新・昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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002女神候補生とプラエ

 翌朝。

 

G.C.2019の3月28日木曜日。

 

 

ピピッ!

 

 

 時計から朝のアラームが一回鳴ったが、その音は即座に止められる。

 

 

「……いけないいけない。アラーム止め忘れてたよ」

 

 

 アラームを止めたネプギアが小さな声で呟く。

 

時計は6:30を示していた。

 

ネプギアの朝は早い。

 

以前は姉のネプテューヌと一緒に八時頃まで寝ていたが、ネプギアが真剣に仕事に取り組むようになったG.C.2012頃から早起きをするようになった。

 

 

 時計のアラームより早く起きた彼女は着替えも殆ど終えており、あとはセーラーワンピの前ボタンを閉めるだけだった。

 

昨晩はプラエと一緒に寝たので、しがみついた彼女を優しく放し、Nギアのライトで朝の支度をしていた。

 

ネプギアがセーラーワンピのボタンを閉めて着替えを終えると、「ネプギア殿」と声がかけられる。あんみつが寝ているベッドからだ。

 

 

「あっ、起こしちゃいましたか。ごめんなさい」

 

 

 ネプギアが小声で謝ると、「いえ、既に起きていました。いつもはプラエ様の朝食の支度があるので」とあんみつも小声で答えながら上体を起こす。

 

 

「こんな朝早くから仕事ですか?」

 

 

 あんみつが質問をすると、「これから朝ごはんを食べたら、ネットニュースで情報を集めて、八時ちょっと前に仕事を始めます」とネプギアが丁寧に質問に答える。

 

 

「……プラエ様のせいでご迷惑をお掛けします」

 

 

 あんみつが申し訳なさそうに言うと、「いえ、これはいつものことですから」とネプギアが事も無げ言う。

 

 

「毎朝このような時間から?」

 

 

 あんみつが少し驚いたように言うと、「朝の空気は気持ちいいですから。それに朝早いと時間を有効に使っている気がするんです」とネプギアが微笑みながら言う。

 

 

「もっと朝が早くて今頃通勤電車に揺られてる人だっているだろうし、それに比べればなんてことありません」

 

 

 更に小さくガッツポーズをしながら言うネプギア。

 

 

「感心ですね」

 

 

 あんみつがそう呟くと、「お引き留めして申し訳ありません。プラエ様のことは私に任せて、ご自由になさって下さい」と続けて言う。

 

 

「ありがとうございます。ここに書置きを置いておきますので、プラエちゃんが起きたら教えてあげて下さい」

 

 

 ネプギアが時計の下にピンク色の可愛らしいメモ書きを挟む。

 

そこには、プラエに朝早くから仕事に行くことを謝ることと、自分がプラネタワーの何処にいるか、呼び出すにはどうするか、などが丁寧に書かれていた。

 

 

「何から何まで、かたじけない」

 

 

 あんみつが深々と頭を下げるが、「頭を上げて下さい。私はプラエちゃんのことを守るって約束したんですから、これぐらい当然ですよ」とネプギアが優しい声で言う。

 

 

「それじゃあ、私、行きますね」

 

 

 ネプギアはそう言ってNギアを右太もものケースにしまうと部屋を出ていく。

 

 

「……疑うのが恥ずかしくなるぐらい真面目で純粋な子だ……」

 

 

 そう言って布団の中に手を入れるあんみつ。

 

そこには彼女の刀が置かれていた。

 

 

「しかし、プラエ様の為にもう暫く様子を見なければ……」

 

 

 あんみつはそう言いながら刀の柄を握りしめる。

 

 

「いや、違うな。私は斬りたいんだ彼女を…………プロテノール様の……である彼女を」

 

 

 あんみつはそう言いながら、安らかな寝息を立てるプラエの顔を眺めていた。

 

 

****

 

 

 ネプギアは昨日のように、昨日の午後から溜まっていた書類関係の仕事をペンネルを駆使して九時前には終わらせる。

 

そしてイストワールに提出をすると、プラエとあんみつの部屋を訪れていた。

 

 

「申し訳ありません。プラエ様はまだお目覚めでなく……」

 

 

 部屋を訪れたネプギアにあんみつ心底申し訳ないと言った感じで頭を下げながら言う。

 

 

「いいんですよ。昨日は色々あって疲れたでしょうし、ファティーグになった影響もあると思います」

 

 

 ネプギアはまったく気にしていないと言わんがばかりに微笑みながらそう言うと、「寝る子は育つっていいますし」と続けて言う。

 

 

「ですが、せっかく朝食を用意していただいたのに……」

 

 

 あんみつは変わらず申し訳なさそうに言う。

 

コックからプラエとあんみつがまだ食事をとっていないことを聞いたネプギアは二人分の食事を台車に乗せて運んで来たのだ。

 

 

「女神とあろう方に、このような給仕のような真似をさせてしまうなんて」

 

 

 あんみつがそう言うと、「私が好きでやっているんですから気にしないで下さい」とネプギアが優し気な声で言う。

 

更に、「それに私の朝の分のお仕事なら終わらせてきましたから」と言いながらテーブルに一人分の食事を並べて、「あんみつさんだけでも食べて下さい。プラエちゃんは私が見ていますから」と言う。

 

 

「しかし、メイドである私がプラエ様より先に食事をとるなど……」

 

 

 あんみつは困った顔をするが、「あんみつさんにも事情はあると思いますけど、あんみつさんは私のお客様でもありますから、出来れば食べて欲しいです」とネプギアが再度お願いをする。

 

 

「私のワガママで、プラエ様の恩人を困らせるのは本意ではありません。プラエ様には申し訳ありませんが先にいただきます」

 

 

 あんみつはそういいながら、椅子に座ると両手を合わせて、「いただきます」と言って食事をとりはじめる。

 

それを確認したネプギアはプラエの寝ているベッドに近づいて行った。

 

 

「プラエちゃんはまだおねむかな~?」

 

 

 ネプギアが子供をあやすような優しい声で寝ているプラエに話しかける。

 

すると、「……おねむ……」とやや寝ぼけた声でプラエが返事をする。

 

 

「ん? おっきしたのかな?」

 

 

 ネプギアが優しい声で尋ねると、プラエは、「……う~……」と唸りながら首をもぞもぞと左右に振る。

 

寝る為に髪をほどいているので、長く綺麗な金髪が波のように揺れる。

 

 

「うふふ、可愛いなぁ」

 

 

 ネプギアはそう言って微笑むと、「どうしたら、おっきしてくれまちゅか~」と赤ちゃん言葉で問いかける。

 

 

「……だっこ……」

 

 

 プラエはそう言ってネプギアを求めるかのように両腕を突き出す。

 

 

「だっこでちゅか~?」

 

 

 ネプギアはすぐには抱っこせずに、少しじらすかのように確認をすると、プラエはこくこくと何度も首を上下に振って頷く。

 

 

「じゃあ、だっこしまちゅから、おっきしまちょうねー」

 

 

 ネプギアはそう言いながら、ベッドで寝ているプラエの上半身をゆっくり優しく抱きかかえて起こす。

 

プラエの上半身を起こしたネプギアは手を離すと、「はい、おっきできまちゅたねー。えらいえらい」と手を叩いてプラエを褒める。

 

 

「えへへ……」

 

 

 プラエは眠そうな顔で目を擦りながら微笑む。

 

 

「朝ごはん出来てるから、向こうで食べようね」

 

 

 ネプギアは口調を元に戻してテーブルのある場所を指差して言う。

 

プラエは相変わらず眠そうな顔をして、「……おんぶ……」と呟く。

 

 

「もー、しょうがないなぁ」

 

 

