら、「あなたも苦労してるわね」とユニに同情の言葉を掛ける。
「それって、どんなの?」
ロムがネプギアの袖を摘まみながら質問すると、「簡単に言うと、人は死んだ気になってやれば、どんなことでもできるという意味だよ」とネプギアが答える。
「どんなことでも?」
ラムが不思議そうに尋ねると、「うーん、直ぐにって言うのは無理だけど、死んだ気になって毎日努力すれば夢は叶うって言った方が分かりやすいかな」とネプギアが言う。
すると、ユニが、「一日二日死ぬ気になるんじゃなくて、常に全力で努力を重ねるのよ」と右手で握りこぶしを作りながら言う。
「おお~、ユニちゃんが燃えてる」
ラムがそう言うと、「燃えてる(めらめら)」とロムがそれに続く。
「努力って言うのは、勉強とかじゃなくて遊びもね。常住死身って言うのは、いつ死んでも後悔のない生き方をするって意味もあるから」
ネプギアがそう付け足すと、「腰抜けみたいなカッコ悪い生き方せずに、いつ死んでも後悔しないように、お勉強もして遊びも楽しむの?」とラムが言う。
「うん、そんな感じ」
ネプギアがそう言って頷くと、「そうよ。【あの時、もっと勉強しておけばよかった】、なんて考えながら死ぬなんてカッコ悪いでしょ」とユニが続けて言う。
すると、「あなた達には、まだ難しいと思うけど、今のネプギアやユニと一緒に行動してれば自然と身につくわ」とブランが言う。
「そんな……ユニちゃんはともかく、私はまだまだ未熟で……」
ネプギアが謙遜すると、「あなたはもう少し自分を高く評価した方がいいわ」とブランが忠告する。
「それにしても、ゲハバーンか……。恐ろしい代物ね」
ブランがそう言うと、「ええ、女神様の魂が必要だなんて……」とミナが怪訝な顔をする。
「でも、そのリスクを何とかする為に研究をするのよね?」
ブランがネプギアに質問すると、「はい、自信はありませんけど、頑張ります」とネプギアが答える。
「こうして、素直に報告してくれた事、そしてあなたの人格を認めた上での協力よ。魔法関係で何か知りたいことがあったら何時でも尋ねて来なさい」
ブランはそう言うと、「だけど、あなたが道を踏み外した時は容赦しないわ」と少し厳しい声で続けて言う。
「肝に銘じておきます」
ネプギアが真剣な声で頷くと、「道を踏み外した時? 肝に銘じる?」とロムが首を傾げ、「なになに? どういう意味?」とラムが質問をする。
「道を踏み外すは、よくない行動をすること。肝に銘じるは、心に強く刻みこみ忘れないようにすることよ」
ユニが説明すると、「お姉ちゃん、何言ってるの? ネプギアが悪いことする訳ないじゃない」とラムが呆れたように言うと、「ネプギアちゃんなら大丈夫(こくこく)」とロムが力強く頷く。
「ネプギアが優しく真面目で正義感が強いのは承知していわ。けど、そういう子に限って思い詰め過ぎて狂ってしまうことがあるのよ」
ブランがそう言うと、「わたし達もいるんだから、大丈夫よ」ラムが自信満々に言うと、「うん、わたし達がネプギアちゃんを支える」とロムも力強く言う。
「ありがとう、二人とも」
ネプギアが嬉しそうに言うと、ブランは少し微笑んで「そうね、期待しているわ」と言いながら、書類に署名をする。
「それじゃあ、これをイストワールに届けてちょうだい」
ブランが書類を差し出すと、ネプギアはそれを両手で受け取って「はい、ありがとうございます」と頭を下げる。
「それじゃあ、次はラステイションね」
ユニがそう言うと、「お姉ちゃん、ミナちゃん、またねー!」とラムが手を振りながら部屋を出ていくと、ロムも、「またね」と言ってラムについて行く。
ネプギアとユニもブランに、「「失礼いたしました」」と声を揃えて挨拶をすると部屋を出て行き扉を閉める。
「……ブラン様、本当によろしいのですか?」
ミナが不安そうにブランに尋ねると、「……暫く様子を見るわ」とブランは短く答える。
***
女神候補生達は次にラステイションのノワールの執務室を訪れる。
「もうっ! 何であの子はトラブルばかり起こすのかしら」
執務室の机でゲハバーンの資料を読み終えたノワールが不満そうに言う。
ゲハバーンを発見したネプテューヌに対しての文句だろう。