 ネプギアは嫌な顔どころかむしろ嬉しそうな顔で、プラエに背中を向ける。

 

プラエも嬉しそうに笑顔を浮かべると、いそいそとネプギアの背中に乗った。

 

 

「プラエ様?! 何を?」

 

 

 プラエを背負ったネプギアがあんみつのいるテーブルに向かうと食事を終えたあんみつが驚きの声を上げる。

 

 

「おんぶー」

 

 

 プラエが恥ずかし気もなく言うと、「また、ネプギア殿にご迷惑を……」とあんみつは困った顔をした。

 

 

「いいんですよ。甘えてくれた方が嬉しいですし」

 

 

 ネプギアはそう言いながらプラエを降ろすと、プラエは素直に降りて椅子に座る。

 

 

「…………」

 

 

 しかし、朝食を見たプラエは少し不満そうな顔をした。

 

 

「どうしたの? 嫌いな食べ物でもあった?」

 

 

 ネプギアが優し声で尋ねると、「ネプギアお姉さんのおかゆが食べたい……」とプラエが呟く。

 

 

「プラエ様! そのようなワガママを言ってはいけません!」

 

 

 あんみつが叱るようにプラエに言うが、「いいよ。少し時間掛かるけど待てるかな?」とネプギアがにこやかに言う。

 

 

「ネプギア殿は優し過ぎます……」

 

 

 あんみつが右手で頭を抱えながら言うと、「いいですか、プラエ様、あまり甘えてばかりだと、いくらネプギア殿でも愛想をつかされてしまいますよ」と注意するように言う。

 

 

 「……ネプギアお姉さんは甘えん坊な子はキライ?」

 

 

 プラエがすがるような上目づかいでネプギアに訴えると、「ううん、大好き」とネプギアが笑顔で即答をする。

 

その光景に、あんみつはガクリと肩を落としてしまう。

 

毎日ネプテューヌを甘やかしているネプギアにはこのぐらいは序の口であった。

 

 

 

****

 

 

 

 ネプギアの作ったおかゆと朝食を食べたプラエは、「ごちそうさまでした」と満身の笑顔で言う。

 

髪は食事の間に、あんみつが手入れをしていつものお団子ツインテールになっている。

 

 

「ネプギアお姉さん、今日は何をするの? プラエ役に立つよ」

 

 

 食事を終えたプラエが小さくガッツポーズをしながら元気よく言う。

 

 

「じゃあ、タワー内便を手伝ってくれるかな?」

 

 

 ネプギアは既にプラエの為の仕事を考えていたらしく即答をする。

 

 

「タワー内便ってなに?」

 

 

 プラエが不思議そうにネプギアに質問をする。

 

 

「プラネタワーっていうのは凄く大きいでしょ。だから、その中で郵便屋さんをするの」

 

 

 ネプギアが簡単な説明をすると、「楽しそう」とプラエが目を輝かせる。

 

プラネタワーはゲイムギョウ界屈指の巨大建造物で、その広大な内部にはいくつものプラネテューヌ教会の施設や部署があるので、その間を郵送する部署も存在する。

 

ネプギアは定期的にその手伝いをしており、今日はその手伝いをプラエと一緒にしようというのだ。

 

 

「女神様が郵便? なぜ故そのようなことを……」

 

 

 あんみつが心底不思議そうに首を傾げると、「やってみれば分かりますよ」とネプギアがにこやかに答える。

 

 

 

****

 

 

 

「郵便でーす」

 

 

 ネプギアの綺麗で透き通った声がプラネタワーの一室に響き渡る。

 

同時にその部屋で業務をしていた信者が一斉に立ち上がり、ネプギアの元に寄ってくる。

 

 

「みなさん、お疲れ様です。郵便を持ってきました」

 

 

 寄ってきた信者に笑顔で応えるネプギア。

 

 

「この封筒は星野さん」

 

 

 ネプギアがそう言うと、大柄で少し太り気味の男性信者が、「はい!」元気よく手を上げる。

 

 

「星野さん、今日も元気そうですね」

 

 

 ネプギアがにこやかに笑いながら封筒を手渡すと、星野と呼ばれた信者が、「ありがとうございます」と封筒を受け取る。

 

 

「この小包は三島さん」

 

 

 ネプギアが次の荷物を持ちながら言うと、「はーい」と二十歳ぐらいの痩せ気味の男性信者が手を上げる。

 

 

「三島さんは少し顔色が良くないような。睡眠時間は取れてますか?」

 

 

 ネプギアが少し心配そうに言うと、「あはは、昨日はネットにハマってしまって……今日は帰ってすぐ寝ますんで」と言いながら小包を受け取る。

 

ネプギアはその後も一人一人丁寧に軽い会話をしながら荷物を配っていった。

 

 

「信者の人達もネプギアお姉さんも楽しそう」

 

 

 その光景を少し離れたところで見ていたプラエが呟くと、「イキイキとして、活気に溢れておりますね」とあんみつも同意する。

 

そうして全て配り終えたネプギアは、「それではお仕事頑張ってください」と言いながら部屋を出ていくと、プラエとあんみつの側まで行く。

 

 

「こんな感じでね、信者の人達とコミュニケーションを取りながら荷物を渡してあげるの。そうすると、信者の人のことを少しでも知れるし、信者の人達にも私のことを知ってもらえるから」

 

 

 ネプギアがそう説明をすると、「ネプギアお姉さんって本当に偉いね」とプラエが感心し、「感服いたしました」とあんみつもそれに続く。

 

 

「偉くなんてないよ。お姉ちゃんの真似をしているだけだから」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「ええっ!? ネプテューヌさんもタワー内便配ってるの」とプラエが驚きの声を上げる。

 

 

「ううん、お姉ちゃんの場合は何もしなくても、信者の人達と仲良くできちゃうの」

 

 

 尊敬する姉のことを話すネプギアの顔はイキイキとしていた。

 

 

「私はそんなふうにできないから、こういう事務仕事をやらせてもらいながら、みんなとお話させてもらって少しずつ仲良くなって行きたいなって、自分なりにお姉ちゃんの真似をしてるの」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「ネプギア殿、その努力と行動力心底感服いたしましたぞ」とあんみつが拍手をすると、プラエも「ネプギアお姉さん偉い」とプラエも拍手をする。

 

二人ともネプギアの努力と行動力に感心をしたようだ。

 

 

「私が凄いんじゃないよ。この努力と行動力を教えてくれたのは、ユニちゃん達やうずめさんとかだから」

 

 

 そう言って謙遜するネプギア。

 

彼女は超次元、神次元、零次元などを旅して仲間と接していく内に今の努力や行動力を仲間から教えてもらい、それを実践しているのだ。

 

 

「うん! プラエ、ネプギアお姉さんのお手伝いいっぱいする!」

 

 

 プラエがそう言って、小さくガッツポーズすると、「ありがとう。それじゃあ、お願いしちゃおっかな」とネプギアが微笑む。

 

次の部屋からはプラエがネプギアに荷物を手渡したりして、手伝いをするのだった。

 

あんみつは荷物の入った重い台車を押してくれただけでも十分な手伝いであった。

 

 

「お菓子いっぱい貰っちゃった」

 

 

 プラエが嬉しそうに微笑む。

 

小動物のように可愛らしく一生懸命にネプギアの手伝いをするプラエはプラネテューヌ職員の琴線に触れたようで、次々と彼女にお菓子などをくれたのだ。

 

こうしてプラエの初仕事は大成功で終わるのだった。

 

 

 

****

 

 

 

 タワー内便を配り終えたネプギア達は昼食を食べていた。

 

 

「おいしー」

 

 

 プラエが口と右手を一生懸命に動かしてカレーライスを頬張る。

 

 

「プラエ様、もう少しゆっくり食べて下さい。お行儀がよくないですし、消化にもよくないです」

 

 

 右隣のあんみつが軽く注意をするが、「だって、美味しいんだもーん」と満身の笑顔を返すプラエ。

 

 

「たくさん動いた後のご飯って美味しよね」

 

 

 左隣に座ったネプギアが一生懸命にご飯を食べるプラエを見ながら微笑む。

 

プラエはネプギアの方を向くと、「うん、プラエこんなの初めて」と笑顔で頷く。

 

 

「午後もいっぱいお手伝いするよ」

 

 

 プラエが元気よく言うと、「ごめんね。午後からは外でクエストだから」とネプギアが申し訳なさそうに答える。

 

 

「プラエ、一緒に行けないの?」

 

 

 プラエが残念そうに言うと、「あんみつさんには身分証明書を提示していただきましたが、フィナンシェさんにあんみつさんのことを確認していただくまでは、外でクエストと言うのは許可できません」と向かいに座ったイストワールがキッパリと答える。

 

あんみつが身分証明書を提示して、彼女がプラネテューヌの国境際の村の外れに在住しており、プラエはその養子になっていることが確認が取れたが、女神と共に外で行動するには信用が不足している。

 

現に今も二人には監視の兵と監視カメラの二重で監視をされている。

 

 

「大丈夫だよ。すぐに帰ってくるから」

 

 

 ネプギアがにこやかに言うと、「だって、今日はお姉ちゃんが一緒なんだもん」と続けて言う。

 

 

「がんばってねー」

 

 

 ネプテューヌがカレーを食べながら、左手をひらひらと振っておざなりな応援をすると、「うん、頑張るね」とネプギアが笑顔で小さくガッツポーズをしながら言う。

 

 

「って! お姉ちゃんも一緒に行くんだよ!」

 

 

 すかさずツッコミを入れるネプギアに、「なんで?」と心底不思議そうに答えるネプテューヌ。

 

 

「なんでって……元々はお姉ちゃんのクエストで、私はそのお手伝いなんだけど……」

 

 

 ネプテューヌのあっけらかんとした態度に腹も立てずに丁寧に説明するネプギアだが、ネプテューヌは、「あー、パスパス。今日は無理無理」と言いながら右手を左右に振り拒否のジェスチャーをする。

 

 

「どうして? またお腹痛いの?」

 

 

 心配そうに尋ねるネプギアに、「や、違うよ。今日って木曜日でしょ」とネプテューヌがカレーを食べながら言う。

 

 

「うん……木曜日だけど」

 

 

 ネプギアがそう言って頷くと、「木曜日と言えば新作ゲームの発売日。こんな日に仕事とかありえないでしょ」とネプテューヌが答える。

 

 

「そもそも、ゲイムギョウ界なのに木曜日が休みじゃないって間違ってると思うんだ。ゲイムギョウ界を名乗るなら、木曜日から日曜日まで休みであるべきじゃない」

 

 

 ネプテューヌが高説を言っていると言わんがばかりのドヤ顔で言うと、「そっか、それならしょうがないね……」と残念ながらも納得してしまうネプギア。

 

 

「そんなことをしたら、経済が止まってしまいます! ネプギアさんもあっさりと納得しないで下さい!!」

 

 

 当然のようにイストワールが怒りの漫符を浮かべながら叫ぶ。

 

 

「ネプテューヌさんって、本当にネプギアお姉さんと同じ女神様なの? ニートの人みたい」

 

 

 プラエがジト目でネプテューヌを見ると、「これでもやる時はやる人なんだよ」とネプギアがフォローを入れる。

 

ネプギアはフォローをいれつつも、「ほら、お口の周りにソースが付いてるよ」とティッシュペーパーでプラエの口元を拭いてあげる。

 

 

「なんかもうラブラブだねー」

 

 

 その光景を見ながらネプテューヌが呆れながら言うと、「ロムさんとラムさんがヤキモチを焼いてしまいますよ」とイストワールが続いて言う。

 

 

「そうだねー。ネプギアがプラエちゃんおんぶしてる画像なんて、みんつぶのトレンド入りしてたし」

 

 

 ネプテューヌがそう言うと、「ロムちゃんもラムちゃんも、もう大人ですから、ヤキモチなんて焼かないよ」とネプギアが苦笑いしながら、カレーを食べる。

 

 

「うん、今日のカレーは一段と美味しいですね」

 

 

 ネプギアがそう言って頷くと、「神次元の初代コンパさんから良い材料が届いたと、シェフが言っていましたね」とイストワールが答える。

 

【初代コンパ】とは、以前に話したふらぷらと同じく、超次元で命を落としたが神次元でネプギアに保護されて生き延びることができた人物。

 

カレーが好きで、その材料をたまに分けてくれたりする。

 

 

「それなら、ユニちゃんにも教えてあげないとですね」

 

 

 ネプギアがイストワールに答える。

 

ユニはネプギアの友人で、カレー好きで食べるだけじゃなく作ることもする。

 

 

「その必要はないわよ」

 

 

 突然、ネプギアの耳に聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

 

「ユニちゃん!」

 

 

 ネプギアが驚いてその人物の名前を呼ぶ。

 

ユニと呼ばれた少女はネプギアと同じ年ごろだが、身長は5センチほど低かった。

 

赤い瞳にウエーブのかかった黒いロングヘアーを、黒い生地に白いラインの入ったリボンでツーサイドアップに結わえいる。

 

肌の色はネプギアと同じくらいの薄橙色。

 

 

 服はリボンと同じ、黒い生地に白いラインの入ったオフショルダーのワンピースを着て、同じデザインのハイソックスをはいていた。

 

ネプギアに負けず劣らずの美少女で少し身長が低いこともあり、ネプギアに比べてやや線が細い。

 

 

 清楚で穏やかな天使のようなネプギアに対して、強気な印象を受ける赤い瞳に黒くて肩を露出した少し大胆な衣装の彼女はネプギアとは反対の悪魔的なかわいさがあった。

 

白とパステルカラーの美少女ネプギアとこの黒の美少女が向き合っている姿は、異なる魅力がお互いを引き立て合っていて、とても絵になっていた。

 

題名は【天使と小悪魔】といった感じだ。

 

彼女はラステイションと言う国の女神候補生でラステイションに居る筈のユニが目の前にいるのがネプギアには驚きだった。

 

 

「どうしたの? もしかして、カレーの匂いに誘われて?」

 

 

 ネプギアが真剣な声で尋ねるが、「そんなわけないでしょ……。アタシは戦隊モノのイエローじゃないんだから」と心底呆れた声で返すユニ。

 

 

「じゃあ、なんで?」

 

 

 ネプギアが不思議そうに小首を傾げると、「それはこの二人に聞いてちょうだい」とユニが後ろを指差すと、そこには二人の少女が居た。

 

二人の容姿はとてもよく似ていた。

 

二人とも身長130センチぐらい、年齢は七歳程度で小柄な体。

 

薄い茶色のストレートの髪に青い瞳に、肌の色はネプギアよりも更に白めの薄橙色。

 

服もお揃いで、白いブラウスとグレーの吊りスカートに白いタイツをはいていた。

 

 

 二人の違いは髪型とブラウスの襟とネクタイの色ぐらいだった。

 

片方が少女がロングヘアーでピンクの襟とネクタイ。

 

もう片方が少女がミデアムヘアーで水色の襟とネクタイ。

 

二人とも年相応の体つきをしており、ネプギアやユニとは少し違う意味で愛らしい美少女だ。

 

その後ろに付き人のように、セミロングの金髪でメイド服を着た女性が立っていた

 

 

「ロムちゃん、ラムちゃん。それにフィナンシェさんまで!」

 