「開口一番にネプテューヌさんへの文句……やっぱり、お姉ちゃんは……」
ユニがそんなノワールを見つめながら呟くと、ノワールは顔を赤くして、「へ、変な勘違いしないで! 私はネプテューヌのことなんか何とも思ってないわよ!」と叫ぶ。
「ノワールさん、やぶさかじゃない?」
ラムがノワールに向かってそう言うと、「やぶさかじゃない?」とロムも続けて言う。
「なによ、やぶからぼうに?」
ノワールが不思議そうに尋ねると、「覚えたての言葉を使いたくて仕方ないんです。ブランさんが協力もやぶさかじゃない、と言ったので」とネプギアが説明をする。
「ふーん……ルウィーは協力するのね」
ノワールがそう言って考え込むと、ラムが、「ねーねー」とネプギアの服を引っ張って、「やぶからぼーってなに?」と質問をすると、「おかし?」とロムが首を傾げる。
「やぶからぼうって言うのは、思いもよらないことや、前触れもなく唐突に何かをすることだよ。ほら、草がいっぱいあって周りがよく見えない藪で、いきなり棒が出てきたらビックリするでしょ?」
ネプギアが説明をすると、「「おおーー」」とロムとラムは声を揃えて感心する。
「それで、お姉ちゃんはどうなの?」
ユニがノワールに質問をすると、「そうねぇ……」とノワールは考え続ける。
「ボクは協力すべきだと思うよ」
ノワールの横に立っていた中性的な女性がノワールに進言する。
グレーのショートカットで黒いビジネススーツを着た、ユニと同じぐらいの身長の女性だが、雰囲気は大人びており仕事の出来そうなキャリアウーマンと言った印象を受ける。
「以外ね、ケイがあっさり賛成するなんて」
ユニはその女性をケイと呼ぶと、やや疑り深い目で見る。
彼女の名前は神宮寺ケイ。ラステイションの教祖である。
少し前まで別の事業をしていたが、ここ最近になってノワールの側に戻って来たのだ。
「ボクはこの剣の有用性とイストワールとの契約内容から、冷静に判断しただけだよ」
ケイが落ち着いて言うと、「そうね、悪くない取引だわ」とノワールが続けて言う。
「じゃあ、やぶさかじゃないの?」
ラムが嬉しそうに言うと、「ただ、生贄なんて感情的な意味で賛成できないのよ」とノワールが言う。
「そこはネプギアが何とかしてくれるわ」
ユニがノワールに訴えると、「うん、ネプギアちゃんなら何とかしてくれる(こくこく)」とロムがそれに続くと、「自信はありませんけど、精一杯がんばりますので、よろしくお願いします」とネプギアが頭を下げてお願いする。
「わかったわ。それに私達女神はゲイムギョウ界を守る為に命を掛けなければいけないからね」
ノワールがそう言うと、「ノワールさん、お姉ちゃんみたいなこと言ってる」とラムが言うと、「女神として当然の心構えよ」とノワールは事もなげに言う。
「でも、命は投げ捨てるものではない(きりっ)」
ロムが先程のブランの真似をすると、「そうだね。使わないに越したことはないね」とケイが冷静に答えると、「神機が何かの参考になるかもしれないから、後でゴッドイーターに資料を渡してそちらに派遣するわ」と言いながらノワールが書類に署名をする。
「それじゃあ、これをイストワールに届けて」
ノワールが書類にサインしてを差し出すと、ネプギアはブランの時と同じようにそれを両手で受け取って、「はい、ありがとうございます」と頭を下げる。
「最後はリーンボックスよ」
ラムが元気よく言うと、ロムも、「しゅっぱーつ!」と元気よく言いながら部屋を出ていく、「ありがとう、お姉ちゃん」とユニもそれに続いて部屋を出ると、「失礼します」とネプギア部屋を出てドアを閉める。
「ノワール」
ケイがノワールに向かって話しかけると、「わかってるわ。慎重に様子を見ましょう」とノワールが答える。
***
女神候補生達は最後にリーンボックスのベールの執務室を訪れる。
「あらあら……これはまた大変な物を作りましたわね」
執務室の机でゲハバーンの資料を読み終えたベールが少し困った顔で言う。
「やぶからぼーだけど、やぶさかじゃない?」
ラムがベールに向けて尋ねると、「やぶさかじゃない?」とロムもそれに続く、二人とも新しく覚えた言葉を使うのが楽しいようだ。
「ええ、やぶさかではありませんわ」