 

 ネプギアが再度驚きの声を上げる。

 

ロングヘアーの方がラム、ミディアムヘアーの方がロム、そしてメイドの女性がフィナンシェだ。

 

 

「ロムちゃん、ラムちゃん久しぶりだね」

 

 

 ネプギアが優しく声を掛けるが、ラムは不機嫌そうに腕を組むと、「気安く呼ばないでよ。この浮気者ーーー!」とネプギアに向かって叫ぶ。

 

ロムも悲しそうな顔で、「ネプギアちゃんが、わたしの知らない子をおんぶしてた……(しくしく)」とネプギアを見つめる。

 

 

「え? え? え?」

 

 

 ネプギアはロムとラムの態度に困惑してしまう。

 

 

「ネプギア、お姉さん。この人達誰?」

 

 

 そこにプラエが不安そうにネプギアの袖を握ると、「あーーー! またネプギアと仲良くしてるーーー! このネットリのドロボウネコーーーー!!」とラムが怒りの叫びを上げる。

 

 

「ねっとり?」

 

 

 ネプギアが不思議そうに首を傾げると、「寝取りって言いたいんじゃないの」とネプテューヌが気楽そうに言う。

 

 

「ネトリ? なにそれ? 家具屋さんの親戚」

 

 

 ネプギアは更に不思議そうな顔で質問する。

 

 

「うわ……さすがはネプギア、そっち方面の知識ゼロだね」

 

 

 ネプテューヌが呆れたように言う。

 

知識豊富なネプギアだが、その方面には関心がなく小学生以下の知識しかなかったりする。

 

 

「え……ね、ネプギアも知らないの? ど、どうしようロムちゃん、台本と違うよ」

 

 

 ラムは急にあわあわしながらロムにそう言うと、「待って、今台本出すから……(あろおろ)」とロムがポーチからメモ帳を取り出す。

 

 

「ええと……」

 

 

 ラムはロムに手渡されたメモ帳を見ながら、ネプギアを指差して「わたしたちのことはあそびだったのね。うったえてやるわ。うったえてほしくなかったら、いますぐそのおんなとわかれて」と棒読みする。

 

 

「……ラム、それって昼ドラの台詞写してきたの」

 

 

 ユニは呆れた声で言うと、ラムの持っていたメモ帳を取り上げる。

 

 

「ああっ! 返してよー!」

 

 

 ラムは両手を伸ばすが、身長差で届かない。

 

 

「なになに……認知して、私達の子よ。あなたを殺して私も死ぬわ……コテコテの昼ドラの台詞ねー」

 

 

 ユニがそう言って呆れると、「ロム様、ラム様、お二人の勘違いですよ。こんなこと止めましょうよ」と後ろのフィナンシェと呼ばれたメイドの女性が二人を説得しようとする。

 

 

「勘違いなんかじゃないもん。今のわたしとロムちゃんはネプギアと修練場なの!」

 

 

 ラムがそう言うと、「えっと、よくわからないんだけど、一緒に練習すれば許してくれるのかな?」とネプギアが言い、「それを言うなら修羅場よ」とユニがツッコミを入れる。

 

 

「うわーーーーーん! これで勝ったと思わないでよねーーーー! この天然ジンゴロウの女ったらしのネプギアめーーー!」

 

 

 ラムは泣きながら捨て台詞を言って去って行ってしまう。

 

 

「ジンゴロウ? 私、ヤドカリなの?」

 

 

 ネプギアがラムの言うことに思わず首を傾げると、「多分、ジゴロの間違いよ」とユニが冷静にツッコミを入れてくる。

 

 

「ら、ラムちゃん、待ってー!(あわあわ)」

 

 

 その間にロムもラムの後を追って去ってしまう。

 

 

「あっ、待って!」

 

 

 ネプギアは慌てて二人の後を追おうと席を立つが、「止めときなさい。今は二人とも頭を冷やした方がいいわ」とユニがネプギアの肩に手を置いて止める。

 

 

「どうして……ピーシェちゃんの時はヤキモチなんて焼かなかったのに……むしろお姉さんになってくれて……」

 

 

 ネプギアが困ったように言うと、「ピーシェはネプテューヌさんに懐いてて、アンタを取ろうって訳じゃなかったからね」とユニが答える。

 

ロムとラムは以前に自分より幼いピーシェという子に出会った時には、一緒に遊んだりもしたが、時には年上らしく振舞って精神的な成長を見せてくれた。

 

ネプギアはプラエもピーシェと同じように受け入れてくれると思ったのだが、そうも行かなかったようだ。

 

 

「そんな……どうしようユニちゃん」

 

 

 ネプギアは困った顔でユニを上目づかいで見上げると、「今はそっとしときましょ」とユニが言う。

 

 

「でも!」

 

 

 ネプギアは反論するが、「アタシが付いてるわ。大丈夫よ」とユニが言うと、「……ありがとうユニちゃん。うん、私も少し頭を冷やした方がいいよね」と納得する。

 

 

「……ユニちゃん、もしかしてこの為にここまで来てくれたの?」

 

 

 ネプギアがおずおずと尋ねると、「ま、まあね……」とユニが少し恥ずかしそうに右手の人差し指で頬をかく。

 

続いて、「ロムとラムが、【ネプギアが浮気した】ってすごい剣幕だったし、アタシたちはチームだから……」とユニがそこまで言いかけると、「ユニちゃーーーん、ありがとう! やっぱりこういう時に一番頼りになるのはユニちゃんだよー!」とネプギアはユニに抱き着く。

 

 

「こ、こら! 離れなさい!」

 

 

 ユニは鬱陶しそうに言うが、その表情は少し嬉しそうだった。

 

 

「ネプギアお姉さん、どういうことなの?」

 

 

 プラエが少し悲しそうな顔で説明を求めると、「そうだね。プラエちゃんにもちゃんと説明しないとね」と落ち着きを取り戻したネプギアが答える。

 

 

「あんみつ……本当にあんみつなの?」

 

 

 フィナンシェがふるふると震えながらあんみつを見つめると、「久しぶりですねフィナンシェ」とあんみつが言う。

 

 

「最強の甘味は!」

 

 

 突然、フィナンシェが叫ぶと、「和菓子」と涼しい顔であんみつが答える。

 

 

「本当にあんみつなんですね!」

 

 

 フィナンシェはそう言いながら、あんみつに抱き着く。

 

 

「今のでOKなんだ……」

 

 

 少し呆れ気味にユニが言うと、「二人だけに通じる何かがあるんだよきっと」とネプギアが答えた。

 

 

 

 

****

 

 

 

 ネプギアがプラエにロムとラムやユニのことを説明し、あんみつが全員に自分とプラエのことをプラエの超能力を明かした上で説明をする。

 

 

「なるほど。そのプラエさんが超能力者で隠れ住む必要があったんですね」

 

 

 フィナンシェがあんみつに確認をすると、「あなたにも秘密にするのは心苦しかったけど、万が一の場合もあるから」とあんみつが答える。

 

 

「いいんです。納得できましたから、あんみつの行動はメイド道として正しいものだと思います」

 

 

 フィナンシェがそう言うと、「ありがとう、フィナンシェ」とあんみつがお礼を言った。

 

 

「とりあえず、今はロムとラムね」

 

 

 ユニがそう言うと、「ごめんなさい……プラエがネプギアお姉さんにいっぱい甘えちゃったから」とプラエが肩を落とす。

 

 

「プラエちゃんは悪くないよ。私がロムちゃんとラムちゃんに上手く説明できなかったのがいけないんだよ」

 

 

 ネプギアは右手でプラエの頭を撫でながら言う。

 

 

「仲の良い友達が知らない人と、こんなふうに親密になってたら少なからずショックよね」

 

 

 その光景を見ながら、ユニが右手をあごに当てて頷きながら呟く。

 

 

「えっ!? それってもしかして、ユニちゃんもショックだったりするの?」

 

 

 ネプギアが何故か嬉しそうに身を乗り出してユニに問いかけると、「アタシは別に何ともないわよ」とユニが腕を組みながら冷たく突き放す。

 

 

「ガーン……私とユニちゃんって仲の良い友達じゃないの~。私はユニちゃん事すごく大事な友達だと思ってるのに……」

 

 

 ネプギアはこの世の終わりのような顔でガックリとうなだれてしまう。

 

 

「あーー、もう、めんどくさいわねアンタは。アタシはプラエみたいな小さな子に嫉妬するほど子供じゃないってことよ」

 

 

 ユニが心底鬱陶しそうに言うと、「ホントに?」とネプギアが心配そうにユニを見つめる。

 

 

「そうよ! うずめの時はアタシの言葉に耳を貸さずに、うずめさんうずめさんって本当にイライラさせられたんだからね!!」

 

 

 ユニは両手を腰に当てながら憤慨するが、「あっ……」と自分の失言に気付いたらしく口元に手を当てる。

 

 

「べ、別にネプギアのことが好きだからじゃないんだからね。友達としてよあくまで友達として!」

 

 

 ユニは慌てて腕を組みながらそっぽを向いて言い直すが、時すでに遅し。

 

ユニの言葉に感動したネプギアが、「ユニちゃーーーん」とユニに抱き着いてくる。

 

 

「ああもう、まとわりつかないでよ! 鬱陶しいわね!」

 

 

 ユニは内心は少し嬉しそうにしながらも、ネプギアを押し退けようとするが、「やっぱり、ユニちゃん大好きー」と言ってネプギアはユニから離れようとしなかった。

 

 

「ふふっ……ネプギアさんとユニさんは相変わらずですね」

 

 

 その光景を見ながらイストワールが微笑むと、「ノワールもこれぐらい素直だったらいいのにねー」とネプテューヌがしみじみと呟くが、「ネプテューヌさんの態度にも問題があると思います」と即座にイストワールにツッコミを受けてしまう。

 

 

「で、アンタはどうするつもりなの?」

 

 

 ひとしきり抱き着いて満足したネプギアがユニから離れると、ユニは右手で髪の毛をかき上げながらネプギアに質問をする。

 

 

「やっぱり、ロムちゃんとラムちゃんにちゃんと事情を話して、プラエちゃんのこと分かってもらうようにする」

 

 

 ネプギアが小さくガッツポーズをしながら力強く言うと、「相変わらずの正攻法ね。でも、それだけじゃ弱いわ」とユニが腕組みをする。

 

 

「ユニちゃんは他に考えがあるの?」

 

 

 ネプギアがユニに質問をすると、「当然よ。アタシを誰だと思ってるのよ」とユニが鼻高々に言う。

 

 

「なになに? 教えてユニちゃん」

 

 

 ネプギアがせがむように言うと、「ズバリ、プラエの力や想いをあの二人に認めさせるのよ」とユニが自信満々に言い放つ。

 

 

「プラエの力と想い……」

 

 

 プラエが少し不思議そうに首を傾げる。

 

 

「ロムとラムが、ネプギアやアタシやうずめのことを認めたのは、お姉ちゃんを助けるとかダークメガミを倒すとか強い意思の力を、そしてウソ偽りのない実力を見せたからよ」

 

 

 ユニがそう言うと、「確かにそうかも……」とネプギアが頷く。

 

ネプギアと出会った頃の二人は、ロムはともかく、ラムはなかなか懐かなかった。

 

だが、ネプギアの共闘と協調を呼び掛ける真剣な訴えと、ルウィーの危機を何度も救ってくれた実力を認めた上で仲間になってくれたのだ。

 

うずめに対しても、姉を誘拐した疑いがあったにも関わらず、打倒ダークメガミの為にユニの脅しにも屈せずに堂々とした態度で向かって来たのが、二人の心に届いたのだろう。

 

 

「さすがはユニちゃん、目の付け所が鋭いね」

 

 

 ネプギアがそう言って感心すると、「アタシも似たようなものだしね」とユニが答える。

 

 

「似たようなもの?」

 

 

 ネプギアが不思議そうに小首を傾げると、「アタシがネプギアのことを認めたのも、お姉ちゃん達を助けるって強い意思と、そしてそれに見合う実力を見せてもらったからよ」とユニは答えた。

 

 

「ねーねー。いーすん、わたしゲームしに戻っていーい?」

 

 

 ネプテューヌが退屈そうにカレーのスプーンを口に咥えながら、イストワールに向かって言う。

 

自分が蚊帳の外なので面白くないようだ。

 

 

「ネプテューヌさん、今は大切な話をしているのですよ。妹達のこととは言え、女神同士が認め合うと言うのは……」

 

 

 イストワールがたしなめるように言うが、「わたしはそーゆーの無くて大丈夫。だって主人公だもん」とネプテューヌはあっけらかんと言い放つ。

 

 

「主人公なら、戦う目的が全世界の美女をハーレムに入れることでも、敵が【スケールがデカい】とか言って感服しちゃうんだから」

 

 

 ネプテューヌが気楽そうにそう言うと、「では、ネプテューヌさんが戦う目的は全世界のプリンを自分のものにすることですか?」と質問すると、「イエスアイドゥー!」とネプテューヌがウインクしながらサムズアップで答える。

 

 

「はぁ……頭痛がしてきました……」

 

 

 イストワールは心底呆れたように右手で頭を押さえてうなだれてしまう。

 

 

「わかった。プラエ、ロムさんとラムさんにプラエの想いと超能力者を認めてもらう」

 

 

 プラエが小さくガッツポーズをしながら意気込みを見せると、「うん、頑張ろうね、私もロムちゃんとラムちゃんにプラエちゃんのこと分かってもらうようお願いするから」とネプギアが答える。

 

 

「よし、決まりね」

 

 

 ユニがそう言うと、フィナンシェがスマホを取り出して、「お二人の位置はGPSで掴んでいます。そうと決まれば急ぎましょう」と訴える。

 

フィナンシェとしてはすぐにロムとラムの後を追いたかったが、ネプギアの話をちゃんと聞くべきだと判断したので今まで追わなかったのだ。

 

 

「プラネタワーからは出て行ってないみたいね」

 

 

 ユニが少し安心したふうに言うと、「多分、追ってきてほしいんだと思います。お二人ともネプギア様のことを心の底から慕っていますから」とフィナンシェが答える。

 

 

「うん、二人に嫌われないようしっかり話さなきゃ。フィナンシェさん、先導お願いします」

 

 

 ネプギアがそう言うと、フィナンシェを先頭にロムとラムの捜索に向かうのだった。

 

 

 

****

 

 

 

 フィナンシェのGPSを頼りにロムとラムを探すネプギア達。

 

 

「この先の部屋にお二人は居るようです」

 

 

 フィナンシェがそう言うと、「この先は空き部屋で施錠済みだった筈ですが……」とイストワールが不思議そうに首を傾げる。

 

 

「鍵が開けられてるわ」

 

 

 目の良いスナイパーのユニが扉を確認して言うと、「魔力を感じます。開錠魔法で開けたんだと思います」とすかさずネプギアが答える。

 

 

「ユニお姉さんもネプギアお姉さんもすごーい」

 

 

 プラエが拍手をして二人を褒めると、「ムムムッ……」とネプテューヌが右手をあごに当てながら不満そうに唸る。

 

 

「お姉ちゃん?」

 

 