ベールがニッコリ微笑んで言うと、「……流石ベールさん、意味が通じてる」とユニが感心する。
「わーい! やぶさかじゃないって!」
ラムがバンザイして喜ぶと、「ネプギアちゃん、わたし達やったよ」とロムが嬉しそうに言う。「攻城成立よ!」とラムが続いて言うと「うんうん、えらいえらい」ネプギアは二人の頭を撫でてあげ、「あと、攻城じゃなくて交渉ね」と訂正をする。
「いえーい! 褒められたー!」
ラムは自分の間違いは特に気にせず嬉しそうにすると、「ネプギアちゃんに褒められた(にこにこ)」とロムも嬉しそうにする。
「お姉様! そんなあっさりと認めないで下さい」
しかし、ベールの横に立っていたチカが不満そうな顔で叫ぶ。
「ですけど、わたくしの可愛い妹達のお願いですし……」
ベールが可愛らしく小首を傾げてチカに言うと、「この子達はお姉様の妹ではありません! お姉様の妹は、あたくし箱崎チカただ一人です!」と女性が叫ぶ。
チカはやや病弱の為、あまり表に出てこないが今日は体調が良いようで同席しているのだ。
「チカ……どさくさに紛れて、わたくしの妹になっていません?」
ベールがにこやかに言うと、「お姉様鋭い……」とチカが肩を落とす。
彼女は見た目相応にデキる女性なのだが、ベールに対しては甘えん坊のかまってちゃんなのだ。
「あのー……本当にいいんですか?」
ネプギアが再度ベールに確認を取ると、「可愛いネプギアちゃんの頼みですもの。何でも聞いてあげますわ」とベールが微笑む。
「きぃぃぃぃぃぃ!! いつもいつも、その子ばっかり!」
チカがハンカチを噛みながら悔しそうにネプギアを睨みつけると、ネプギアは少し怯えた顔で、「うぅ……もの凄い敵意を感じる……」と震える。
「チカ、そんな睨んでは綺麗な顔が台無しですわよ。ネプギアちゃんも怖がってますし」
ベールは落ち着いてチカを宥めようとするが、チカは興奮気味に、「あたくしとその子、どこが違うんですか? あたくしに不満があるなら、重箱の隅をつつくように何でも言って下さい! あたくし、お姉様好みの女になります!」と叫ぶ。
「チカのことはちゃんと妹のように大事に思ってますわ」
ベールが優しい微笑みを浮かべながら言うと、チカは顔を赤くして「……お姉様……」と呟くが、「でしたら、あの子の抱き枕じゃなくて、あたくしと一緒に寝て下さい!」と拗ねたように言う。
「ち、チカ! それはオフレコですわ!」
ベールが慌てながら言うと、ネプギアが怪訝な顔で「あの……私の抱き枕って……」と質問をする。「れっきとした公式のKENZENなグッズですわ!」とベールが言うが、「公式なのに、私本人が知らないんですけど……」とネプギアが疑わしい目で見る。
「ですけど、間違いなくプラネテューヌ公式ですわ。ネプテューヌが提案したのではなくて?」
ベールが説明をすると、「もぅ……お姉ちゃんは勝手なことして……」とネプギアが呆れた声を出すと溜息を吐いて、「いーすんさんも止めてくれればいいのに……」と不満そうに呟く。
「とりあえず協力してくれるってことでいいんですよね?」
今度はユニが確認すると、「ええ、わたくしに二言はありませんわ」とベールが腕を組んで胸を揺らしながら答える。
「確かに条件は悪くありませんけど、こんな危険な物……」
チカが不満そうに呟くと、ベールが、「そこはネプギアちゃんが何とかしてくれますわ」と言いながらネプギアに向かって微笑むと、「ね? ネプギアちゃん」と続けて言う。
「はい! 頑張ります!」
ネプギアが返事をすると、ベールは署名しながら、「この署名でネプギアちゃんは正式にわたくしの妹になるのですね」と嬉しそうに言うが、「そういう署名じゃありません!」とネプギアは力一杯否定する。
「うふふ……冗談ですわ」
ベールは微笑みながら書類を差し出すと、「ベールさんの冗談は心臓に悪いです……」とネプギアが疲れた顔で言いながら両手で書類を受け取る。
「ネプギアちゃんは可愛らしいから、ついイタズラしたくなっちゃいますの」
ベールが笑いながら言うと、ネプギアは困った顔で、「あんまりからかわないで下さい……」と言う。
「そう言えば、開拓している場所に犯罪組織の残党が居たと聞きましたけど、本当なんですの?」
ベールが尋ねると、「はい、相変わらず悪さをしていました」とユニが答える。