 ネプギアはそんなネプテューヌの様子が気になったのか、彼女の顔を覗き込むように様子を伺うと、「そろそろ、わたしの主人公力【ぢから】を見せなきゃいけないみたいだね」とネプテューヌが珍しく真剣な顔と声で言う。

 

どうやら、ネプギアとユニの活躍で自分の立場に危機感を覚えたようだ。

 

 

「主人公ぢから~? 何ですそれ?」

 

 

 ユニが如何わしいモノでも見るかのようにネプテューヌに尋ねると、「超スーパーで偉大でグレートな奇跡を起こすミラクルパワーだよ」ネプテューヌは両手を腰に当てて自信満々のドヤ顔を決め込む。

 

しかし、「お姉ちゃん……超とスーパーは同じ意味だよ。あと偉大とグレート、奇跡とミラクルもおんなじだよ」とあっさりとネプギアにツッコミを受けてしまう。

 

 

「主人公オブ主人公のわたしの溢れだす主人公補正をもってすれば、主人公力はマルチプラケーションされアディションされサブトラクションされディビジョンされるんだよ」

 

 

 ネプギアのツッコミを無視してサムズアップで言い放つネプテューヌ。

 

だが今度は、「それ、なんて竜頭蛇尾ですか……」とユニは右手で頭を抱えて呆れてしまう。

 

 

「あ、あれ? ここは賞賛の嵐じゃないの?」

 

 

 ネプテューヌが不可思議そうな顔で尋ねる。

 

ネプギアは残念そうな顔で、「お姉ちゃん……マルチプラケーションとアディションは乗算と加算だからいいけど、サブトラクションとディビジョンは減算と除算だよ……」と説明をする。

 

 

「ジョーさんとか火山とか、源さんとか徐さんとか分からない! わたしにわかるように説明せよ」

 

 

 何故か偉そうに要求するネプテューヌに、「えっと……足し算と掛け算の後に、引き算と割り算したら意味がないんじゃないかなってことなんだけど」と丁寧に説明してくれるネプギア。

 

 

「…………」

 

 

 さすがのネプテューヌも黙ってしまい、他のメンバーも残念なモノを見るような目でネプテューヌを見る。

 

除算と加算も知らないのにゲームで覚えた英語をテキトーにそれっぽく使ったのが良くなかったのだろう。

 

 

「とにかく! ここはわたしに任せて。ロムちゃんもラムちゃんもわたしの主人公力で、バシッと説得しちゃうから!」

 

 

 ネプテューヌは気まずい空気を払うかのように大声で言うと、「ねぷ子少尉吶喊します!」と扉に向けて走り出す。

 

 

「あっ! お姉ちゃん、鍵が開いてるってことはロムちゃんとラムちゃんのことだから、何かイタズラと言うか罠が……」

 

 

 ネプギアはそこまで言いかけるが、ネプテューヌは耳を貸さず、「たのもーーー!」と豪快にドアを開く。

 

ドアを開けたネプテューヌの視界が真っ白になる。

 

 

「ねぷっ!?」

 

 

 突然のことに驚きの声を上げるネプテューヌ。

 

 

べちゃ!!

 

 

 そして粘着質な音と共に視界が塞がれ真っ暗になってしまう。

 

 

「ふぐぐっ!?」

 

 

 同時に鼻と口も塞がれたネプテューヌは息苦しげな呻きを上げる。

 

 

「いえーい! 命中よ。ぶいっ」

 

 

 部屋の中には手を叩いて喜ぶラムと、「ラムちゃん、すごい(ぱちぱち)」と言いながら両手でクリームパイを持ったロムが居た。

 

どうやら、そのクリームパイがネプテューヌの顔面に当たったようだ。

 

 

「お、お姉ちゃん、大丈夫?」

 

 

 慌ててネプテューヌを助けに行くネプギア。

 

クリーンヒットしたパイは今もネプテューヌの顔面を見事に覆い隠している。

 

 

「あっ……ネプギアちゃん」

 

「ネプギア!」

 

 

 ネプギアの姿を確認したロムとラムが少し嬉しそうな表情を浮かべる。

 

ちゃんと自分達のことを追って来てくれたのが嬉しいようだ。

 

しかし、プラエの姿を確認すると、ロムは「あの子も一緒……」と悲しそうな顔になってしまう。

 

ラムは不満そうにぷくーっと頬を膨らませると、ロムの手からクリームパイを取り上げて、「もーーーー! この浮気者ーーー!」とそれをネプギアに投げつける。

 

 

「きゃっ!?」

 

 

 ネプテューヌを助けようとしているネプギアの頭にクリームパイが命中する。

 

ネプギアは怯まずに、「ごめんね。お姉ちゃんを避難させたら、すぐ来るから」と二人に言いつつネプテューヌを掴みながら一先ず部屋の外に避難する。

 

 

「あーっ! そうやって、またネプテューヌちゃんを優先するーーーー! ネプギアのバカーーーーー!」

 

 

 ラムの甲高い声が部屋中にこだまする。

 

ネプギアの良かれと思って放った言葉が、またもラムの癪に障ったようだ。

 

 

「ちょっと失敗しちゃったかな……」

 

 

 ネプギアはロムとラムに対して申し訳なさそうに言いながら、ドアを閉めてネプテューヌの安全を確保する。

 

 

「ネプテューヌ殿の失策に比べれば些細なものでしょう」

 

 

 あんみつが呆れながらネプテューヌを見ると、「見事に張り付いてますね」とフィナンシェも呆れ顔でパイの張り付いたネプテューヌを眺める。

 

 

「ネプギアお姉さん、頭にパイが……」

 

 

 プラエが心配そうにネプギアに尋ねると、「これぐらい平気だよ」とネプギアは頭に付いたパイをゆっくりとはがす。

 

 

「何でパイがあるんですか?」

 

 

 ユニがイストワールに尋ねると、「それが、食堂にあったものが台車ごと盗まれたようです」とイストワールが答える。

 

それを聞いたフィナンシェは猛烈な勢いで頭を下げて、「申し訳ありません!!」と謝った。

 

 

「むぐーむぐー!」

 

 

 そこにネプテューヌの息苦しそうな抗議の声が響く。

 

早くパイをはがして欲しいようだ。

 

 

「あ、ごめんね、お姉ちゃん」

 

 

 ネプギアはそう言いながらネプテューヌの顔面に張り付いたパイを引っ張ると、【ポン】と景気の良い音と共にパイがはがれた。

 

 

「ぷはー。死ぬかと思ったよ。美少女主人公の死因が【白くべたつくなにか】だなんて、青少年の股間を刺激しすぎちゃうよ」

 

 

 ネプテューヌが気楽そうに言うと、「パイですよ、クリームパイ。いちいち如何わしい言い方に変えないで下さい」とユニが少し恥ずかしそうな顔でツッコミを入れる。

 

 

「……で、どうするの?」

 

 

 ユニはそのままネプギアの方を向いて尋ねると、「もちろん、今からロムちゃんとラムちゃんを説得するよ。二人とも良い子だから絶対に分かってくれると思うから」とネプギアが強い意思を込めた瞳で断言する。

 

 

「相変わらずの正攻法ね……」

 

 

 ユニは少し呆れたふうに言うが、「こういうことで搦め手って良くないと思うから」とネプギアがキッパリと答える。

 

それを聞いたユニは少し嬉しそうに微笑むと、「いいわ、アタシも手伝ってあげる」と言ってハンカチでネプギアの髪に付いたパイを拭いてくれた。

 

 

「プラエどうしたらいい? プラエのせいだもん。何でもするよ」

 

 

 プラエが心配そうにネプギアとユニを上目づかいで見ると、「大丈夫だよ。まずは私とユニちゃんに任せて」とネプギアが微笑む。

 

そしてネプギアはユニと一緒にドアの前に立つと、コンコンと二回ノックをして、「ロムちゃんとラムちゃん、お願いだから私の話を聞いて」と優しく呼び掛ける。

 

その光景は拗ねて部屋に閉じこもってしまった子供に呼び掛ける母親のようであった。

 

神次元で子育てをしたネプギアには似たような経験があったのだろう。

 

 

「ムムム……ネコシエイターよ。どうするロムちゃん」

 

 

 ネプギアの声を聞いたラムが腕組みをしながら唸ると、「ねこしえいたー?」とロムが小首を傾げる。

 

 

「今のネプギアみたいに説得しに来る人をそう言うのよ」

 

 

 ラムの説明に、「……それを言うならネゴシエイターよ」と扉の向こうからユニのツッコミが聞こえて来る。

 

スナイパーのユニは音にも敏感だ。それ以上にラムの声が大きいと言うのもあるが。

 

 

「なによー! ユニちゃんのバカー! せっかくわたし達のレイシーズダンスに加えてあげようと思ったのにー!」

 

 

 ラムは扉の向こうのユニに向けて叫ぶが、「そこはレジスタンスでしょ……レイシーズダンスはウチのお姉ちゃんの技よ……」と再度ツッコミを受けてしまう。

 

 

「とにかく、わたしたちは、そんなよーきゅーに答えないわ!」

 

 

 ラムはそう言って扉の向こうにいるであろうネプギアとユニを指差すと、「ネプギアがその子と別れるまで徹底光線よ! びーーーっ!びーーっ!」と言って両手の人差し指と中指を額に当てて某超人が光線を発射するポーズをする。

 

 

「ほら、ロムちゃんも徹底光線発射よ」

 

 

 ラムがそう言うと、ロムもラムと同じポーズで、「て、徹底光線……(びーーーっ)」と扉に向けて言う。

 

 

「はぁ……もう、ツッコミ疲れたわ」

 

 

 扉の向こうのユニがお手上げのポーズでそう言うと、「あはは……」とネプギアが苦笑いをする。

 

 

「とりあえず、ドア開けていいかな? ちゃんと顔見てお話しよ。顔を見ればそんなイライラも忘れちゃうから」

 

 

 ネプギアが再び優しく問いかける。

 

こうやって地道に少しづつ距離を詰めていくのは彼女らしい方法だろう。

 

 

「大人はキライよ! ずる賢いから! わたし達の知らないところで他の子と仲良くするなんてずる賢いんだから!!」

 

 

 ラムが不機嫌そうに叫ぶ。

 

彼女は一歩も引く気はないらしい。

 

 

「ねぇ、ラムちゃん……わたし、ネプギアちゃんのお話聞いた方がいいと思う……」

 

 

 しかし、ロムにはネプギアの言葉が届いたようで、そう呟く。

 

だが、「何言ってるの! 徹底光線って決めたでしょ!」とラムが叫ぶ。

 

 

「でも、わたし、ネプギアちゃんとケンカしたくないし……それにネプギアちゃんとお話したい……お願いラムちゃん」

 

 

 ロムがうるんだ目で祈るように両手を組んでラムにお願いをする。

 

すると、「仕方ないわね……ジョジョ酌量の余地ありってことで、話だけ聞いてあげるわ」とラムが素直に折れる。

 

 

「それを言うなら、情状酌量の余地よ。ジョジョじゃ奇妙な冒険になっちゃうわよ」

 

 

 ユニが呆れた声を上げながらおもむろにドアを開ける。

 

 

「あっ! ドアまで開けて良いって言ってないのに~」

 

 

 ラムは不満そうに叫ぶが、「……ネプギアちゃん」とロムはネプギアの顔を見て微笑む。

 

 

「二人ともごめんね」

 

 

 ネプギアはそう言って素直に頭を下げると、「わたしも神次元でお姉ちゃんとプルルートさんが凄く仲良くなってたことに、少しショックだったから二人の気持ちよく分かるよ」と続ける。

 

更にもう一度頭を下げて、「本当にごめんね」と言った。

 

先程のユニの言葉を聞いて自分も思い当たる節があったので、素直に悪いと思って謝っているのだ。

 

相手が年下の子供でも悪いことは悪いと素直に頭を下げて謝れるのは彼女らしい美点だ。

 

 

「ううん! わたしの方こそ怒ったりしてごめんなさい」

 

 

 ロムはネプギアの謝罪に感銘を受けたようで、即座に謝り返すと足早にネプギアの元に駆け寄る。

 

ネプギアは駆け寄って来たロムを抱きとめると、「ありがとう、ロムちゃん」と右手で優しく頭を撫でてあげる。

 

するとロムは、「くすん……本当は寂しかったの(しくしく)」と泣いてしまう。

 

ネプギアはロムの頭を撫で続けて、「うん、本当にごめんね」ともう一度謝る。

 

 

「うーーー! やっぱり大人ってずる賢い! そんなふうに謝られたら怒れなじゃない~~」

 

 

 ラムもラムでネプギアの謝罪に感銘を受けたが、ロムのようにすぐに素直にはなれないようだ。

 

 

「みんなで一緒に仲良くしよ? プラエちゃん良い子だし、ラムちゃんとも仲良くできると思うから、ね?」

 

 

 ネプギアがそう言って微笑みながら、ラムに向かって左手を伸ばす。

 

 

「う、うー! でもでも、徹底光線って決めたし~!」

 

 

 ラムは両手を上下左右に激しく動かして困り果てながら、最後に先程の某超人が光線を発射するポーズをする。

 

 

「じゃあ、私はビーム吸収で、徹底光線吸収しちゃう」

 

 

 ネプギアはそう言うと、ロムから手を離して両手を突き出してボールを受け止めるようなポーズを取る。

 

小学生同士のごっこ遊びのようなやり取りだが、その中にはラムの怒りや悲しみを受け止めるネプギアの心情が現れていた。

 

 

「う、う、うわーーーーん! ネプギアのバカーーー! 浮気なんかしないでよー! 本当はわたしとロムちゃんだけに優しくしてほしいのに~~」

 

 

 ラムはそう言って泣きながら、ネプギアの胸に飛び込んでいく。

 

ネプギアも飛び込んできたラムをガッチリと受け止めた。

 

 

「ごめんね。でも、困ってる人や傷ついた人には優しくしてあげなきゃ。そうでしょ?」

 

 

 ネプギアはラムに優しく言い聞かせるように言う。

 

ラムはこくこくと頷き、「ネプギアが誰にでも優しいの知ってるけど、不安なの~」とネプギアにしがみつく。

 

 

「一件落着ね。とりあえず、正攻法だけで何とかなったわね」

 

 

 ユニが腕組みしながら安堵のため息を吐く。

 

しかし、「でもでも! ネプギアは許したけど、まだその子のこと認めた訳じゃないんだからね。ただの迷子とかなら早くお家に帰ってよー」とラムが最後の抵抗を試みる。

 

 

「っと……そう簡単にはいかないわね」

 

 

 ユニはそう言うとプラエの方を見て、「プラエ、ここからはアンタの出番よ」と言う。

 

 

「うん、ユニお姉さん。プラエのことラムさんにもロムさんにも分かってもらうから」

 

 

 プラエはそう言って小さくガッツポーズをする。

 

 

「言っとくけど、わたしとロムちゃんのハードルは山よりも高く海よりも深いんだからね」

 

 

 ラムが腕組みしながら言うが、「深くてどうするのよ……」とユニにツッコミを受けてしまう。

 

 

「頑張ってお話するね」

 

 

 プラエはそう言うと、自分のことを一生懸命にロムとラムに説明をしはじめる。

 