「ニトロプラスちゃんが犯罪組織の残党を追っているそうですから、後でそちらに派遣しますわ」
ベールがそう言うと、「ありがとうございます。心強いです」とネプギアがお礼を言う。
「それじゃあ、これで失礼しますね」
ネプギアはそう言って一礼すると扉を開けて部屋を出ていく。
「じゃあねー」
ラムが元気よく挨拶をすると、「またね」とロムもそれに続いてネプギアの後を付いて出て行き、最後にユニが、「失礼しました」と言って扉を閉める。
「……お姉様」
チカが真剣な声でベールに話しかけると、「ええ、わかってますわ」とベールは腕を組んで頷く。
「じゃあ、今日は一緒に寝てくれるんですね!」
チカが嬉しそうに目を輝かせると、ベールはガクッと肩を落として、「チカ……ここはシリアスな展開ではなくて……」と呆れながら言う。
「お姉様冷たい……」
チカはしょんぼりすると、ベールは真剣な顔で、「ですけど、厄介な代物ですわね。仮にあの剣を使ったとして、他の女神の魂とその罪を背負って生きて行かなくてはならないなんて……」と呟く。
「いくらわたくしでも、責任と罪の重さでゲームもできずに毎日仕事に明け暮れてしまいそうですわ」
ベールが続けてそう言うと、「ありえません。ゲームをしないで仕事するお姉様なんて想像がつきません」とチカがキッパリと言う。
「……チカも意外と容赦がないですわね」
ベールは困った顔でチカを見つめる。
***
ギャザリング城に戻って来た女神候補生達はイストワールの執務室を訪れていた。
「お仕事終わったよー!」
ラムが嬉しそうに言うと、「みんな署名してくれたよ」とロムも嬉しそうに言う。
「ありがとうございました」
イストワールが微笑みながらロムとラムにお礼を言うと、「ネプギアさんとユニさんもお疲れ様です」とネプギアとユニもお礼を言う。
「みなさん、多少は抵抗があったみたいですけど、協力してくれるみたいです」
ネプギアはそう言いながら、書類をイストワールに手渡すと、「そうでしょうね。物が物ですから」と言いながらイストワールは書類を受け取る。
「でも、こんな危なっかしい物を隠れて研究するよりはいいと思います」
ユニがそう言うと、「そうだね。それにみんなで協力した方が良い結果が出ると思うし」とネプギアがユニに同意する。
「ですけど、本当に私がゲハバーンを預かったままでいいんですか?」
ネプギアが質問をする。
女神達への書面にはゲハバーンは研究者であるネプギアが所持することへの許可も書かれていた。
「それだけ、ネプギアさんが信頼されていると言うことです。それにこうなってしまった以上、下手な場所に保管するより、ネプギアさんが持っている方が安全です」
イストワールが質問に答えると、「そうね、うずめが封印されてたゲーム機も割とあっさり盗まれちゃったし」とユニが頷く。
「分かりました。何があろうともゲハバーンは私が守ります」
ネプギアはそう言って小さくガッツポーズをして意気込みを示す。
***
G.C.2019年7月28日 日曜日。
女神候補生とイストワール達は、月に一度のお仕事の為に神次元を訪れていた。
仕事を終わらせたネプギア達は、アノネデスのラボを訪れていた。
「あの子をパワーアップさせた機械のことを知りたい?」
ネプギアとユニの前にいるアノネデスが、不思議そうに尋ねる。
「はい、外部からのエネルギー供給とは聞いていましたけど、それが何なのか知りたいんです」
ネプギアがそう言うと、「なんか訳アリみたいね……」とアノネデスが質問をすると、ネプギアが、「実は……」と言うが、ユニがそれを遮って、「ねぇ、やっぱ止めない。こんな奴に知られたら悪用される可能性だってあるわ」と不満そうに腕を組みながら言う。
「あら? アタシってば信用ないのね」
アノネデスが少しおちゃらけたふうに言うと、「ピーシェみたいな小さい子を洗脳して改造するようなヤツ信用できないわ」とユニがキッパリと言い放つ。
ゲハバーンの研究の為に以前にアノネデスが開発した、ピーシェを外部からのエネルギー供給でパワーアップしていた機械も参考にしようと思ったネプギアだが、ユニはそれが納得できないようだ。
「きゃはは~!」
ネプギア達の後ろでは元気よくピーシェが走り回っていた。