姉が十年前から行方不明なこと。

 

その姉の言付けで十年後にプラネテューヌを訪れたこと。

 

そしてネプギアに出会い、その行動と優しさ、そして彼女の思想に感嘆を受けて心の底から手助けをしたいと思ったこと。

 

プラエは身振り手振りを交えて必死にロムとラムに説明し、二人もそれを真剣に聞いていた。

 

 

 

****

 

 

 

 話を聞き終えたロムとラムは両手でプラエの手を握ると笑顔を向ける。

 

 

「今日からプラエはわたし達の仲間よ!」

 

「何でも聞いてね。わたし、先輩だから頑張る(ぐっ)」

 

 

 二人ともプラエの境遇と想いを理解してくれたようで、温かく迎えてくれたようだ。

 

 

「これで本当の一件落着だね」

 

 

 ネプギアは三人の様子を見ながら微笑む。

 

ユニが、「意外とあっさりと納得したわね」と少し拍子抜けしたように言うと、「それだけプラエちゃんが真剣だったってことだし、何よりロムちゃんもラムちゃんも優しい子だから」とネプギアが答える。

 

 

「これぞ、必殺手のひら返し!!」

 

 

 ネプテューヌがドヤ顔で言い放つと、「もう少しまともな言い方はないんですか……」と隣のイストワールが頭を抱えてうなだれる。

 

 

「それより、アンタ、シャワーでも浴びてきなさいよ。髪がベトベトよ」

 

 

 ユニがネプギアの頭を指差して言うと、「あっ! それならわたし達が洗ってあげるわ!」とラムが言い、「わたし達のせいだもんね」とロムがそれに続く。

 

それを聞いたプラエも、「プラエも一緒に入りたい」と言う。

 

 

「じゃあ、みんなで仲直りのお風呂に入ろっか」

 

 

 ネプギアは笑顔で提案するが、「アタシはパス」とユニが冷めた声で言ってくる。

 

 

「……ユニちゃん冷たい……」

 

 

 ネプギアは一気に意気消沈してしまうが、「だって、アタシ特に汚れてないし」とユニの態度は変わらない。

 

 

「じゃあ、汚しちゃえばいいのね!」

 

 

 ラムはニヤリと笑うと、「とりゃー!」とユニの後頭部にパイを投げつける。

 

 

べちゃ!

 

 

「なっ!?」

 

 

 完全に油断していたかつ背後からの攻撃なので、さすがのユニも避けられず見事に後頭部にパイが直撃する。

 

ユニが驚いている間に、「更に追撃!」とラムが言うと、今度はロムがユニに向けてパイを投げつける。

 

 

べちゃ!

 

 

 今度はユニの胸にパイが当たると、「ユニちゃんのお胸に当たったわ。これが本当のペチャパイね!」とラムがドヤ顔で言い放つ。

 

 

「だーれーがー、ペチャパイよ!」

 

 

 ユニは鬼の形相で台車からパイを二つ奪うと、それをロムとラムに立て続けに投げつける。

 

 

「きゃっ!?」

 

「わぷっ!?」

 

 

 一つはロムの頭に、もう一つはラムの顔面に命中する。

 

 

「やったわね~」

 

 

 ラムが顔に張り付いたパイをはがしながら楽しそうに笑うと、「それはこっちの台詞よ」とユニが言い返す。

 

そして二人は互いにパイを持つと、投げ合いを始めてしまう。

 

当然のようにロムも加わり三人でパイ投げの応酬が始まる。

 

 

「わわわっ、どうしよう、ネプギアお姉さん」

 

 

 プラエがオロオロとネプギアに尋ねると、「えっと、このままじゃユニちゃんが不利だから、私がユニちゃんに加勢するよ。でも、そうするとロムちゃんとラムちゃんがかわいそうだから、プラエちゃんはロムちゃんとラムちゃんチームね」とネプギアが答える。

 

 

「ふえっ!? ネプギアお姉さん、何言ってるの?」

 

 

 ネプギアの思いがけない言葉に驚くプラエだが、「ネプギア参戦!」と言いながらネプギアがユニの側に付いてパイ投げに参加してしまう。

 

 

「ふわぁ~、本当にネプギアお姉さんまで始めちゃった」

 

 

 真面目なネプギアの思いがけない行動に呆然としてしまうプラエ。

 

そこにネプテューヌが、「うん? もしかして、ネプギアと一緒がいいの? なら、わたしがロムちゃんラムちゃんチームに入るから、プラエちゃんはネプギアチームね」と言うと、「ネプテューヌ参戦!」と言いながら、ネプテューヌはロムとラム側に付いてパイ投げに参加する。

 

 

「おおっ! ネプテューヌちゃんが来た。これで百人力よ」

 

 

 ラムがネプテューヌの加勢に息巻くと、「わたしとラムちゃんのイタズラパワーが合体すれば、100万パワーが1200万パワーになって勝ち確定だよ」とネプテューヌも同じように息巻く。

 

 

「おおっ、よく分からないけど、何かスゴイ」

 

 

 ラムがそう言って驚くと、「わたしは?」とロムが少し寂しそうな顔をする。

 

 

「当然、そこにロムちゃんが加わって1200万パワーの二乗!!」

 

 

 ネプテューヌがノリノリで返事をすると、「「おお~~」」とロムとラムが声を合わせて驚く。

 

 

「1200万パワーの二乗で!」

 

 

 ネプテューヌがこぶしを付きあげながらドヤ顔で宣言すると、「「1200万パワーの二乗で?」」とロムとラムが期待を込めた顔でそれに続く。

 

 

「えーと……2400万パワー?」

 

 

 ネプテューヌが急に自信なさげに言うと、「お姉ちゃん、それただの二倍だよ」とネプギアのツッコミが入る。

 

更に、「二乗なら1億4400万パワーかな。12の二乗が144って覚えておくと楽だよ」と丁寧に答えてくれるネプギア。

 

 

「そんなの覚えて何の役に立つの~?」

 

 

 教えてもらったのに、やや不満顔のネプテューヌ。

 

しかし、「えっと、今お姉ちゃんの役に立ったかな?」とネプギアに言われると、「…………」と黙ってしまう。

 

 

「とりゃー! 隙あり!」

 

 

 ネプテューヌが誤魔化すようにパイをネプギアに投げつけると、「お姉ちゃん、ズルい!」とネプギアが頬を膨らませて抗議する。

 

 

「わぷっ!?」

 

 

 同時にユニの投げたパイが見事にネプテューヌの顔面に命中する。

 

さすがはスナイパーである。

 

それを皮切りに再びパイ投げが始まる。

 

 

「わわわっ!? やっぱりお姉ちゃんとラムちゃんのコンビ強いよ。助けてプラエちゃん!」

 

 

 状況不利に陥ったネプギアがプラエに助けを呼ぶと、「は、はいっ!」とプラエもパイ投げに加わってしまう。

 

 

「プラエ様!?」

 

 

 慌てて止めようとするあんみつだが、「良いじゃありませんか。友情を深める儀式みたいなものですよ」とフィナンシェがあんみつを手で制する。

 

 

「しかし、お召し物が……」

 

 

 あんみつが困った声を上げるが、「それこそ、私達メイドの腕の見せ所ですよ。頑張ってお洗濯しましょ、あんみつ」とフィナンシェが微笑むと、あんみつも諦めて「……わかりました」とため息を吐く。

 

 

 こうしてパイが無くなるまでパイ投げが行われた。

 

パイ投げが終わったネプギア達はクリームだらけになりながらも笑いあい、みんなで仲良くお風呂に入ったのだった。

 

ただし、お風呂から上がった後はイストワールから【食べ物を粗末にしてはいけません】と軽くお説教を受けてしまった。

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