「待ちなさい、ピーシェ!」
その後を追うラムに、「わーい!」とロムがそれに続く。
ロムとラムはここに来るなり、ピーシェと追いかけっこして遊んでいた。
「でも、今は改心して責任もってピーシェちゃんを引き取ってるし、うずめさんの事件の時も四女神オンラインの時も協力してくれたみたいだし」
ネプギアがアノネデスを弁護すると、「どうせ、お姉ちゃんの写真とか貰ったんでしょ」とユニが厳しい顔で言う。
「鋭いわねー。ご名答、そっちのノワールちゃんの限定百部のコスプレ写真集を貰ったのよ」
アノネデスが嬉しそうに言うと、「あはは……やっぱり何か貰ってたんですね」とネプギアが呆れたふうに言う。
「ギブアンドテイクは世の中の基本よ」
アノネデスは悪びれも無く言うと、ユニは、「やっぱり信用できないわ……」と厳しい視線をアノネデスに向ける。
「じゃあ、交渉決裂ね」
アノネデスがそう言うと、「アノネデスさん、協力してあげられませんか?」と隣に座っていたキセイジョウ・レイが口を挟む。
「でもねー。ギアちゃんみたいな真面目な子が、アタシの作った倫理に外れた機械に興味を持つなんて気になるじゃない?」
アノネデスがそう言ってネプギアを見ると、「機械には罪は無いと思ってます。使う人の心次第です」とネプギアが答える。
「私が、アノネデスさんが悪いことしないようしっかり見ていますから、訳を話してもらえませんか?」
キセイジョウ・レイがユニに言うと、「レイさんが?」とユニが少し不安そうに言う、その反応を見たキセイジョウ・レイは、「やっぱり私じゃ頼りないですよね……」と肩を落とす。
「ユニちゃん、レイさんもこう言ってるし、ブレイブさんやステマックスさんだって改心したんだから」
ネプギアがユニにそう言うと、ユニは溜息を吐いて、「わかったわ……」と言う。
ステマックスとは秘密組織アフィ魔Xの一員のサイボーグ忍者、以前はネプギア達と敵対していたが、後に和解し、今は執行猶予の奉仕活動をしている。
「ありがとう、ユニちゃん!」
ネプギアが嬉しそうに言うが、「ただし! 何かあったら後ろからでもアンタを撃つわよ!」とユニはアノネデスに厳しい視線を向ける。
「おー、怖い怖い……」
アノネデスは大袈裟にお手上げのポーズでそう言うと、「それで、何があったの?」と少し真剣な声でネプギアに尋ねる。
「実はゲハバーンという剣がありまして……」
ネプギアがアノネデスとレイにゲハバーンの話をすると、「ふーん、アタシも結構ヤバい研究してるって自覚はあるけど、上には上がいるものね」とアノネデスは関心を示し、「そんな恐ろしい物があるなんて……」とキセイジョウ・レイは顔を青くして震える。
「それで、アノネデスさんのエネルギー供給の機械がゲハバーンに使えないか試してみたいんです」
ネプギアが説明を続けると、「いいわ。教えて、ア・ゲ・ル」とアノネデスが楽しそうに言うが、ユニは、「キモっ……」と嫌そうな顔をする。
「このディスクにデータが入ってるわ。ギアちゃんなら簡単に作れると思うわよ」
アノネデスは机から一枚のディスクを取り出してネプギアに手渡す。
「ありがとうございます!」
ネプギアがお礼を言いながらそれを受け取ると、「ねぇ、レイちゃん、あなた一万年以上生きてるのよね? 何か参考になるような話ないの?」とアノネデスがキセイジョウ・レイに質問をする。
「うーん……特に思い当たるようなことは……」
キセイジョウ・レイが考え込みながら言うと、「ダメねー、レイちゃん」とアノネデスが呆れると、「ごめんなさい無駄に長生きしてるだけで……」と言ってキセイジョウ・レイが肩を落とす。
「ロムー、ラムー! 帰るわよー!」
ユニがロムとラムに声を掛けると、「「はーい!」」とロムとラムは返事をして、「またね、ピーシェ」とラムが言うと、「また遊ぼうね」とロムが言う。
「ばいばーい!」
元気よく手を振るピーシェ。
ネプギア達はピーシェ一家に見送られながら、神次元のプラネテューヌに帰って行った。
「アノネデスさん……」
女神候補生達を見送ったキセイジョウ・レイが不安そうにアノネデスを見ると、「大丈夫よ。他人の真似なんてアタシのプライドが許さないもの」とアノネデスが答える。